美しき異形達
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第二十三話 明るい日常その九
「それって」
「あっ、イタリアもそうよね」
「北と南で全く違うのよ」
もっと言えば中央部のローマも南北と違う。
「ミラノとかヴェネツィアとナポリ、シチリアは」
「全然違うっていうわね」
「そう、そのイタリアと同じね」
「多分もっと凄いから」
そのイタリアよりもというのだ。
「奈良県は」
「そこまで違うのね」
「だって、そんな街とかないから」
それも全く、である。
「全然ね」
「ないのね」
「そうした集落みたいな場所しか」
ないというのだ。
「奈良の南はそうなの」
「ちょっと想像出来ないものがあるな」
薊はいつも聞いていてもこう思う他なかった。
「日本にもまだそういう場所あるんだな」
「信じられないでしょ」
「しかも奈良県だよな」
「そうよ」
「古都のイメージがあってさ」
実際に古都である、日本の。
「それでさ」
「観光地で人も多くて」
「そういうイメージなんだけれどな
「確かに人はそこそこいるけれど」
「北の方か」
「とにかく北に集中してるから」
人口も産業もだというのだ、その観光にしても。
「南は何もないわよ」
「何もかよ」
「山だけよ」
「それで裕香ちゃんも」
「実家ね、帰るのもね」
それもだった。
「一苦労なのよ」
「何時間もかかるんだな」
「奈良市まではすぐなのよ」
そこまでは、というのだ。
「八条電鉄を使ってね」
「大阪、梅田で乗り換えてか」
「そう、梅田から難波に行ってね」
「そこから奈良だよな」
「二時間位かしら」
八条学園前からだというのだ。
「奈良駅までは」
「二時間か」
「奈良駅まではね」
問題はそこからだというのだ。
「うちの村最寄りの駅からね」
「どれ位離れてるの?」
向日葵が問うた。
「一体」
「そうね、車で一時間ね」
「一時間かかるの」
「そうなの、細い山道を苦労して進んでね」
「一時間ねえ」
「JRのね」
八条電鉄ではなかった、尚八条電鉄は八条鉄道とも呼ばれている。正式名称は鉄道の方であり全国に路線を持っている。
「無人駅で一時間に一本よ」
「凄い場所なのね」
最寄りの駅すらだ。
「一時間に一本って」
「バスもないのよ」
「通ってないの」
「そうなの、だからね」
「車で行くのね」
「奈良駅でJRに乗り換えて」
「一時間で一本のその電車に乗って」
そうしてだというのだ。
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