仮面ライダー龍騎【13 people of another】
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Part One.
First chapter.
第5話
───2014年・冬───
「先輩、何を見ているんですか?」
警察機動隊の若い男が先輩に話しかける。
彼は手にファイルを持っており、それをジッと見つめていた。
「いや、少しな……」
「あ、それって確か…12年前の事件のファイルですよね。でも、なんで今更?もうあの男は射殺されて……」
「よく、あの事件だとわかったな」
「その時俺中学生だったな……下校の時とか先生に注意されましたし……親も煩かったんですよ……それに、名前は何度も聞いてましたからすぐにわかったんですよ」
「……あの事件の傷跡も、だいぶ消えたな」
彼はまたファイルに目を通す。
そんな彼の姿に男は首を傾げた。
何故、もう終わった事件を掘り返しているのか、それが理解できなかったのだ。
「………そういえば。その人、当時人質を取ってたらしいですね」
男がそう言うと彼はファイルのページをめくるのをやめた。
「その子、今何してるか先輩知ってるんですか?」
「それを調べているんだ」
「へ?」
「……読川さんの子供だよ」
「あ、今家出中の!?」
「大声で言うな!」
彼は男の口を抑える。
「でも、読川さん言ってたな……」
「な、何をですか?」
「あいつがやった唯一の善行は、あの子を殺さなかったことだってな」
「……え?」
そう言って彼は席をたった。
そこにはポツンとファイルが残るだけだ。
「……浅倉、威……か。あの凶悪犯が、人質とはいえよく当時5歳の子供を生かしておいたな……」
そう言いながら男は口元を歪める。
「まあ、そのおかげであの計画が実行できたんだがな……」
男は誰もいないことを確認し、窓の中へと入って行った。誰もいなくなった部屋の机には浅倉威の事件ファイルが置かれているだけであった。
───…
───2002年・夏───
「ちょっと待って!」
ナナは追いかけていた男の手首を掴んだ。
男は振り返るがナナの全く知らない男だった。
「……あ、すみません。人違いでした」
そう言うと男は何も言わずそのまま立ち去った。
そのことに少し肩を沈めていたナナを城戸が見つけナナの肩に手を置く。
「いったいどうしたんだよ、読川!」
「……すみません。知り合いと勘違いして……」
「知り合い……?」
ナナはすっかり元気が無くなってしまっていた。よほど、その知り合いではなかったことがショックだったようだ。
「あ。油島さんの居場所、わかりましたか?」
「…おう、すぐに帰るからって待ち合わせの場所に集合して……」
ナナは城戸の言葉に耳を傾けるが、その頭の中では別のことを考えていた。
(あれは、絶対にあの人だった……なんで間違えたんだろう……服装とか全然違うしあの人より断然貧弱そうだし……)
「おい、ナナ聞いてるか?」
「あ、ごめんなさい」
ナナが城戸から目を逸らすと車の窓の中で戦う龍騎とライアを視界に捉えた。
「城戸さん。先に行っててください」
「は?なんで……?」
「トイレです」
───…
ミラーワールドでは龍騎とライアがモンスターとの戦いを繰り広げていた。
「テメェ!逃げんなコラ!!」
モンスターは龍騎とライアからちょこまかと逃げていた。あっちに行ったと思ったらこっちへ、そっちへ行ったと思ったらあっちへと……いつもこのせいであっという間に9分55秒が来てしまい時間切れとなってしまうのだ。
モンスターを見失った二人は足を止める。龍騎は先ほどまで全力疾走をしていたためか息が切れている。
「やっと倒せると思ったのに……」
「ナナくんを囮にしただけじゃ、倒せないよね……やっぱり」
「あいつ、どこに行ったんだ……?」
龍騎が辺りを見渡した時だった。
モンスターがまるで嘲笑うかのように二人がいる地上よりも高いビルの屋上に移動していた。
龍騎の怒りは(もともとだが)頂点に達した。
「テメェ!逃げんなよ!正々堂々勝負しろ!!」
「芳樹、モンスターに言っても意味ないから!
ちょっといったん落ち着け!!」
「くそ!あいつ、いつもいつもいつも俺らを苔にしやがって……!」
もう許さねぇ!と龍騎が駆け出そうとしたその時だった。目の前からいきなりモンスターが消えた。
「何!?」
「い、いったいどうなって……」
二人は顔を見合わせ急いでビルの屋上へ向かおうとした……が、モンスターが屋上から落ちて来た。それと同時に別のライダーまでやって来たのだ。
「お、お前は……!」
「王蛇!!」
王蛇はまるで二人に興味がないようで、モンスターの方しか向かない。
「この二人が苦戦してるから強いのかと思ったら、全然雑魚だったな……」
「な、なにぃ!?じゃ、倒せるんだよなぁお前!」
「馬鹿か?俺を誰だと思ってる?」
上から目線なのは癪に障るが、今あのモンスターに太刀打ちできるのは王蛇くらいかもしれないと龍騎もライアもわかっていた。それくらい、王蛇は圧倒的な強さを誇っていた。
『Advent』
王蛇は己のコブラ型の契約モンスター【ベノスネーカー 5000AP】を召喚した。しかしベノスネーカーはすぐに王蛇の元から去ってしまった。
『Sword Vent』
次に王蛇は【ベノサーベル 3000AP】を召喚する。
王蛇はそのままモンスターの元へ走った。モンスターは王蛇の攻撃を自身が持つブーメランのような刀で受け止めようとするがそれも意味なく王蛇から重い一撃をくらわされる。
「つ、強い……」
龍騎も呆気に取られてしまい、声が出ない。
今まで散々苦戦を強いられて来たモンスターがああも容易く弄ばれているのだ、無理もない。それと同時に二人は己の力のなさを、王蛇との力の差を感じてしまった。
すると、後ろから何かが爆発するような音がする。
ベノスネーカーだ。ベノスネーカーはなんともう一体のモンスターと戦っていたのだ。それは今王蛇と戦っていたモンスターに瓜二つで、見分けが付かないほどであった。
「なるほど、今までのあの逃走劇のタネはこれか……」
つまり、このモンスターは二人一組になって行動し、二人で一人に見せかけていたのだ。
それに気がついた龍騎とライアは王蛇は戦いのセンスだけでなく頭もキレるのだと、つい恐ろしくなり唾を飲み込む。
王蛇は二人のモンスターを一点に集め、ふんっと鼻で笑った。
『Final Vent』
王蛇はジャンプするとベノスネーカーの毒液の勢いを乗せて連続蹴りをする【ベノクラッシュ 6000AP】を発動しあっさりと二人のモンスターを倒してしまった。
そして、王蛇はそのまま二人の目の前から立ち去ってしまった……。
───…
龍騎とライアは制限時間の9分55秒が来てしまい、王蛇には何も聞けず終いでミラーワールドから出てきた。
油島の家には、ナナも城戸もいなかったが、二人にとっては都合が良かった……。
「……………どう、思った?」
「ハッキリ言おう、ここまで自信を無くしたのは初めてだ」
「……やっぱりな」
「なんか、ハッキリと眼中に無いって言われてるみたいだったな。前のあいつは、そんなことなかったのに」
芳樹はテーブルを叩く。
いつもなら亮平が止めるのだが、その元気は今の亮平にはなかった……。
「完璧に相手にされていない」その事実を受け止めるには少々時間がかかった。
「ただいま帰りました」
数分後、ナナと城戸が油島を連れて帰ってきた。
「あ、おかえりなさい」
「全く、お前らがいるって聞いて驚いたぞ……って、おいどうした、桑元?」
亮平はなんとか冷静を保てたが、負けず嫌いの芳樹はそうも行かなかった。腹を立てているのが一目瞭然で、今帰って来た三人は顔を見合わせる。
「すみません、ちょっといろいろあって……」
「そうか?」
「はい、それより…城戸先輩、ナナくんと餃子作ってくれたんですよね!一緒に食べましょう!」
「いや、俺のなんだけど」
「大丈夫ですよ、いっぱい作りましたから……」
「城戸先輩の料理久しぶりだな〜!」
亮平はそんな空気を紛らわすために話題を別のものに変えた。しかし、芳樹は相変わらずだった。そんな二人を、ナナはジッと見つめていた。
──────────
「──で?何があったんだ?」
結局その日は全員油島の家で泊まることになった。
深夜、もう皆寝静まった頃に起きていた油島が亮平に昼間にあったことを全部聞いた。
「なるほど、王蛇にコテンパにされて意気消沈ね……なんか桑元らしいな」
「いつもなら、もっと強くなってやる!ってそう言いそうなんですけど……今回ばかりは、やっぱり堪えているようで……」
「そういうもんか?」
「はい、いつもの芳樹なら」
目の前で圧倒的な強さを見せつけられた芳樹と亮平はあの時、何も言えなかった。賞賛の言葉も、何も……。
「怖かったんです」
「怖かった?」
「はい、あいつは同じ人間って気がしなくて……じゃあ、あいつはいったい何者なのかを考えると……怖くなって……」
確かに、そうだ。
王蛇は本当に同じライダーとは思えないくらいの力を持っている。
「でも、本当に怖かったのは……芳樹は、わかりませんが……俺には、王蛇が…ナナくんに見えた」
「何?」
「わからないんですよ。
あの子はそんなことをする子じゃないって、わかっているのに……あの子は、ほらまだ何に変身するかわからないし……だから、王蛇じゃないかって……それに、雰囲気がちょっと似てたような……」
「……それなら安心しろ、ナナは今日ずっと城戸と一緒だったんだ、王蛇なってお前らの目の前に現れることができるわけない」
「そう、ですよね」
「疲れてるんだろ?明日になればそんな不安もなくなるだろ」
こうして、油島と亮平も眠りについた。
「……亮平さん、気付きそうだな……」
夜が明けてきた頃、ナナはポツリと呟いた。
ナナは二人の会話に聞き耳を立てていた。亮平は王蛇にナナの雰囲気が似ていると言った。実際そうなのだろう、王蛇はナナ自身なのだから……それでもナナは亮平を殺す気は無い。何故か、その気が起きなかった。
「キミも甘くなったな」
少し苛立った男の声が聞こえる。
「あんたには関係無いだろ?俺は俺のやり方で、ライダー全員を殺す」
「そうだ、残りのライダーのうち、二人が決まったぞ」
「……ああ、そう……」
「キミの願いもそのライダーを含め、キミが信用させているライダー達を倒せば叶う。
何を躊躇しているんだ?まさか、怖いのか?」
「何のことだ?」
「あの人が自分を愛してくれていなかったら……」
「………」
「そうなると、いざ会うのが怖いのだろう?」
「そんなわけ……別に、俺はあの人に殺されても構わない。もともと、そういう仲じゃないし。ただ、都合がいいから一緒にいるだけだ。俺が調子に乗ってるだけ……」
「キミにその自覚があったんだね。
てっきり、キミはそれすら理解できずまたあの殺人鬼を蘇らせる馬鹿なのかと思っていたよ」
「否定しできないな……」
「………でも、キミにはそれまで生きていて貰う。
ライダーを全員殺すまで以外ならどうでもいい」
ナナは男の言葉を無視してまた眠り込んだ。
───…
「おにーちゃんのこと、だいすき!」
そう言うとあの人は頭を撫でてくれる。
さみしい時も、嬉しい時もいつも一緒にいてくれた。
それが例え、自分を利用していたのだとしても、あの時の俺はそれだけでどれだけ救われたか……。
出会いはいつだったのだろうか……少しだけ思い出してみる。
5歳の頃、俺はいきなり家に押し入った男に両親を殺された。その男が、あの人だった。
あの人は初めは俺を殺す気でいたはずだ。今ならわかる気がする……あの目は殺意がこもっていた目だ。
しかし、いきなり乱入してきたモンスターのお陰で俺は一命を取り留めた。
別に、両親にいい思い出があったわけでは無い。
むしろ、自分は愛されてなどいなかった。名前も呼んでもらった覚えが無いし……何より、あの時あの人に両親が殺されていなかったら、死んでいたのは俺だったのだ……。
俺はどうやらミラーモンスターを引き寄せる体質らしい。何度もモンスターに襲われた。その度に、あの人は俺を助けてくれた。モンスターを引き寄せる体質だとわかったあの人は俺を一緒に行動させるようになった。利用していただけだったのだろうが、俺にとって唯一の救いの手だった。
愛されていなくてもいいから、この人と一緒にいたいそう思っていた。
そして、いつしか俺は「名無し」から「名無」を取って「ナナ」と呼ばれるようになった。
犬猫と同じような感覚だったのだろうけど、それでも名前を貰えたことに感謝した。
毎日が楽しかった。
しかしあの日……俺の目の前からあの人はいなくなってしまった……。
「ころさなくてもよかったはずなのに……」
俺は心の底から世界を憎んだ。
後書き
友達に主人公は誰かと聞かれたのですが、強いて言えばナナです。
芳樹「え!?題名に龍騎って書いてあるのに!?」
他のライダーはもう一人の主人公ポジションです。
基本はナナ基準で話しは進みます。因みに友達たちに一番ウケのいい登場人物は油島さんです。
結婚するなら満場一致で油島さんでした。
お、お前らいつからおじさん趣味に!?と思っていたら、「給料が良さそうだから」とリアルな回答をいただきました。
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