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ロックマンX~朱の戦士~

作者:setuna
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第七十二話 Revival

 
前書き
戦士の目覚め。 

 
話はアイゾックの演説から前日に遡る。
コロニー破片落下事故から20日後。
真っ暗闇の世界でゼロはたった1人で立っていた。

ゼロ『ここはどこだ…』

ゼロは己のいる場所を見定めずにいた。
確か自分はシグマの最後の執念の攻撃を受けたはずだ。
半身を失い、エックスに抱かれていた。
しかし身体は何故か元に戻っており、何処かも分からぬ場所に立っていたのだ。
その彼を史上最強のイレギュラーが襲う。

ゼロ『はっ!シグマ!!』

忌まわしいあの男と対峙。
こうして戦ったのはいつのことか。
セイバーを持たずに拳で相手をしていた。

ゼロ『うん?おかしい…シグマを倒したはずなのに、何でまたシグマと戦っているんだ?』

突如ゼロの身体に苦痛が走る。
胸を締め上げられるような苦しさであった。

ゼロ『そうか…エネルギーが切れかけて記憶メモリーが暴走しているのか…いよいよ俺も最期…死ぬのか…』

『まだだよゼロ君』

ゼロ『誰だ?』

『君はまだまだ生きなきゃ駄目…』

ゼロ『あなたは誰だ?』

神々しいオーラを纏いながら現れた女性にゼロは思わず後退した。

『私?私はこの世界を見守ってる神様でーす』

ゼロ『は?』

色々と有り得ない発言だ。
頭がおかしいのではないかと不審そうにゼロは女性を見つめる。

『あ、ひっどーい。何その目?私神様なんだよ女神様なんだよ?せっかく君の新しいボディを用意してあげたのに…』

ゼロ『何?』

女神が手を翳すと映像が映り、荒野にて倒れているゼロのボディがあった。
シグマの攻撃を受けて大破したはずなのに傷1つない。

ゼロ『あれは…では今の俺は一体……』

『今の君は魂だけの存在となってここにおるのじゃ』

ゼロ『トーマス・ライト…』

ライト『うむ、久しぶりじゃなゼロ…。助かって良かった…』

ゼロ『何故だ?何故俺を助けた?俺はあの男の…世界を滅ぼそうとしたあの男の作品なんだぞ?言わばあなたにとって敵なんだぞ?』

ライト博士に詰め寄るゼロに女神は落ち着かせるように肩に手を置いた。

『誰に造られたかなんてどうでもいいんじゃないかな?君は君だよ。彼が君をどんな目的で造ろうと君には関係ないんだから』

ゼロ『し、しかし…』

『大切なのは“心の在り方”だよ。君は1度でもイレギュラーに堕ちたいと思ったの?』

ゼロ『そんなことはない!!』

女神の言葉に思わずゼロは声を荒げる。
それを聞いた女神はニコリと笑うと指を鳴らすと、現実の世界に移動する。




































瞬く間に変わった風景にゼロは辺りを見回す。

ゼロ「これは…」

信じられないものを目の当たりにしたゼロは目を見開いている。
ここはさっきの映像で映っていた場所だ。

ゼロ「あなたは一体…」

「だから女神だって…立ち話もなんだし、中でしようか」

更に指を鳴らすと、建物が現れた。

ゼロ「………」

あまりにも有り得ない現象にゼロは目を見開きながら建物を見上げる。

「さあ、中に入って、居心地は保障するから」

女神に促されたゼロは建物内部に入る。



































「はい、ゼロ君。ミルクティーだけどいいかな?」

ゼロ「あ、ああ…」

テーブルにミルクティーのカップが2つ現れる。

「そうそう、ゼロ君。君の体内にあったロボット破壊プログラムなんだけど…」

ゼロ「!?何故それを…」

何故自分の体内にあるロボット破壊プログラムの存在を知っているのだとゼロは驚愕したような表情を女神に向ける。

「だから私は女神なんだよ?ロボット破壊プログラムの存在を知ることなんて造作もありませーん」

その態度が女神と見られない原因だと彼女は気づいているのだろうか?

ゼロ「あんたが本当に女神なら…何故俺を助けた?俺は…俺は世界を狂わせたんだぞ……」

「確かにね、でも正確に言えばロボット破壊プログラムを君に搭載した君の父親のせいだよ。」

ゼロ「………」

「ゼロ君、君はまだ死んでは駄目、エックス君達が君の帰りを信じて待っているんだから」

ゼロ「エックス…達が……」

「ねえ?ゼロ君、君はどうしたいの?生きたいの?生きたくないの?自分の罪から逃れたいから今必死になって戦っているエックス君達を見捨てて逃げるの?君の帰りを信じて待っているアイリスちゃんも約束を破って見捨てるの?」

それが耳に届いた途端、思考よりも先に勝手に身体が動いていた。
一歩踏み出した動きは完全に戦闘用レプリロイドのそれで、瞬きの間に間合いを詰めながら、右腕で女神の胸倉を掴んだ。
先ほどまで暗く沈んでいた蒼い双眸が、煮詰まった怒りに染まってギラギラと発光していた。

ゼロ「ふざけるなよ…!!俺だっていられる物ならエックス達と共にいたい…!!そしてアイリスとの約束を守ってやりたい…!!俺は…あいつらと一緒に生きたいんだよ!!!!」

「なーんだ。やっぱりそれが本音なんじゃない」

感情の赴くまま言ってしまってから、ゼロは急に頭の芯が冷えるのを感じた。
心の奥底に必死に押し込んでいたまだ生きていたいと思う気持ちが蘇って、力無く右腕を下ろす。

「生きる意志すら無くしたのかと思ってたよ。でもその様子だとそうじゃないみたいだね」

ゼロ「無理だ…俺にはロボット破壊プログラムがある……俺が生きていればまた血塗られた歴史が繰り返されるんだ…」

「卑屈だなあ…実は君のボディはそのロボット破壊プログラムが搭載されてないコピーボディなんだよね」

ゼロ「っ!!」

「どういう意味か分かる?」

女神が言わんとすることの結論に至って、ゼロは息を呑んだ。
震える息を吐き出すと、動力炉が音を立てたような気がした。

「君はもうあの男の介入に苦しむことはないし、シグマのようなイレギュラーを生み出す元凶にはならない」

ゼロ「本当…なのか……?」

「うん、本当ならオリジナル・ボディから外した方がいいんだろうけど私の力を持ってしても出来なかった。だからオリジナル・ボディは封印して、コピーボディを造ってみました」

ゼロを造った男が作り出したロボット破壊プログラムは神の力の領域をも超える技術だとゼロに告げた。

ゼロ「…………」

「コピーボディはオリジナル・ボディの大抵の機能を受け継いでいるけど、その代わり、ロボット破壊プログラムを取り除いたことで君のウィルスに対する耐性は大きく下がるよ。シグマウィルスを浴びてもパワーアップも回復も再生もしないしダメージを受けるだけだから。コピーボディなんだから当然だけど」

ゼロ「構わない…寧ろそれでいい」

ウィルスを浴びてパワーアップしてイレギュラー化する恐怖を味わうくらいなら、そちらの方がずっといい。

ゼロ「………」

「行くの?」

ゼロ「ああ、俺はイレギュラーハンター。そろそろ戻らないといけない。仕事も溜まっているだろうからな」

「ストップ。今の状態でハンターベースに向かうのは危険過ぎるよ?」

ゼロ「何故だ?」

「今世界中でナイトメア現象ってのが起こっててね。君の姿をしたナイトメアが現れたの。」

ゼロ「ナイトメア?」

「シグマウィルスの亜種と言えばいいのかな?レプリロイドに寄生するタイプでレプリロイドに悪夢を見せて狂わせる悪趣味なウィルス。」

ゼロ「誰の仕業だ?」

「それを聞いてどうするの?」

ゼロ「何?」

「確かに私は君を復活させて、ロボット破壊プログラムも封印した。けどそれは君がこの世界に必要だから。」

ゼロ「………」

「いざとなったら神様がいるなんて思っちゃ駄目。この世界は、この世界を生きる君達が守らなきゃいけないの」

厳しく言う女神の言葉にゼロは俯いた。
確かに彼女の言う通りだ。
神がいるからと言ってそれに甘えていてはただの堕落だ。
この世界はこの世界に生きる自分達が守らなければならないのだ。

ゼロ「すまない、今のは忘れてくれ」

「頑張れゼロ君。ここから北に行くとルナちゃんの拠点があるから。私がルナちゃんに話を通しとくよ」

ゼロ「ルナが?」

「うん、私がルナちゃんの育ての親だからね。おじいさんに化けてあの子を育ててきました。後で連絡を入れておくよ」

ゼロ「そうか…感謝する」

ゼロは建物から出ていくと北を目指して駆ける。
それを見届けた女神は立ち上がると再び異空間へ去る。



































ライト「女神殿…」

「(さて…急がしくなりそうだ……)」

女神はライト博士と合流すると、即座にこの世界の騒動の真の元凶を探し始めた。 
 

 
後書き
ゼロ復活。
最初はオリジナル・ボディのロボット破壊プログラムとワイリー介入のプログラムを封印するという形にしようと思いましたが、コピーボディの方がいいかなと修正しました。
ブラックゼロとかは今まで通り使えますよ。
 
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