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ドリトル先生と伊予のカワウソ

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第八幕その十

「そんなことしないよ」
「相当餓えていてもね」
「牛や羊の方を食べるよ」
 そうするというのです。
「狼さん達はね」
「そうだよね」
「あの野獣は人と動物がいても人を襲っています」
 牛や馬、羊よりもとです。加藤さんは今度はこのことを指摘しました。
「狼にしましては」
「おかしいですね」
「しかも群れていません」
「狼は集団で行動します」
 群れを為して、です。
「それが狼ですが」
「しかし野獣はつがいという説もありますが」
「はい、群れではありませんでした」
「それもおかしいですね」
「極めて」
 狼というには、です。
「有り得ないですね」
「狼である可能性は低い、いえ殆どないかと」
 先生もこう言いました。
「野獣は」
「では何か、ですね」
「色々言われているのですが」
 先生も野獣について述べます。
「訓練されたハイエナや犬と狼の雑種」
「そして陰謀説ですね」
「何者かの」
「その何者かが訓練された獣を使っていたと」
「そうも言われていますが」
 しかし、というのでした。
「結局今もわかっていません」
「その正体は」
「はい、結局のところは」
 今も尚、です。
「わかっていません」
「謎だらけですね」
「全く以て」
「やはり狼男だったのでは」
 またこの説を出す加藤さんでした。
「この妖怪でしたらある程度説明がつきます」
「人を集中的に襲っていて単独行動と」
「狼でないことはほぼ確実ですから」
「そうですね、狼憑きか」
 先生も真顔で答えます。
「そうした存在でしたら」
「ありますね」
「僕は妖怪の存在を否定していませんdねした」
 日本に来られる前からです。
「それはイギリスに生まれ育ってこともありますが」
「その研究の中で」
「ルーマニア等には実際に吸血鬼の話がありますし」
「スラブには」
「元々吸血鬼はスラブの妖怪でして」
 あの辺りの妖怪なのです、吸血鬼は。
「蘇った死体、呪われた人間と様々ですが」
「あの辺りでは今も実在が信じられていますね」
「それがいて逃げているという噂も」
「本当にあるのですが」
「何しろ最近まで吸血鬼退治の仕事があったのです」
 今もあるかも知れません、実際にスラブにはそうしたお話もあります。
「ですから」
「実在していますか」
「僕はそう思います」
 吸血鬼も、というのです。
「この目ではまだ見ていませんが」
「ドラキュラ伯爵も、ですね」
「ブラド四世は実在ですが」
 ルーマニアの君主でした、英雄でしたがとても残酷な人として知られています。
「あの人もともかくとしまして」
「吸血鬼は今もいますか」
「そうした噂がハンガリー辺りであります」
「そして今も逃げている」
「本当であって欲しくはないですね」
 先生は切実にこう願っています、本当に恐ろしいことだからです。
「まことに」
「そうですね、本当に」
「その吸血鬼のことも考えますと」
「欧州の妖怪は恐ろしいですね」
「はい、とても」
 極めて、というのです。
「日本の妖怪はかなり親しみやすいです」
「その鬼や土蜘蛛ですら」
「元々はまつろわぬ民でしたしね」
「そうそう、そうでしたね」
「まあこの辺りは複雑なのですが」
「歴史的にも民俗学的にも」
 そうだというのです。 
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