If・魔法少女リリカルなのは~結界使いの転生者~
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始動機動六課
時は流れ、機動六課の設立式。
機動六課の隊舎ロビーに生活スタッフ、事務員、戦闘員など全員が勢ぞろいしていた。
(機動六課とは本当に大丈夫なのか?・・・少数精鋭の部隊だと聞いていたのだが、平均年齢があまりにも若い、若すぎる。それに、どう見ても小学生にしか見えない子もいるじゃないか・・・いや、ヴィータ副隊長やリイン曹長の事もあるし、見た目で年齢は判別できないな)
新しく支給された陸士隊の制服を身に纏った剛もその中の一人として整列していた。
「皆さん。機動六課課長、そしてこの本部隊舎の総部隊長の八神はやてです」
隊員たちから拍手が上がる。
「平和と法の守護者、時空管理局の部隊として事件に立ち向かい人々を守ることが私たちの使命であり、成すべきことです。実績と実力にあふれた指揮官陣、若く可能性に満ち溢れたフォアード陣、それぞれ優れた専門的な知識や技術の豊富なメカニックやバックヤードスタッフ。そして、全員が一丸となって事件に立ち向かっていけると信じています。・・・・・・まあ、長い挨拶は嫌われるんで・・・・以上ここまで。機動六課課長及び部隊長、八神はやてでした」
はやての挨拶が終わった後、フォワード陣は互いの自己紹介を行っていた。
「あたしはスバル・ナカジマ二等陸士。魔導師ランクは陸戦B。ポジションはフロントアタッカー。コールサインはスターズ3。よろしくね!!」
「ティアナ・ランスター二等陸士よ。ランクは陸戦B。ポジションはセンターガード。コールサインはスターズ4。よろしく」
「僕はエリオ・モンディアル三等陸士です。魔導師ランクは陸戦Bで、ポジションはガードウィング。コールサインはライトニング3です。よろしくお願いします!!」
「キャロ・ル・ルシエ三等陸士です。魔導師ランクは陸戦C+。ポジションはフルバックでコールサインはライトニング4です。よろしくお願いします」
自己紹介を終えると、彼女たちは剛に視線を向けた。
そりゃあ、一人だけ事前情報になかった人物がフォワード陣にいるので訝しんでいるのだ。
「守宮剛・・いや、こっち風に言うならタケル・モリミヤと言った方がいいか。実は次元漂流者と言うやつらしくてな、ここで働く代わりに衣食住を保障してくれることになった。コールサインはライトニング5で君たちのサポートに回る。戦闘しか能のない人間だが、足手まといになることはあるまいからよろしく頼む」
「そうなんですか!?大変でしたね剛さん。あ!!あたしのことはスバルで大丈夫です!!」
「いや、仕事なんだからそうもいかんだろ、スバル二士」
「ええ~。いいじゃないですか~」
「やれやれ・・・・」
大丈夫なのか、ここは?
いくら新人でもこうフランクすぎるスバルの態度に剛は心配した。
縦社会の厳しい警察気質と比べると、随分フランクな世界だ。
「次元漂流者ってことは管理局を知らない世界から来たんでしょ?大丈夫なの?」
ティアナが剛に聞いてくる。
管理局を知らない世界など管理外世界、つまりは魔法の存在が確認されていない世界に他ならない。
ティアナが思っているのは、魔法を知らない人間が六課にやってきて足手まといにならないかと言う当然の疑問である。
「向こうでも魔法関連の警察・・・管理局みたいな組織、それも武装隊に勤めていたから荒事なら得意、と言うよりそれしか取り柄がないんだがね」
「そう、ならいいわ」
そっけなくティアは頷く。
そこになのはがやってきて、一同は訓練場に向かった。
訓練場に到着した一同はなのはの前に整列した。
「今返したデバイスにはデータ記録用のチップが入っているから、ちょっとだけ大切に扱ってね」
フォワードメンバーにデバイスはそれぞれのデバイスを受け取り、剛も腕輪型の記録装置を受け取る。
「それがタケルさんのデバイスなんですか?」
剛の腕にあるそれが異世界のデバイスとでも思ったのか興味を持ったスバルが聞いて来た。
「いや。これはただの記録装置だよ」
そして、持ってきた荷物の中から、ホルスターに収められていた警棒と飛穿を取り出し、脇のホルスターに収めた。
「武器と言う意味でなら私のデバイスはこの二つだな」
「変わった武器ね」
「よく言われる」
ティアナの指摘に当たり障りのない返事を返す剛。
ちなみに剛の記録装置だけ武器に組み込まずに腕輪型のを用意したのは、単純な話で魔法が使えない彼にデバイスを支給しても意味はないし、元から持っている武装も電子機器でもない(警棒にはスタンガンの為の回路こそあるが非常に単純な仕組みである)ゆえに組み込むことが出来ない為である。
「まあ、それはさて置いて、メカニックのシャーリーから一言」
なのはが一旦この場を治め、シャーリーに視線が集まった。
「えー、メカニックデザイナー兼機動六課通信主任のシャリオ・フィニーノ一等陸士です。皆はシャーリーって呼ぶので良かったらそう呼んでね。皆のデバイスを改良・調整するのが私の仕事なので、時々訓練を見せてもらったりもします。デバイスについての相談も遠慮なく言ってね」
「「「「「はい」」」」」
シャーリーの言葉に返事する一同。
「じゃあ、早速訓練に入ろうか」
「え?・・・はい」
「でも・・・ここでですか?」
なのはの言葉に疑問を返すスバルとティアナ。
「シャーリー」
「はーい!!」
シャーリーの周囲に空間ディスプレイが表示される。
「機動六課自慢の訓練スペース。なのはさん完全監修の陸戦用空間シミュレーター。ステージセット」
シャーリーがディスプレイを操作すると、今まで何もなかった場所に突如として廃墟が出現した。
「「「「「・・・・・・・」」」」」
剛を含め、一同はそのあまりに騒然の光景に言葉を失っていた。
「それじゃあ、みんな。改めて訓練を始めるよ」
「「「「「りょ、了解しました!!」」」」」
準備運動を済ませ、廃墟のほぼ中央付近に移動したメンバー。
『よしっと。それじゃあ、みんな聞こえる?』
「「「「「はい!!」」」」」
『じゃあ早速ターゲットを出してみようか。まずは八体から』
『動作レベルC、攻撃レベルDで展開します』
シャーリーがディスプレイを操作し、訓練場にターゲットが出現する。
『私たちの仕事は指定ロストロギアの保守管理。その目的の為に私たちが戦うことになる相手がこれ』
『自立行動型魔導機械、通称ガジェットドローンです』
訓練場に八体のガジェット全てが出現した。
『では第一回模擬線訓練ミッション。目的:逃走するターゲットの破壊、または捕獲。制限時間:15分以内』
「「「「「はい!!」」」」」
『あと、今回からしばらくの間は剛さんと4人は別々に訓練を受けてもらうね』
「へ?」
「そうしてタケルさんだけ?」
『理由は剛さんだけ実力も経験も4人とは段違いで始めから一緒に訓練するとバランスが悪いし、剛さんに頼る癖が着いちゃうかもだしね』
「そうなんですか!?」
「本当に?」
スバルは素直に驚いているが、ティアナは胡散臭げな視線を剛に向けた。
『リミッター付とはいえ、シグナムに模擬戦で勝った程って言えば分かりやすいかな?』
「本当ですか!?」
「まさか・・・」
シグナムをよく知るエリオが驚き、ティアナも信じられないと言った表情を浮かべる。
『では納得してもらったところで、ミッションスタート!!』
なのはの掛け声とともに、ガジェットは一斉に逃げ始めた。
訓練が始まり、ガジェット追うスバル。
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
ジャンプして上空から魔力弾を放つも避けられ、先回りしたエリオもガジェットの放つ攻撃を掻い潜るりながら放つ斬撃も紙一重で躱される。
しかし、スバルよ。
せっかくの背後からの奇襲なのに叫んでは意味ないであろう。
「前衛二人、分散しすぎ!!ちょっとは後ろの事も考えて!!」
ティアナがキャロのブーストを受けた魔力弾を放つも、ガジェットに命中する直前で掻き消されてしまう。
『ガジェットにはちょっと厄介な特徴があってね。攻撃魔力を掻き消すAMF。普通の射撃は通じないし、飛翔や足場作りといった移動魔法の発動も困難になる』
言ってるそばから、スバルがウィングロードでガジェットを追跡しようとしたが、AMFの出力が上げられ、足場が消失し、そのままビルに突っ込んでしまった。
『スバル、大丈夫?』
「痛たた・・・。なんとか・・・」
『まあ、訓練中はみんなのデバイスに細工して疑似的に再現しているだけなんだけど、本物からデータを取ってるだけあってかなり本物に近いよ』
『対抗方法はいくつかあるから、素早く考えて素早く動いて』
その後、フォワードメンバーは即座に対抗策を試すために行動に移った。
エリオがビル群の連絡橋を壊して足止めしたところを、スバルが相手する。
単純な魔力攻撃が聞かないと判断すると、即座に体術を駆使して、ガジェットを地面に押し倒し、零距離攻撃を加えて破壊した。
他のメンバーも負けてはいない。
フリードのブラストフレアで逃げ場を封じたキャロが召喚と無機物操作の併用で物理的にガジェットを拘束する。
ティアナも本来ならばAAランクの高等技術である多重弾核射撃魔法でガジェットを撃ち抜いた。
『やったーーーー!!凄いよティア!!』
「煩い!!これくらい・・・当然よ・・・・・」
スバルの嬉しそうな声に、肩で息をしながら答えるティア。
目標の全ターゲットの破壊及び捕獲を終え、最初の模擬訓練はひとまず終了した。
「どう?剛さん。この世界の魔導師たちは?」
なのはは隣にいる剛に感想を求めた。
「そうだな・・・・キャロ三士がA、ティアナ二士がAよりのB、スバル二士とエリオ三士がCと言ったところか。まあ、実戦経験皆無の彼女たちにしてみれば良くやったと言ってもいいな。・・・まあ、欲を言うならスバル二士の直情型名行動やエリオ三士の建物破壊など細かいところを挙げればきりがないが・・・」
「キャロちゃんがAってどうしてです?」
疑問に思ったシャーリーが剛に尋ねた。
「ああ、すまん。私の世界の魔導師ランクの様なものだ。魔法協会『円卓十三議会』が交付している、私の世界唯一の公式国際魔導師ランク・・・と言っても、あくまで魔導師としての格付けで戦闘能力は吟味されていないがね」
円卓十三議会が交付する国際魔導師ランクはEからSまでの6段階評価で表示され、魔力素を魔力への『変換』、魔力の『運用』、術式の『構築』、魔法の『制御』の4つで評価が決まる。
デバイスに内蔵されているプログラムを利用して魔法を発動するミッド式やベルカ式には『構築』の評価が低いことを差し引いても、あの年齢でC以上の評価を取れる彼女たちは魔導師としては非常に優秀であろう。
「ティアナ二士も評価が高いのだが、彼女は最後で力押しの傾向があり制御がまだ甘い。スバル二士とエリオ三士に至ってはほぼ全てが力任せだ。まだまだ改善の余地は十分にあるし伸びしろもある。優秀な子たちだな」
「本当に・・鍛えがいのある子たちですね」
ミッションを達成した一同は一旦集まり、次に剛が一人で模擬訓練を受けるのを見学することとなった。
『それじゃあ、とりあえずはさっきと同じ条件でやってみようか』
そして、訓練が開始されると、剛は瞬動でビルを駆けあがり、ガジェットを追跡しながら逃走ルートを探り出す。
逃走ルートの法則性をある程度見切りをつけると、今度は先回りし、横道から飛穿を構えてガジェットに放つ。
ガジェットがその攻撃に反応し、躱したところを瞬動で近づき、肘打ちで一体を仕留め、流れるようにもう一体も鉄砕を抜刀して切り裂く。(訓練中は鬼切を使用しないので刀身を鉄砕に切り替えている)
遅れてやってきた6体も剛に対し攻撃を放つが、彼は両腕を交差し、顔を守るようにガードしながら突っ込んでいく。
外功による防御と内功による筋力強化があればマシンガンの連射にも耐え切る守りは魔力弾を容易に防ぎきり、更にガジェット目前で発動した瞬動にガジェットは対応できず、そのまま放たれたけりで三体が将棋倒しのように潰れて破壊される。
その隙に残りの三体が逃走したが、同じように動きを予測した剛に先回りされて一体ずつ確実に潰されていった。
最後の一体を破壊されたころにはまだ5分も経っていない状況であった。
「「「「・・・・・・・・・・・・・」」」」
「どう?分かった?」
「「「「は、はい・・・・・」」」」
先ほどのなのはの言葉の意味を改めて実感したフォワード陣。
「まあ、あれでも彼は全力じゃなかったしね」
「あ、あれで全力じゃないんですか!?」
「うん。剛さんは魔力を持っていないけど、暫定で陸戦S-の実力があるはずだから、もうちょっと早くてもいい筈なんだけどね。そこのところはどうなの?」
なのはは訓練場の剛に通信を開く。
『と、言いますと?』
「もうちょっと全力を出してもよかったんじゃないかってこと」
『確かに、もう少し早く事態を治めることもできましたが・・・』
「じゃあ、どうして?」
『・・・・・それをしてしまうと、街に被害が出てしまうので』
「「「「「「はい?」」」」」」
なのはだけでなく、その場にいる全員が呆気にとられた。
彼の言葉を元の世界の人間が聞いていたならば『お前らだけには言われたくない!!』と突っ込まれていただろうが敢えて言う必要もあるまい。
ちなみに、剛は優秀な問題児の巣窟である黒狼連隊においてもっとも『まとも』な部類に入る人間である。
『自分はあくまで警察の人間であり軍人ではありません。犯人逮捕も重要ですが、究極的にはどれだけ被害を抑えられるかが重要であり、ましてや自身がそれを広げる要因であってはならないと判断したまでです』
「そ、そうなんだ・・・」
なのははその言葉に目を泳がせながら答えた。
非常に耳が痛い話である。
4年前の空港火災事件でもそうだが、本質が砲撃魔導師であるなのはは言ってしまえば『余計な被害』を多く作ってしまうのである。
まあ、管理局と言う組織そのものが『犯人逮捕=武力制圧』と言った方針であり、相手を叩き潰すための火力重視の教育をしているため、戦闘の際の周囲への被害に気を配らない人間も多く、彼女の行動もあまり問題になっていないのが真実であり、剛の意見はまさに寝耳に水と言った有様であった。
「いや、それよりも・・・・魔力がないってどういうことですか!?」
そんな教育方針なのでティアが剛の意見を『どうでもいいこと』としてスルーしたのも当然であろう。
まあ、なのはの発言にそれどころではなかったのであろうが・・・・・。
『言葉の通りですよ。私は生まれつきリンカーコアを持っていないので』
「じゃあ、どうやってガジェットと戦闘を!?」
『気功術と言って魔力とは別のエネルギーを使用しているのですよ』
「魔力とは別のエネルギーですか?」
技術職として興味を持ったシャーリーが聞き返す。
「細かいことは後で説明するとして、まあ対外的には剛さんのレアスキル扱いにしているから」
「レアスキルですか・・・・・・そうですか・・・・・」
ティアナが深刻そうな表情を浮かべていたが誰も気付かなかった。
こうして機動六課最初の訓練はつつがなく進行していった。
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