凡人? 天才? それとも……。
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第十話【似た者同士】
前書き
続きパート2!
「そこの夫婦、それはもうちょい右に!」
「これでどうだ?」
「OK。これで終わったよー」
流石に四人増えるだけで違うな、あっと言う間に飾り付けが終わった。
「ありがとう。もう、休んでいていいよ」
台所に行って冷たい飲み物を出そうとしたら、ちょうど玄関のドアの開く音が聞こえる。もう一個追加かな? と考えながら玄関に向かう。
「ただいま、大地君。ざっくりこのぐらいでいいかな?」
予想通り、玄関には加藤君がいっぱいのビニール袋を二つ持っていた。
「ありがとう。はい、加藤君」
加藤君は荷物を置いて一息ついてから、笑ってコップを受け取り冷たいお茶を飲む。
「そうだ、大地君。快君からもうすぐ着くって」
「了解、もう準備もバッチリだから問題ないよ」
「そうかぁ。それはよかったなぁ、下手したら、間に合ってなかったかもなぁ」
「みんなはリビングにいるのかい?」
「うん、みんないると思うよ」
分かったと言って加藤君がリビングへ行く。
「もう、来ているのかぁ?」
「来ているよ。てか、勝手に家に入るなよ! 快! 一声ぐらい掛けろよ」
先から隣で悠々とゲームをしている快に突っ込む。
「いやぁ、それには理由がありましてなぁ」
「ほーう。聞くだけ聞いてやるよ、その理由ってやつを」
「実は、抜き打ちでパソコンのチェックをしようかと思ってしてみたんだけどなぁ、目当ての物は見つからなかったなぁ」
なるほど、抜き打ちチェックをしないといけないからこっそり入り込んだって訳か。
「いつ頃から、チェックを?」
「清道が買い出しに行って直ぐくらいからかなぁ」
今回は凛に感謝しないといけないな。凛の御陰でうまく抜き打ちチェックを回避出来ましたよ。
「まあ、いいや。で、後何分で着くの?」
「五分ぐらいで着くかもなぁ」
やっと、音出してゲーム出来るなぁと、言った感じでゲームの音を出す。
「悪い、快。五分間だけゲームを我慢してくれ」
なんで? と首を傾げている快からゲームをそれはもう壊れるぐらいの勢いで取り上げる。
「五分間だけだ。ちょっとばかり説教をしてやるよ」
奪ったゲームを力一杯握る。
「そ、そうだぁ。大地、今さっき連絡あって陽奈たち……も…う……着くってぇ……」
「お前は分かっているのか? いつも、いつも自由なことばっかりしやがって! クラスでなにかしようって、決まっても非協力的でゲームばっかりでそろそろ怠いんだよ! それで俺が、一緒にやるぞって言いに行ったら決まって、ギャルゲーを? って、返してきやがってよ。クラスにとけ込もうとか、もっと協力的になれよ! タダでさえ授業中にゲームしかやらない桜沢君をどうにかしなさい。って、授業の先生に叱られているのに! まず、担任に言えよ! 担任飛ばして、クラス委員ってどういう神経しているんだ! あの先生は!」
ゲームを心配そうに見る快を睨み付ける。
「それは、悪かったよぉ。今度からは気を付けるからぁ、ゲームは悪くないだろぉ?」
「知るか」
ゲームを壊す勢いでに力を入れる。嫌な音が鳴り出す。
「ゲームが! ……って、大丈夫かぁ?」
急に玄関の扉が開き陽奈のドロップキックが俺を襲う。
「痛っ! 急になにするんだよ!」
「あっ! 間違えた」
間違えた? なにを今更。
「なにを間違えたんだ?」
「本当は変態を褒めようと思っていたのに。どうしてだろう?」
それは拒絶反応からでは……。
「どうでもいいか。今日はありがとう」
と言って、手を差し伸べてくれる。悪いなと言い手を掴んだら、今度は急にビンタが飛んでくる! 勿論、直撃。
「ご、ごめん」
本人も唖然としている、どうやらマジで無意識内にやってしまうらしい。悪気がなさそうなので、大丈夫。と言って、一人で立ち上がる。
「そうだぁ。凛の奴は? 一緒じゃないのかぁ?」
「本当だ。今日の主役さんはどこに?」
辺りを見渡しても陽奈以外に人の気配はしない。
「今頃、家じゃない?」
「家? 家に忘れ物でもしたのかよ?」
「知らないわよ! それよりも確り出来ているんでしょうね?」
「もちろん。完璧だからなぁ」
何を偉そうに言っているんだ、お前は何もしてないだろ。
「完璧に出来ているんだよね?」
「あはは、出来ていますよ、陽奈さん」
この様子だと誇り一つあっても許されそうにないな。はあ、またやり直しか……。
☆
リビング全体を見渡す陽奈。いつ殴られるのかを警戒しながら陽奈の様子を窺う。
「結構、綺麗にできてるじゃない。文句なしよ」
ひとまず、胸を撫で下ろす。
「それより、この子誰? 私、こんな子呼んだ覚えはないよ」
陽奈は、加藤君やみんなと一緒にトランプをしている光君を見て言う。
「幸谷光君だって、百田君の従兄弟らしいよ。百田君の家の人、今日は遅くて一人にするのもアレだから、連れてきたって」
陽奈はこちらを見る。そして、また光君を見る。
「百田栗生の従兄弟なのに変態と同じ名字なんだ」
あれ、確かに陽奈の言うとおり、百田君の従兄弟なのに幸谷って、可笑しくはないけど幸谷という名字は少ないって親父が言っていたんだけどな。
「いいじゃんか、子ども一人ぐらい増えたってね。陽奈ぽんは嫌いかね子ども」
トランプでもう上がっていた、葭原さんが陽奈をからかう。
「なに言ってるんだなぁ。我が妹は、そんなに器の小さい子に育ててねぇよぉ」
珍しく快が陽奈を庇う。葭原さんは陽奈の後ろに回る。
「なら、お兄さんは、陽奈ぽんの器は大きくしても、胸も大きくしてあげなかったの?」
陽奈の胸を揉もうとする葭原さん。
「……美砂。……光君がいるのにそれは」
神凪さんが葭原さんの腕を掴んで止める。葭原さんは手を引き、加藤君と光君の喋っている二人を見る。
「あちゃあ。忘れてた……てへっ」
「相変わらず、惚けているな」
百田くんが胡座をかき、精神統一をしながら呟く。
「廻、俺はお前と会うために生まれてきたんだ」
葭原さんの台詞で、百田君の精神が乱れる。隣の神凪さんは顔が真っ赤だ。
「くさい台詞をよく言えるねぇ。私にゃ、恥ずかしくて無理、無理」
うるせーな。と本日、十三回目の言い合いが始まる。初めは困惑したけれどなれればそうと言うことはない。
「今日はよく喧嘩するなぁ。あっ、またクリアしちゃったなぁ」
この状態でも堂々とゲームをしている快が言う資格なんてねぇよ。と心の中で呟く。
「にしても、この子。不思議な感じがする?」
加藤君と親しそうに喋っている。光君を不思議そうに陽奈が睨み付ける。
「この子も変態と一緒で見ていると腹が立つ」
背中に寒気が走ったが気にしない。
玄関が開き、とうとう本日の主役のお帰りだ。
さて、ケーキにろうそくを立てて、火をつける準備でもしますか。
☆
後書き
もうすぐ書き溜めてるのが底を尽きそうです。
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