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戦国異伝

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第百七十九話 集まる者達その九

「これもまた大きい」
「しかも織田家の領内は関所もありませぬ」
「関所がないからな」
「余計に人の行き来が多いですな」
「その分さらに銭が動いてな」
「織田家の財政もよくしておりますな」
「それでじゃ」
 この安土も、というのだ。
「瞬く間に栄えてな」
「織田家を潤わせておりますな
「さらによくなるぞ」
 その人の行き来により、というのである。
「織田家はさらにな、そしてじゃ」
「その富がですな」
「田の開墾に堤も整えておる」
 そちらも成功していて、というのだ。
「兄上は政もお見事じゃ」
「むしろ政こそが」
「兄上が最も得意とされておるものじゃな」
「むしろ戦よりも」
 それよりもさらにというのだ。
「お見事かと」
「わしもそう思う、戦でしくじっても後で取り戻せることもあるが」
「政でしくじればですな」
「そのまま国を痩せさせる」 
 そうした意味で後で取り戻せないというのだ、政とはそうした意味で非常にむずかしいものであることは間違いない。
「だからそれでよいとな」
「力をつけますな」
「戦で勝つよりもな」
「だから織田家は大きくなりましたか」
「その通りじゃ」
「瞬く間にここまで」
「なったのじゃ、やはり織田家の主は兄上じゃ」 
 信長を置いて他にはないというのだ。
「あの方でなければな」
「織田家はここまでなっておりませんな」
「絶対にな」
 そうだというのだ。
「兄上がおられてこそじゃ」
「尾張を一つにし」
「美濃も取り上洛してな」
「今では千万石を超えますな」
「このまま天下をじゃな」
「一つにしてな」
 そして、というのだ。
「後もじゃ」
「兄上はお考えですし」
「そのことについてもこれから色々とお話するぞ」
「はい、それでは」 
 こう話してだ、そしてだった。
 信行と信広は安土城に入りそのうえで本丸まで来た、本丸に入りそのうえで天主閣の前まで来るとだった。
 そこに信長がいた、それで二人に笑顔で言ってきた。
「うむ、久方ぶりじゃな」
「おお、兄上」
「お久しゅうございます」
 二人は笑顔で信長に挨拶をした。
「兄上もお元気そうで何よりです」
「相変わらず」
「ははは、身体が悪くてはな」
 信長は弟達に笑って返した。
「何も出来ぬからな」
「そうですな、政も戦も」
「どちらも」
「そういうことじゃ、これまで通りな」
「早寝早起きをされて」
「酒の飲まれませぬか」
「酒は最初から飲めぬがな」
 このことは変わらない、信長は相変わらず酒は駄目なのだ。
「早寝早起きはな」
「それはですな」
「変えておられませんな」
「馬に乗り泳いでもおる」
 こちらもだというのだ。 
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