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美しき異形達

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第二十話 錬金術その十三

「その三つ楽しませてもらうか」
「ラーメンも量があるから」
「そうか、それじゃあそっちもな」
「期待してね」
 こう話してだった、三人で店に入って注文した。そして。
 店を出てだ、薊は向日葵ににこにことしてこう言った。
「向日葵ちゃん嘘吐かないんだな」
「インディアンじゃないけれどね」
「いや、本当にな」
「美味しかったでしょ」
「ああ」
 心からの言葉だった。
「かなりな」
「量も多くてね」
「しかも安くてな」
「関東は結構物価高いでしょ」
「そうなんだよ、横須賀はともかくさ」
「東京は」
「東京高いぜ」
 物価が、というのだ。
「何か食うにもな」
「お金かかるわよね」
「東京は楽しいけれどさ」
 しかし、というのだ。その楽しさを支えるものは。
「物価が、なんだよ」
「そういうの聞くとね」
「そうよね」
 裕香と向日葵は薊の話を聞いて顔を見合わせて話した。
「東京ってね」
「いいことばかりじゃないのね」
「神戸や大阪はもう極楽浄土なのに」
「東京はそうでもないのね」
「正直あたしはこっちの方がいいよ」
 神戸の方が、というのだ。
「住んでみて思うよ。横須賀と同じだけな」
「やっぱり横須賀好きなのね」
「一回行ってみたらいいさ、いい街だよ」
 横須賀についてはだ、薊はにかっと笑ってそのうえで二人にこう話した。
「海は見えるし自衛隊の人達はいるしさ」
「自衛隊の人達っていい人達なのね」
「紳士だよ、皆」
 そうだとだ、薊は裕香に話した。
「礼儀正しくて清潔で」
「清潔なのね」
「船の中なんか凄いぜ、ゴミとかもな」
「落ちてないのね」
「毎日掃除してるからさ」
 だからだというのだ。
「綺麗だよ、ただな」
「ただ?」
「トイレはな、どうしても」
「ああ、基本男社会だからね」
「そこは残念だけれどさ」
「その辺りは仕方ないわね」
 裕香もその辺りの事情は理解して笑って頷いた。
「どうしてもね」
「ああ、とにかくな」
「横須賀はいい街なのね」
「そうだよ。行って損はないよ」
 こう話すのだった、そして三人でカラオケボックスにも入ってそこで思いきり歌った。そのうえでカラオケボックスを後にして。
 帰ろうとした、だが。
 ここでだ、向日葵がだった。
 ぴんと感じ取ってだ、そのうえで薊に言った。
「薊ちゃん」
「ああ、来たな」
「暫く出て来なかったけれどね」
「来たな」
「そうね、それじゃあね」
「ああ、やるしかないか」
「楽しく過ごせてたって思ってたら」
 それでもだと言うのだった、向日葵も。 
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