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凡人? 天才? それとも……。

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第八話【夢はいいよね!】

 
前書き
続きです!  

 
 
 
 私、他に好きな人いますから。
 駄目だ、すぐに思い出す。いくら好きな趣味やゲームに逃げても思い出す。別に凛が誰を好きになろうが凛の勝手だから、俺には関係ない。
 あれから一週間、この自己暗示をさっきから思い出すたびにしている。そのせいで凛とまともに喋ることすらままならない。
 昼過ぎ、食欲がなく、やることがないせいで直ぐに凛のことを考えてしまう。
 俺っていうことはないのかな? ないな……はぁ。これじゃ集中できない。
 気を紛らわすためにゲームをするものの、いつもなら五分で倒せるモンスターを十五分かってしまいスコアが伸びない。
 コントローラーを布団の上に投げ捨てる。それから仰向けになり天井を見る。
「もう、わからん!」
 自室だから、つい大声で叫んでしまう。
 こんな時に凛が、なに騒いでいるのよ。って、言って部屋のドアが開かないかな~っ! はあ、ギャルゲーのし過ぎだな。俺は一人暮らしだし、こんな妄想するなんて……はあ。やっぱり
「もう、わからん!」
 凛が誰のこと好きかも、俺は凛のことを諦め切れているのかも、分からなくなってきた。でも、分かっていることは凛が誰かに恋をしていることだ。
「もう、もう。わからぁーんっ!」
 とにかく叫ぶ。叫ばないと気が狂いそうだから叫ぶ。
「なに、騒いでいるのよ」
 部屋のドアが蹴られて勢いよく開く。開いた先にはエプロン姿でかつ髪の毛を括っている凛の姿が、手にはお盆を持っている。まるで、ギャルゲーの展開のようだ。
 凛? 一瞬、目を疑った。まさか妄想が現実になるとは……! これが引き寄せの法則の力か。って、そんなわけないか。これは夢だな、こんなギャルゲーじみた展開があるわけない。ない、ない、ない。布団、布団。相当、疲れているみたいだし、夢の中だけど寝よ。
 お休み。と夢の中の凛に言って布団に潜る。えっ! ちょ、ちょっと、大地? と戸惑う夢の中の凛。俺は寝ることを決意したので無視して深い眠りにつくはずだったのにこの夢はそうはそうさせてくれなかった。起きろぉーっ! と凛の踵落としが綺麗に入る。しばらく藻掻き苦しみながらなんとか目を覚ます。危うく、目を覚ますどころか気絶し欠ける威力だった。あっ! でも気絶したら夢から覚めたかもな。
「起きた? 朝ご飯作ったから、はい」
 はい。と言われましても、割り箸だけでなにを? それともこれを喰えと? 無理でしょ。
「起きたけど……。これ、なに?」
 割り箸を受け取って夢の中の凛に聞く。夢の中の凛は、割り箸と答えて部屋を見渡す。
「そうじゃなくて、割り箸だけ?」
「えっ! おかずあるでしょ。お盆の中に」
 そのお盆の中が空っぽって言うか、お皿やお茶碗しかないんですけど。
「いや、おかずなんて見あたらないから、ってか、茶碗類しかないから」
 すると、部屋を見渡すのを止めておかずのないお盆を覗き込む。
「ホントだ! おかず入れるのを忘れていたみたいね」
 態とらしく、大げさな反応をする凛。
「忘れるなよ。一番、大事なのに」
 ごめん。と言って、丁寧に俺の部屋のドアを開けてくれる。お盆を持ってドアを出ようとした時、ある違和感に気付いた。
「凛、お前は降りないのか?」
「あっ! ご飯とかはリビングにあるから」
 いや、俺は何処にあるかは適当に探すからいいとして、問題は夢の中の凛が部屋から出るか出ないかだ。
「凛はこれからなにをする気だよ」
夢の中の凛は部屋にあるノートパソコンを指して、そこのパソコンをチェックしようと―― と言い終わる前に手を引っ張って部屋から出してリビングまで連れてくる。
「急になにするのよ! 人のて、手を握って!」
 夢の中の凛は握っていた。手を振り解き、外方を向く。
「わ、悪い。ところで何処にあるんだ?」
 あっち。と外方を向いたまま指を指す。
 夢の中にしては長いな……。普通、夢と言えばすぐに過ぎるような気が……。待って! もしかしたら寝言とか言ってないよな。これが学校で寝ていて、寝言で、凛――。とか言ってないだろうな! ああ~、恥ずかしい。夢なら覚めてくれ。
「どうしたのよ。大地、顔真っ青じゃない? やっぱり、タバスコ入れすぎた?」
 タバスコ? ……そうか! この禍々しい卵焼きが、この夢を脱するキーアイテムか! 
 箸を器用に使い禍々しい卵焼きを口の中に放り込む。………………。
「からぁぁぁぁぁいぃぃぃぃいいい! みずぅぅぅぅうっ!」
「一気に食べるからじゃない! ちょっと、待っていて」
 凛がコップを持って、水を汲みに行く。
 これでも、覚めない夢なのか………………ちくしょう。


「まだ、痛い。口元ヒリヒリする」
「ご、ごめん。ちょっと、タバスコ入れすぎた。つい悪戯心で」
 急に謝られるとさっき、バカみたいに現実と夢の区別もつかなくて、キーアイテムだ。とか言って一気に食べた俺の立場が……。
「大丈夫、俺も調子乗りすぎたから」
「そ、それならいいけど」
 もう、このことは俺の黒歴史の一ページになるから話題変えよう。胸が痛い。
「タバスコの卵焼きは辛くて分からなかったけど、他の料理は美味しかった。ありがとう」
 って、のは嘘でタバスコ入りの卵焼きのせいで全く味が分からなかったんだよな。まあ、凛のことだし、うまいだろうから予想で言ってみたけど。
「べ、別に大地の為じゃないし、お母さんがどうしても、大地の様子見に行けって言ったから来ただけなんだからね!」
 お、おう。どうしたんだ、急に? もしかして癇に障ったか?
 どこが悪かった。やぱっり、嘘吐いたことか? と考えながら見ると凛は、疑われているのと勘違いして、なによ、その目は。と睨み付ける。
「わ、分かった。分かったから、落ち着け」
 疑ってないことを全身全霊でアピールをするとなんとか分かってくれた。
 凛の手料理を食べて、特に喋ることもなかったので食器を洗う。凛が途中に、あたし、洗うからパソコン。などと言っていたが無視した。
「……って、寝ているし」
 食器を洗い終わって来てみると凛はリビングのソファに横たわって寝ていた。
 食器を洗いながら、いきなり静かになったなと思ったらこういうことか。
 く~っ! と背筋を伸ばして縁側の方の庭を見る。
 今日はいい天気だし、さらに土曜日で学校は休み。偶には暢気に日向ごっこでもするか。っと、その前に洗濯物を干すか。一人暮らしてから、随分家庭的になったものだ。
 いつも通り洗濯物を干し終えて、お湯を沸かす。
「って、誰だよ。こんな、忙しい時に」
 凛に昼のお礼をしようとこの頃、やっと身に付いた手料理を作っているとスマホのバイブレーションが鳴る。スマホの画面を見ると、【桜沢快】と表示されている。なんのようだ。と思いながら通話に出る。
「えっ! 今から家に来いよなぁ。って、誘ってくれるのは嬉しいけど……。今はちょっとな」
 そっか。なんか用事でもあるのかぁ? と言って電話越しに聞いてくる。それに電話越しにもギャルゲーのバックグラウンドミュージックが聞こえてくる。
「ああ、ちょっとな。また、今度にでも誘ってくれ。じゃあ」
 分かったぜよぉ、また今度なぁ。と言ったのを聞いて通話を着る。理由を聞かずに分かってくれるところが流石、我が親友。
 スマホを食卓の上に置いて料理の仕上げにかかる。食卓に皿を並べたりして背伸びをする。
ふ~う、こんなものかな。自分的には大分、うまくいった気がする。
 暖かい内の方が美味しいはずなので凛を起こそうとリビングを見る。
「凛、起きろ。もう六時半ぐらいだぜ」
 後、ちょっと。まだ。と寝ぼけている。これは朝弱いタイプだな。と思いながら起こす。
「凛! 飯だ、飯。作ったから食べって帰るか?」
「……うん。食べるね」
 まだ、少し寝ぼけているようで口数が少ない。
 ちょっと、無理矢理過ぎたかな? でも、起きたんだしいいか。
「ご飯、これくらいでいいか?」
「……うん。ありがとう」
 おかしい、おかしい。キャラクター変わっていません?
「……この肉じゃが美味しいね」
 駄目だ。無理、耐えられません。ちょっと待て、落ち着け俺。小さい頃にもこんなことがあっただろ……多分。だから行ける! なにが行けるかは分からないけど大丈夫であれ。いや、あってください。……でもやっぱり可愛い、理性の壁が……。
「凛さん、ちょっといいか? 悪い、俺はもう耐えられないだから……だから……顔、洗ってきて」
 熱い内に食べさせようとしていたから、しっかりと起こせてないんだよな。
「……分かった。食べてからじゃ、ダメ?」
 凛は食べる手を止めて、上目遣いで見つめてくる。
 う、うぅ、ここに来ての上目遣いかよ。いや、別にいいけど。俺が耐えきれない気が……。
「分かった。食べてからでもいいぜ」
 ありがとう。と言って満面の笑みで笑う。
仕方ない、俺の忍耐力の見せ所って、奴だな。それに食べている内に目を覚ますだろ。
 結局、凛は俺が肉じゃがを二杯食べる終わる頃にはいつも通りに戻り、今度は私が食器洗うね。と言って食器を片付けてくれた。
「大地、肉じゃがとポテトサラダの残りはどうするの? 今思えば、ジャガイモのオンパレードじゃない?」
 思っていたより作ってしまっていた肉じゃがとポテトサラダをどうするか、凛が聞いてくる。
「明日に食べるよ。いつも一人分しか作らないから作りすぎた。サラダの方はサランラップして冷蔵庫の中にでもつっこんどいてくれ」
 凛は、そう。と言って食器を洗い始める。
「凛、俺は風呂行くから洗ったら勝手に帰ってくれてもいいぜ」
 そう言い残して風呂場に向かう。少し身勝手なことをしたと思ったのは、服を脱いだ後だったから、そのまま風呂に入った。
 
    ☆
 
 
 

 
後書き
さてと勝手ながら少し投稿遅くなった言い訳をします。
その1 今年の4月に大学生になりました。
その2 それを機にパソコンを変えました。
その3 やる気が消えました。
その4 すみませんでした。 
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