ロックマンX~朱の戦士~
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第八十七話 Gate
前書き
エックス達がゲイトと直接対面します。
エックスとルインは遂にゲイトの元に辿り着いた。
2人のイレギュラーハンターは1人の天才科学者を目撃する。
肉眼で見た彼は以前、ハンターベースのモニターで見た時よりも更に邪悪さが増していた。
ゲイト「とうとう此処まで来たねエイリア」
彼はこの場にいない元同僚に話しかけた。
まるで彼女がこの場にいるかのように…。
ゲイト「君には昔から勝てなかった。君が常にトップだった」
ルイン「(……まるでライト博士とワイリー博士を見ているよう…)」
今のエイリアとゲイトに、ここにはいないアイゾックと、いつもエックスの身を案じていたライト博士が脳裏を過ぎる。
エイリア『っ…いいえ、あなたの方が何もかも上だったわ。私はただ課題をそつなくこなしていただけ。あなたは課題を守らなかった。たったそれだけのことだったのよ』
理解されず孤立した元同僚を彼女は必死に庇った。
しかしそれでも彼は挫折した。
結局のところ、彼に甘さを捨て切れないエイリアに対し、エックスは毅然とした態度でゲイトを見据え、言い放つ。
エックス「どんなに高い能力があっても正しく使われなければ意味がない。お前とエイリアの差はここにあるはずだ」
ルイン「ゲイト、それにね…レプリロイドだけの国家なんて出来ないよ。」
エックスに続くようにルインが言う。
更にハンターベースにいるイレギュラーハンター総監・シグナスも言葉を発する。
シグナス『その通りだ。人間もレプリロイドも共に不完全な存在。お互い助け合っていかないと駄目なんだ。そんなことはお前が1番よく分かっているはずだ。』
シグナスは厳然と言うが、ゲイトは本当に“分かっていた”かどうか…。
暴挙に出た今の彼にハンター達の言葉はまるで届かなかった。
ゲイトはエックス達を嘲笑う。
ゲイト「このボロボロの地球を救えるのは誰だ?人間は何にも出来やしない。シグマウィルスのせいでレプリロイドにも大きな犠牲が出た…。ですよね?お2人共」
手厳しい応酬であった。
現在の荒廃を招いた“一因”たるエックスとルインがぐっと詰まる。
シグナス『エックス、ルイン、気にするな』
エックス「大丈夫だよシグナス。」
すぐに持ち直してゲイトを見据える。
ゲイト「レプリロイドが不完全なことは認める。イレギュラーも発生する。だから僕の実力も正しく評価されなかった。しかし…そう思えるだけの自信が持てる物を造り出せたんだ!!」
瞳は狂気が光り、高ぶった感情が爆発する。
ゲイトはしばし狂気の笑いを浮かべ、ふっと声のトーンを落とした。
ゲイト「そう…1ついいことを教えてあげるよ」
ゲイトは言葉を切り、白衣から何かを取り出した。
エックスとルインからハッキリと見えなかったが、何かの破片のようだった。
ゲイト「流石に僕の実力だけでは此処まで来れなかった。でもこれを拾ったんだ。正に神の導きだね。何だと思う?ただのガラクタだと思ったよ…。始めはね」
“ガラクタ”を突き出してゲイトは叫んだ。
ゲイト「“ゼロの欠片”だよ!!ゼロのDNAを手に入れることが出来たんだ!!聖地に踏み込んだような気持ちだった…素晴らしかったよ、ゼロのDNAは。ハイマックスもナイトメアウィルスもいとも簡単に造り出すことが出来た。正気ではいられなかった。こんなに完璧で最強なものが出来上がってしまうのだから。しかし…」
興奮が急に冷めた静かな態度で、ゲイトは言葉を続けた。
ゲイト「上には上がいるもんだね。此処まで辿り着くのだからね」
辿り着いたエックスとルイン。
そしてゼロとルナ。
ゼロとルインに至ってはゲイトの最高傑作であるハイマックスすら倒してしまった。
ゲイト「さて…エックス、ルイン…僕の実験の被検体になる気はないかい?」
ルイン「は?」
自分でも驚くほど間の抜けた声だった。
エックスの方を見るとエックスもルインと同じ思いなのか唖然とした表情を浮かべている。
あまりにも場違いなゲイトの一言に、2人は頭の処理が追いつかなかった。
ゲイト「本音を言えば、君達を処分するのは不本意なんだ。DNAデータさえ無事なら死体でも構わないけれど、残骸で入手出来る情報はたかが知れてる。僕としては生きている状態で君達を解析したい。君達だって今ここで死ぬよりもモルモットとしてでも長生きした方がマシだろう?」
実際にハイマックスはゼロのDNAから造られたレプリロイド。
ゼロの行動パターンは熟知し、あらゆる性能でゼロを上回っていたはずだ。
それが、あえなくデータにない強化形態を発動されたことで呆気なく敗れ去った。
恐らくは組み込まれたプログラムを超えた動きに、ハイマックスが付いていけなかったのだ。
ゼロのプログラムを知り尽くしていなかったが故の敗北と言える。
ならばエックスとルインだけではなくゼロも出来るだけ生け捕りしたい。
後はナイトメアウィルスすら効かなかった異常なまでの対ウィルス性能を誇るルナも生け捕りにして解析したい。
エックス「ふざけるな!!俺達がそんな申し出を受けると思うか!!?」
ゲイト「だろうね、一応言ってみただけさ。仕方ない、君達の生け捕りは諦めるとしよう」
エックス「身を持って教えてやるぞゲイト。ゼロのDNAを利用し、レプリロイドを苦しめたお前の罪を!!」
ゲイト「望むところ!!君達をどうにかしない限り僕の理想国家は有り得ない!!来い…エックス、ルイン!!」
エックス「…ファルコンアーマー!!」
ブレードアーマーから機動性重視のレプリカファルコンアーマーに切り換えたエックスがゲイトにバスターを向け、ルインがアルティメットセイバーを抜き放つ。
ゲイトは白衣を脱ぎ捨てると黄金のアーマーを煌めかせた。
空間が戦場のそれとなり、戦いが幕を開ける。
ルイン「行くよゲイト!!」
オーバードライブを発動し、チャージセイバーで斬り掛かるルインだが、あろうことかゲイトは片腕を盾代わりに受け止めた。
ルイン「え!?」
思わずルインの表情が驚愕に染まる。
OXアーマーのチャージセイバーは通常時よりも威力が高い。
しかもオーバードライブで破壊力を倍加しているというのにそれを生身で受けるなど性質の悪い冗談としか思えない。
エックス「スピアチャージショット!!」
援護するためにゲイトに向けて放たれるスピアチャージショット。
オリジナルのファルコンアーマーのチャージショットより威力も貫通力も低いが弾速は通常時やブレードアーマーよりも速い。
スピアチャージショットはゲイトに直撃するが、ゲイトのアーマーには傷1つ付かない。
エックス「はああああ!!」
続いてソニックブームを繰り出すエックスだが、高い貫通力を誇る一撃すらも掠り傷1つ付けることも出来ない。
ゲイト「無駄だよ!!」
嘲笑いながらゲイトはエックスとルインに向けて光球を放つ。
青の光球はルインの身体を引き寄せ、緑の光球はエックスを追尾する。
赤い光球は身体の挙動を鈍らせる。
エックス「色によって効果が違うのか!?」
ルイン「ゲイト!!昔の君に戻って!!」
ゲイト「分からないか…この素晴らしさ!!すぐに分からせてあげるよルイン!!」
アーマーの絶大な防御力を活かしてゲイトがエックスとルインに迫る。
ハンターベースではエイリアは何も出来ない自分を歯痒く思った。
電波障害で映像も見えない。
研究所はさながら要塞で突破するのは彼女には無理…。
己の無力を呪った。
すると突如異変が起きた。
砂嵐のモニターに映像が流れたのだ。
エイリア「電波障害が無くなったわ!!どういうこと?」
モニターにエックスとルインのゲイトとの戦闘が映される。
ゲイトは光球を放ち、2人を攻撃していた。
シグナス「恐らく、研究所のシステムが改造されたのだ」
シグナスの読みは当たった。
システムの改造者から通信が入る。
ルナ『あー、あー………オホン。聞こえるかね!?諸君!!』
シグナス「ルナ!?」
ルナ『お久し総監!!痛え!?』
挨拶するルナだが、背後からチョップを受けた。
ゼロ『何をふざけているんだお前は?』
アイリス「ゼロ!?」
ルナを黙らせたのはゼロであった。
ゼロ『ナイトメアウィルスの製造システムは停止させた。電波障害も消えただろう。俺達はこれからゲイトの元へ向かう。エックスとルインもそっちに行ってるだろうからなあいつらが生きていてよかった…』
ゼロは普段からは考えられないくらい柔らかい声で呟いた。
エイリア「…ゼロ、どうして連絡をしてくれなかったの?エックスもルインもアイリスもずっとあなたのことを心配して……」
ルナ『まあまあ、ゼロにも色々あったんだ。それより今は…悪夢を終わらせるのが先決だろ?』
ゼロ『…終わらせる。俺達でな、今度はすぐに帰ってくるから待っていてくれ』
通信が途切れた。
エイリアとアイリスの胸に温かいものが灯った。
シグナス「ゼロは生きていたか。よかった…」
シグナスも感無量という風に言う。
アイリス「ゼロ…生きててよかった…!!」
シグナス「後はエックス達を信じて待とう…。信じるのも、我々の立派な仕事だ」
エイリア、アイリス「「はい…」」
モニターを見ると、エックス達は反撃を試みている。
ゲイトを打ち破るために、2人は命を懸けて戦っている。
エックス「…スピアショットウェーブ!!」
ゲイトが放った光球を破壊するべく、レプリカファルコンアーマーのギガアタック、スピアショットウェーブを繰り出すエックス。
光球は破壊され、破片がゲイトに直撃する。
ゲイト「ぐあっ!?」
直撃を受けたゲイトがのけ反る。
エックスとルインの攻撃を無効果するアーマーを纏っていたが、攻撃に放っていた光球が仇となった。
爆破された破片がゲイトに当たり、ダメージを与える。
敵を攻撃するはずの手段を利用されるとは屈辱であった。
一方、エックスとルインはようやく攻撃の手段を見つけ、防戦一方の戦況を逆転させた。
ルイン「行け!!」
チャージセイバーで光球を破壊し、ゲイトにぶつける。
エックスもホバーを駆使しながらスピアチャージショットで光球を破壊し、ゲイトにぶつけていく。
ゲイト「ぐっ!!」
吹き飛ぶゲイト。
ルインは壁に叩きつけられたゲイトを心配そうに見つめるが、ゲイトはエックスに向かっていく。
エックスはバーニアを吹かして、距離を取り、残った光球をゲイトに当てる。
エックス、ゲイト「「(絶対に負けられない、こいつだけには!!)」」
立場真逆の2人が共通して思うことだ。
エックスは悪夢を終わらせるため、ゲイトは自身の力の証明ために。
ゲイトはエックスに肉薄する。
ゲイト「喰らえ!!ナイトメアストライク!!」
エックス「…ブレードアーマー!!」
レプリカファルコンアーマーからブレードアーマーに切り換えて、マッハダッシュで直ぐさま離脱する。
ゲイトは巨大な異空間を出現させたのだ。
異空間はエックスが立ち、そして今は間髪で去った場所を縦に切り裂く。
赤紫の光が恐ろしかった。
ゲイト「かわしたかっ、ならばもう1度!!」
エックス「っ!!」
ゲイトは再度エックスを攻撃する。
エックスはブレードアーマーの加速力を活かして回避する。
例の光球が放たれぬ限りエックスに攻撃の機会は無かった。
ゲイトも同じで、破壊力は抜群だが容易に見切れる攻撃は決定打にはならない。
エックス「ゲイト!!今からでも遅くはない!!お前の犯した罪を償うんだ!!」
ゲイト「まだだ…まだ負ける訳にはいかない…僕の力を証明するまで!!」
エックス「止めろ!!自分がどれだけ愚かなことをしているのか分かっているはずだ!!」
エックスが説得しようとしても攻撃は止まない。
ルイン「(ゲイト…)」
何故それ程“証明”にこだわるのか?
存在理由…今まで誰にも認められなかったからか…。
ルインは悲しかった、悲しくて悲しくて仕方なかった。
ルイン「もう終わらせるよ。こんな悲しい戦いは!!」
辺りを探すと最後の光球を見つけた。
位置を確認し、フルチャージショットを当て、破壊した。
ゲイト「な…っ!?ぐああああああ!!!!」
エックスに気を取られていたゲイトは破片を喰らい、倒れたのだった。
ルナ「うお!?すげえな、本日最大の衝撃だったぜ」
ゼロ「恐らくエックス達だろう。急ぐぞ」
2人はゲイトの元へ急ぐが別れ道が2人の前に現れる。
2人はアイコンタクトで会話するとゼロは右、ルナは左の道を突き進む。
ゲイトの黄金のアーマーはいつしか傷だらけになっていた。
2人の攻撃を持ってしても無傷だったアーマーには罅が入り、破片が零れ落ちていた。
ゲイトは仰向けに倒れ、喘いでいた。
ゲイト「くっ…ゼロのDNAを持ってしても勝てなかった…解析が不完全だったから…い、いつの時代に…つ…造られたのか分からないプログラムに負けたのか……でも、まだ終わりじゃない…僕はこのまま、無様に消えていく愚かな奴らとは違う」
ルイン「ゲイト…お願い、もう止めて…」
ルインが訴える調子で言うが、彼女の願いはゲイトには届かなかった。
ゲイトの手にはコントローラーが握られていた。
スイッチを押せば何かが起動する。
“何か”は恐らく最悪の事態を招くものだろう。
ゲイト「こんな最悪の事態もちゃんと考えておいたんだ。これだけは…使いたくなかったが…あ、悪魔を復活させたよ…シグマをね」
エックス「何だと!?」
スイッチを押すと、部屋の奥に“奴”が出現した。
緋色のマントを羽織っていた。
身体が歪み、動くのもやっとという風の男が足を引きずりながら歩いていた。
エックス「(あれがシグマなのか!?)」
かつて幾度も自分達を苦しめたイレギュラーの覇気はない。
死に損ない。
この言葉がよく似合った。
シグマは血を吐くが如き苦しげな声で叫ぶ。
シグマ「調子に乗るな小僧!!あの程度では死なぬわーっ!!お前の助けなど必要なかったわ!!邪魔だ!!消えろーーーっ!!」
シグマが光弾を吐いた。
眩しい光がゲイトを包む。
ゲイト「ぐああああああああ!!!!」
ルイン「ゲイトーーーーッ!!!!!!」
光弾を受けたゲイトは消滅したのだろう。
そこに彼の姿はなかった。
エックス「っ…シグマ、貴様あ!!」
バスターブレードを構えてシグマを斬り裂こうとしたがシグマの姿はなかった。
エックス「しまった…逃げられたか…ルイン、俺はシグマを追う!!君は…」
エックスが振り返った時には既に彼女はいなかった。
エックス「ルイン…?一体何処へ……?」
そしてエックスもルインもシグマも気づかなかった。
…一瞬だけ見えた漆黒の影を……。
後書き
ゲイト撃破
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