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ソードアート・オンライン~狩人と黒の剣士~

作者:村雲恭夜
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黒と白

領主館を後にした俺達は、近くの武具屋に足を運び、装備を調達したあと、そこから歩いて十分位の場所にある宿屋に入った。
「取り合えず、まずは順調だったなー」
ストレアは既にログアウトしており、今居るのは俺…………いや、俺達だけだ。
「………居るんだろ、俺」
すると、そこに突然現れたのは、黒い装備に黒い刀を持った、もう一人のライトだ。
しかし、髪の色は銀色で、まるで双子の様だ。
「何時から気付いていた、雷獣?」
黒ライトはライトに問う。
「……俺のスキル襴に、<滅殺剣>スキルが入ってた。それで気付いたのさ」
「クハハハッ、まさかそんな単純な物で存在に気付かれるとは思わなかったぞ」
黒ライトは手を顔に当てて笑う。
「だが……貴様は今度こそ逃げられないと言うことだ、来人!!」
「……なら、また封印すれば良い話だ」
黒ライトーーーーーダークは俺の人格の一つだ。最初に会ったのはソードアート・オンラインの時。
コイツに身体を取られると、ライト(オレ)と言う人格は押しやられ、代わりにダーク(アイツ)の人格が表に出る。
そうすると、使用するスキルや姿、性格までもが変わり、裏に居る俺は一切手が出せない。
出来る事と言えば、記憶共有のみ。
そして、俺は奴を封印するため、システム的に奴を顕現させ、デュエルをし、敗北させた。
他にも、まだ俺の中には二人の人格が居るが、そいつらに関しては俺は容認している。ただ、記憶共有がされないため、あまりその時の記憶を持っていないが。
「またデュエルで勝負し、封印する、か?残念だが、ここはお前の作った世界じゃない。お前は俺を封印する手はない。だろ?」
「だが、現にお前はそこに顕現出来ている。なら、まだソードアート・オンラインのカーディナルが干渉している可能性がある。まだ、俺のシステムアカウントは使える」
とは言うが、実は俺が今使えるシステムアカウントは自分のステータスアップとアイテムの復活のみ。
ブーストは一部制限が付いているが使え、逆にオブジェクトイレイザー等のシステムは使えない。どちらにしろ、ソードアート・オンラインのカーディナルシステムを使われていて、且つ、別のゲームマスターが存在しているのなら道理と言える。
ただ、ここまでの干渉力が残されているのは有りがたかった。
「ふん、お前にはそこまでの力は無いと言うのは分かりきっている。お前と俺は目聞きすることを共有していることを忘れたか?」
「だが、それ以前にお前は俺のアカウントに接触するほどの技量を持っていない。何故なら、お前は最も戦闘に秀でた俺の人格だからな」
額に汗を滲ませながら俺は言う。
もしだ。もし、これで奴が引き下がらなければ、俺はまた自分の人格を殺さなければならなくなる。
罪の意識を持つ俺に取っては、やはり苦痛でしかない。
だが、相手はレッドであるダーク。何処まで本気になるか解らない。
戦いになると思っていたライトにダークは言う。
「ーーーーーだが、それも面白くない」
「ーーーーーえ?」
俺は耳を疑った。戦闘狂であるアイツの口から、面白くないと言う言葉が出たことが。
「俺は殺しあいがしたい。だが、この世界ではその殺しあいが出来ない。仮にお前が俺とデュエルをするとしよう。ーーーーーお前は今の俺に勝てるか?」
「ーーーーーっ!」
俺は奴の目を見た。その瞳は、本気で言っている目である。
「ドライブリンクを使ったとしても、今の俺には恐らく勝てまい。二刀流や狩人、ましてやあいつらの<銃格剣>や<獣王拳>を使ったとしても、勝てない。この意味が解るか?」
「………」
「俺の<滅殺剣>は対プレイヤー用の対スキル用スキルだからだ。勿論、普通でもスキルは使える。だが、相手のスキルを無効にするこの剣技をーーーーーお前は受け止められるか?」
ダークが言いたいのはつまり、俺にはスキルは通用しない。引いてはそれを越えられなくては殺しあいにもならない。だからこそつまらないのだと。
それほど、ダークは自分のスキルを信用しているのだ。その威力は、俺が身を持って知っている。
奴が俺のシステムアカウントを使って生み出した14番目のユニークスキルは、俺にもその全容は解らない。
だから、対処は出来ない。
「……お前は、何をしようとする」
「そうだなぁ………てっとり早く殺すってのも良いが………ここはお前に協力しておいてやるよ」
「………何を企んでいる」
俺は死斬・鬼人刀を背から抜くと構える。
「おいおい、人の好意は黙って受け取るのが礼儀じゃねぇのか?」
「お前の好意は好意ではなく悪意だろう?」
「……疑うのも解るが、今回の件に関しちゃ、俺も頭きてんだ」
「何………?」
俺は死斬・鬼人刀を下ろすと、ダークは椅子を引っ張って来て座る。
「今回の件、俺も頭きてるって言ったよな?ありゃ、俺のダチもまだ目覚めてねぇからなんだ」
「ダチ?」
「そう。お前は覚えてねぇだろうが、俺の人格の時、助けてやった奴が居た。そいつは暫くしてギルドに入ったが、それでも連絡してたんだ」
「……確かに記憶はないな」
と言うよりも黒歴史の為、思い出したくない。
「そこで、ちょいとお前の身体を借りてだな、リアルでそいつの所いったんだわ」
つっこみたいが、話が折れるとアレなので、先を促す。
「そしたら、そいつがまだ目覚めてねぇって話だ。流石に俺は茅場を疑った、お前は信頼してた様だが。そこで今回のあのメガネの依頼だ。俺はそれを聞くと、すぐに封印を斬り倒した。そして、今に至るわけだ。な、今回は俺に悪意はないと解ったろう?」
「それが善意にも悪意にもなることを覚えておけ」
俺は柄で思いっきりヴォーパルストライクをダークの顔にぶつける。
「イテェ!!何すんだこのインテリバカ!!」
「俺がインテリバカならお前はバトルジャンキーだ」
「それがどうした」
「馬鹿にしてるって思わないのかお前は!!」
「その馬鹿にしてる奴から力を借りようとしてる方が馬鹿」
ああ言えばこう言う馬鹿に反論する気力を削がれ、ベッドに倒れ込む。
「……ダークさ」
「あん?」
「お前ってさ、結局どんな存在なの?」
昔からの疑問、人格が俺の中に三つあり、その中の一人がこうやって居る。どう考えたって普通ではない。
だから聞いてみる。どんな存在なのかを。
「………一言で言うならーーーーーお前のもう一つの姿、あるいはリアルで兄弟になる予定だった存在って奴かな?」
一言でないし、非常に解りづらい。
簡単に説明してもらう脳がダークには無いので俺はそのまま顔を枕に埋め、寝た。 
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