| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

夫になった訳だが……どうしよう?
  54話

 
前書き
えーちょっと遅れた理由を
ホラーゲームの零 濡鴉ノ巫女を購入してそればっかりしていました
グラフィックが上がりすぎたせいで幽霊がただの美人に見えたり、しょっぱなからフライングボディーアタックで私の腹筋を破壊しにくる幽霊が悪いんです
俺は悪くねぇ!!





はい、すみません全面的に私が悪いです 

 
ボルグ・カムランの群れに挑みかかった二人は意外にもジルを前衛、レオが後衛となって戦っている。俺としてはハンニバルの体を活かしてレオが前衛、ジルがウォーターカッターかと思ったんだがな。
「あーそれはね、レオって射撃の方が上手いんだよ。精神世界で見てたから分かるんだけど、多分あの子アラガミとしての才能があるんだよ」
アラガミとしての才能?
「うん、あの子にとって幸か不幸かは分からないけど、オラクル細胞の制御能力がずば抜けてるの。見てて、あの子の火を」
イザナミに言われレオの吐き出す炎を見ると、彼は吐き出した炎は真っ青であり糸のように細かった。そして、その放った炎の悉くがボルグ・カムランの関節部分を焼き切り、崩れ落ちたボルグ・カムランからジルによって突き殺されていく。
……あそこまで青い炎って、結構な温度管理がいると思うんだが?俺のようにただただ圧縮することで温度を上げるのではなく、分量の比率などを細かく調整しなければならないんだがな。
やれ、と言われれば……できないこともないが、実戦で使えと言われると無理だ。そもそも戦っている間にそんな細かな事を考えている余裕はないし、そこまで落ち着いて調整などしていられない。
大体、そこまで細かにオラクル細胞の制御などやっていられない。
「うん、私も無理だよ。だからあの子は天才だって言ったんだよ、そもそもあれを精神世界で初めて戦った時から出来たんだから、ほんと妙な話だよね。アラガミよりもアラガミに向いている人間なんてさ」
なんでだろうな、どうしてこう俺の周りには俺の努力を鼻で笑うようの才能の持ち主がいるんだ?
「いや……マキナも大概だとは思うけど、ユウ君やレオを見るとそう思うのも無理もないね」
まぁ、幸運にもその手の輩が敵に回ってないって事は喜ぶべきだな。それに別段強い弱いに興味がある訳ではないので、そこまで気にするような事ではない。俺は単純に降りかかってくる火の粉を払える程度に力があればいいので、これ以上の力は必要ないだろう。
「だね、それ以上の力なんて余分なもの以外の何物でもないよ」
そういう意味ではジルは丁度いいんだろうな。
並のゴッドイーターより強いが人外ではないレベルの強さ、それにアラガミ化が進んでいるとはいえ片腕だけだ。ゴッドイーターとしてなら普通に暮らせない訳ではないだろう。人よりは若干困難だろうが、人並みの幸せは得られる。
しかし、レオは違う。体は完全にアラガミ、それに加えてのあの力は彼の人生にとっての枷でしかないだろう。
「親としてなんとかしてあげたいね……」
「だな」




「終わったよ、お父さん、お母さん」
「体は以前より随分と軽く感じますね……オラクル細胞の影響ですか?」
「頑張ったね、レオ、ジル」
「そうだな、あの時はお前はただのゴッドイーターのしてのスペックしかなかったが、今はその腕のように体がアラガミに近づいた分強くなっているからな」
俺たちは二人を労いながら、レオを見て少しため息をつく。その意味が分からないレオは自分が何か失敗したのかと思ったらしく、不安そうな視線をこちらに向ける。
「ぼ、僕……何か失敗したの?」
「いや、そうじゃないんだが……あーお前が気分を害する事を理解した上で言うぞ、レオ。
お前の体は殆どがアラガミだ、人間の部分は殆ど残っていない。それは分かるな?」
「……うん」
「となると、普通の食事では栄養の吸収はできず、オラクル細胞のみが体を動かす栄養となる」
「要するにレオ、あれを喰べなきゃ駄目なの……できる?」
イザナミは急所と関節部以外の損傷の殆どないボルグ・カムランを指してレオに問いかけると、彼は少し考えるような素振りを見せてからこう答えた。
「二つだけ聞いていいかな?」
「ええ」
「あれってどんな味なの?」
味か……
「肉に近いんだが……あの程度じゃ味は割と薄めだろうな」
「そっか、じゃあそれなら食べれるや。あと、食べたら強くなれるのかな」
「そりゃ、お前に体を構成するオラクル細胞が増えるんだから強くはなるさ」
「うん、じゃあ喰べるよ」
レオは大した躊躇いもなくボルグ・カムランの死体に口を付け貪っていく。
「ねぇ、レオ。あなたはどうして強くなりたいの?」
「え?そんなの決まってるよ、僕と姉さん、そしてみんなを滅茶苦茶にしたあの女を殺すためだよ。
皆捨てられたり、お父さんやお母さんを亡くしてボロボロの所を拾われて、長い間信用させてから人体実験をして廃棄処分。殆どが死んで生き残った僕達もこんな姿になった、これで恨まない方がおかしよ?」
「……ジル、お前もか?」
「当然です」
これは困った……いや、こいつらの怒りは納得できるし復讐は何も生まないなどの戯言を吐くつもりもないが、ラケルはストーリー上迂闊に死んでもらっては困るのだ。
原作知識の殆どが朧げとはいえ要所要所はまだ覚えている。そこではラケルは最後の最後で死んでもらわなければ色々と困るのだ。
さて、どうしたものか。止める訳にもいかんし、事情を説明する訳にもいかない……
「まさか、復讐なんてやめろ……なんて言いませんよね、お父様?」
「いや、それはない。ただな……」
「ラケルってフェンリルでも割と上の立場にいるの。なんて言ったって槍型神機ってまだ極東支部にすら回ってきてなかったのに、ジルが槍型神機の為の訓練を受けてたってくらいだよ?
データ取りってのもあるんだろうけど、そういう新型が真っ先に使えてるなんて相当の立場じゃなきゃ無理だからね」
イザナミが口を開いた。何かしら二人を止める方法が浮かんだのだろうか?
「それがどうかしましたか?」
「だから、今は不味いんだよ」
「どういうことなの、お母さん?」
「いい、確かにラケルは人体実験なんかをやって結構な人数を殺した、けどそれを告発する人間は皆死んじゃった。今の状況はそういう事だよね?」
「はい」
「けどそれが明らかにされてない理由は被害者が軒並み孤児で誰も気にかけなかったから、こんな世界じゃアラガミに喰われたんだろって程度で扱いだから。それともう一つ、孤児という事を差し引いてもそれを隠し切るだけの隠蔽工作を行った。
これ以外にも何かしらの手を打ったんだろうけど、これから用心深い上に知恵が回るってのは分かるでしょ?
だから今挑んでも確実にあなた達は人体実験の被害者じゃなくて、ただの新種のアラガミとして扱われてゴッドイーターによって狩られる
それも要人を狙ったアラガミともなれば逃げ場なんてない、それ位分かるでしょ?」
「でも、僕はあの女さえ殺せれば、死んだって……」
その瞬間レオは真横に吹き飛ばされた。……どうやらイザナミが平手打ちをレオに当てたようだが、細身の女性がハンニバルを平手打ちして吹き飛ばすという光景は内容を知っていても妙なものだ。
「あのさ……レオ、それを親の前で言うっていうのはやっちゃいけないことなんだよ。確かに私達は出会ってそう長くはない、親子関係と言っても血縁も何もないよ。
でもね、少なくとも私はあなた達の親でありたいと思うし、そうあろうとしている。だから、あなた達がその命を蔑ろにするというなら私は母親としてどんな手を使っても止めるよ」
この時、イザナミは久しぶりに本気で怒ったようで傍にいた俺にまで圧力を感じた。とはいえ、イザナミの怒りももっともだ。
彼女がやっていなければ俺がやっていただろうし、そもそもレオは明らかに冷静さを欠いている。それは無理からぬことだが、そんな状態で覚悟を決めるのはよろしくない。
「じゃあ、諦めろっていうの!?」
「違う、ラケルを地位から引きずり降ろせる材料が揃うまで待てって事だ。
お前がどれだけ強くなろうとも個においてできる事は限られているし、舞台も整わないまま戦って勝てる程相手はバカじゃないだろ?」
「……ごめんなさい」
幾らか冷静さを取り戻したのかレオは頭を下げる。
「うん、偉い偉い。ちゃんと謝れるっていうのはいいことだよ、レオ」
イザナミは体の大きさ故にレオの顔の部分を抱きしめならがら、頭を優しく撫でている。そんな様子を見ていると、ジルに袖を引かれた。
「ん?どうした?」
「私身冷静さを欠いていた事を謝りたいんですが……お父様はあの女の地位を崩せる策か何かがあるんですか?」
そうだな……すぐにとはいかないが、打つ手が無い訳ではない。が、その手が通れば一気に追い詰められる。
「まだ原案程度だがな、もう少し情報を集めてから細かいところを詰めていくつもりだ。
それと少々人間的に問題はあるものの信用できる人間にも頼らせてもらいとしよう」
「信用できる人間?」
「極東支部支部長代理、ペイラー榊だ」













 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧