夏祭り
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第四章
第四章
「じゃあそれするわ」
「そうだね。お小遣いは一杯持って来たし」
「あっ、私も」
小林さんもだった。お小遣いをたっぷり持って来ていた。
「もう好きなだけ遊べる位にね」
「持って来てるんだね」
「だから皆で一緒に遊ぼうね」
『皆』この言葉は余計だったけれど『一緒』という言葉がだった。僕は嬉しかった。
その言葉にだ。僕は舞い上がりそうになった。けれどだった。
すぐに他の皆がだ。こんなことを言ってきた。
「よし、神社だぜ」
「来たわよ」
夕暮れから夜のはじまりになろうとしている赤が消えて青、その次第に黒になろうとしている中に神社のシルエットが浮かんでいた。
左右には木々の影が見えていた。木々はもう夜の中に入っていた。
そしてその神社からお祭りの音楽が、笛や太鼓のそれが聴こえてくる。夜店の灯りがこれでもかと見えていて。僕達の心を弾ませてくれた。
その前に来てだ。まずは男の子達が言った。
「じゃあ行こうぜ」
「もう夜店満杯だしな」
「最初何処行く?」
「お面買わないか?」
こんな話をしながら神社の境内に入った。普段は静かな境内の中も今は人で溢れ返っていた。
石の階段を昇って社に向かう一本道のところに来ると夜店が左右に並んでいた。夜店の種類は本当に色々あった。
女の子達はまず綿菓子のところに向かった。僕達はたこ焼きだった。
綿菓子の店とたこ焼きの店はそれぞれ向かい合っていて。僕達は綿菓子を買って食べる女の子達をたこ焼きをはふはふと頬張りながら見て。そうして話をした。
「皆いいよな」
「ああ、いつもよりもさらにだよな」
「うちのクラスって元々奇麗な娘が多いけれど」
このことには正直かなり感謝していた。
「今日はまた特別だよな」
「浴衣だからな」
「やっぱりそれが大きいよな」
「そうだよな」
本当にだった。浴衣だったからだ。僕達は女の子達を余計に見ていた。
そしてだった。今度はだ。女の子達の誰が一番いいかだ。
そのことを話すとだった。話が余計にハイテンションになった。
「明坂よくね?」
「本多だろ」
「いや、阿澄だってかなりだろ」
「下田もよくないか?」
「麻子ちゃんだろ」
皆それぞれ話す。そしてだった。
一人がだ。彼女の話を出した。
「小林さんもよくないか?」
「只でさえ背が高いしスタイルいいしな」
「浴衣も似合うよな」
「モデルみたいだな。言い過ぎか?これ」
「幾ら何でもそうだろ」
こんな話を笑いながらしていた。そこでだ。
皆は僕にもだ。誰がいいか振ってきた。
「なあ、どう思う?」
「どの娘が一番いいと思う?」
「明坂か?それとも」
「本多か?」
「そ、そうだね」
僕は戸惑いながら。何とか泳ぎそうになる目に気をつけながら。
「小林さんかな」
「小林か?そうだよな」
「背も高いしな」
「御前はあの娘か」
「あの娘がいいんだな」
「うん、そう思うけれど」
自分の気持ちに嘘は吐けなくて。僕は小林さんの名前を出した。
そしてその小林さんを見ながら。僕はまた言った。
「いいよね」
「本当にな」
「まあ下田もいいけれどな」
「阿澄もな」
「麻子ちゃんだってな」
皆何気にそれぞれの好みを出していた。けれど僕はやっぱりだった。
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