万華鏡
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最終話 芝生の上でその一
最終話 芝生の上で
五人は卒業ライブの彼女達の会場に入った、するとそこにだった。
商業科や工業科、農業科の娘達も来た、そしてだった。
彼女達の方からだ、こう言ってきた。
「じゃあね」
「一緒に頑張ろうね」
「負けないけれどね」
「楽しくやろうね」
「ああ、こっちこそな」
美優が五人を代表して彼女達に答えた。
「今回のライブ成功させような」
「絶対にね」
「そうしようね」
「先輩達を送るライブだからな」
それ故にというのだ。
「絶対に成功させような」
「そうしようね、お互いに」
「無事にね」
「じゃあまずは着替えてね」
看護科の娘の一人が言って来た。
「それぞれの衣装に」
「そうしてね」
「ここにまた集合だよな」
美優は彼女達に問うた。
「そうだよな」
「ええ、そうしてね」
そのうえでというのだ。
「手を合わせよう」
「ライブの前のな」
演奏をする者が全員集まって手を合わせてからいいライブにすることを誓い合う、八条学園の軽音楽部ならどの学科でも習わしになっていることだ。
「それをしような」
「着替えてからね」
こう話してだった、まずは。
それぞれのグループが用意された部屋に入って着替える、琴乃はそのゴスロリのステージ衣装を見て言った。
「本番ね」
「緊張してるの?」
「うん、いつもよりもね」
そうだとだ、琴乃は制服を脱ぎながら里香に答えた。鞄は既にロッカーに入れていて着替えに入っている。
「そうなってるわ」
「そうよね、普段のライブと違ってね」
「三年の先輩達を送るライブだから」
「先輩達に笑顔で卒業してもらう為のね」
「先輩達にとっては記念だからね」
それになるライブだからだとだ、琴乃は着替えつつ里香に答えた。
「普段以上にね」
「そうなのね、けれどね」
「緊張し過ぎるとよね」
「よくないから」
「部長さんが言ってる通りね」
「緊張ほぐしてね」
それで、と言うのだった。
「そのことはね」
「そうよね、じゃあ」
「何か食べる?」
「里香は微笑んでだ、琴乃にこう言った。
「飴とか」
「あっ、飴を舐めてね」
「リラックスする?」
里香は実際にだ、自分の鞄から飴玉が入っている袋を出して来た。市販のフルーツキャンデーのそれである。
「これ舐めて」
「何かそれ大阪のお母さんみたいね」
「そうよね、そう思うと私も」
「お母さんになってきたっていうか?」
「おばちゃんかしらね」
里香は笑ってこう言った。
「そうなるかしらね」
「いや、それ自分で言ったら」
「駄目?」
「ううん、駄目じゃないけれど」
それでもだとだ、琴乃は着替えつつ苦笑いで答えた。
「おばちゃんになるみたいで」
「だからなのね」
「うん、私はあまりね」
琴乃としては、だった。
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