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ポケットモンスター ホープロード

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第三話 お調子者の少女、カルサ

「さーて、今日の任務は…。」

だいたいは受け付けで自分の仕事は何か聞くのが普通である。
昨日のように直接言い渡されるのが珍しいのである。

「はっ、現在、ハクタイの森でリングマが暴れて困っている…?なるほどね。」

ポケモンの生態環境を守るのも保護団員の仕事である。

「しっかし、リングマはハクタイの森生息してたっけ?」

自分がシンオウ地方の担当をした時、シンオウ地方のことを調べまくったがハクタイの森にリングマがいたという報告はない。
が、野生の生態系はすぐに変わるものである。ハクタイの森にいるのだから行ってみるしかない。

「サーナイト、ハクタイの森へテレポートだ。」

「サナ、サーナ。」

テレポートでハクタイの森へ向かった。


「ハクタイの森はとりわけ広いからなぁ。ドンカラス、偵察しにいって!」

「ドンカラァ!」

ドンカラスがハクタイの森を偵察しにいった。

「ポケモン達が全然いない…リングマに恐れをなしている…とか。」


しかし、森のまわりを見ると木や地面がえぐられていた。
しかしそれはリングマのような物理戦で出来るような跡ではなく、火…いや、電撃で焼け焦げたような売れ方だ。

「リングマが電撃を…?でも野生のポケモンがそんなのを取得するわけないし…もう一匹電気タイプがいるのか?」





しばらく歩き回っているとミミロルがボロボロになって倒れていた。

「ミミロル!」

「大丈夫?ミミロル。」

どうやら瀕死状態のようだ。

「元気の塊、元気の塊……わっ、あっちゃー、もうないや…。欠片は…あった。」

ミミロルに元気の欠片を食べさせた。

「それと…あっオボンの実生ってるじゃん。」

木に生っていたオボンの実、二個を取った。

「食べれる?」

「ミ、ミミロォ…。」

瀕死状態は脱しているようだが元気はまだないようだ。
疲れて食べられないようだ。

「うーん…少し食べやすくしようか。フローゼル、出番だッ!」

フローゼルが出てきた。

「フローゼル、瓦割でオボンの実を細かく切って。」

オボンの実はとても固いため技によって切ることにした。

「このミミロルはどんな味が好きなのかな。」

ポフィンケースからポフィンを取り出した。
辛い、甘い、苦い、酸っぱい、渋い。五種類の味だ。
ブリーダーの資格は持っているのでこういうものを大抵は持ち歩いている。
傷ついたポケモンを治してあげるのも保護団員の務めだ。

ミミロルがクンクンと臭いをかぐと酸っぱいポフィンは食べ始めた。

「じゃあすっぱい味の木の実と混ぜて食べさせてあげよう。あっ、酸っぱいべリブの実がなってるじゃん。」

べリブの実を四個とった。

「よし、ちょっと試してみるか。フローゼル、この木の実をさっきより大き目に細かく切って。」

「フロー。」

「味のないポフィン…と。」

全く味のないポフィンにさっき細かく切ったオボンの実をつめていく。

「五個くらい必要かな。」

「フロー。」

切り終わったとべリブの実を差し出した。

「ありがとう、フローゼル。よし。」

さっきと同じようにポフィンにつめていく。

「これなら食べれるかな、ミミロル。」

ミミロルにポフィンを差し出すと喜んで食べた。

「うんうん、元気になってきたかな。」

フローゼルをボールに戻して出発の準備を始める。

「さよなら、ミミロル。」

ミミロルはというとポフィンを夢中になって食べていた。
野生のポケモンなのだから人に対する執着は薄いだろう。
何よりミミロルというポケモンは警戒心が強く人になつきにくいポケモンだ。



しばらく歩き回ってもポケモンの様子はない。
たまに見かけるのは怯えるように隠れているポケモン達だけだった。

「リングマのせいなのかも…。だけど、今のところそんな気配はないし、ドンカラスは来ないし…。」

そう思っているとドオオオンというものすごい衝撃音と共に地面が揺れた。

「ドンカラァ、ドンカラァ。」

ドンカラスがやってきて慌てた様子だ。

「ドンカラス!もしかしてリングマ!?案内して。」

「ドンカー。」

ドンカラスに連れられて森へ進んだ。



「あっ!」





「よーし、いっけぇ!サンダース、十万ボルト!」

「サァァァンダァァァ!」

「グゥオオオオ!」

十万ボルトの一撃を受けて怒ったリングマはアームハンマーを繰り出した。

「かわして、サンダース!」

重い拳をギリギリ引きつけてかわした。
素早いサンダースだからできる芸当だ。

「いいわよ、さらに十万…。」

「ちょっと待った!君、何してるの!?」

自分より年下かと思える少女がリングマと戦っていた。

「もう、邪魔しないでよ!十万ボルト!」

十万ボルトを浴びてリングマは麻痺状態だ。

「やった、次こそ捕まえるよ。」

「ちょっと、君!」

ツヴァイの話を聞かず、モンスターボールを投げた。
しかし、リングマはボールを払いこちらに向かってくる。

「サンダース、十万…ってこっちいいい!?」

リングマは少女に向かってくる。
トレーナー同士のバトルならともかく野生のポケモンとの戦いにルールなんて存在しない。
トレーナーを襲うのも野生のポケモンの自由だ。

「ドンカラス、不意打ち!」

「ドンカラァ!」

不意打ちを食らって一瞬だが、リングマはひるんだ。

「プロテクターボール!」

プロテクターボールを投げて捕獲した。

「ああー、私のリングマなのにィィィ!」

地団駄踏んでツヴァイに抗議するその姿は子供らしい。

「君がリングマを手なづけることなんかできない。でももしかしてこの森の荒れ方…まさか君のサンダースのせいじゃないだろうな。」

「私毎日リングマを捕まえるためにここに来てるの。サンダースはいっつも負けちゃうけど捕まえるチャンスが来るまでずっと戦ってのよ。」

元気に言う少女だったが信じられない言葉を口にしていた。
まさか、サンダースがこの森を…?
もしかしてリングマが暴れていたのも…。

「毎日…ずっと…。どんな時でも?」

「うん、雨の時なんか雷が必ず命中するからね。」

それはつまり雨でも捕まえられなかったということ。
雨の日にでも襲って来ればリングマだって怒るだろう。
そのせいで森に来た人々を警戒して襲っていたのだろう。

「ッ!お前はリングマに何をしてたのかわからないのか!」

「捕まえようと─」

「お前はそれだけに固執してこの森を、リングマのことを考えてない!考えみろ、毎日喧嘩売られたから怒るだろっ!?」

「でも捕まえようと思って…。」

「だからってなんでもしていいわけじゃない!森がこんなに荒れてるじゃないか!森のポケモンは森を荒らされて困ってるんだよ!?」

「私、そんなつもりじゃ…。」

「周りを見ろ!電撃で森が荒れて…ポケモン達はすみかを奪われたんだ。」

まわりにいるミミロル達が怯えたように少女を見ていた。
サンダースが戦ったせいでまわりのポケモン達も人間不信になってしまっているんだろう。

「…お前は一体なんなんだ!」

「私?私はハクタイ学校のアイドル中学三年生、カルサ。」

「中学三年っ…僕より年上じゃないか…。」

「君は後輩かー、先輩にそんな口聞いていいのかな?」

悪びれる様子の無いことで余計に苛立った。
こんな奴がいるから虐待されるポケモンが増えるんだ…と。

「どうでもいい!君は警察に突き出す。」

「えっ、そんな…。」

「当然だ!ソノオとハクタイから苦情が来てるんだ。それに自然破壊も見過ごせない。ついてってもらう。」

「えええっ、そんなぁ。」

「問答無用。サーナイト。」

ドンカラスをボールに戻してサーナイトを出してテレポートしようとした。

「別に私は森を荒らしたわけじゃあ…。」

「ともかく重要参考人として連れてく。そしてけーさつに突き出す!」

「それって犯人扱いじゃーん!だったら私とバトルして勝ったら好きにしていいよ。そのかわりにバトルに勝ったら私を見逃す。」

「そんなことしてる暇はない。そんなこといってポケモン使って逃げる気だろ。」

それこそエスパータイプのポケモンを出してテレポート…なんてされたら溜まったもんじゃない。

「怖いの?自分の実力がないから。」

これはあまりにも定番すぎる煽りだ。
こういうのは敵味方問わずこれに乗って痛い目見るのが定番だがツヴァイはこんな煽りには乗らない。

「そんな煽り通用しない。それに僕はリングマを捕まえた。けど君はリングマを捕まえられなかった。」

「そぉかしら。元々鍛えていたサンダースの攻撃を受けたあとだし…。やっぱり怖いんでしょ。」

「全く…とりあえずお前を警察に突き出してからバトルに付き合ってやる。」

「なにそれええええ!!」

「サーナイト、テレポート。」

とりあえずそのまま本部に移動してそこにある取調室で取り調べすることになった。


「あー、つっかれた。今日は早く帰ろう。」

バトルをしたわけじゃないのにどっと疲れてしまった。
まだ昨日の疲れがあるにしても。
今回は特別だ。

「明日こそ良い日になりますように。」

そう願いながらサーナイトでテレポートした。




次の日、学校を終えて本部にテレポートで向かう。

「今日のの任務はと…ってええええっ!?」

本部の入り口の目の前に、昨日の少女が立っていた。
ツヴァイにとって年上ではあるが背と性格のためか全く年上には見えないオーラが漂っている。
小学校四年生くらいに思える。

「フフ、昨日約束した通り、私とバトルしなさい。」

「って、お前は逮捕されなかったのか。」

「故意じゃないもの、それに私がやったなんていう証拠なんかどこにもない。」

「フン…。でも僕は任務があるんだ。付き合ってあれないよ。」

「アナタは今日は任務はないわ。調べてきたもの。」

「勝手にやるな!ったく…仕方ない、お前には色々と思い知らせないとわからないみたいだな。」

「私に挑むなんて無謀ね。私はハクタイで一番強いんだから!」

そもそも仕掛けてきたのはお前だろうとは言わなかった。
自意識過剰でどうしようもないようだ。
相手もバトルをやりたがっているようだし、思い知らせなくてはわからないようだ。

「バトルフィールドがある、ついてこい。」

「やったぁ!ハクタイ…いや、シンオウ最強の少女の力、思い知らせてやるんだから!」

調子に乗っててどうもカルサは自分の敗北フラグばかり立てている。
リングマ一匹捕まえられない人間が何を言っているのだろうか。









本部にあるフィールドを展開する。
ここではただバトルを楽しむ時や虐待されたり暴れたポケモンの更生を促すためのバトルも行う場所である。

「使用ポケモンは三体でいいかな。」

「僕は構わない。」

「じゃっ、行くよ。」

二人はそれぞれ位置についてバトルだ。


「いけっ、グレイシア!」

ツヴァイは真っ先にグレイシアを繰り出した。
昨日、彼女がサンダース使いであることは見ている。
だいたい先鋒はフローゼルかドンカラスなのだが二匹とも相性が悪い。
サンダースはだいたい先鋒になるだろうからグレイシアを先鋒にした。


「いっけぇ、サンダース!」

「サンダァ!」

案の定、サンダースが先鋒だった。

「先手必勝、サンダース、十万─」

「グレイシア、氷の礫!」

「グレイ!」

冷気で氷を生み出してそれをサンダースに先手で浴びせた。

「サァァァ…。」

「わわっ、なんでぇ!」

「前に家族でキッサキシティを観光したことがあってね。その道中でここで僕のイーブイは進化した。吹雪が吹き荒れる中進化したグレイシアはどんな相手にも負けない。グレイシア、続いて吹雪!」

「させないんだから!サンダース逃げて!」


フィールドを凍らす勢いで吹き荒れる吹雪をサンダースは避けて行った。

「そのままいけ、サンダース、十万ボルト!」

一直線に放たれる一撃をグレイシアを浴びた。

「やったぁ!」

「グレイシア、ミラーコート!」

グレイシアの体が光ったかと思うとサンダースに光の一撃を浴びせられた。

「ええっ、な、何…!?」

「やっぱり知らなかったか…。ミラーコートは特殊技を受けることでそれを鏡のように返す技。それも威力を倍加してね。」

サンダースは自分の一撃の倍のダメージを受けて立っているのさえ辛そうだった。

「サンダース、一度戻って。」

サンダースをボールを戻した。

「フフ、ハクタイ最強を名乗るだけあって引き際は見極めてるじゃないか。」

「次はこの子よ、へラクロス!」

相性を考えたのかへラクロスが出てきた。

「フーン、なかなか考えてるね。」

特殊技を使うポケモンでもないから完全にグレイシアメタだ。

「グレイシア、吹雪。」

「吹雪を打ち消して!インファイト!いけいけーーーっ!」

吹雪に突っ込んでいき強引突破したかと思うとツノでグレイシアを一突きした。

「グゥゥ!」

効果抜群の一撃を浴びてグレイシアは僅かに怯んでしまった。

「吹雪を強引に打ち破るなんて…エースとはいえど厳しいか。一度戻って、グレイシア。」

グレイシアをボールに戻した。

「そっちがその気なら次はこうだ、出てきて、サーナイト。」

サーナイトを繰り出した。
サーナイトは格闘タイプに弱点を突けるが虫タイプに弱点を突かれてしまう。

「ドンカラスじゃないの…。」

「アナタはどのみちドンカラスを出したところでサンダースに変えるだろうから。交代するんならしてもいいよ、サンダースでも手の内を明かしてないもう一匹でも。」

「くっ…。」

巧みな挑発するがカルサはボールを触るだけで交代はしなかった。
バトルに対する肝はそれなりに据わっているようだ。
少しは見直した…ツヴァイは素直にそう思った。

「そうそう、そうじゃないと面白くないね。サーナイト、サイコキネシス。」

「サー…ナー!」

サイコキネシスでへラクロスを縛り上げてさらに地面に叩きつけた。

「へラクロス!」

予想だにしない強力な一撃にカルサは驚いているようだ。

「この子は移動要員で強くないとでも思った?サーナイトはとてもトレーナーに忠実な性格をしていて命がけでトレーナーを守るポケモンだ。だからバトルもそれなりに強いんだよ?」

「くっ、ヘラクレス!メガホーン!」

「サーナイト、もう一度サイコキネシス!」

サイコキネシスで再度縛り上げて動きを止めようとする。

「クロォォォス!」

再びサイコキネシスに縛れてもがくへラクロス。

「へラクロス!気合で打ち破るのよ!」

「ハァ、気合で破れるもんなら…。」

呆れてさっき思ったことは撤回しようと思った、その時─

「ヘラクロー!」

なんとへラクロスは気合で打ち破ってしまった。

「バカな!」

「いっけぇ!メガホーン!」

「サーナイト、テレポートで後ろに回り込んで!」

サーナイトが後ろに回り込んだ。

「サーナイト、十万ボルト!」

「サー…ナァァァ!」

ゼロ距離から十万ボルトが放たれた。

「ヘラァァァァ!」

「へラクロス!」

バタンとへラクロスは倒れて瀕死になった。
互いに弱点だったとはいえど苦手なタイプ相手に無傷でサーナイトは勝利してしまった。

「あっ…うう…。ありがとう、へラクロス。」

そう声をかけてボールに戻した。
トレーナーとしての最低限のことはできるようだ。
それだから逮捕などはされなかったのだろうか。
故意ではなかったようだし、一つのことに囚われて周りが見えなくなるだけのタイプだったのだろう。

「へラクロスがサイコキネシスを打ち破ったこと、吹雪を強引突破したあたり育ててあるのはわかるよ。」

「本当?フフ、やっぱり私はシンオウでさ・い・きょ・う♪」

「前言撤回だ。」

どうやら彼女を褒めるということはしてはいけないようだ。

「サーナイト、戻って。もう一度行くよ、グレイシア!」

エースであるグレイシアを繰り出してスタンバイした。

「さあ、アナタの次のポケモンは!?」

「…私は…いけっ、エテボース!」

「エテエテ!」

エテボースが繰り出された。

「エテボース、ドレインパンチ!」

「物理で来たか…。グレイシア、吹雪!」

再び吹雪でフィールド上が凍らされていく。

「気合で耐えて…ドレイン…パーンチ!」

「グレイシア、氷の礫!」

先手の氷の礫をエテボースは尻尾で振り払いドレインパンチを当てた。

「グレイシア!…くっ、強力な攻撃と回復か…。」

ドレインパンチはパンチをするだけではなくそのあと相手のポケモンの体力まで吸収する恐ろしい技である。

「グレイシア、地面に向かって吹雪!」

「グゥゥゥレェェェェェ!」

グレイシアの吹雪でフィールドが一気に氷のフィールドになった。

「エテ?エテテテテ!」

氷のフィールドでエテボースは滑ってしまう。

「エテボース!」

「フィールドを操りそして仕留める。グレイシアの戦い方を見るんだね。グレイシア、エテボースに近づけ!」

「逃げてエテボース!」

尻尾が届かないギリギリのところまでグレイシアは近づいた。
一方エテボースは立つことすら困難で動けなかった。

「グレイシア、吹雪!」

「エテェェェ!」

至近距離から吹雪を食らい、辛そうにするエテボース。

「エテボース!…くっ、エテボース、スピードスター!」

「スピードスター!?必ず当たる技…。」

突然、スピードスターが放たれ、構えることができなかったグレイシアはもろに受けてしまった。

「ミラーコート!」

グレイシアの体が光り、光をエテボースにぶつけた。

「エテボース!」

特殊技は危険でありながら今の状況では特殊の技しかださせなかった。

「くっ…この氷のフィールドをなんとかできれば…。」

「休まずいくよ、グレイシア、吹雪!」

グレイシアから吹雪が放たれた。

「…そうだ、エテボース、地面にダブルアタック!」

「エテエテエテ!」

地面にダブルアタックをすると氷のフィールドでえぐれて吹雪へ壁となった。

「何っ!?」

「その氷に乗って!」

氷と地面がえぐれたことによる岩を足場にする。

「エテボース、ドレインパンチ!」

「くっ、グレイシア!シグナルビーム!」

すぐに切り替えてドレインパンチが届く前にシグナルビームを放った。

「エテエエエ!」

シグナルビームの一撃で吹っ飛ぶエテボース。

ドーンという音を立ててフィールドに叩きつけられてしまった。

「しっかり!」

「エテ…エテテテテ…。」

目をクルクル回して混乱状態だった。

「えっ!?どうして!?」

「シグナルビームは混乱状態をも誘発する。逃がさないよ、グレイシア、トドメのシグナルビーム!」

「グゥゥレエエエエ!」

交代の暇すら与えずエテボースを倒した。

「エテボース!……ありがとう。」

何としててもエテボースでグレイシアを倒したかったのだろう。少し硬直してからボールに収めた。

「ミラーコートを警戒してエテボースを出したのはいいものの敗れてしまった…ってとこかな?」

「くっ…私は諦めない。サンダース、もう一度出番よ!」

サンダースを繰り出すが氷のフィールドに突然出されたためかサンダースは滑ってしまった。

「ああっ…。」

「今だ、グレイシア、吹雪!」

グレイシアの吹雪がサンダースに襲いかかった。

「サンダース、耐えるのよ!」

猛吹雪の一撃をサンダースは耐えのけた。

「そうよ、反撃に雷!」

上空がピカッと光ったと思うと雷が落ちてくる。
しかし、氷の上でこそ真価を発揮するグレイシアは軽々と避けてしまった。

「ミラーコートを警戒して一撃必殺に等しい雷を使ったみたいだけど…その分かわされやすい技。当たらなければ意味がないんだよ。」

「くっ、サンダースもう一度雷!」

連続で雷を放つがグレイシアは軽々かわしていきサンダースとの距離をつめていった。

「うう…。」

カルサはひどく悩んだ。
ここで一撃を決めないとやられてしまう。だが、さっきからあたらない雷をしていいのだろうか。
しかし十万ボルトをして耐えられたら終わり。サンダースは指示を待っているがカルサは何も言えない。


カルサは諦めて目を閉じた。

「──信じろ!自分の…ポケモンを!!」

「─ッ!?」

そう言ったのは紛れもないツヴァイだった。
対戦相手からの思わぬ叱咤に目を開けた。

「サンダースはお前の指示を待っているだぞ!サンダースは諦めない…先にお前が諦めてどうするんだ!」

「ッ……。」

「シンオウ最強の少女が簡単に諦めるのか!」

「……そうだよね、………サンダース、十万ボルト!」

主人の指示を聞いてサンダースは十万ボルトを放った。

「グレイシア、吹雪!」

グレイシアの吹雪とサンダースの十万ボルトがぶつかりあった。

ドオオオンという音と共に煙が発生し二人はその煙を止むのを待った。



カルサは祈るのように手を握りしめた。
ツヴァイはグレイシアを信じているからこそ、ただフィールドを見つめるだけだった。




「あっ…。」


煙が晴れると倒れているサンダースとボロボロになりながらギリギリ耐えていたグレイシアの姿があった。

「よくやった、ありがとう、グレイシア。」

「頑張ったね、サンダース。」

二人は二匹をボールに収めた。

「フフ、なかなか歯ごたえがあるバトルだった。」

「あーあ、結局一匹も倒せなかった。さすがリングマをあっさりゲットしちゃった人だ。」

しかしツヴァイは嫌な顔せずカルサに近づいた。

「僕はツヴァイ。クチバ学校二年生で保護団員活動をやってる。よろしく。」

「よろしくね!」

二人はここでやっと握手を交わした。

「私…本当にポケモン達を傷つけるつもりなんか無かった…。弟がどうしてもリングマをみたいっていうからムキになってたんだ…。」

「弟…?」

「うん。私の弟は病気で今でも入院してるんだ。リングマがみたいっていうからどうしても…。それに私は絶対にシンオウ一強くならなきゃいけない。それが弟との…約束だから。」

弟…それでツヴァイは幼い「あの日」を思い出した。




「ねーちゃん少しは手加減しろよなー。」

「手加減してたら強くなれないよ。」



「…弟…か。」

「どうしたの?」

ぼんやりしていたせいかカルサに目の前で手を振られていた。

「なんでもない。おかげで頭が冷えたよ。…あの森を荒らしたのは君って決定したわけじゃなのに…。」

「わかってくれたらいいよ。」

どうやらこの様子を見る限り彼女が犯人ではないようだ。
では、一体誰がハクタイの森を荒らしたのだろうか。

「…で、…お願いがあるんだけど。」

「?」

「家に帰れないから家に帰して。」

「自分で帰れ。」

「カントーからシンオウって遠いでしょー!!」

「ったく…。」

はぁとため息を吐いてサーナイトを出した。

















「─ハクタイの森のリングマは保護団員によって捕獲されてしまったようです。」

「…そうか。構わん、あのリングマは実験台にすぎないのだから。」

「次のポケモンはどういたしましょう?」

「考えておこう。」 
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