ロックマンX~朱の戦士~
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第七十七話 蒼と紅
前書き
エックスとゼロはそれぞれ行動する。
ハンターベース帰還後、エックスとルインは資料室にいた。
目的はヤンマークとタートロイドの資料だ。
エックス「コマンダー・ヤンマーク:元は自然保護プロジェクト用のレプリロイド。昔事故で森林を燃やしてしまった。罪を問われることはなかったが、心なき者に飛行システムを改造され、事故を起こし死亡。制作者はゲイト…」
ルイン「レイニー・タートロイド:元水質改善チーム。苛酷な環境にも耐えられる甲羅シールドを装備。装備を危険視されたが、制作者ゲイトは反対して降格。忠実だった彼は責任を感じて自害…タートロイドもゲイトの作品…?」
エックス「どちらもゲイトという科学者レプリロイドが関わっている。これは偶然か?」
ルイン「(ナイトメア調査員の目的はなんなの…?ゲイト…君までナイトメアに関わっていたりしないよね……?)」
ゲイトまでこのナイトメア事件に関わっていないことをルインは願った。
そしてゼロナイトメアを片付けたゼロとルナは拠点に戻っていた。
ルナ「まあ、そこら辺に座っててくれ。」
ゼロ「ああ」
ジャンクパーツを扱っているためか、少々オイルの臭いが鼻につくが、ゼロは気にせず椅子に座り込んだ。
オイルの臭い程度、戦場ではもっと酷い臭いがするし、上層部に呼び出される度に向かう部屋よりずっと居心地がいい。
ゼロ「それにしても、俺達が戦っている間にこんな茶番があったなんてな」
ゼロはルナが通信や情報を得るために使うモニターに映る映像を見て呆れ返る。
ゼロはルナからアイゾックの演説、ナイトメアの話を聞く。
モニターには例のアイゾックの大仰な演説が流れていた。
ゼロ「“ナイトメアはゼロの亡霊が原因”か…言ってくれる」
同時にいよいよハンターベースには戻れなくなったと感じた。
今戻ればナイトメア調査員達は警戒するだろう。
自分達の主張が間違いだったことを露呈した時、彼らは真相をくらますに違いない。
真実を突き止めるためには、己の存在を敵に悟られぬように調査を進めねばならない。
ルナ「あの亡霊がなんだったのかさっぱりだな。もう少し調べねえといけねえな」
ルナはモニターを操作しながら言う。
ルナ「ナイトメア現象が多発するエリアは8つ。そのうちリサイクル研究所はゼロ、アマゾンエリアはエックス、イナミテンプルはルインが制圧したぜ」
ゼロ「(エックス…ルイン…生きていたか…)」
女神の言葉を信じてはいたが、ルナから聞いて胸が熱くなった。
込み上げて来る感動を押さえ込みながら冷静に努める。
ルナ「残るエリアは5つ。この調子だとすぐ終わりそうだな。ああ、そうだ」
ゼロ「?」
ルナ「ナイトメア調査員は全てゲイトって言うレプリロイドに造られたんだ。」
ゼロ「ゲイト?」
ルナ「うちの客人。俺はジャンク屋だからな。簡単には手に入らないパーツを購入するために昔はよく来ていたんだ」
ゼロ「お前はホタルニクス博士といい、そのゲイトとかいい、随分と知り合いが多いな」
ルナ「人脈は大事だぜ?まあ、あいつは優秀な研究者だったけど、優秀過ぎて研究が理解されず孤立して研究所を去ったらしい」
ゼロ「そいつが造ったレプリロイド全員がナイトメア調査員か…何かあるな」
調査員の経歴を見ると、知っている名前が幾つかある。
ヴォルファング、シェルダン、スカラビッチ。
特に気になるのは後の2人だ。
ゼロ「(シェルダン…セキュリティポリスだった…。スカラビッチは確か古代のロボットの研究に熱心だったとか…)」
ルナ「で?どうするよ?」
ゼロ「セントラルミュージアムに向かう。スカラビッチは何か知っている。そんな気がするんだ。ナビを頼めるか?」
ルナ「ああ、バックアップは任せとけ」
ゼロは拠点を後にするとスカラビッチがいるセントラルミュージアムに向かうのだった。
~おまけ~
この話はロクゼロシリーズの方に行ったらの話です。
前に書いたギャグとは別物。
※四天王がエックスとルインのDNAデータを利用されて造られている。
※時間軸はオリジナルエックスが眠りにつく前。
※四天王のプライベートでのエックスとルインへの呼び方。
※ハルピュイア:父さん・母さん
※レヴィアタン:お父様・お母様
※ファーブニル:親父・お袋
※ファントム:父上・母上
ネオ・アルカディアの休日の貴重な午後。
特に予定もなかったルインはレヴィアタンと共に街の様子をモニターで見ていた。
モニターには結婚式が映されていた。
これといって興味をそそられるような内容でもない。
だが母は違っていたようで。目をキラキラと輝かせ、モニター映る純白のウエディングドレスを眺めていた。
ルイン「わぁ、綺麗…ねえレヴィ、レヴィの花嫁姿、お母さんに絶対見せてね?」
レヴィアタン「もう、そんな事分からないわよ…。そうだ、じゃあお母様の花嫁姿は?写真とか見たことないんだけど」
万年新婚夫婦な父母なのに、なぜか結婚式の写真など一枚も見たことがない。
その疑問に、今も少女のような見た目の母は笑って答えた。
ルイン「へ?ああ…式も挙げてないし、写真も撮ってないの」
レヴィアタン「ど、どうして!!?」
あの父が式も挙げないとは考えられないのだが…。
ルイン「あの時はシグマとの戦いや妖精戦争もあったし、それにゼロも封印されたり…ネオ・アルカディアを創るのに忙しくてそれどころじゃなかったんだ……まあ、エックスやハルピュイア達がいて今が幸せだからいいけど」
しかし“いい”と言っても、さっきの母の顔はどう見ても“着たい”と言っているように見えた。
レヴィアタン「(何とかして着せてあげられないかしら?)」
そう思いながら、他の兄弟達の部屋に向かう。
レヴィアタン「…というわけなのよ」
ファントム「つまりレヴィアタンは、母上にドレスを着せて差し上げたいと?」
レヴィアタン「そうよ」
理解が早くて助かる。
その横では、どう見てもマザコン気味のハルピュイアが顔を真っ赤にさせて怒りを露わにさせていた。
ハルピュイア「か、母さんにそんな悲しい思いをさせるなど…父さん…あなたという人は…!!し、しかし父さんは俺の…」
レヴィアタン「…お黙り、マザファザコンキザ坊や」
どうしても母にウエディングドレスを着せてあげたかった。
その時、黙って話を聞いていたファーブニルが呑気そうに言った。
ファーブニル「だったら俺達でウエディングドレス買ってお袋に着せてやればいいじゃねえか。お袋って体型はレヴィアタンと殆ど同じだからお前と同じサイズの奴買えばいいじゃねえか」
レヴィアタン「それよ!!」
確かにレヴィアタンとルインは体型が近いし、レヴィアタンにピッタリのサイズをルインに渡せばいい。
レヴィアタン「お母様!!」
ルイン「ん?どうしたのレヴィ?ファントム?」
朱いローブを身に纏うルインが首を傾げた。
ファントム「母上、申し訳ありませんが、こちらへ」
ルイン「え?え!!?」
レヴィアタンとファントムに引っ張られながらルインはエックスとルインが使っている執務室に向かう。
エックス「フ、ファーブニル!?一体どうしたんだ!!?」
貴重な休日に日なたぼっこをしていたエックスはファーブニルに引っ張られていた。
ファーブニル「いいからいいから!!後のお楽しみって奴だ!!」
エックスが執務室に入るとファーブニルから何も告げられていないようで、困り顔のエックスを見遣る。
ルイン「もう…こんなの着る歳じゃないのに…」
ややしばらくたって。
純白のウエディングドレスに身を包んだ母が出てきた。
幼い顔立ちとあいまって、とても4人の子供がいる母には見えない。
自分達のお母さんなのにな、とレヴィアタンは思わず苦笑が漏れた。
まあ、レプリロイドは歳を取らないからな。
横にいる兄弟達は固まっている。
多分、自分と同じ考えなのだろう。
レヴィアタン「お母様、凄く綺麗よ」
ルイン「…レヴィ、ありがとう。みんな、ありがとう…私、凄い幸せだよ……」
レヴィアタン「もう、せっかくのお化粧が崩れちゃうじゃない。泣くのは早いわよ、お母様」
ルイン「うん…うん…」
母は笑顔で泣いていた。
それは本当にきれいだった。
エックス「ルイン」
ルイン「エックス…」
エックス「凄く綺麗だよ…。少し残念だな…。こんなに綺麗なら無理を言ってでも結婚式を挙げるべきだった。もう1度僕と結婚してくれるかい?」
ルイン「何言ってるのエックス。私はエックスのお嫁さんなんだよ?」
ハルピュイア「父さんと母さんの仲がいいのは別に構わないのだが…俺はどうすれば…!!」
レヴィアタン「どうもしなくてもいいわよマザファザコンキザ坊や」
そして今夜はささやかなパーティーを開いた。
身内だけの結婚式を挙げたルインの表情はとても綺麗だった。
エックス達はグラスに入れた飲み物を口に含んだ瞬間。
レヴィアタン「!?これ、アルコールじゃない!!?」
エックス、ハルピュイア「「…………」」
ファーブニル「おお!!?親父とハルピュイアが気絶したぜ!!」
ルイン「エックスとハルピュイアってお酒弱いからね~」
ファントム「…お主らは静かに酒を飲めんのか…?」
普段は厳格である彼らも今はどこにでもいる賑やかな家族であった。
しばらくして、全員が寝静まったのを見て、ファントムは仮面を取る。
仮面を取ったファントムは目つきのボディの色以外はエックスとうりふたつである。
ファントムは後方の家族に目を遣ると仮面を置いたまま、ある場所へと向かう。
ファントムが向かったのは、シグマウィルスの研究所。
そこには1体のレプリロイドがいた。
所々破損し、紅いアーマーを身に纏うレプリロイド・ゼロ。
ファントム「…目覚めよ。お主はまだメシアとしての役目を果たしてはおらん」
ファントムが動かぬゼロに向かって言い放つが、ゼロは何も言わない、動かない。
ファントム「…ハッ!!」
烈昂の気合いを込め、ファントムは十の光る武具の一つ、手裏剣・闇十文字をゼロに向けて投擲する。
しかし闇十文字はゼロに届く前にプロテクトに弾かれる。
憎々しげに闇十文字を戻し、刀で直接斬り込もうとするが、闇十文字同様、プロテクトに弾かれる。
ファントムは何度弾かれようとゼロに斬り掛かる。
ファントム「何故、目を覚まさぬ!!父上と母上は貴様を100年間待ち続けたのだぞ!!」
プロテクトにより、身体に傷がつきはじめてもファントムは刀を振るう。
ファントム「目覚めぬのなら完全に消え去ればいい!!貴様さえいなければ、父上も母上も傷つくことは…」
ルイン「ファントム…」
ファントム「っ…母上…」
背後を見遣れば、母が壁に背を預けながらファントムに声をかけた。
ゼロの方を見ずに…。
ルインがここまで接近しているというのに気づけなかったことにファントムは自身に驚愕した。
ルイン「…帰ろう」
静かだが、有無を言わせぬ言葉の重さにファントムは俯き、口を開く。
ファントム「………御意」
夜風に髪を流され、朱いローブを翻しながら歩くルインを見遣りながらファントムは辺りを警戒しながら歩く。
ルイン「それにしても…」
ファントム「?」
ルイン「ファントムがゼロの居場所を知ってるとは思わなかった。」
ファントム「…申し訳ございません…母上」
ルイン「ゼロのこと…嫌いにならないでね?ゼロは私達を守るために封印されたんだ」
ファントム「………」
ルイン「最初はゼロのこと憎んだよ…私とエックスを置いていった時は…」
ファントム「母上…」
ルイン「でもね、君達が生まれて、身近に守るべき存在が出来たら…あの時のゼロの気持ちが理解出来たんだ……謝らなきゃいけないのは寧ろ私かもね」
ファントム「何故…」
ルイン「毎日泣いて恨んだ時もあったけど、今ならそれは筋違いだって分かる。ゼロは私やみんなのために、自分を犠牲にしてくれたんだ。ゼロはゼロに出来る方法で私達を守ってくれた。でも、あの時、ゼロを止めればよかったって思う。何か他に方法がないか探そうって、言えばよかった。それが今でも悔やんでならないよ。きっと何か、ゼロを犠牲にしない方法があったはずなのに……」
ファントム「………」
ルイン「ごめんねファントム…エックスを説得してまで科学者達の意向で君達を造らせたのはネオ・アルカディアの平和を守るってのは建前で…ゼロがいないことを忘れたかったの……子供を代わりにするなんて…私、最低な母親だね……」
涙ぐむルインにファントムは静かに口を開いた。
ファントム「誰もが1人では生きられない。御身が望んだ事は当然至極…」
ルイン「でも…」
ファントム「罪は誰にでもあります。母上こそ、どうかご自分をお責めにならないでください」
ルイン「……ファントム…」
ファントム「拙者は父上と母上の影。御身が望むのならばどこまでも着いていく所存です。それはハルピュイア達も同じ想いでしょう」
ルイン「ありがとう…こんなに優しい子供達を持てて、私は幸せだよ」
笑みを浮かべながらルインはファントムと共に戻るのだった。
後書き
おまけでロクゼロベースの話書いてみました。
ルインと四天王の関係性を親子に変化させてみました
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