悠久の巡礼者
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転生
決して報われることはない旅・・しかしーー
立ち止まり心が折れてしまえば、ただ滅びを
待つだけで運命は変わらない・・
それゆえに進むのだ・・
だが・・足を止めた者達は少なくない
己の希望を光を失い、亡者となり自我を無くし
ソウルだけを求める脱け殻絵と成り果ていく。
私も遠くない未来にはそうなるのだろうが・・
まだ・・光がある、その希望を信じーー
歩き続けた・・その果てに滅びがある
としても・・人だってそうだーー
いつか死ぬ・・滅びがくるのだ・・
ならば少しでも滅びに追い付かれないよう
歩き続けるのも悪くないと思えた・・
それだけのことだ・・
だが・・いつの間にか玉座に辿り着いていた。
しかし・・私が亡者と成り果てるまでーー
戦いは終わらない・・玉座は一つの通過点。
後は滅びるまで歩き続けることしか
許されない・・そう思っていた。
いや・・普通ならばそうなるはずだったのだろう。
◇◇◇
ただ同じことを繰り返す意味などない。
巨大なソウルを持つ存在を淘汰(とうた)した。
或(ある)いは、淘汰されるかもしれない・・
恐怖はないーー当然の如く玉座に座り、
次の戦いに備え体を休めるーー
いつからこうしてたかすらも・・
薄れていくように、意識が沈み呑まれる
深淵のような暗い闇の底で・・
◇◇◇
目が醒めると澄んだ青空に突き抜ける風がーー
心地がよい・・辺りを見渡すと美しい草原が、
広がっている。
現状を確認すべくソウルや収集強化してきた
装備品に目を通したが異常は見られない。
しかし・・呪いがない・・?
どういうことだ・・不死者である私にある
はずの、ダークリングがないのだ・・
情報が足りなさ過ぎるーー
一先ず、草原が広がる土地に唯一そびえ立つ、
建物を目指した。
本塔らしき搭を囲む五つの塔が、五角形状に
外壁が固めれていて上質な造りのように感じる。
育ちがよさそうな少年少女が、あちらこちらを
歩いているどうやら・・
学園に従事る施設のようだ。
ふと、人混みができている広場が視界に止まり、
惹き付けられるように向かって
歩き続けた先にーーーー
一人の少女がいた・・
ピンクの髪が目立つ、上質な絹のように、
滑らかな髪。
キリッと鋭い瞳のようでくりっとした
吸い込まれそうな瞳は生命力に溢れている。
学院指定らしきシャツとプリーツスカート、
二ーソックスで着飾る少女。
申し訳なさそうに肩から息を吐いた中年の
男が、言葉を選んでるように唾をのむ。
「大変申しにくいのですが・・ミス・ヴァリエールこれまでにしましょう魔力も消費して疲れてきたでしょうしーー後日に仕切り直してみてはどうですか?」
ヴァリエールと呼ばれる少女を
気遣い労うように
諭しているが・・肝心の件(くだん)の少女は・・
プルプル震えながら意を決したように
前に躍りでた。
「もう一度だけやらせて下さい!! お願いします! ミスタ・コルベール!!」
瞳に力を宿しコルベールを見つめる・・
まだやれるチャンスをくれと・・
「わかりました・・もう一度だけですよーー」
彼女の熱意に負けたコルベールは承諾する。
ありがとうございます・・噛み締めるように
感謝の言葉を口にした。
「宇宙の果てのどこかにいる私の僕よ! 神聖で美しく、そして強力な使い魔よ! 私は心より求め、 訴える! 我が導きに応えよ!!」
足場に形成される星形の魔方陣に包まれ落ちていく・・
懐かしさすら覚える闇に体を委ね目蓋を閉じる。
爆発と騒がしい人の声を聞き戻ってきたことを
自覚し目蓋を静かに開いた。
「ーーーーーーーー」
泣きの一回を懇願した少女が、わなわなと顔面の筋肉が
異様な程にひくひく動いている。
「この平民さっき・・ここら辺にいた奴じゃないか!!」
周りがざわざわと騒ぎ出す、冗談だろーー
流石だな"ゼロのルイズ"と顔を揃えて笑いだした。
「こんなのが私の使い魔なワケがないわ! やり直す! もう一度召喚するわ!」
私を指差しながら凄い剣幕で周りの学生に
弁明している。
やれやれと苦笑いをしつつもコルベール
が外野を嗜(たしな)め、ヴァリエールに
向き直り。
「この神聖な召喚儀式を、やり直すことはできない! 呼び出した以上は彼が君の使い魔だ!」
厳粛な態度で告げた。
「そっ・・そんな・・・・」
絶望に浸り世界の終わりが訪れたかのように
落胆を隠せない。
「諦めて儀式を続けなさい」
選り好みは許しませんと言わんばかりに
ツンと突き放すように指示をする。
「ーーはい」
ことの流れからして従者を決める儀式だろう。
ぞんざいな扱いは慣れているし構わない・・だが・・
落胆する主の予想をいい意味で裏切ることを
目標とするかーー
「五つの力を司るペンタゴン。この者に祝福を与えーー我の使い魔となせ・・」
呪文を唱え終わったかと思えば、キスされていた。
主の予想を裏切る前に私が先に驚かされるとは・・
左手が契約の影響か焼けるような痛みが走る。
「貴族の私とキスなんて普通ありえないんだから! 感謝しなさい!!」
顔を赤くしながら威張って素直じゃない・・微笑ましい主だな。
コルベールが近づいて来たかと思えば、おもむろに
手を覗き込む。
「ーーどれ、よくやった!!きちんと契約できているよーーにしても随分と珍しいルーンだな・・・・」
「そんなに珍しいものなんですか?」
いまのうちに、少しでも世界の情報が欲しい
どんなことでも。
まだ見ぬ景色や知識が待っているーー
これからを期待し胸を脹らます。
「気になるのかい!? えーーっ・・と・・」
「アルフと申しますミスタ」
「そうかーー! アルフ君かよろしく、君も気になるなら調べよう! 少しスケッチさせてもらえるかい?」
早い対応で助かるな・・彼自身も満更
じゃないようだし任せよう。
スケッチが終わるまで、動きをとめる。
「よし・・終わったよでは、楽しみに待っていてくれ!」
いきいきと走りさっていく、あれは・・
半分以上自分の知的好奇心の為だな。
「貴方アルフっていうのね・・まぁーー顔は悪くないだけマシね」
腕を組ながら上から目線で品定めを済ませる。
「それはどうもありがとうーー主よ」
膝をつき忠義を示す。様々な者と契約で忠誠を
誓ったような感じがする・・実際ーー
誓ったのだろう・・今では古ぼけた武器の
ように幾重にも戦いを越え磨耗して
しまってはいるがーー体が覚えているの
だから・・
(誠心誠意、忠義を示したつもりだが・・
認めてもらえるだろうかーー?)
頭を下げたまま姿勢を維持しつつ、
思考を巡らした。
「えっーーと・・・・殊勝な心構えね! 頭を上げていいわよ・・」
頭を上げ・・主の顔色を窺う。
「把握しましたーーこれから何をすれば、いいのですか?」
「追々ーー話して行くわ・・それより先にお昼だから、また後でね」
従者らしく寡黙(かもく)に礼を済ませ、
後に続いた。
◇◇◇
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