美しき異形達
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第十九話 友人と仲間その三
「私達自身がお互いの長所と短所もよく知って」
「相互理解ですね」
「そして。この言葉を出すことは私らしくないかも知れないけれど」
こう思う、しかしあえて言う菖蒲だった。
「友情を深めることよ」
「絆ね」
菊が応えた。
「それをなのね」
「そう、そうしたものを深めていってこそよ」
「内輪揉めを防げるのね」
「そして何かあればじっくりと話をすることよ」
このことも大事だというのだ。
「派閥は作らないこと、そして確かなリーダーを置くことね」
「リーダーねえ」
菊は腕を組んでだ、菖蒲のその言葉に考える顔を見せた。
「私達の中で」
「誰がいいかというと」
菖蒲は八人、彼女自身を入れた中で一人を見た。それはというと。
智和だった、菖蒲は智和を見てこう言った。
「先輩だと思うわ」
「僕なんだ」
「はい、先輩が一番年長ですし」
菖蒲達七人は二年生だ、それに対して智和は三年生だ。学生の間で一年の違いは非常に大きなものがある。
「それに考え方もしっかりしておられて人の話を聞いてくれます」
「だからなんだ」
「それに何度かクラス委員や生徒会の役員も経験されていますね」
「今もね」
生徒会長をしている、このことは自分から言った智和だった。
「特進科のね」
「生徒会長ですね」
「小学校、中学校でも生徒会長はしたよ」
「見事な生徒会長だと思います」
「仕事をそつなくこなしているっていうんだね」
「そうです」
そうしたことも見て、というのだ。
「それに私達の間でも」
「ああ、先輩がいてくれるとな」
薊もこう言う。
「何か違うよな」
「頼りになるのよね」
菫は薊に続いて述べた。
「相談相手にもなってくれて」
「頭もいいしさ」
「学校の成績とかだけじゃなくて人間としてね」
「そうそう、確かに学業も優秀だけれどさ」
「そうしたことも見てです」
菖蒲は二人の話も聞きながら智和に述べた。
「先輩こそがです」
「リーダーに相応しいんだね」
「はい、そう思います」
そうしただ、智和の全てを見てというのだ。
「私達のリーダーになって欲しいのです」
「僕は戦えないけれどいいのかな」
「それとこれとは別です」
リーダーになるかどうかとだ、戦える戦えないは別だというのだ。
「人としてどうかです」
「人だね」
「そうです、私達の中では」
また言う菖蒲だった。
「最もです」
「そうなんだね」
「そうです、ですから」
それでだというのだ。
「お願いします」
「皆も同じ考えかな」
菖蒲の言葉を受けてだ、そうしてだった。
あらためてだ、菖蒲以外の面々にも問うたのだった。
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