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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第七十六話 Inami Temple

 
前書き
ゼロ、エックスに続き、ルインは…。 

 
ルインは現在、日本の重要文化財であるイナミテンプルにいた。
先のコロニーの破片落下のために、遺産は見るも無残な姿をしていた。
鳥居は内部の金属が露出し、石畳は砕けたりめくれ上がったりしている。
ルインは悲しげに辺りを見回した。

エイリア『ルイン…今はナイトメアのことだけを考えて…ところで……』

ルイン「何?」

アイリス『ルイン、その女の子はどうしたの?』

ルイン「あ、この子はイレギュラーハンター養成学校の訓練生の……」

「パレットです。こんにちはエイリア先輩とアイリス先輩」

パレットという少女は満面の笑みで先輩にあたるエイリアとアイリスに会釈する。

アイリス『え?訓練生なのよね?どうしてイナミテンプルに?』

ルイン「実は、最近は訓練生にもミッションを言い渡されるらしくて、この子もその1人で…。ここで行方不明になった友達が何人かいるみたい。どうしてもついていくって聞かないんだよねえ…」

アイリス『そうなの…』

アイリスはまだ訓練生であるにも関わらず戦場に送り出されたパレットを悲しげに見遣り、エイリアは溜め息を吐きながらルインに言う。

エイリア『ルイン、今すぐ彼女を保護して。そこはナイトメアが蔓延る危険地帯なんだから』

エイリアの言葉にパレットは満面の笑みを浮かべながら口を開いた。

パレット「大丈夫ですよエイリア先輩。あたし、ルート解析の成績トップですし、これでもオペレーター志望なんですよ。それにハンターベースからだとこっちの状況よく分かんないでしょ?」

エイリア『ぐっ…』

アイリス『あ、あはは…正解よパレットちゃん』

一応言っておくがパレットに悪気は全くない。
アイリスは苦笑し、エイリアは何か言い返そうとするが言葉が見つからない。

ルイン「(う~ん、これはハンターベースに帰ったら嵐が起きるね絶対)」

パレット達の会話を聞きながら、ルインは空恐ろしい何かを感じた。

パレット「それに…」

彼女はバレットを抜くと、迫ってきたイレギュラーにエネルギーブリットを喰らわせ、沈黙させる。
正確な射撃にルインも思わず感心してしまった。

パレット「このパレットバレットで戦うことも出来ますから…それに最強のイレギュラーハンターのルインさんもいるから大丈夫ですよー。それじゃあ」

一方的に通信を切るパレット。
ルインもエイリアの抗議から逃れるべく、通信を切った。
パレットとルインは互いに協力しあいながらナイトメア調査員の下へ急ぐのであった。



































イナミテンプルは恐ろしい場所だった。
突如目の前が真っ暗になり、敵も障害物も見えなくなる。

ルイン「これは…何なの!!?」

パレット「ルインさん、これナイトメアですよ。レプリロイドに幻を見せる…」

ルイン「幻?これが幻なの?」

思わず我が目を疑った。
暗闇は決してまやかしには見えないからだ。
本当に真っ暗なのだ。
自分の視覚システムに異常はない。
なのに現実にはない闇が見える。
更に…。

ルイン「わっ!?急に激しい雨…しかもこれは酸性雨だ…」

パレット「それもナイトメアです。長時間浴びてるとアーマーが溶解しますよ。部屋の奥にウェザーアナライズがあります。バリアで守られていて、バリアを張っているのは4つのコア。今から言う場所にコアがありますから、破壊してください」

オペレーター志望の訓練生であるパレットの協力で、何とか酸性雨を止めることに成功した。
ルート解析に優れ、適切なアドバイスを送るパレットにルインは驚嘆した。
非常に優秀なオペレーターとなるだろう。
もし、部隊制があった頃なら第17部隊にスカウトしてやりたい気分だ。

ルイン「何とか雨は止んだね…髪が傷まないといいんだけど…」

濡れた髪に触れながらぼやく。

パレット「早く行きましょう!!カリンカちゃんとコサック博士が危ない!!」

ルイン「カリンカちゃんとコサック…博士?」

聞き覚えがある名前だ。

パレット「友達と友達のお父さんなんです。ちなみに2人共人間ですよ」

ルイン「人間とレプリロイドの友達か…尚更助けないといけないね」

疾走し、再び酸性雨の中に飛び込んだ。
長時間、酸性雨を浴びた石畳は所々陥没しており、酸の池を作っていた。
危なげな道を突き進みながらパレットが叫んだ。

パレット「カリンカちゃん!!コサック博士!!」

ルインに抱えられ、2人の前に着地したパレットは駆け寄る。
コサック博士は紳士という言葉が似合いそうな男性で、カリンカと言う少女は金髪の巻き毛をしており、10を数えたばかりに見えた。

コサック「パレット…」

カリンカ「パレットちゃん…助けに来てくれたの…?」

パレット「勿論、良かった。無事で…」

ルイン「パレット、今から簡易転送装置で、2人を転送するよ。後は私に任せて」

パレット「でも…」

ルイン「ここからは私の仕事だよ。ありがとう、パレット。助かったよ。君は優秀なオペレーターだよ。また会えるといいね、今度はハンターベースで」

パレット「はい、ありがとうございます!!あ、それからこの先にある洞窟の枝分かれした道の奥にコアがありますから気をつけてくださいね!!」

ルイン「ありがとう!!」

カリンカ「お姉ちゃん…」

ルイン「何?」

カリンカがルインに何か言おうとしているのを見たので、ルインは屈んで目線を合わせる。

カリンカ「ありがとう…」

ルイン「っ…どう致しまして」

感謝の言葉に目を見開いたが、次の瞬間、花のような笑顔を浮かべた。
3人を転送すると、ルインは更に奥へと進んだ。



































パレットの指示に従ったルインはコアを破壊し、先にいるレプリロイドを発見した。
酸性雨の及ばないこの場所で女性レプリロイドはうずくまっていた。

ルイン「大丈夫ですか!!?」

ぐったりとしている少女を揺さぶる。
ルインの声に反応し、気を失っていた彼女は目を見開いた。

ルイン「良かった…無事だったんですね」

「イレギュラーハンター…?」

ルイン「そうです。もう大丈夫ですよ」

「駄目…逃げて…」

ルイン「え?」

「ハヤク…ニゲテ…」

ルイン「!!?」

異変を感じたルインは即座に距離を取った。
少女の顔は黒く変色し、両の瞳は真っ赤なモノアイに変貌を遂げていた。

「ガガ…ニ、ゲテ…ガ…」

ルイン「イレギュラー化した…?そんな、どうして…?」

ルインは辺りを見回し、異変の原因を探る。

ルイン「ん!?」

少女の頭上に、途中で見かけた蛸のようなメカニロイドが漂っていた。
異常なデータ反応を示したイレギュラー。
発現したナイトメアソウル。
過去の記憶から導き出された結果は…。

ルイン「あれが元凶か!!」

フルチャージショットでイレギュラーを破壊したが、少女は元には戻らない。
もはや異形と化した彼女に何をしてやれば、脳裏をよぎった不安を即座に払拭する。
大丈夫だ、彼女はまだ壊れていない。
壊れてさえいないのなら、きっと元通りになれるはず。

ルイン「少しだけ待って下さい。すぐにケイン博士に連絡を…っ!!」

変貌を遂げた少女が、ルインに向けて光弾を放ったのだ。

ルイン「や、止めて下さい!!正気を保って!!」

「ダジゲデ、ダヅゲ……」

降り注ぐ光弾の雨を全身に浴びながら、ルインは途方に暮れる。
反撃などできるはずがない。彼女は善良なレプリロイドであり、イレギュラーではない。

ルイン「早く……ケイン博士に連絡、を……」

まだ、彼女には理性がある。
完全にイレギュラーと化していない。
希望を捨てなければ、信じていれば、きっと元に戻れる。

「オネガイ…ゴロジデ……」

ルイン「っ…うわあああああ!!!!」

フルチャージショットを少女に向けて繰り出し、少女を完全に破壊した。

ルイン「…ごめんなさい……」

物言わぬ残骸と化した少女に謝罪をしながら、先へ進む。



































調査員の下へ辿り着いたルインは扉をぶち破る。
現れたのは巨大な甲羅を装備した大型レプリロイド。
甲羅を回転させながら地上に降り立ち、甲羅を見せ付けて顔だけを向ける。
戦士の衿持をうかがわせる精悍な顔。
彼が大地を踏み締めるとズンッと物凄い地響きがした。

ルイン「あなたがナイトメア調査員、レイニー・タートロイドですね?」

タートロイド「ルイン…噂は聞いている。同じレプリロイドとして尊敬する」

ルイン「そんなことはどうでもいい!!早く…早くナイトメアを止めて!!」

今の彼女にタートロイドの称賛は無意味だった。
激しい怒りを浮かべながらタートロイドにバスターを向ける。

タートロイド「ナイトメア…直にレプリロイドの未来を救うものだ。」

ルイン「何を言っているの!!?レプリロイドを狂わせて何が救うものだと言うの!!?狂わされた人の気持ちが…狂ってしまった人を倒した気持ちがあなたに分かるか!!」

タートロイド「…私には信じるしかないのだ。主のことを…」

ルイン「どういうこと…?」

真っすぐ向けた銃口が少し力を失う。

タートロイド「私のせいであのお方は罰せられた。なのに、また私に生を与えてくれた。だから…私は与えられた使命を果たすのだ…。この命に代えても…」

ルイン「なら、戦ってでも止めてみせる!!」

フルチャージショットを繰り出し、即座にバスターを連射する。
激しい攻撃がタートロイドに浴びせられるが、全くダメージを受けていない。

タートロイド「無駄だ…。私の甲羅はどんな攻撃も受け付けない。」

逆にタートロイドが攻めに回った。
甲羅からミサイル弾を発射する。

ルイン「う…っ…」

ミサイルを受けたルインが吹き飛ばされた。

タートロイド「我が主の障害を取り除くのも私の使命。頼む、退いてくれルイン」

タートロイドは辛そうに吹き飛ばされるルインに言う。
使命とは言え、尊敬しているイレギュラーハンターを、主の友人を死なせたくはなかった。
だがいかなる攻撃でもルインの不屈な魂を消すことは不可能だった。

ルイン「あなた達を止めなければ、ナイトメアは無くならない…なら私はあ!!」

セイバーで甲羅を攻撃していくうちに、甲羅の緑の水晶は剥がれ、回路が剥き出しとなる。
ルインは躊躇うことなく、セイバーによる斬撃を浴びせ、タートロイドにダメージを蓄積させていく。

タートロイド「私も負けるわけにはいかない…主のために…」

甲羅を丸め、巨体を活かした体当たりをルインに喰らわせようとするタートロイド。
壁に伝って回避したルインは凄まじい振動で壁から振り落とされた。
仰向けに倒れた彼女にタートロイドの巨体が迫る。

ルイン「(私…死ぬの……?)」

絶望が胸を過ぎるが、エックスやアイリス、ルナやエイリア、そしてゼロの顔が脳裏を過ぎる。
濡れ衣を着せられた彼のために自分は負けられないのだ。

ルイン「私は…私は…あなた達には負けないッ!!!!」

絶叫がセイバーを作動させたのか…。
チャージセイバーの一撃がタートロイドに見舞われた。
チャージセイバーを受けたタートロイドは身体を硬直させ、弁慶の立ち往生よろしく仁王立ちして、その後ズウン…という音を立てて倒れた。

ルイン「タートロイド……」

タートロイドはルインの呟きに微笑むと機能停止した。
こうしてイナミテンプルのナイトメアはタートロイドの死を持って停止したのだ。






































~おまけ・彼氏彼女の趣味~

時間軸はX4後、エックスとルインが交際して間もない。

ルイン「~♪」

ルインは裁縫セットを取り出すと縫いぐるみを作り始めた。
ルインは人形作りが趣味であり、度々縫いぐるみを作っている。
ルインのデスクの脇にある棚には最初の大戦の時のエックス(右からファーストアーマー、セカンドアーマー、サードアーマーの順)、ルイン(ZX、HX、FX、LX、PXアーマーの順)、ゼロ(X1とそれ以後の順)の掌サイズの縫いぐるみが置かれていた。
全て、エックス達の特徴を上手くデフォルメされている。
今回作るのはフォースアーマーとアルティメットアーマーのエックスの縫いぐるみと、ブラックゼロ、OXアーマーのルインの縫いぐるみである。



































ルイン「ふふ…可愛い…」

エックスの縫いぐるみを見遣りながら棚に置くと、ふとエックスが使っている棚に目がいく。
棚の一部を調べると何故かスイッチがあった。
好奇心には勝てず、ルインはスイッチを押すと棚がスライドし、隠し扉が現れた。

ルイン「エックス…隊長権限で何を作らせてるの…?」

隠し扉を開け、中に入るとそこは小さな空間だった。
壁全体が棚で埋め尽くされ、棚にはフィギュアがズラリと並んでいる。

ルイン「……何なの、この部屋は………?」

いけないものを見てしまったような気がしたところに、エックスの声。

エックス「ルイン、何をして……うわああああああ!!!?」

ルイン「きゃ!!?」

急いでルインを部屋から出し、隠しスイッチを押し、元に戻した。

エックス「ルイン…」

ルイン「え?ああ、ごめんねエックス。まさかエックスがフィギュアを集めてるなんて知らなくて…」

エックス「う…な、何故か分からないけど集めたくなるんだ。」

ルイン「何となく分かるよ。可愛いもんね。例えば…このメットール♪」

エックス「あ、ああ…メットールは今から100年前に造られたのにまだ使われてるんだ」

ルイン「うん。凄いよね」

フィギュアのメットールは動いたりはしないが、本物を限りなく再現している。

エックス「君もまた縫いぐるみを?」

ルイン「うん!!」

フォースアーマーのエックスの縫いぐるみを手に取るとルインの縫いぐるみの傍に置いた。

エックス「何故わざわざくっつけるんだ?」

ルイン「だって、私の人形はエックスの人形の傍にいたいと思ってるから」

ルインは立ち上がると、エックスに寄り添った。

ルイン「こっちの私も…ね!!」

エックス「………」

エックスは赤面しながら俯くが、2人の間には甘い空気が流れていた。 
 

 
後書き
タートロイド撃破。 
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