ポケットモンスター ホープロード
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第四話 虐待されているポケモンを救え
「今日の任務は…と。」
今日は休日ではあるが任務に休日はない。結構大変な仕事だったりする。
これを本業としている人も多い。
危険な仕事でもあるため報酬はかなりある。
が、ツヴァイ本人は部活動してるようなものと自分を納得させている。
ドライもそのようだが問題はフィーアである。
彼は「疲れた」と嘘をついてズル休みをすることが多いのである。
優しいドライは本気で心配したりしているのだがツヴァイとフュンはもう騙されない。
彼の無断欠勤で少々主に「男」からの評判が良くないのだ。
兄弟四人は容姿に恵まれて異性に人気が高い反面、同性からの評判はあまり良くないこともある。
この四兄弟は周りから「ワンダー兄弟」と呼ばれている。
あまり素性を明かさず黙々と任務をこなすだけで全てが謎に包まれて不思議な存在であることからそう呼ばれている。
だが前述の通り、フィーアの男からの評価が良くないためサボって何をしているのかという皮肉を込めて「ワンダー兄弟」と呼ばれたりもしている。
『緊急招集、緊急招集だよーーん。』
ライフの手持ちであるペラップが本部中に飛び回って緊急招集をかけた。
「緊急招集?何があったんだろう。」
召集場所に次々と保護団員が向かっていく。
ツヴァイも召集所に向かっているとドンと誰ととぶつかってしまった。
「あいたっ!」
「チッ…ちゃんと前見ろ…ってツヴァイじゃねぇか。」
「兄貴…。」
ピリピリした関係の二人がぶつかったようだ。
「俺が相手だったからいいものの…他人だったらとんだ迷惑だったな。」
「フン、とんだ迷惑はこっちのセリフだ。今日はサボらずにちゃんと来てるんだな。」
「おいおい、信頼ねぇな。俺はサボってもねーし。」
「どこにそんな証拠があるんだよ!」
廊下で大声を出したせいか周りが迷惑な表情していた。
「とんだ迷惑かけてるみたいだな。我が妹ながら情けないぜ。」
「くっ、誰のせいだと思って…!」
「ほせほら召集だろ?行くぞ。」
「…ッ。」
何も言い返すことができず、なるべく離れようと先に走って行った。
「またぶつかるなよ。」
召集所はさながら体育館で整列でもすれば学生以外は学生に戻った気分であろう。
一応担当地方によって整列順が変わっており、シンオウ、カントー、ジョウト、ホウエンという並びだ。
今日は休日ということもあり、召集所には人が少なかった。
召集所にこられなかったメンバーは保護団員のモニターが映し出される通信機でリアルタイムで話を聞くことになる。
「緊急招集すまなかったね、君達に大事な話をする必要がある。」
前に出たライフは静かに言った。
若いがにじみ出るカリスマ性がこの保護団員を慕える力になっている。
「ここ最近、各地方でポケモンが暴れる事件が多発している。しかも、その地域には生息しないポケモン達が…。」
「…。」
僕だけじゃ無かったのか、とツヴァイは表情を険しくした。
やはり何かあったのであろう。
「さらに暴れてたポケモンは全て生体実験が行われていた形跡がある。例えばリングマは覚えてるはずのない十万ボルトを使用したりと。」
「!!」
そういうことだったのかとツヴァイは理解した。
森があんなに荒れていたのも全てリングマのせい。カルサは無関係だったのだ。
相性がいいはずのヘラクレスでリングマに対抗しなかったのはサンダースの特性、蓄電で無効化するためだったのだ。
「ロケット団等の凶悪な団体に…いやそれ以上の科学力があるであろう。皆、気を付けてほしい。今日の任務も暴れているポケモンの捕獲も多々ある。」
ざわざわと保護団員達が騒ぐ。
「落ち着いて、時には仲間にも連絡をしながら気をつけて任務をしてほしい。何よりも君達の命が最大優先だ。」
その優しいライフの言葉に女子保護団員はきゃーと騒いでいた。
話が終わるとそれぞれ任務のために戻って行く。
「さて、今日の任務は…。」
「ツヴァイさん。」
「…ミルちゃん。」
小学生でありながら保護団員であるミル。
トレーナーとしての実力も圧倒的な実力だ。
「今日はよろしくお願いしますね。」
深く頭を下げてくるのだが何がなんだか理解できなかった。
「えっ、どういうこと?」
「知らないんですか?今日の任務は私とツヴァイさんで虐待を受けているっていう人の家に行くって言う任務じゃないですか。」
「そうだったんだ…まだ調べてなかった。」
「フフ、それじゃあ行きましょうか。フーディン!」
フーディンを出してテレポート準備だ。
「ヨスガシティにテレポートしてください。」
ヨスガシティなんだ…とツヴァイは心の中で思った。
自分よりもしっかりしている年下の人間に少し劣等感を感じた。
妹であるため結構甘やかされて育った気はある。
一方、カルサは年上とはとても思えない存在であったのだが。
そう考えているとテレポートが済まされていた。
「うーん、情報が少なすぎてわからないですね…。近隣住民が虐待をしている可能性があるって言ってただけですから…。そうだ、あの人に聞いてみましょう。」
「う、うんそうだね。」
年下に引っ張られているいて恥ずかしい。
だからといって自分が率先して動くことはできない。
本当に妹体質だな…と思った。
そもそも虐待や暴れてるポケモンの情報、誘拐犯などは主にパトローしてる団員や近隣住民から情報が寄せられている。
ただ、中にはデマを巻いて困らせたりすることもあり空振りで終わることも少なくはないのだ。
「すみません、私達は保護団員なんですが…。ポケモンの虐待について知らないですか?」
「さあ、知りません。」
「ありがとうございました。」
そう頭を下げていく。
「よし、僕も聞き込みを開始しないと。」
こういうものは聞き込みが大事である。
虐待は目に見えないものが多く、見過ごされやすいものだ。
だから念入りに調べなければならない。
二人出動は妥当であろう。
そうやって調べていくと何やら豪邸にミルはたどり着いた。
「ここは…。」
すると突然、ポケモンであろう悲鳴が聞こえた。
「えっ!」
勝手に庭に入って見てみるとヘルガーがメガニウムに火炎放射を浴びさせていた。
「ソーラービームじゃない、ハードプラントだ。全く使えないな。一刻も早く覚えろ。」
メガニウムは初見だと何かに見間違えるくらいやせ細っていた。
御飯をロクに与えられていないのであろう。
これが今回の任務である虐待の事であろう。
「なんてことを…。」
証拠写真としてカメラにその様子を収めた。
そしてボールからポケモン出して助け出そうとした時、突然、体が全く動かなくなった。
ずっしりと重い感覚。
「うっ…これは…。」
横にゴルダックがおり、金縛りをかけていた。
「くっう…うう…。」
手さえ動かせずポケモンを出すことができない。
「どーした嬢ちゃん。こんなところで。」
金持ちであるのか無駄に金ぴかな服を着た男がやってくる。
「くっ、メガニウムに何を…。ちゃんと御飯を食べさせて上げてるんですか…?それにハードプラントはポケモンとの信頼関係が築かれないと出せない技ですよ…。」
金縛りで喋りづらい中、なんとかミルは答えた。
「嬢ちゃん、悪いことは言わないからこれを見なかったことにして帰ろうか。」
「そんなことはできません。私はアナタのような人からポケモンを守りたい…。メガニウムにこれ以上…ひどいことは…させ…ない。」
その言葉に男は顔色を悪くした。
「最近のガキは生意気だな。少しお仕置きが必要なようだ。ゴルダック、サイコキネシス。」
ゴルダックのサイコキネシスでミルを縛り上げる。
「うううう!」
声にならない悲鳴をミルは上げた。
サイコキネシスでまともに声を上げられず苦しむだけだった。
「ガキが生意気なこと言うからいけねぇんだ。何がポケモンを守るだ。大人の世界に首を突っ込むな。」
そう言いながら後始末はゴルダックに任せて去ろうとした、その時、
「サーナイト、十万ボルト!」
十万ボルトが一直線に伸び、ゴルダックに命中した。
その一撃で金縛りとサイコキネシスが解け、ミルの体は自由になった。
倒れかかったミルの体をツヴァイは支えた。
「ツヴァイ…さん…。」
「遅れてごめん。僕が傍を離れたばかりに…。」
「私も…油断してました…足手まといになってすみません。」
「いいんだよ。でも今は…サーナイトもう一度十万ボルト!」
もう一度サーナイトは十万ボルトを放ち、ゴルダックは倒れた。
「サーナイトはそのままミルちゃんの介抱をお願い。」
「サナ、サナ。」
「よくも…よくもミルちゃんにひどいことをしてくれたな!」
「ツヴァイさん…。」
女の子であるにも関わらず怒った時の希薄は男子そのものだった。
正義感が強くて頼りがいのある…ミルはそんな彼女に憧れていた。
「何っ!?」
男はその様子に驚愕した。
謎の少女がゴルダックを出していたのだ。
「アリアドス、糸をぐるぐる巻きにしろ。」
「出番だ、グレイシア!」
エースであるグレイシアを出した。
「グレイシア、吹雪!」
グレイシアの吹雪で庭全体が凍りついた。
「なっ、なんだと…。」
ついでにアリアドスも凍り付いて倒れた。
「ぐっ、ヘルガー!燃やし尽くせ、大文字!」
ヘルガーは大文字を放った。
するとフィールドから炎で水蒸気が発生しグレイシアの姿が見えなくなった。
このことを見越してあえてこの庭全体を凍らせていた。
「フフ、グレイシアはフィールドを制圧する。グレイシア、シグナルビーム。」
ヘルガーにこっそり近づき、シグナルビームを放った。
「ああっ、ヘルガー…。」
「吹雪!」
シグナルビームで一瞬ではあるが怯んだ隙をついてゼロ距離から吹雪を放った。
炎タイプとはいえどゼロ距離からの吹雪は強烈だった。
「ぐっ、このままだとヘルガーがやられちまう。ハブネーク、どくどくの牙!」
ハブネークがヘルガーと交戦中のグレイシアに迫る。
しかしハブネークの体は中に浮いた。
慌てるハブネークだったが地面に叩きつけられ倒れてしまった。
「何…!?はっ、まさかさっきのサーナイトのサイコキネシスか。」
「その通り。ミルちゃんの介抱だけに使ってたと思ったら大間違いだ。お前みたいなトレーナーが汚い手段に出ることはお見通しだ。グレイシア、トドメをさしてやれ。シグナルビーム!」
グレイシアのトドメのシグナルビームでヘルガーは倒されてしまった。
「どうやらあれで最後みたいだな。ゴルダックが庭の警備にあたってるのを見るとこの家にお前以外の人間はいないみたいだな。それはそうだな、ポケモンに虐待をする奴が他人となんか暮らせないもんな。どうせポケモンを適当に育てて売りさばいてこの家でも建てたんだろうよ。」
図星だったのか男は言い返せなかった。
「メガニウム、ハードプラントだ!」
最後の手持ちであるメガニウムにそう指示するが弱っているメガニウムは技を打ち出す力もない。
「グレイシア、吹雪!」
グレイシアは吹雪を放ち、男の下半身を凍らせた。
「ぐっ…動かねぇ…。」
「さっきミルちゃんにやったお返しだ。」
いくら犯罪者とはいえどあまり人を傷つけることを好まないツヴァイが凍傷確実であろうことに出た。
ポケモンの虐待だけではなくポケモンを使って人まで傷つけた人間に容赦することなどできないようだ。
横ではサーナイトがメガニウムに元気の塊を渡していた。
「メガニウム…ミルちゃん、プロテクターボールで捕まえるんだ。」
成果をミルに譲ることにした。
自分は後から駆け付けた上、ミルも傷つけてしまった。
ここで成果をとるなんて自分のプライドが許せなかった。
「えっ、あ…でも今回はツヴァイさんがいないと勝てませんでしたよ?」
「いいんだよ、別に。僕はこいつが逮捕できるだけで十分なんだ。」
「わかりました。プロテクターボール!」
メガニウムにプロテクターボールを投げて捕まえた。
メガニウムは大人しくボールに入って行った。
どうやら人間不信やボール恐怖症などではないようだ。
「よし。サーナイト、このままテレポートだ。」
氷漬けにした男と一緒にテレポートし、証拠写真と共に警察に突き出したのだった。
なんとなく、今日はあんまり面目が立たなかったな…とツヴァイは思っていた。
ツヴァイが一人で行動するのも、どうも妹気質で思いやりがないわけではないが融通が利かないところがある。
「あの、ツヴァイさん。」
暗い顔をしているツヴァイにミルが駆けつけた。
「ミルちゃん…。」
「私、ツヴァイさんが憧れです。」
「えっ…。」
「私を助けてくれたツヴァイさんは…正義のヒーロー、いやヒロインでした。とってもかっこよかったです。」
「…僕が…そんな…。」
「お互いにこれからもがんばりましょう。」
「うん。」
二人は手を握ってそれを誓い合った。
「今日言ってた団体…必ず潰しましょう。」
「そうだね。」
本部の窓からの夕陽が二人を包み込んでいた。
その反射を利用して気づかれないようその二人を眺める人間が一名…。
「フン…。」
フィーアの姿だった。
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