美しき異形達
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第二十二話 菊の日常その十二
「時々食べる位にはね」
「そうよね、いいわよね」
「いつも食べる、それは偏食だから」
「偏食は何でもよくないわね」
「そういうことよ。それにやたら自然食にこだわるのもね」
何処かの料理漫画の様にだ、原発のことで鼻血を出したとか騒いでいるこれまで日本の経済侵略だのアジア再侵略だのを普通に吹聴していた漫画である。これを政治漫画と言うのならば実に面白い検証が出来るだろう。
「よくないわ」
「それもそうね」
「じゃあハンバーガーね」
「マクドでね」
「それか八条バーガーね」
八条学園を運営している八条グループが経営しているハンバーガーのチェーン店だ。全世界に展開している。
「あそこね」
「あそこもいいわね」
「まあとにかくね」
「ハンバーガーにしましょう」
「二人で食べようね」
こうして二人は帰り一緒に帰ることになった、そして。
実際に下校は一緒になった、校門の前で待ち合わせをしてだった。
二人で帰る、菊はすっかり暗くなった道の中で自分の隣にいる黒蘭に顔を向けて彼女に対して声をかけた。
「あんたとこうして一緒に帰るのって」
「はじめてね」
「そうよね」
「嫌かしら」
「嫌じゃないわよ」
黒蘭のまの言葉はすぐに否定した。
「別にね」
「そうなのね」
「だって私あんたのこと嫌いじゃないから」
だから嫌ではないというのだ。
「嫌なことされたこともないし」
「知り合ってそれ程時間も経っていないし」
「それ程ね」
このこともあって、というのだ。
「それでなのね」
「お互いの嫌な部分も知らないし」
「何かシビアな会話ね」
「人は誰でもいい部分と悪い部分があるわ」
素っ気ない顔でだ、黒蘭はこうしたことを言った。
「その嫌な部分を見てね」
「どう思うかっていうのね」
「そういうことよ」
こう菊に話すのだった。
「だからお互いを知らないとね」
「その分だけ悪い印象を受けないのね」
「いい印象もだけれどね」
「そういうことね」
「悪い部分がやたら多い人もいるけれど」
「いるわね、確かに」
菊もそうした人間に会ってきている、所謂性格の悪い人間がだ。
「そういう人も」
「菊さんは。こう呼んでもいいかしら」
「ええ、いいわよ」
呼び名もここで決まった、菊は黒蘭に笑って答えた。
「私も黒蘭ちゃんって呼んでるわよね」
「そういえばそうかしら」
「じゃあそういう呼び名でね」
「わかったわ」
こう話してだ、そうしてあらためてだった。黒蘭は菊に対して無表情な顔だが決して悪い印象を与えるものではない声で話した。
「私も意地悪とかする気はないから」
「だからね」
「菊さんも私を嫌いじゃないのよ」
「そういうことね」
「そうよ。ただ」
「ただ?」
「私もよ」
黒蘭もだというのだ。
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