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万華鏡

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第八十四話 リハーサルその十四

「厚着してるわね」
「セーター装備してます」
「あとタイツも」
「いいわ、あと出来たらね」
 ここで部長はあるものを出して来た、それはというと。
 使い捨てカイロだった、それも出して言うのだった。
「これもね」
「カイロですか」
「それもなんですね」
「身体を冷やしたら後に影響するからよ」
 その『後』が何かは言うまでもなかった。
「だからね、こういったものも用意しておくといいわよ」
「あっ、私持ってるわ」
「私もです」
 二年生からも一年生からもだ、声が出て来た。
「ちゃんとカイロ揉んでね」
「中に入れておきます」
「そうしておいてね、とにかくね」
「身体をですね」
「冷やさないことですね」
「そう、厚着にね」
「カイロも備えて」
 二年生の一人が言う。
「そうしてなのね」
「そうよ、いいわね」
「卒業式を過ごして」
「そうして」
「ライブね」
 また言う部長だった。
「頑張るわよ」
「この日の為にやってきたから」
 今度は書記が言う。
「全力を尽くすわよ」
「わかりました」
「やらせてもらいます」
 全員で応えてだ、そしてだった。
 まずは卒業式に出た、卒業式自体はあっさりと終わった。それが終わってからだった。
 軽音楽部の面々はすぐにライブの場所に向かう、当然プラネッツの五人もだ。
 美優がすぐにだ、四人に言った。
「じゃあ今からな」
「ええ、今からね」
「ライブね」
「あたし達の受け持ちの場所に行こうな」
 こう四人に言うのだった。
「身体冷さずに済んだしな」
「厚着していてよかったわね」
 琴乃が美優に応える。
「本当に」
「だよな、あたしもな」
「お陰で身体冷えてなくて」
「このままな」
「気持ちよくライブに入られるわね」
「それじゃあな」
 美優は琴乃の応えながら皆に言った。
「ライブでは」
「ええ、笑顔で」
「先輩達送ろう」
「ライブでね」
 三人も笑顔で応えてだ、そしてだった。
 全員で彼女達のライブ会場に向かう。五人の一年生としての最後のライブの時が来ようとしていた。


第八十四話   完


                          2014・6・10 
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