ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第2章 滅殺姫の憂鬱と焼き鳥の末路
第37話 開戦!
魔法陣の光が収まるとそこはよく見慣れた部室だったわ。ここは原作通りのようね。
「あ、あれ? 転移失敗?」
「よく見なさいイッセー、龍巳もレイナーレも、そしてグレイフィアさんもいないでしょう?」
「あ、確かに。じゃあここが」
「ええ、どうやら学校がゲームフィールドのようね。さっさとあの2人を呼びましょ。おいで龍巳」
「ああ、そうだな。来い、レイナーレ」
すると私達の前に使い魔召喚用魔法陣が展開、中から龍巳とレイナーレが現れた。これで全員揃ったわね。
『皆様、ようこそおいでくださいました。私はこの度グレモリー、フェニックスご両家開催のレーティングゲームの審判を仰せつかりましたグレモリー家使用人、グレイフィアと申します。我が主、サーゼクス・ルシファー様の名のもとに今宵のゲームを見守らせて頂きます。皆様、どうぞよろしくお願いいたします』
龍巳とレイナーレが現れてすぐ、校内放送でグレイフィアさんの声がした。
『早速ですが、ゲームのルールについて説明いたします。今宵のゲームに用意いたしましたのはリアス様の通う人間界の学校、駒王学園といたしました。それぞれ転移先が本陣となっております。リアス様の本陣が旧校舎2階のオカルト研究部部室、ライザー様の本陣が新校舎最上階の生徒会室となっております。兵士の方々はプロモーションする際には敵本陣周辺までお越しください』
ふむ、ゲーム前に色々やっちゃったけど、どうやらルールの方は原作通りみたいね。安心したわ。変な制限付いちゃったら厄介になってたかもしれないし。
『開始のお時間です。なお、人間界の夜明けまでが制限時間となっておりますのでご注意ください。それではゲームスタート』
そうグレイフィアさんが言った瞬間学校のチャイムが鳴った。ちょっと緊張感なくなるわね。しかし夜明けまでか。この所は五時前には日が昇ってくるし、それを考えると4時間前後で決着を付けたいからあまりおちおちとしていられないわね。
「ではまず皆これをつけてちょうだい」
そう部長が言うと共に朱乃さんが皆にイヤホンマイクタイプの通信機を配った。
「戦場ではこれを使ってお互いにやり取りするのよ」
取り敢えずつけましょうか。でもこれ、戦闘してたら壊れたりしないかな? 連絡取れなくなったら不便だし気をつけよう。
「さて、ではまず作戦を考えなければならないわね。まずは兵士の対処が先決かしら? 8人全員が女王にプロモーションしたら厄介よ」
確かに。そんな状況はあまり想像したくないわね。
「どうします? いっそのこと旧校舎を破壊してしまいますか?」
あ、朱乃さん、随分とアグレッシブですね。
「あ、それなら任せるにゃ」
「黒歌、何か良い案でもあるの?」
「私が仙術で旧校舎の周りの森全域に霧を発生させるにゃ。幻覚作用付きの毒霧にゃから森に入ったが最後彷徨いながら血を吐いてジ・エンドにゃ」
うわ~、それはなんというか、向こうのオフェンスがかなりかわいそうね。
「それ、私達は大丈夫なのかしら?」
「その点も心配ないにゃ」
そう黒姉が言うと、黒姉の手のひらに9個の靄を固めたようなものが現れた。
「これを飲んでおけばゲーム中は霧の毒に侵されないにゃ」
「……決まりね。黒歌、すぐに取り掛かってちょうだい」
「了解にゃ」
私達が黒姉から靄の塊を受け取って飲み込むと、黒姉はさっさと窓から飛び出していったわ。
「朱乃、念のため旧校舎全体に3重の結界を張ってちょうだい」
「はい部長」
朱乃さんは返事をするとちゃんとドアから外に出ていった。行き先は……屋上かな?
「後は森の各所に罠を設置すればここは大丈夫かしらね?」
「あ、じゃあそれは僕が行きます」
「我も手伝う」
「あ、私もです」
「私も行くわ。堕天使式の罠を張れば少しは相手も怯むでしょ」
と、そんなわけで祐斗を先頭に龍巳、白音、レイナーレが罠の設置に向かった。祐斗とレイナーレに関しては心配はないんだけど……龍巳と白音に関してはちょっと心配ね。とんでもない罠を仕掛けそうで怖いわ。踏んだ瞬間学校全てを吹き飛ばす罠とか。……さすがに大丈夫よね?
「さて、序盤はこんな感じかしらね? 皆が戻ってくるまでここで待機していましょう」
そう言うと部長はソファーに座りお茶を飲みだした。
「そうそう、忘れていたわ。イッセー、こっちにいらっしゃい」
「はい? 何ですか?」
部長に呼ばれてイッセーはソファーの所まで行ったわ。何かしら。
「イッセー、ここに横になりなさい」
と言いながら部長は自分の膝をポンポンッと叩いた。あ、そういえばそんなイベントもあったわね。一方イッセーはピシッと固まった。
「あ、あのそれはどういう?」
イッセーはそう言いながら……何故か私の方をチラチラ見てきた? なんだろう?
「何? イッセー」
「いやその」
「別に私にお伺い立てなくてもいいわよ。役得じゃない。あ、黒姉たちには内緒にしておいてあげるから安心しなさい」
私は苦笑しつつそう言うとイッセーはガクッと肩を落とした。だから何でそこで喜ばずに落ち込むかな?
「ほら、早くなさい」
何故か部長まで苦笑しながらイッセーを促す。そんなイッセーは観念したかのように部長の隣に座ると頭を部長の膝に乗せて横になった。
「あの部長、これに何の意味が……」
「黙って」
そう言うと部長はイッセーの頭に手を乗せると
ドクンッ
イッセーの気配が膨れ上がったわね。その変化にイッセー自身も驚いてるわ。
「あの部長、これは一体……?」
「覚えてる? 私はあなたを転生させる際に兵士の駒を全て使ったわ」
「はい」
「でもそれはあなたの赤龍帝の籠手によるところが大きかった。だからあなたの体が兵士の駒8個に耐えられるかどうか分からなかったのよ。だから今まで封印を施していたの。でも今回の修行であなた自身もだいぶ強くなったわ。だからその封印をちょっとだけ解いたの。今あなたが感じているのは封印を解かれた駒の力よ」
そう言いながら部長はイッセーの頭を撫でた。
「今のあなたなら女王にもプロモーション出来るはずよ。いい、イッセー? 相手がたとえ女の子でも手加減などはもってのほか、全力でぶつかりなさい。相手は殺す気で向かってくるはずよ」
「はい部長、それに部長をあんな焼き鳥なんかと結婚なんてさせません。絶対守ってみせます!」
「ふふ、ありがとう。頼りにしてるわよ、私の可愛いイッセー」
あらら、何かいい雰囲気になっちゃった。それはいいんだけど……
「むぅ~」
私の横でむくれてるアーシアをどうにかしてくれないかな? さっきからほっぺた膨らませて泣きそうになってるんだけど。……あ
「部長、イッセー、黒姉たち帰ってきましたよ。もうすぐ扉の前です」
そう言った瞬間、シュバッとものすごい速さでお互いソファーの両端に寄った。……今の動き、私にも見えなかったんだけど。どんだけ黒姉達が怖いのよ? と思っているとドアを開けて黒姉達が帰ってきた。
「ただいま~、準備万端にゃ」
「ん、罠もバッチリ」
「そ、そう。お疲れ様」
「……部長、何でそんな端っこに座ってるにゃ? 何かあったのかにゃ?」
「な、何もなかったわよ!? ねえ、イッセー!」
「うぇ!? あ、ああ、何もなかったぞ!? ホントのホントに何もなかったから!!」
……2人共、その反応は何かあったと言ってるようなもんだよ。
「……ふ~ん、あっそ。ねえ火織、本当に何もなかったのかにゃ?」
その瞬間黒姉の背後で部長とイッセーがまるですがるような目つきでこっちを見てきた。もう、しょうがないな~。
「まあそういうことにしておきましょうか」
取り敢えずどっちとも取れる曖昧な答えにしておいた。だってそっちの方が後々面白そうなんだもん。
「さて、じゃあ皆行きましょうか」
今私たちは旧校舎の玄関に集まってるわ。メンバーは私、朱乃さん、黒姉、イッセー、祐斗、レイナーレ、白音。アーシアは部長と一緒に部室に待機、龍巳は部長とアーシアの護衛。ここからチームを4つに分けて攻めるのが部長の作戦よ。
ふと隣のイッセーを見ると手がほんの少し震えていた。もう、しょうがないな。私はそっとその震える手を握ってあげた。
「落ち着きなさいイッセー。大丈夫よ、今のあなたならそう簡単にはやられないわ。自信を持ちなさい。あなたはあの修行を最後まで乗り切ったんだから」
「……ああ、そうだな。ありがとう火織、もう大丈夫だ。それにあの焼き鳥には言ってやりたいことがあるんだ! こんなところで尻込みしてる場合じゃないよな!」
「ふふ、その意気よ! じゃあ行って来なさい!」
そう言って私はイッセーの背中をバシッと叩いてあげた。イッセーはそのまま走って第一目標に向かっていった。そしてその後を今回のパートナーの白音が追って行った。
「じゃあ私達も行きましょうか、朱乃さん?」
「ええ、そうですわね」
そうして私たちは4方向に散っていった。
☆
皆と別れた後、俺と白音ちゃんは第一目標、体育館へとやってきた。ここはフィールドの中心ということで、早々に俺と白音ちゃんが向かうことになったんだ。遮蔽物を伝って新校舎から見えないように体育館へ向かい、裏口からそっと中に入る。
白音ちゃんは敵の位置を探るように猫耳をピコピコさせていた。最近の白音ちゃんは関係者のみの時はいつも猫耳と尻尾を出してるんだけど、やっぱりまだ慣れないな。可愛くてつい抱きしめたくなっちまう。
「(いいんですよ、抱きしめても)」
「(え!? 俺声に出してた!?)」
「(口の中でブツブツ言ってました。私耳はいいんです)」
そう言いながら白音ちゃんは更に耳をピコピコさせた。畜生、俺のバカ。何恥ずかしいこと本人の目の前で言ってるんだ。
「(抱きしめないんですか?)」
う……、そんな上目遣いでそんな事言われたら
「(……今ゲーム中だしまた今度な)」
「(約束ですよ……えへへ、お兄ちゃんの抱っこ♪)」
ああもう可愛いなこんちくしょう! せめて皆にはバレないようにしないと!
と、そんなやり取りをしていると不意に白音ちゃんは目を細めて真剣な顔つきになった。
「(いますね。数は……2人です)」
「(早速のお出ましか。駒は分かるか?)」
「(一度部室で会ったきりなんで確証はないですが……おそらく兵士の双子だと思います)」
「(あの2人か。確か火織の話だとイルとネル……だっけ?)」
「(だと思います。それに……どうやらこっちに気付いてますね)」
「(マジか!? 見つかんないようにこっそり入ってきたつもりだったのに!)」
「(多分体育館の2階から周りを見ていたんだと思います。不意打ちは無理そうですね。どうしますかお兄ちゃん? 私一人でも大丈夫ですけど)」
「(……いや、俺も行く。戦うために修行したんだし、守られてるばっかってのはもう嫌だ)」
「(ふふ、お兄ちゃんカッコイイです。じゃあ行きましょうか)」
そして俺達は隠れていた舞台袖から体育館のステージに踊りでた。そして体育館の中央には
「や~っと出てきた。待ちくたびれちゃったよ」
「2人共おっそ~い!」
白音ちゃんの予想通り、そこには兵士の双子がいた。2人共大きなボストンバック背負ってるな。あの中に武器が入ってるのか?
「悪いな、作戦を考えてたんだよ」
「嘘です。イチャイチャしてました」
「って白音ちゃん!?」
なんでそんな相手を挑発するようなこと言うかな!? ほら向こうだて今ので明らかに不機嫌になってるじゃんか! 絶対怒ってるよ!
取り敢えず俺はいつ戦闘になってもいいように準備をする。まずは左手に赤龍帝の籠手を出現させ倍化を始める。それと同時に左の腰に差していた氷輪丸を抜き放ち正眼に構える。隣を見れば白音ちゃんも拳を握ってファイティングポーズを取っていた。
「ふ~ん、刀と素手……か」
「私たちの敵じゃなさそうだね、お姉ちゃん」
そう言うと2人はボストンバックに手を突っ込み……って!?
「チェ、チェーンソー!?」
おいおい武器にチェーンソーとか何考えてんだこの双子姉妹!?
ドルルルルンッ
そして2人はチェーンソーのエンジンをかけ、それぞれ大上段に構えた。あぶねーなおい!
「大丈夫ですか、お兄ちゃん?」
「ああ、大丈夫。俺だって必死に修行したんだ。こんなところでやられてたまるか!」
『Boost!!』
向こうがチェーンソーの準備をしてた間もこっちは着々と倍化してたしな! やれるはず!
「分かりました、無理しないでください。では……行きます!」
白音ちゃんの掛け声と同時に双子に向かってかけ出した。俺が右、白音ちゃんが左だ。一方双子の方もこっちと同時にかけ出した。
「「バ~ラバラ! バ~ラバラ!」」
ってだからお前らどんだけ物騒な性格してるんだよ! 掛け声おかしいだろ!
俺は振り下ろされてくるチェーンソーを横に飛んで避け、間合いを測る。でも向こうはお構いなしにチェーンソーをぶん回しながら突っ込んできた。俺は後退しつつ避けまくる! でもなんかおかしいな。いつもの剣道の立ち会いに比べて随分避けやすい……そうか! あのチェーンソー、この娘にとっては武器として重すぎるんだ! だから重心もぶれぶれだし、振られるチェーンソーもフェイントなしの直線的な動きばかりなんだ!
『Boost!!』
よし! 倍化も溜まってきたし、そろそろ反撃するか! これなら火織どころか木場と比べても楽勝だ!
『Explosion!!』
よし! これで一定時間は激しく動いても倍化がリセットされることなく戦える! 加えて!
「霜天に坐せ! 氷輪丸!」
その言葉とともに柄頭から鎖が伸びて氷輪丸の能力開放状態になった! よし! いける!
「バ~ラバラ! バ~ラバラ!」
相変わらずの掛け声で突っ込んできた。でももう逃げない。よく見ればチェーンソーの軌跡を読むのは容易いから避けるのは簡単だし合わせるのだって……!
「ここだ!」
俺は振り下ろされるチェーンソーの横っ腹に刀で斬りかかる! そして……
「うそ!? 何これ!?」
チェーンソーがガッチガチに凍りついた! しかもそれを持つ手も凍りついて捨てることも出来ない! そして何より
「スキだらけだぜ!」
「えっ!? きゃあ!!」
俺はあまりの事態に動きを止めてしまったそいつを赤龍帝の籠手で思いっきり殴り飛ばした。その結果双子の片割れは盛大に吹き飛び体育館の壁に叩きつけられた。そして俺は氷輪丸に倍化した魔力を注ぎ込み
「行っけぇぇぇぇぇ!!」
氷龍を召喚、一気に放った。
ズシャァァァァァン!
その結果、さして倍化もしていなかったので込められた魔力も少なく、全身を凍りつかせることは出来なかったけど見事相手を壁に氷で貼り付けにすることが出来た!
「よし! 1人撃破! 白音ちゃんそっちは……」
俺はすぐさま白音ちゃんの加勢に行こうと白音ちゃんの方に振り向くとそこには……チェーンソーをバラバラにされお腹を抑えうずくまる相手と、その前で仁王立ちする白音ちゃんがいた。……ですよねー。俺の助けなんてなくても白音ちゃんなら楽勝ですよねー。少しでも「白音ちゃん、すぐに助けてあげる!」なんて思った自分が恥ずかしい!
「くっ、ネルまでやられるなんて……。なんでお兄さんたちそんなに強いのよ」
「そりゃ地獄のような修行を生き抜いてきたからな」
ほんとに地獄だったんだぜ? それに比べたらこの位で負けられるか。
「うっ……ごめんダメだった。やって」
さっきネルって言ってたからこっちはイルか? そのイルが小声で呟いた。っていうか今のどういう意味だ? ダメだったって……あ!? もしかして通信機で連絡したのか!? それにやってって……まさか!?
「お兄ちゃん!!」
白音ちゃんが血相を変えて俺に飛びつくと同時に俺の視界が轟音と共に爆炎で埋め尽くされた。
ページ上へ戻る