| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドリトル先生と伊予のカワウソ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八幕その十一

「何かと」
「特に奈良県や京都府の辺りですね」
「よくご存知ですね」
 加藤さんは先生がそうした府県の名前を出してきたので少し驚きました。
「日本の妖怪のことにも」
「いえ、それは」
「いやいや、まことに」
 先生のその博学さに驚いているのです。
「先生は医学、動物学だけではないのですね」
「文系もというのですか」
「語学も堪能ですし」
 何しろ今も普通に日本語で加藤さんとお話しています、もうイギリスの訛りも全くなくなっています。まるで日本で生まれ育ったみたいです。
「素晴らしいです」
「だといいのですが」
「学者になる為に生まれて来られた様な方ですね」
「確かに家は代々医師で」
 そして、というのです。
「僕も跡を継ぎました」
「代々ですか」
「はい、しかし」
「しかしですか」
「本を読むことが好きで。そもそも本が好きな理由は」
「それはどうしてでしょうか」
「運動が苦手でして」
 だからだというのです。
「子供の頃から本を読んでいて」
「それでなのですか」
「そういうことかと」
「先生はスポーツは苦手でしたね」
「観ることについては何もありませんが」
 しかし、というのです。
「することは大の苦手です」
「ですが観られることはですね」
「それは好きです、最近は野球も」 
 このスポーツも、というのです。
「あの阪神というチームには愛情すら感じます」
「あっ、それはちょっと」
「松山ではですね」
「ここは広島県に近いので」
 だからだとです、加藤さんも苦笑いで言うのでした。
「広島ファンの人が多いので」
「加藤さんもですしね」
「はい、私もそうですし長老さんも」
「ここは広島なのですね」
「これがどうも四国でも違いまして」
 狸さん達の贔屓するプロ野球のチームは、というのです。
「香川や徳島は阪神、そして愛媛は広島です」
「では高知は」
「どちらかみたいですね、団三郎さんは広島みたいですが」
「そうなのですか、狸さん達も地域によって違うのですね」
「そうです、ただやはり阪神は」
「あのチームの人気は凄いのですね」
「松山でもわりかしおられます」
 阪神ファンの人は、というのです。
「そして広島にも」
「阪神ファンは全国ですか」
「先生もそうじゃないですか」
「応援していると楽しくなります」
 イギリス人の先生でもだというのです。
「あのチームは勝っても負けても華がありますから」
「よく言われますね、そのことは」
「阪神はいいチームです」
 先生はにこりと笑って言いました。
「華があります」
「そしてその華がですね」
「病みつきになります」
 そこまで素晴らしいというのです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧