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戦国異伝

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第百七十九話 集まる者達その八

「そこにおられるのですな」
「天の主、天主は」
「はい、天主は」
「天守とも書くな」
 ここでこうも言った信行だった。
「そうじゃな」
「確かに。そうも読みますな」
「兄上は天主におられて天を守っておられるのか」
「では防人の様なものですか」
 信行はかつて太宰府等にいた彼等の名前を出した。
「そうなりますか」
「武士はそもそも守るものじゃ」
 信行はここでこうも言った。
「それならばな」
「防人になることもですか」
「当然のことじゃ、それも」
「では兄上は天の防人ですか」
「そうなられるおつもりやもな」
「それで天主におられますか」
「天を守る者としてな」
 それでだというのだ。
「そう考えやもな」
「それが一の人のあるべき姿ですか」
「天下人のな」
 信行は今その天主の頂上を見ている、赤や金で見事なまでに映えるそのところをである。
「それであるのやもな」
「ううむ、兄上はそうしたこともお考えですか」
「武田信玄はよく人は城と言うな」
「その様ですな」
「兄上もその言葉はご存知じゃ」
 当然ながら、というのだ。
「それならばな」
「安土城もですか」
「ただあるだけではなくじゃ」
「人は城でもありますから」
 それ故にと言う信広だった。
「ならば」
「城は城だけで城にはならぬな」
「はい、人がいなくては守れませぬ」
「だからじゃ」
 それでだというのだ。
「あの天主もじゃ」
「守る者もですな」
「いてこそじゃ」
 そうしてとだ、言っていく信行だった。
「真の天の主となり守りとなる」
「そういえばあの天主の中には」
「神仏の絵が数多く描かれているというな」
「石垣は地蔵、墓石も入っていると」
「兄上のお考えはわかる」
 その石垣に地蔵像や仏像を使ったこともというのだ。
「地蔵や墓石にある力をな」
「それを城に使っておられますか」
「そうじゃ、そうされておられるのじゃ」
「あの天主閣jはそうした霊力の集まりですな」
「人も中にいてな」
「そうしたものでありますか」
「兄上のお心が出ておられるわ」
 安土城のその天主閣に、というのだ。
「流石兄上じゃ」
「ですな、まことに」
「さて、ではな」
 ここまで話してまた言う信行だった。
「今から城の中に入ろうぞ」
「それでは」
「しかし、町もな」
 ここで町も見る信行だった、見ればその町並みはというと。
「まだ城が出来て間もないというのに」
「かなりのものですな」
「間もなく都や堺にも肩を並べることになろう」
「そうなりますか」
「うむ、間違いなくな」
「これも楽市楽座の結果ですな」
「あの政が当たっておる」
 見事なまでにというのだ。
「人の行き来が多くなり店も増えた」
「その結果ですな」
「織田家の領内は栄えておる」
 その楽市楽座により、というのだ。 
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