ファイナルファンタジーⅠ
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
16話 『覚醒する業火』
「シファは……!?」
思わずその場へ駆け戻るシーフのランク。
「マゥ……ッつーか赤魔、シファはどうなって───── 」
片膝を付き、背を向けているマゥスンの前に虚ろな目を開いたまま座り込んでいる白魔道士のシファは、まるで動かない。
「おい……、間に合わなかったってンじゃ……ッ」
「 ─────っは!!」
急に息を吹き返したようなシファは、せわしなく呼吸し出す。
「焦る事はない、……落ち着いて呼吸するといい」
「 う、うん……っ 」
マゥスンに背中をさすってもらい、息を整えてゆくシファ。
「ふぅ………あ、はは……ごめんね。わたしまた、迷惑掛けちゃって………」
顔を上げ、きまりが悪そうな笑顔を見せる。
「土のカオス、倒してくれたんだ……」
「あぁ、何とかな。────とにかく間に合って良かったぜ」
安堵の息を洩らすランク。
「みんな、ありがとう。……最初は、息が出来なくなっていく感じですごく苦しかったけど、その後は何だか────温かいものに包まれてる感じがして、苦しくなかったの。
わたし……それから寝ちゃってた気がするんだけど、優しい声が何処からともなく励ましてくれていたの。
"大丈夫、きっと助かる。だから安心していい"って──── 」
(そーいや、シファの傍に居たのって赤魔だよな……?)
シファはゆっくりと自分の身体を確かめるように立ち上がるが、片膝を付いて身を屈めたままでいるマゥスンにランクは近寄って声を掛ける。
「オマエ、立てンのか? 何なら手ェ貸すぜ」
「 いや、必要な──── 」
おもむろに立ち上がったマゥスンの身体がふと傾き、倒れ掛かったのをランクが支えた。
「強がンなよ、フラついてンじゃねーか」
「 ………… 」
「ン? そーいやビルの奴は────」
1人"土のクリスタル"祭壇前に佇んでいるのが目に入るが、声を掛けるべきではない雰囲気を見守る3人。
……黒魔道士ビルがその身に持つ大地の源の欠片を掲げると、黒ずんで輝きを失っていた六角長形の土のクリスタルは欠片に呼応し、
黄金色の光が脈動して周囲を満たしてゆき、絡まっていた腐った木の根は生命を吹き返しその中で大地の源のクリスタルは本来の黄金色の輝きを取り戻して、温かな光に包まれた4人は無意識の内に瞳を閉ざし心地良さに身を委ね、彼らの体力と魔力はその場で全快した。
「 ────シファさん、ランクさん、マゥスンさん………大地の源の力、土のクリスタルに輝きが戻って、ボクの欠片にも本来の光が宿ったみたいでス……!」
祭壇からこちらに向き直ったビルの、とんがり帽子と藍色のローブの襟との間の闇から覗く、黒魔道士特有の黄色く丸い瞳をいつも以上に爛々とさせ、片手には大地の源のクリスタルと同じように光輝く欠片が握られている。
「これで、一つ目のクリスタルに輝きが戻ったんだね!」
「 ……ま、オメェにしちゃやるじゃねェか」
「 ────良くやった 」
3人から労われるビル。
「ハイっ! これできっと、大地も元通りに……!?」
突如、アースの洞窟内が揺れ動く。
「土のカオスの野郎は倒したってのに、今度はなンだッ?」
「ねぇ、段々揺れが激しくなってきてない……?!」
「大地の浄化には少し時間が掛かるみたいで、腐敗の進んだこの洞窟は一度崩れるそうでス!」
「え? ビル、どうしてそんな事……」
「欠片を通して、土のクリスタルさんが教えてくれまシた!」
「ほー? ンでオレらは出口まで戻る時間もナシに埋もれろってか?」
「大丈夫でスよ! 土のクリスタルさんが、ボクらを地上へ一気に送り出してくれるそうでスからっ!」
自信たっぷりにビルがそう云うと、4人の足元に光輝く魔方陣が現れ地上へと瞬間移動させる。
アースの洞窟内は地震により崩れ出すが、大地の源のクリスタルは土石に埋もれながらも絡まった木の根に守られ、黄金色の輝きは失う事なく腐敗した大地を甦らせてゆく。
────それと同じくして"彼の者"は、炎舞する業火の中目醒めた。
≪ ……土のカオスを倒し、妾の眠りを妨げるとは────まぁ良い、完全なる復活には至らぬとはいえ、いずれにせよ妾の業火で全て焼き尽くしてくれる≫
「あ、あれを見て! 東の方角が……!?」
シファは思わず声を上げ、アースの洞窟出入口付近の地上にワープした4人が目にした光景は、赤黒く染まった東の方角で遠方からも響き渡る轟音と共に火柱が上がっている。
「あの方角って、クレセントレイクの町がある付近でスよね……っ?!」
「どーなってやがンだッ?」
「 …………… 」
シファ、ビル、ランクが驚き見上げる間に次第に火柱は治まってゆくが、東の空は依然として赤黒く染まっている。
「あっちの方は山岳地帯で火山があンのも分かっけど、一つ目のクリスタルの輝き戻したからってそれに合わしたみてェに噴火しやがるモンなのか?」
「ぼっ、ボクのせいじゃありませんでスよ……!?」
「そんな事云ってないよビル。テューテさんや12賢者の人達は大丈夫かな………ねぇ、マゥスン?」
「 ────── 」
白銀の長髪流れる横顔は東の方角を冷然と見据えており、いつにも増して近寄り難い雰囲気だがシファは再び声を掛ける。
「どうか……、したの?」
「≪火のカオス≫が目醒めた」
「ふえっ、どういう事でス……?」
「"目醒めた"って、何でンなコト分かンだよ」
ビルとランクに問われても、黙っているマゥスンに代わりシファが見解を述べる。
「火のクリスタルの欠片を持ってるのはマゥスンだから、そう感じたんじゃないかな。だとすると、あの方角に火のカオスが……? すぐ船でクレセントレイクの町に向かおうよ!」
「 ……12賢者共、アレでくたばってたりしてな。だとしてもどーでもいいケドよ」
「何て事云うんでスかランクさんっ、あの町にはお世話になったテューテさんも居るんでスから、ご無事を確かめに行きまセんと! ついでに12賢者さん達のお話も聞けたら、次の目的が果たし易いじゃないでスかっ」
「ビル……おめェ、土のクリスタルの輝き取り戻したからって調子こいてンじゃねーよッ。オレらは奴らの云いなりじゃねンだ、≪火のカオス≫ってのがこっから東の山にでもいンならさっさとソコ行って叩きのめしゃいーだろ」
「はうっ、ランクさん意地悪でスぅ……っ」
「二人とも~、置いてくよ~? マゥスンとっくに先行っちゃってるんだから~……!」
「ふあっ、シファさんマゥスンさぁん、置いてかないで下さいでスよぅ!」
「ッたく、ドイツもコイツも────」
ページ上へ戻る