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闇の魔法使える武偵はおかしいか?

作者:コバトン
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装填2 緋色と闇と、非日常

 
前書き
続きです。
ここから先はハーメルンと同じにするか、暁オリジナル展開にするかをアンケートで決めます。
詳しくは後書きで。 

 
武偵高では1限目から4時限目まで普通の高校と同じように一般科目の授業を行い、5時限目以降、それぞれの専門科目に分かれての自習を行うことになっている。
5時限目、俺は超能力捜査研究科(SSR)の超能力実験室で魔法の練習をしていた。
来れ( ケノテートス・ ) 虚空の雷(アストラプサトー ) 薙ぎ払え( デ・テメトー )      雷の斧!!!   ( ディオス・テュコス!!! )
雷鳴が迅り、雷光を纏った斧のように鋭い一撃が標的(ターゲット)の丸太を切り裂く。

雷系の上位古代語魔法 (ハイシェント呪文)。中の上程度の威力だが連携技をしやすい。

「ちっ…発動まで時間がかかるな。
雷の暴風と同じ上位古代語魔法といっても呪文の詠唱が短い分、まだまだ改良の余地があるな。
練習で慣れるしかないか…。
闇の魔法(マギアエレベア)で装填させることができるようになるのは当面先だな。
次は『闇き夜の型』(闇モード)を起動させて…よし、いける」

俺は闇の魔法、術式装填の前の段階である闇のモードを起動させ、自身にこれから《装填》する魔法を発動させた。
来れ 深淵の闇(アギテー・テネプラエ・アビュシィ)
燃え盛る大剣(エンシス・インケンデンス)!!
闇と影と(エト・インケンディウム・)憎悪と破壊(カリギニス・ウンブラエ)
復讐(イニミー・キティアエ・)(デーストルクティオーニス)大焔(・ウルティオーニス)!!
我を焼け 彼を焼け(インケンダント・エト・メー・エト・エウム)
其はただ焼き尽くす者(シント・ソールム・インケンデンテース)
奈落の(インケンディウム)業火(ゲヘナエ)!!!
固定(スタグネット)!!!
掌握(コンプレクシオー)!!
術式兵装(プロ・アルマティオーネ)
魂と肉体を喰わせる狂気の技法。闇の魔法。
獄炎(シム・ファブリカートゥス・)煉我(アブ・インケンディオー)

俺の身体は黒く染まり闇の焔を体内に取り込んだ。
身体から黒い炎、いや…オーラのようなものが発生し見るものを萎縮させるような暗黒を纏った姿に変貌した。

「獄炎煉我…よし、問題ないな。
出力をもう少し上げられれば…いや、危険か…」
気がつけば6限目が終わり放課後になっていた。
自主練習を1時間くらいやり、今日は朝からいろいろあったせいか疲れ果てた俺はSSR棟を出て自室の第3男子寮に向かおうとした時、SSR棟の出入り口前に立っていたピンク色のツインテールの少女に気づいた。




武偵高には、特殊な魔術を使う超偵として武偵登録している。
超偵とは超能力や魔術(魔法)、異能を使う武偵の事を示す。
それぞれの専門科目にはランクがあり、F〜からSまであるが通常はFは格付けされないランクで、Sランクは《超人》といってもいいくらい人間離れしている奴らがなる。
通常のランクはE(落ちこぼれ)からA(優等生)が一般的だと俺は思っている。
Sより上にRランクなんていう世界中に7人しか格付けされてないランクも存在しているがあれは《人外》だと俺は思う。
Aランクですら敵対したくないのに(ランク的にはAランクは束になってもSランクには敵わないが)Sランクみたいな超人との敵対は避けたい。

だが、俺をこの世界中に送り込んだドSの女神様は甘くなかった。

何が言いたいかというと俺の目の前に『超人武偵』(Sランク)の一人。



神崎・H・アリアがいた。



「遅い…淑女(レディ)を待たせるなんて紳士(ジェントルマン)失格ね!」
出会い頭からツンツン口撃をしてくる万年145cm。
「…な、なんでいるんだよ?」
俺は思わず項垂れてしまった。
「ここにアンタがいるからよ」
「答えになってないだろ⁉︎」
会話のキャッチボールができてない。
「アンタがSSRで訓練してるって聞いたからわざわざ放課後まで待ってたのよ」
だ・か・ら・なんで俺を待つんだよ⁇
「俺はお前に用はねぇよ」
「あたしはあるのよ」
アリアは太ももからモロに見えてる(武藤いわくガンちら)銃を抜き放った。
ガガン。
という銃声が鳴り響き俺の右胸へ銃弾が当たった。

「…やっぱりね」
いきなり銃弾をぶっ放しやがったアリアは《こうなる事を》確信していたかのように冷静に落ち着いて銃弾の最期を見送った。
俺の右胸に向けて放たれた銃弾は右胸に当たる直前で見えない《壁》に阻まれて地面へ落下した。

「いきなり銃弾ぶっ放しといて言うことがそれか⁉︎」

嫌だもう、俺は金次みたいなドMじゃないからアリアみたいなツンデレの相手は無理だ。

「どうせ効かないんでしょう?」
オイ、効かないなら銃撃してもいいのか?
もう少し常識を持ってくれ‼︎

「ここは日本だ。
アメリカみたいに銃撃で挨拶する文化はねぇ!」

ほんとこれだから銃撃斬撃依存症(死ね死ね団)の強襲科の奴らは嫌なんだ。

「うるさい、うるさい、うるさーい。
アンタ銃撃しても死なない変態でしょー。
愚痴愚痴文句言ってんじゃないわよ!」
ひでぇ、酷すぎる。
何この扱い?

「……何しに来たんだよ」
アリアに言いたいことは沢山あるがまずは一番聞きたかった質問をした。


「わからないの?」
「わかるかよ⁉︎」
いきなり来て銃弾ぶっ放す奴の行動なんかわかるか。
俺は読心術を使える超能力者や魔法使いじゃねぇ…いや、魔法使いだけど。


アリアはそんな俺の態度が気に入らなかったのか俺に人差し指を向けて聞きたくなかった言葉を言いやがった。








「アンタ、私の奴隷になりなさい」








今なんて言った?
土鈴になりなさい?
どれ胃?


……聞き間違いだったらいいな…。


アリアはパートナーを探している。
自分の《母親》を救う為に。
あの組織に挑む為に。

たった一人で今まで戦ってきたんだろう。
アリアのパートナーが務まる人間なんてそうそういるもんじゃないからな。

世界中のどこかにいるかもしれない未来のパートナー。
いる確約もなしに今までたった一人で戦ってきた。
そして今日、偶然にもパートナーになりそうな候補者が見つかった。


人付き合いが苦手なコミュニケーション力ほぼ0のアリアはパートナーにする為に無茶苦茶な行動に出た。



そこまでは解る。
だがな…。


なんで俺が奴隷宣言されてるんだ⁉︎







母親の件には同情する。
助けてやりたいとも思う。
だけど…



「だが、断る」

「なんでよ⁉︎」
アリアがそのちっこい背を一生懸命伸ばして抗議の威嚇射撃をおこなってきた。
銃弾は上空に乱射される。

「いきなり来て銃弾ぶっ放しといて挙句の果てに奴隷になれだ?
アリアお前いくらコミュ力0でもこれはねぇよ!」

本当どういう教育されてきたんだ?

「なんでよ…嫌だ!ミツルはアタシのもんだ。
あたしの奴隷よ!これは決まり、決まりったら決まりよ!」

どんだけ理不尽なんだよ…。

「決闘よ!
負けたら《勝った方の言うことをなんでも聞くこと》、決闘しなさい!」
「いいのか?
俺は金次と違って女の子でも容赦しないぜ?」
「望むところよ!
でっーかい風穴空けてやるんだから」










んで、強襲科の施設、黒い体育館へとやって来たが。



「おお、光。死にに強襲科に来たのか?
じゃあさっそく死んでくれ!」
「うるさい、田中。お前こそ先に死ね!」

「あれ?八神君じゃない?
自由履修で来たの?
じゃあさっそく死んで」
「嫌だ!君こそ先に死んでくれ!」

「死ね死ね死ね死ね…」
「ヤンデレかよ?
あんたこそ死ねー」

強襲科の悪しき伝統で何故か挨拶代わりに死ねと言うことが決まっている。
だから俺はこんなところに来たくなかったんだ。
死ね死ね団の魔窟になんか、な。





「それじゃあ、始めるわよ」
アリアはそう言って両手に大型拳銃、コルトガバメントを持ち銃撃してきた。
銃口から放たれた銃弾は俺の左肩に狙いがつけられている。
俺はあえて避けずにその銃弾を受け止めた。(・・・・・)

「どうやってんのよ、それ?」
アリアは俺に銃弾が届かない訳を聞いてきた。
「敵対者に教えるか…って言いたいところだけど特別に教えてやる。
俺は無詠唱で一部の魔法を使える。
んで簡単な防御魔法の一つ、風花 風障壁(フランス バリエース・アエリアーリス)を展開して防いだんだ。
この魔法は10トントラックの衝突にも耐えられるからな」
連続使用できないがそんな弱点まで教えてやる必要はないしな。
それに某白髪の少年のような曼荼羅の障壁は俺にはまだ使えない。


「銃弾が効かないなんてやりにくいわね」
アリアはそう言って銃をしまい、今度は背に隠している日本刀(小太刀)を二本抜いて切りかかってきた。
「小太刀の二刀流と二丁拳銃の使い手か…〈双剣双銃〉( カドラ)の二つ名は伊達じゃないな」

俺は《闇き夜の型》を発動させ、回避すると闇の魔法 術式兵装を展開した。


来れ 深淵の闇(アギテー・テネプラエ・アビュシィ)
燃え盛る大剣(エンシス・インケンデンス)!!
闇と影と(エト・インケンディウム)憎悪と破壊(・カリギニス・ウンブラエ)
復讐(イニミー・キティアエ・)(デーストルクティオーニス・)大焔(ウルティオーニス)!!
我を焼け 彼を焼け(インケンダント・エト・メー・エト・エウム)
其はただ焼き尽くす者(シント・ソールム・インケンデンテース)
奈落の(インケンディウム)業火(ゲヘナエ)!!!
固定(スタグネット)!!!
掌握(コンプレクシオー)!!
術式兵装(プロ・アルマティオーネ)
闇の炎を体内に取り込んだ。
獄炎(シム・ファブリカートゥス・)煉我(アブ・インケンディオー)


漆黒の闇に染まった俺を見てビビるアリア。
ガタガタ震えてる。
そういえばアリアはお化け系苦手な方だったな。

解放‼︎ (ウンデセクサーギンタ) 炎の精霊 59柱!!(スピリトゥス・イグニス!! ) 集い来りて(コエウンテース・・・)   魔法の射手(サギタ・マギカ) 連弾(セリエス・)火の59矢(・イグニス)

俺は震えてるアリアに向けて初心者レベルの魔法を放った。
魔法の射手の威力を示すと、矢一発分はストレートパンチ一発分に相当する。
つまり俺はアリアに対し59発分のストレートパンチを放ったことになる。
それも《破壊属性》の火の魔法でな。

「みぎゃぁ…」
モロに俺の魔法をくらいアリアは吹っ飛んでいった。



「そこまで‼︎
勝者、八神。

誰か神崎を救護科(アンピュラス)まで連れていってやれや〜」
それまで黙っていた強襲科一の問題教師、蘭豹の号令で決闘はお開きになった。


「はぁはぁ…」
闇の魔法を使いすぎたせいか、少し息苦しい。

「…ん、ぐっ…」
闇の侵食が進み始めたのか痛みもある。



「…こりゃあ、ヤバイな。
あのまま戦ってたら負けてたのは俺の方だな…」
闇の侵食、闇の魔法の副作用。
闇の魔法を長時間使えない理由がこれだ。
使いすぎれば最悪俺は…いやよそう…まだそうなるとは決まってない。

何故かアリアの事を、あの組織の事を考えてしまう。

さっきの決闘はアリアがビビらなければ俺は負けてた。
アリアの弱点は四つある。

桃まん(中毒)、浮き輪(泳げない為)、雷(ビビり)、超常現象系(心霊系)だ。

アリアは性格はともかく見た目は悪くない。
性格がキツすぎて俺には無理だが…。
だが同じクラスメイトで武偵…仲間だ!

それに…。


「やっぱり放っておけねぇしな…俺も甘いな」

『ある決意』をして、俺は痛む身体を動かし強襲科の体育館から退出した。








強襲科(アサルト)の施設から出た俺は帰宅しようと歩き始めた。
闇の魔法を使いすぎた影響か身体がだるい。
救護科(アンピュラス)に行くことも考えたが闇の魔法の副作用(魔素)を治療できるかどうかわからないし、闇の魔法について聴かれたくなかったので自宅療法することにした。

「おや、今帰りなのかぃ?」
正門を出たところで高畑先生に呼び止められた。
先生は白いスーツを着ていて、右手には買い物してきたのかビニール袋を持っている。
「ええ…先生は当直ですか?」
ビニール袋の中身がチラッと見えたがタバコとお茶、おにぎりなんかが入っていた。
「残業だよ。
ちょっと調べたいことがあるんでね…。
本当は強襲科の方に訓練の様子を見ないといけなかったんだけど蘭豹先生が代わってくれてね。
蘭豹先生は本当にいい人だよ…お酒を飲んで暴れなければ…」
遠目になり、現実世界からまるで魂が離れたように放心する高畑先生。
何があったんだ?
すごい気になる。
「高畑先生も苦労してるんですね…。
話変わりますがそういえば今日は雪姫先生の姿が見えないんですけど《出張》ですか?」
今日の訓練で何故か出没しなかった超能力捜査研究科(SSR)一の問題教師のことを聞いてみた。
「ああ、エ…雪姫先生なら今日は《麻帆良学園》の方に行ってるよ。
学園長先生主導の元、武偵と魔法生徒との交流事業の件で話し合いがあってね。
明日には帰ってくる予定だよ」

武偵高の臨時講師、雪姫教諭。
金髪碧眼で顔も背もスタイルよいSSRが誇る美人教師(笑)。
美人だが、性格が超ドSで毒舌。
ニンニクとお日様がちょっと苦手。
強襲科(アサルト)の蘭豹、尋問科(ダギュラス)の綴、そして超能力捜査研究科(SSR)の雪姫、この三人は武偵高生の間で武偵高三大危険問題教師として認知されている。


「明日、休もうかな…」
急に明日学校に行ったらいけない病が発症したかも…病気ならしかたないよね!

「雪姫先生から伝言預かってるんだけど…聞く?」
高畑先生が苦笑いしながら聞いてきた。

「聞きたくねぇ…だが、聞かなかったら後が怖い」
雪姫先生の訓練は常軌を逸してる。訓練と称して、極寒の雪山に放置したり、密林(ジャングル)に持ち物、武器なしで放りこんだり、パラシュートなしでスカイダイビングさせたり、風船を身体に括りつけて空に飛ばしたり…思い出しただけで軽くヒステリア・鬱モードになれる虐待をされてきた。
「えっと…では、『フハハハハ、元気にしてるか、少年よ?
私がいないからって泣いちゃた子は誰かな?
私がいないからって訓練サボったらどうなるかわかってるな?
明日には戻るからそれまでに上位古代語魔法《千の雷》使えるようにしとけよ?
できなかったり、詐病で登校拒否したら…わかるよな?』…だそうだ。
エヴァは相変わらず無茶振りしてるくるね…」
高畑先生に哀れみが混じった目で見られた。
うぅ…もう、嫌だ。
涙がでてきた。
もちろん嬉し泣きじゃなく、血の涙が…。
《千の雷》とか無理ゲーだよ。
それも明日までとか、どんだけ糞ゲー仕様な要求してくるんだよ?
できるわけねぇだろ。
まだ《雷の斧》すら取得中なんだぞ⁉︎
俺がやる詐病(サボり)計画バレバレかー。


俺が雪姫と出会ったのは武偵高の入学試験の時だ。
転生後俺は女神様の意思とは逆に『普通な人生』を『普通に』謳歌してやろうと思っていた。
ところが…俺が転生した新しい両親は二人とも『武偵』という帯銃、帯刀を許可された特別な仕事に着いてる人達で、長男として生まれた俺は幼児の頃からしたくもなかった修業をさせられて育った。
武偵になる気はなかったが初めて魔法を使った時に魔法を行使する楽しさにハマってしまった俺はどっぷりと魔法漬けの毎日が遅れる超能力捜査研究科に入りたくなり中学は武偵高の付属中に進学したんだ。
で、中学の時にちょっとしたとある事件が起きてそこへ応援として駆けつけてきた(何故か、緋アリの世界にいた)高畑先生に見出され、武偵高の入学試験で何故か雪姫にも気に入れ(目つけ)られた俺は、ほぼ毎日のように金髪碧眼美人教師(笑)に修業という名の訓練(イジメ)を受けている。


「明日学校爆発しねぇかな…」
残業がある高畑先生と別れた俺は武偵にあるまじき発言をしながら帰路についた。





とここで終わればどれだけよかったか。










帰宅した俺はソファに倒れこみ、すぐさま投薬し、気づけば爆睡してしまっていた。
原作ネギとは違い寝ればある程度の《魔素》は身体から抜ける。
それでも抜けない《魔素》はアンサートーカーで導きだして製薬した特製の解魔素薬を飲んで寝れば体調は回復する。

どのくらいの時間がたったんだろうか。
俺は鳴り響くチャイムの音で目を覚ました。

ピンポンピンポンピンポンピピピ…ドンドンドンとチャイムを無視していたら間隔が短くなりしまいには玄関のドアを叩かれた。
犯人はわかっている。

「あーもう、うるせぇな‼︎」
玄関のドアを開けると予想通りの人物達がいた。

「遅い!あたしがチャイムを押したら5秒以内に出ること!」
びしっ!両手を腰にあて、赤紫色(カメリア)のツリ目をぎぎんとつり上げた___制服姿の神崎・H・アリアと。
「悪いな光。俺は来たくなかったんだけどこいつが無理やり…あ、おい!アリア」
アリアに無理やりつき合わされたのか無気力状態の遠山金次が来訪した。

アリアは金次の静止を聴かずにづかづかと部屋の奥に入っていった。

俺の部屋の中へ、な…(・・・・・・・・)



「家主の許可も取らずに入るなんて…ありえねぇ」
本当にどういう教育受けてきたんだ?
「光。悪いな…アリアの奴、光の部屋でもこれかよ…(・・・・・・・・・・・・)
「まあ、雪姫先生である程度慣れてるからいいが、金次お前の彼女()だろ!
なんとかしろ‼︎」
どうやら原作通り、俺との決闘後にアリアは金次の部屋に行ったらしい。
俺の時と同じで《奴隷宣言》されたんだろう。
「彼女じゃねぇよ!
光までそんな風に言うのか⁉︎
俺が女を苦手なこと知ってるだろ⁉︎」
ああ。知ってる。
金次が持つ特殊な体質(HSS)を知ってるのは同学年だと俺だけ(ということになっているが他にもいる。某怪盗少女とか無口スナイパーとか。ただ金次には言ってない。原作ブレイクする気はなかったから)だ。
遠山一族に代々遺伝される力。

HSS(ヒステリア・サヴァン・シンドローム)
通称ヒステリアモード。

この体質を持つ者は、一定量以上の恋愛時脳内物質βエンドルフィンが分泌されると、それが常人の約30倍もの量の神経伝達物質を媒介し、大脳・小脳・脊髄といった中枢神経系の活動を劇的に亢進させる。
その結果、ヒステリアモード時には論理的思考力、判断力、ひいては反射神経までもが飛躍的に向上し、うんたらかんたら…どうのこうので、簡単にいうとこの体質を持つ者は性的に興奮すると、(・・・・・・・・・)一時的に人が変わったかのようなスーパーモードになれるんだ。


常人の30倍の能力を発揮できるとかチートだよな。
もちろん、この体質には欠点がある。



「おい、金次。
アリアに何をしたんだ?」
何をしたのかはすでに《知ってるが》あえて聞いてみた。
「不幸な事故だったんだ…あれはどう考えても不可抗力だ!」
知ってるけど(性格はともかく)美少女と密着して、ブラ見て、お姫様抱っこしたんだろ、本当リア充金次死ね‼︎
「なんか、変な殺気を感じたんだが⁇」
金次がそう言って首を捻ってるが無視して話題を変えた。

「で?」
俺は金次を睨みつけながら問いかけた。
金次は顔面蒼白になって口を開こうとしたが桃まん武偵の怒鳴り声が玄関ドア付近にいた俺達に向けて発せられた。

「遅い!
何してんのよ!
さっさと来なさい‼︎

お腹空いた…桃まんないの?」

本当に何様なんだこのチビは?

「いきなり人の部屋に来といてそれか⁉︎
桃まんなら冷蔵庫の中だ!」

甘い。甘いぞ…俺。


アリアは冷蔵庫から桃まんが10個載っかてる皿を出しリビングルームのソファにどかっと座りやがった。
糞、アリアの外見は悔しいが可愛い。
小学生の妹におやつを与えてる気分だ。
俺の中でアリアちゃん(10)が桃まんを食べてるシーンが浮かんだ。
ヤバイヤバイ、本人の前で笑ったら風穴だ。
気を引き締めないとな。

「で?
何しにきたんだよ?」
俺はアリアに問いかけたが。
「もふぁわい」(おかわり)
桃まん10個を一瞬で食べたアリアがおかわりを要求してきた。

「手品か⁉︎」
お前は、猿とDの名を持つ麦わら帽子を被った海賊か⁉︎
どんだけ桃まんが好きなんだよ⁉︎

しかたなく、桃まんのおかわりを20個出したがまたすぐになくなった。
「わふぁにゃなひの?」(わからないの?)

「わかるかよ⁉︎」
ちゃんと食物は飲み込んでから話せ。
アリアは口に入ってる桃まんを咀嚼してから話はじめた。
「さっきの決闘の件で来たのよ」
ああ、あれか。
「ごめん。
一方的すぎたわ。
パートナーはあんた以外から探「なってもいいぞ⁉︎」す……は?」
呆然とした表情をしているアリア。
俺の隣に座る金次も愕然としている。
「ただし、条件がいくつかある。
金次を奴隷(パートナー)にするのはかまわないが「オイ⁉︎」、俺は奴隷呼ばわりするな!
あと、強襲科にも絶対にいかない。
例え、自由履修でもな」
「わかったわ。
その条件でいいわよ」
「よくねぇよ⁉︎」
金次が文句言ってるが無視だ、無視。
「でもどうして急にOKしたのよ?」



アリアが苦手な推理を放棄して俺に尋ねてきた。



「そりぁ、アリアといた方が『面白そう』だし、いろんな超人や超偵と知り会えるしな!
…それにいろんな魔法見れるチャンスだしな」



最後の呟きは聞こえなかったようでアリアは嬉しそうにはしゃいで金次相手にバリツ(バーリ・トゥード)をかましている。








アリアが金次相手にイチャついてる(バリツをかけてる)間、俺は夕飯の支度を始めることにした。
料理はそこそこできる。
同じ寮の同居人や雪姫先生が家事を全くしないせいで、家事スキルは転生前と比べてメチャクチャ上がった。最初こそ、ハンバーグ焼こうとして家を焼きそうになるくらい酷かったが今ではハンバーグ、餃子、焼き魚、煮物、カレー、シチュー、串焼き、パスタ、ロールキャベツ、桃まんはレシピ本なしでも作れるくらい上達した。
作れる料理に桃まんが入ってるのは雪姫が最近になってハマり、模擬戦と腕相撲で負けた罰ゲームで作り始めたのが原因だ。
作れるようになる為にわざわざ松本屋で桃まん製造のバイトまでした。苦労の末桃まん製造課程修了証(桃まん検定1級)なる物を松本屋の社長さんから貰い、いつ雪姫が来てもいいように雪姫用に冷蔵庫に大量の桃まんを作っておいたが桃まん中毒患者(アリア)の来襲により備蓄は無くなってしまった。

「はぁ〜…また桃まん作らないとなー」
溜息を吐きながら今日の夕飯の献立を考える。
冷蔵庫を覗くと、人参、ジャガイモ、タマネギ、豚肉が入っている。
今日はカレーに決まりだ!
「アリアと金次。お前ら夕飯は?」
念のために確認をすると…
「お腹空いた〜。
なんかないの?」
金次とじゃれあっていたアリアが金次から離れて、ソファーの手すりに身体をしなだれかけながら聞いてきた。
その女っぽい仕草に、ドキドキしてしまった俺は顔を逸らしてアリアに答えた。
「今作るよ!
カレーならできるけど食ってくか?」
そう言うとアリアは、ちょと驚いた顔をしながら話かけてきた。
「アンタ、料理できんの?」
『コイツ、料理できんのか?』みたいな失礼極まりない顔で俺を見るアリア。
「その言い方は失礼だぞ。簡単な料理なら作れる!
さすがに凝った料理はできないけどな…」
「凄いじゃない!うん。うん。さすがあたしのど…じゃなくてパートナーね!
アンタやればできるじゃない!それに比べてこっちの奴隷は…」
俺を奴隷と言いかけて慌てて訂正したアリアは俺を褒めた(?)後、俺と同じパートナーのはずの金次に視線を向けるや否ややる気のない金次に対して怒りはじめた。
「キンジアンタ、少しはミツルを見習いなさい!
料理が無理ならせめて言われる前に桃まん買いに行くくらいしなさい!」
「誰が行くか‼︎」
金次がアリアに突っ込んだ。
さすがツッコミスター金ちゃん(笑)
いいコンビだな。この2人。

などとアリア&金次が夫婦漫才をしている間に、料理(カレー)ができあがった。
皿に盛り付け、冷蔵庫に入ってたレタスとトマトとツナ缶で簡単なサラダも作りテーブルに並べた。
「わぁ〜。いい匂い。美味しそうなカレーじゃない」
「へぇ〜意外に家庭的なんだなー」
「カレーだしな。このくらい誰でもできるだろ?」
たかがカレー。だけど褒められれば悪い気はしない。
「じゃあ食うか!」

「「「いただきます‼︎」」」


食事を始めると皆無言で料理(カレー)を食べる。
アリアには辛かったみたいで金次に水を要求している。
中辛にしたがアリアは甘口派だったみたいだ。
見た目と同じで味覚も子供っぽいようだ。
食事を終え時計を見るともう8時半をまわっている。
そろそろ同居人も帰ってくる時刻なのでアリアにいつ頃帰るのか聞いてみた。
「なあ、アリア。外暗くなってるけどいつ頃帰るんだ⁉︎」
原作を知っている俺は自身にあのイベント(・・・・・)が降りかからないようにアリアが帰ることを期待して聞いてみた。
「言ってなかった?今日泊まるから」
_____は⁉︎
俺の頬が痙攣でも起こしたかのように引きつる。
「ちょ……ちょと待て!何言ってんだ!絶対ダメだ!帰れうぇっ」
驚きのあまりちょとリバースしてきたカレーが喉からでかかった。
「うるさい!泊まってくたら泊まってくから!」
おいおい……どうなってんだ女神様よ?
原作ブレーカーしすぎだろ⁉︎
どうしてこうなった?

「_____出てけ!」
これは俺のセリフではない。
無論金次のセリフでもない。
俺が言うべきセリフを、アリアが先に叫んだんだ。
「な、なんで俺達が出てかなきゃいけないんだよ!ここはお前の部屋か!」
金次がアリアに不満を言うがアリアは…
「分からず屋にはお仕置きよ!外で頭冷やしてきなさい!しばらく戻ってくるな!」
ぎぃー!と両拳を振り上げて、アリアは俺達に猫っぽい犬歯をむいた。



寮の部屋を追い出された俺達は近くのコンビニへ向かうことにした。
「なあ、光。なんで俺達が追い出されてんだ?」
コンビニまでの道を歩いていると隣を歩く金次がそんなことを聞いてきた。それは俺が聞きたい謎の一つだ。
「知らん。俺に聞くなよ…」
朝からアリアにまとわりつかれて俺の心労は溜まる一方だ。
「っていうか、あそこ俺の部屋じゃないんだし帰って…あだだだ、腕が…腕があり得ない方向に曲がってる⁉︎」
帰る?帰るの?還りたいんですか?の三段活用?
「一人だけ逃げたら…殺す!」
「悪かった。悪かったから腕放せ_____‼︎」
「敵前逃亡には死を。
武偵ならよくわかるよな?金次くーん」
「顔が怖ぇーよ⁉︎」
金次の腕に腕捻りをかけて、金次が一人逃亡しないように教育(調教)した。


俺達は夜のコンビニでトイレを借りたり、漫画を立ち読みしたり、ハーゲン○ッツを(金次の分も俺の奢りで)買って店外で食べるなどして時間を潰してから俺の自室に2人で戻った。
泥棒のような手つきで、扉をソー……ッと開けて部屋の中に入ったが静かだ。静かすぎる。
直感的にヤバイと思った。
もし、原作が金次の寮の部屋ではなくここで(・・・)起きてるのなら、俺が避けなければいけない地雷が二つある。
金次の奴がバスルームに行くのを横目で見ながら原作のあのイベント(地雷)を回避する為の計画(プラン)を考えていく。
原作の地雷。
一つ目は…。



……ピン、ポーン……

「来た!来てしまった…」
慎ましい、ドアチャイムの音。
この特徴的な鳴らし方は。


「「し、白雪⁉︎」」
声を揃えて固まる俺と金次。
来てほしくなかった突然の来訪者に。
「う、うおっ⁉︎」
ドンっ!
焦ってテンバッタ金次が壁ドンをしやがった。
「き……キンちゃんどうしたの?大丈夫?」
ドアの外から白雪(・・)の声がした。
金次の馬鹿のせいで中に金次がいる事を白雪に知られた。
これじゃあ、もう居留守は使えない。
仕方なく玄関のドアを開けると白雪が立っていた。
俺の後をついてきた金次が白雪に声をかけた。
「あ、ああ。大丈夫」
そう言ってるが金次の顔色は悪い。
いかにも疚しいことをしてます的な顔色だ。
「な、なんでこの部屋に(・・・・・)来たんだ?白雪?」
金次はそう言ってから白雪の恰好に気づいたようで新たな疑問を口にした。
「な、なんだよお前。そんなカッコで」
金次の視線はバスルームを警戒していたがその視線を白雪に向けた。
白雪は何故か巫女装束の袴姿でやってきた。
「あっ……これ、あのね。私、授業で遅くなっちゃて……キンちゃんにお夕食をすぐ作って届けたかったから、着替えないで来ちゃったんだけど……キンちゃんどうして光君の部屋にいるの?」
「そ、それは……」
「俺が誘ったんだ!たまには夕飯一緒に食おうって…な!
そうだろ金次⁉︎」
「あ、ああ。そうだ。そうだった…」
白雪から包みを受け取ると言いよどむ金次のフォローにまわった。
これで前門の虎は帰ると思ったがそんなに甘くなかった。
何故なら。


___ちゃぱあ。
バスルームから水の音が聞こえてきたからだ。
バスルームに視線がいく金次の不自然さに疑問を持ったのか白雪が眉を細めて聞いてきた。
「ねぇ……キンちゃん。バスルームに誰かいるの?」
「中に誰もいませんよ!」
金次の馬鹿は敬語で返したが突然そんな話かたをすれば不自然すぎると感づかれるのが普通だ。
白雪も人様にお見せできない顔で金次に問いかけた。
「……キンちゃん。私に何か隠してることない?」
目から光を失わせた黒雪(ヤンデレ)モードになった白雪がそう言った。
「ない!ないないない!隠し事なんてありあ、じゃない、ありえねーから」
「そうそうそう。そんなことありあ、じゃくて、ありえるわけないから‼︎」
仕方なく、金次のフォローにまわろうとしたが動揺してしまってあやうくアリアと言いそうになった。
「……そう。よかった」
え?今ので納得したの?
白雪はニコっと春風みたいに爽やかな笑顔を作ると、ようやくこちらに背を向けてくれた。

よ……よかった。
前門の虎は片付いた。
残るは…。


二つ目の…。
後門の狼だ。




金次を見ると原作通りアリアが風呂に入っている隙を狙い、脱衣所(・・・)にあるアリアの武器を無力化する為に一人で脱衣所に入っていく所だった。
巻き添えを喰らいたくなかった俺は部屋の外。ベランダにある物置(防弾シェルター)の中に緊急避難をした。
耳を澄ませばわずかに部屋の中から少女の叫び声が聞こえてきた。
「〜〜〜〜〜〜〜死ね‼︎」
と言う声が聞こえ、何か壁に物体が当たるような衝突音が鳴り、しばらくすると部屋の中は静まり帰った。



ソーっとベランダからリビングに戻ると金次やアリアの姿はなく、寝室を覗くと余っているベッドからそれぞれの寝息が聞こえてきた。
どうやら2人ともマジでここに泊まるらしい。
床にはアリアが仕掛けた(トラップ)があちらこちらに仕掛けられている。
原作の金次除けなんだろう。

……ガチャガチャ。
玄関のドアが解錠される音が聞こえてきた。
同居人(ルームメイト)が帰ってきたようだ。


廊下に出ると玄関のドアが開かれ、黒髪の高身長なイケメンが入ってきた。
服装は黒っぽい服を着ていて首や腕にはシルバーアクセサリーをジャラジャラ付けている。
その少年の特徴は一言で言うと『異形』だ。
何故なら『普通』の人間にはない獣耳(・・)尻尾(・・)があるからだ。

「お帰り。小太郎!」

「おう!ただいま帰ったでぇ〜ミツル!」

獣人、狗族の少年犬上小太郎は元気よく帰宅の挨拶を返した。












_____ピピピ、ピピピ、ピピピ。



「ん?朝か…」
目覚ましを停めて、時刻を見るともう5時半だった。
いつもの『日課』の時間だ。

素早く着替えて寮を出ると寮の前で準備運動をしてから『日課』の運動を始める。
「さて、日課の瞬動マラソン20km始めるか!」



「はあはあはあはぁ…」
肌寒い早朝の公道。
その公道を『眼にも映らない速さ』で駆け抜けていく。
武偵高がある学園島は元々空港の滑走路として建設が計画されていた人工浮き島(メガフロート)を活用したせいもあり、その面積は広大だ。
南北2km、東西500mを有する広大な浮き島をマラソン(瞬動術)で駆け抜けていく。
マラソンをしながら如何に無駄な動作を無くしていくかが今の俺の課題だ。
「瞬動術の基本は『入り』と『掴み』…。
確か…あの人(・・・)が言うには、瞬動術には三つの極意(コツ)があるんだったな。
えっと…『大地を掴め』、『地球を掴め』、『世界を掴め』だったけ?」
俺に瞬動術を指導してくれたある人の事を思い出しながら、マラソン(瞬動術)を続けていく。


あれは、俺が武偵中に通っていた頃。
ちょうど今くらいの桜が咲く季節だった。
当時の俺は高畑先生に稽古をつけてもらいながら自力で魔法の練習をしていて、気や魔力の使い方に煮詰まっていた時期だった。
瞬動術を高畑先生から学び始めたばかりで一人河原で練習していた俺にあの人は話かけてきた。
実際には話かけてきたと言うより絡んできたといった表現の方が正しいが。
俺の瞬動術が全然なってないと怒鳴りつけてきて頼んでもいないのに無理ヤリ稽古をつけてきたのがあの人との出会いだ。
瞬動術に関しては達人といっていい腕前を持っていたあの人に俺は師事し約一ヶ月間という短い時間をあの人の元で過ごした。
あの人との出会いは唐突に始まり唐突に終わった。
海外に、遠くへ旅立つあの人から最後の試験を課せられた俺は瞬動術の『奥義』を喰らい、その身に受けたことで瞬動術のコツを理解しあの人に一撃入れ無事に卒業した。

瞬動術を会得するには三つのコツが大切だ。
一つ目は『入り』。
瞬動術の『入り』とは踏み込みのこと。
『地球を掴む』為には踏みしめないといけない。
足裏の柔軟性が大切。
足裏の柔軟性を鍛える為に足指で歯磨きができるようになるまで練習すること。
二つ目は『踏み込みの瞬間「世界の全てを背中に捨て去って」最速の力を得ること』
三つ目は『掴み(接地)
『「掴みの時にはその力は大地に返す」つまり、「世界に帰って」こなきゃいけない』
『大地を掴む』、『世界を掴む』の本当の意味はこれだ。
指導してくれた格闘家は別れ際にそう言って去って行った。


昔を懐かしみながらマラソン(瞬動術)していると左手の腕時計のアラームが鳴った。
時刻を見るともう午前7時だ。
自転車を『武偵殺し』に爆破された俺は、午前7時58分のバスに乗れなければ遅刻してしまう。
朝食を作るのが億劫になった俺は、寮へ戻る道にあるコンビニに寄って行くことにした。
コンビニに入るとそこには予想外の人物がいた。
彼女(・・)は商品棚から右手で取った商品を左手に持つ買い物カゴの中に入れていた。
彼女が持つ買い物カゴの中には大量のカロリーメイ⚫️が入っている。
味はどれもチーズ味ばかりだ。
どんだけカロリーメイ⚫️好きなんだよ!っと突っ込みそうになったが以前突っ込んだ際にカロリーメイ⚫️は優れた保存食であり、バランスよく栄養が採れる栄養食品だと普段おとなしい彼女に力説されたことを思い出し、突っ込みを入れるのを辞めた。
目の前にいる彼女は短い翡翠色の髪をしていて、その瞳は黄色っぽい色をしている。
背中には狙撃銃(スナイパーライフル)を背負っている。
彼女は狙撃科(スナイプ)が誇る『天才児』で武偵ランクは当たり前のようにSランクに認定されている。
狙撃の射程距離は2kmを超えており、彼女が的を外したところを一度も見たことはない。
俺と目があった彼女は俺の側に近づいてきた。
「おはようございます…八神さん」
おはようと挨拶を返すと彼女は突然俺に警告してきた。
「気をつけてください。
風が…邪悪な風を感じます」
意味不明なことをいう彼女に説明を求めたが彼女は一言だけしか言わなかった。
「……風がそう言っています」と。
レジに向かい会計を済ませると彼女は俺に向かってぺこりとお辞儀をし、店外へ出て行ってしまった。
「やっぱりこの時(・・・)のレキはまだ感情が乏しいな」
俺の呟きは誰にも聞こえなかったと思う。


朝食のオニギリやサンドイッチ、アリア用に桃まんを買って寮の自室に戻ると部屋が、自室が悲惨な光景になっていた。
「おいおい、嘘…だ、ろ?」
目の前の光景が信じられずに呆然とする俺に金次が声をかけてきた。
「くっ…光すまない。
お前の留守中に…してやられた。俺には止められなかった…」
金次が声を震わせながらそう言ってきたがただ呆然としてしまい、耳に入らなかった。
一体俺の留守中に何が起きたんだ?

なんで?
どうして…俺の部屋が。









破壊されてんだよ?











俺が寝てたベッドも部屋の壁も床も何もかも。
俺の宝物(エロ本)無残な姿(ゴミ)とかしていた。
武藤から借りた巫女さん物が…⁉︎
誰がやったんだ⁉︎









いや、犯人達は分かっている。
俺が帰宅した瞬間、二人とも俺の顔を見て震えたからな。



「さて、ちょろ〜と言いたいことあるんだけどいいかにゃ?」




「「ッ⁉︎」」(ガクガク)
俺に声をかけられた容疑者2名は震えながら頷いた。

「まず、俺のベッドが切断されてるんだけど…これやったのどっちだにゃ〜?」
怒りのあまり語尾がおかしくなっているがそんなことも気にならないくらい俺は激怒していた。
「「そ、それは…」」
震えながらお互いを指差し2人は…
「「この犬(アリア)がやったのよ!(んや!)」」

神崎・H・アリアと犬上小太郎は叫んだ。
おかしいな〜。
アリアは手に(ガバメント)持ったままだし、小太郎は俺が玄関開けた時に「狗音爆砕拳」(くおんばくさいけん)とか技名叫んでいたけどな。
俺の勘違いなのかな?そうかー。



「へぇー」
普段ださない低い声が室内に響く。

アリアと小太郎は『まずいわ』、『やってもうた』とそれぞれ今になって気づいたようだが遅かったな。
何故なら、2人の前には『闇き夜の型』(闇モード)を発動させた俺が仁王立ちしているからだ。


「ねぇ、2人は暑いのと寒いのと痺れるのとキリキザマレルノドレガイイ?」
「どれも嫌よ(わ〜)⁉︎」
「ソッカー、ジャアゼンブダネ❤︎」
「なんでそうなるのよ(んや〜)⁉︎」
突っ込みを入れてくる辺りまだまだ余裕あるって事でしょ?
大丈夫。
「大丈夫、死なない程度に殺すから」
「「意味がわからないわ(んわ⁉︎)⁉︎」」
またしてもいきピッタリの突っ込みを入れてきた。
本当は仲いいだろ。お前ら。
「まずはレディファーストでアリアから殺るよ?
イイよね?イイだろ?イイよな!」
「怖いわよ!」
「お仕置きだ!
魔法の射手(サギタマギカ)連弾(セリエス)光の97矢(ルーキス)
魔法の射手を放ったがアリアはその場を後ろに飛び跳ねて躱し、背中に収納している小太刀を両手に握って振ってきた。
「こん、のぉぉぉ…」
アリアは二本の小太刀で斬りかかろうと俺に向かってきた。
俺はアリア(馬鹿)に向かって雷の魔法の一つ。
白き雷(フルグラティオー・アルビカンス)を放った。
「みぎゃあ…」という叫び声を上げアリアは気を失った。
次は小太郎(大馬鹿)に向かって魔法を放った。
稲妻(白き雷)を自らの肉体に取り込み打撃技として放つ。
右腕解放 (デクストラー・エーミッタム)白雷掌(はくらいしょう)
「あ、危なっ…何するんや⁉︎」
小太郎は素早い動作で魔法を躱すが小太郎の動きを読んでいた俺は小太郎が移動した着地点に向けて魔法の射手(サギタマギカ)連弾(セリエス)光の101矢(ルーキス)を放った。
「んなっ…」
魔法の矢の直撃を受けて床に倒れる小太郎だが彼は英雄の仲間の一人。直撃を受けても直ぐに起き上がった。
「何するんや‼︎」
講義の声を上げる小太郎だが俺の怒りはこれくらいじゃ収まらない。
「やられたらやり返す…武偵なら当たり前の行為だ‼︎」
そう言った俺に金次は何故かジト目で聞いてきた。
「…本音は?」
「俺の巫女さんを返せ___‼︎」
「「それかよ⁉︎」」
金次と小太郎のW突っ込みを入れられたが何で突っ込まれたのかよくわからん。
武偵は一発撃たれたら撃ち返すもの(エロ本破られたら簀巻きにするもの)だろ?」
「「意味が違げえ_____よ⁉︎」」
金次と小太郎の突っ込みは寮内に響きわたった。






「俺らが悪かった。
スマン、許してぇな〜」
小太郎は謝ってきたのでとりあえずこの件は保留(・・)とすることにした。
聞けば朝小太郎が起きた際にアリアが仕掛けた(トラップ)が作動した事が原因だとか。
リビングのテーブルに着いた俺達は俺が買ってきたオニギリやサンドイッチを食べ始めた。
「あ〜。朝から運動(ケンカ)して疲れた〜。
金次お茶!」
「俺にもコーヒー頂戴!」
「お前ら自分で入れろよ!」
「サンドイッチ食ったよな?」
「食ってたな〜」
「ちきしょー!ちょと待ってろ‼︎」
金次は文句言いながらもお茶を入れはじめる。
「煎れたぞ!」
やっぱり金次は人に使われる奴隷(パシリ)属性もあると俺は思った。
「あ〜人に煎れてもらったお茶は美味いな〜」
「せやな〜」
「お前らな…」
金次が脱力しているがしょうがないだろ。奴隷だろ、俺の。
「……今なんだか不愉快な事を考えてなかったか?」
鋭い。ヒスってないのにやるな金次。
「何故わかった⁉︎」
「顔がにやけすぎだ馬鹿ヤロー‼︎」
「あ〜確かに光は変な事を考える時顔がにやけるわな〜」
「マジで⁉︎」
「「気づいてないのかよ……」」
なんか2人に引かれたがなぜだ?
「なぁ、ところで今何時なんや?」
小太郎がそんな事を聞いてきたので腕時計を確認すると…。
気づけば時計の針は8時(・・)を示していた。
「……」
「……」
「……」
3人揃って絶句した。
武偵高行きのバスがバス停に来る時刻は午前7時58分。
既にすぎていた。




「「「遅刻じゃねぇか⁉︎」」」
ヤバイ。やらかした。
自転車ないのにどうしよう…。





とりあえず…。


「アリアを起こせ!」



武偵高の校門に着いた。
遅刻を覚悟していたが時計を見ると時刻は8時10分だった。
アリアと金次はまだ着いていない。
小太郎は多分もう着いてると思う。
アリア達と一緒じゃないのは理由がある。
金次の馬鹿がアリアの車に一人だけ乗りやがったせいで俺と小太郎は走って武偵高まで行くことになったからだ。アリアの車は2人乗りだからな。
おかげで俺と小太郎は瞬動術で公道を爆走してきた。
小太郎は「これも修業の一つや〜!」とか言って一人俺を置いて爆走して行ったけどな。
小太郎ほど修業脳筋(体育バカ)じゃないから武偵高までの道をショートカットできないかを考えた末、建物の屋上や屋根を《虚空瞬動》で飛び跳ねて(・・・・・)移動する術を思いつき実証してみた。
結論から言うと大成功だった。
武偵高まで行く道を自転車で行くより早くつけるショートカットをついに見つけた。
この道の情報を情報科(インフォルマ)あたりに売れば、遅刻常習犯の武偵高生達が買うんじゃないか。
今度情報科の長谷川さん(ちうたん)あたりに持ちかけてみよう。
そんなことを思っていると制服の胸ポケットに入れている俺の携帯がなった。
発信者は通信科(コネクト)の茶々丸さんからだった。
電話に出ると。
「もしもし?」
「おはようございます八神さん」
「おはよう!茶々丸さん」
「朝からお元気そうで何よりです。マスターから伝言を預かってます」
「ゆ、雪姫から…⁉︎」
俺に緊張が走る。
雪姫、この名前は武偵高生で知らない奴はいない。
三大危険教師の一人だからな。
「はい。一般科目が終わったらすぐにSSRのマスターの部屋に来るように、と。
遅れたり、サボったりしたら(バックれたり)血を貰う(・・・・)との事です。
では八神さん…お気をつけて!」
「ちょっ、何に(・・)気をつければいいんだよ⁉︎」
茶々丸さんからの電話は切れてしまった。
血を吸うとか雪姫相当ヤバイじゃん。
うわ〜。ろくな目にあわない予感が半端ねぇ。
昨日から俺、ろくな目にあってないじゃん。
アリアと雪姫のWパンチとか無理ゲーすぎる。

「不幸だ________‼︎」
俺の叫び声は武偵高の校舎の中まで響いたらしい。





結局遅刻してきた金次とアリア、それに小太郎は校門の前で待ち構えていた蘭豹に見つかったらしく、3人共蘭豹の教育(体罰)を受けて酷く疲弊していた。
金次やアリアはともかく小太郎が何故遅れたのか気になって理由を尋ねると小太郎は俺の先に行った後、白いスーツを着た紳士に声をかけられ勧誘されていたらしい。
その紳士は右手にステッキを持っていて、黒髪で自らを教授(プロフェシオン)と名乗っていたとか。
小太郎は着いてくればさらに『強くなれる』と言われ迷ったみたいだがその誘いを断ったらしい。
なんで断ったのか理由を尋ねると。
「いや、断らなかったら『夏美先輩』が怒るやん」と言った。
教授(プロフェシオン)とか、勧誘とか気になるワードがあったがそれよりも…。
「ああ…夏美先輩怒らしたら怖いからな」
小太郎の戦姉(アミカ)の事を思い出す。
村上 夏美(むらかみなつみ)
彼女はこの世界だと俺の一つ上の学年で特殊捜査研究科 (CVR)のBランク武偵だ。
ある特殊な能力(・・・・・)を持っていて初見の相手なら彼女の接近を防ぐ事は非常に困難だろう。彼女はその能力と中学時代に演劇部にいた経験を生かして特殊捜査研究科(CVR)に入った。中学時代より逞しくなっていてランクこそBだがCVR内では将来を期待される有能な武偵という評価をうけている。
彼女は麻帆良学園(まほらがくえん)と武偵高の交流事業の一貫として一昨年武偵高へと入学をした。
彼女の他にも元麻帆良学園生(魔法生徒)は何人か武偵高生として通っている。
俺の部屋の同居人(ルームメイト)、犬上小太郎もその一人だ。

一般科目(だるい授業)を終え昼休みになると俺の携帯にメールが届いた。
差出人は迷惑教師(雪姫)からだ。
文面は一言だけ。
『屋上に来い!』とだけある。
どこの屋上とか書いてないが雪姫が示す屋上なんてあそこしかない。

俺は昼食を誘ってきた金次や不知火、武藤らに断りを入れて超能力捜査研究科(SSR)棟に向かった。


SSR棟に着き、何故かトーテムポールが柱になっている階段を上り、何故か魔法陣が描かれた屋上のドアを開けると屋上には木造の家(ログハウス)が建てられており、そのログハウスの周りには家庭菜園場まで作られている。
慣れた手つきでログハウスのドアをノックすると中から小さな女の子が出てきた。
「ケケケ。ヒサシブリダナー。クルノガオソイカラコチラカラコロシニイクトコロダッタンゼー!」
女の子と思った物はよく見ると人形で手には出刃包丁を握っている。
「よお、元気そうだなー。茶々0(チャチャゼロ)?」
「ケケケ…オレハゲンキダゼ!
ゲンキスギテイマスグオマエヲキリキザンデヤリタイクライダ」
「おー。怖い、怖い」
相変わらずの戦闘狂(バトルジャンキー)だな。
製作者に似て口調と性格が悪いんだよな。
「誰の性格が悪いんだ?」
俺の思考を読んだのか部屋の奥にいるこの家の主がそう尋ねてきた。
「ケケケ。ババアガオイカリダゼ!
キョウハドンナイジメヲスルノカタノシミダ」
チャチャゼロがそう言うが俺は全然楽しくない。
「ふん。タカミチのぼーやから聞いたぞ。
お前を奴隷にしたがっている身のほど知らずの女がいるみたいだな」
椅子に胡座をかいて座るその少女(・・)は長い金髪の髪に雪のように白い肌。見た目は10歳の姿をしているが実年齢は600歳越え。
名をエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルという。
金髪ロリ吸血鬼(・・・)だ。
「今日はその姿のままなんだな……雪姫先生(・・・・)?」
超能力捜査研究科(SSR)の雪姫教諭。その正体は600年を生きる吸血鬼だ。
この世界の吸血鬼、ブラドやヒルダ達とは種がまた違うようだ。
詳しくはわからないが彼女は10歳の誕生日に何者かに吸血鬼にされ、現代まで裏の世界で生きてきたらしい。
「貴様はどうやら幼女嗜好(ロリコン)みたいだからな。
この姿の方が嬉しいんだろう?」
「人をロリコン扱いするな!」
誰だそんなことを雪姫に言った奴は。
「おやおや、おかしいな〜。タカミチのぼーやから聞いた話や茶々丸が録ったデータでは幼児体型の神崎・H・アリアの服を脱がせたとあったが…」
「あれは誤解だ!」
くっ、よりによって雪姫に知られるなんて…。
元はといえば金次のせいだ。金次の馬鹿は後で殺す。
「で、使ったのか?」
雪姫が椅子から立ち上がり俺の目の前にくると俺のワイシャツのボタンを外しはじめた。
「ちょっ…何を⁉︎」
「黙っとれ!」
雪姫は俺の身体に触れると何かを確認するかのような動作で俺の身体中を触りはじめた。
「なっ⁉︎」
「腕に力を魔力を集めろ!」
言われた通りに魔力を集中させると…。
「ふん。ずいぶんと馴染んできたようだな(・・・・・・・・・・)
俺の腕や背中に現れている紋章状の魔素痕(・・・・・・・)を確認した雪姫はそう呟いた。
「やはり、貴様は…」
雪姫は何やら呟いたが声が小さくて最後まで聞こえなかった。
「何か言ったか?」
「何でもないわ!」
そう言った雪姫に押し倒された。
雪姫のその綺麗な顔が近づく。
……ッ⁉︎
な、何赤くなってんだ俺の顔。
ゆ、雪姫だぞ⁉︎幼女に見えて中身600歳の婆さんだぞ⁉︎
落ち着け、落ちつけ、俺。
「光。実はな…お前にずっと…ずっと伝えたい事があったんだ」
雪姫がその綺麗な顔を俺の口先数cmまで近づけてきた。
な、なんだよ?なんで雪姫あんたまで顔を赤く染めているんだよ?
「ずっと言おうかどうか迷っていたが……もう我慢できん」
え?え?なんなの。
入っちゃた?雪姫ルート入った?
雪姫の顔が俺の唇に近づき俺は全ての行為を彼女に任せる為に瞳を閉じた。
まだか、まだか?さぁ、雪姫かも〜ん。
峰不二子に対するリュパン3世の心境で雪姫がするのを待った。
「うむ。では……いただきます‼︎(・・・・・・・)
「…ッ⁉︎」
雪姫の唇が俺の首筋に(・・・)触れ勢いよく血を吸われた。
「あぎゃあああああ」
チュ〜〜〜〜とされ続け、俺の意識は暗闇の中に沈んでいった。






















「はっ⁉︎」
目を覚ますと俺は雪姫の家のベッドで寝かされていた。
首筋に手を当てると傷跡はなかった。
どうやら夢をみてたらしい。
「起きたか」
部屋に入ってきた雪姫は変化していた。
背は高く、胸もいつものちっぱいではなく巨乳になっていて顔つきも大人になっている。
年齢詐称薬を使ったようだ。
「やはりお前の血は美味かったぞ!
傷跡なら心配するな。救護科(アンピュラス)の近衛が直したからな」
そういう問題じゃねぇだろ!とツッコミたかったがなんか突っ込んだら負ける気がした。
「もうロリは飽きたのか?」
そう聞くと雪姫は。
「お〜や〜。ロリコン好きの光君はあっちの私の方がいいのかな〜」
意地の悪い笑顔を浮かべてそんなことを言ってきやがった。
「違げぇよ⁉︎」
俺はロリコンじゃない。じゃないよな?
なんだか不安になってきた。
「不治の病露理魂(ロリコン)にはかかってない……はずだ」
自信がないのは最近、アリアや雪姫みたいなひんにゅー幼女に絡まれてるからだ。
「ははは……まぁそういうことにしといてやろう。
ところでもう『アレ』は使えるようになったのか?」
雪姫が言うアレとは『千の雷』のことだろう。
「なわけないだろ!無理難題すぎる!
もっと取得難易度が低い誰でも使える強力な魔法を教えろよ!」
「は?取得難易度が低い誰でも使える強力な魔法?
そんな魔法はない!
わずかな勇気が本当の魔法だ(True magic results from corage of the heart)!」
「いや、あんたそれテキトーに言ってるだろ⁉︎」
なんだよ、わずかな勇気って。
勇気だけじゃ誰も(・・・・・・・)救えないんだよ(・・・・・・・)
「勇気より力だ!」
「馬鹿か貴様は。
本当の魔法を理解できないとは情けない。
私はそんな風に貴様を育てた覚えはないぞ?」
「俺もあんたに育てられた覚えはねぇよ!」
虐められたことしかねぇ!
「いいだろう。
私直々に教えてやろう。
この最低、最悪で最強の『不死の魔法使い』!
闇の福音』(ダークエヴァンジェリン)がな!」



雪姫に連れられてやってきたのは地下にある部屋だった。
六畳一間くらいしかないこの小さな部屋で何をやるのか不思議に思っていると、雪姫は部屋の真ん中にある丸い水晶のような物を指差し俺を手招きした。
「こっちに来い!」
雪姫の側に近寄ると水晶のような物の中に山や森、川や湖、城などのパノラマミニチュア模型が入っている。
これはもしかして…。
雪姫との付き合いは1年以上経つがいまだかつてこの魔法具(・・・・・)を使ったことは一度もなかった。
魔法先生ネギま!の原作で見たことしかないが今目の前にあるこれは(・・・)間違いなくあの魔法具(・・・・・)だろう。
「どうした?
何をそんなに驚いてるんだ?
そんなに珍しい物ではないだろ!」
雪姫はそんな風に言っているが原作ネギま!を知っている身としてはこの魔法具を間近で見れて、驚いたり感動したりするのは当然の行為だと思う。
それほどにこの魔法具は重要で何より『強くなる為に必要不可欠』な道具なのだから。
「まさか、この目で実物を見る機会がくるなんてな…。
これが神の塔の先にあり、神が住む場所にあるという精神と時の⚫️屋か⁉︎」
「いやダイオラマ魔法球だが?」
俺のボケに素で返す雪姫。
「ツッコメよ‼︎
ボケだいなしじゃん⁉︎」
違うってことくらいわかるわ⁉︎
「は?何故貴様のボケに付き合わないといけないんだ?
私はそこまで暇じゃない。
変なボケばかりかましてると氷漬けの愉快なオブジェにするぞ?」
「ごめんなさい。調子に乗りました…」
ヤバイ、ヤバイ。
雪姫なら平気でやりそう。
修業と称して極寒の雪山に放置するような奴だからな。
「最初に言っておくがこのダイオラマ魔法球の中に入ったらまる一日中(・・・・・)外に出れない(・・・・・・)からな?
そこんとこ注意しとけよ?」
うん。知ってるけど。
1番ほしい魔法具だったからな。
「はい!」とテキトーな返事をしておいた。
「では入るぞ?」
雪姫が丸い水晶に触れると雪姫の姿は一瞬でこの場から消えた(・・・)
俺は雪姫と同じようにダイオラマ魔法球に触れると俺の身体が光に包まれ気がつくと外界と完全に引き離された水晶の内部、ダイオラマ魔法球の中に入っていた。
俺が現れた場所は城の外壁にある召喚場で足元には魔法陣が描かれている。
雪姫は俺の前に移動するダイオラマ魔法球の事を色々説明してきた。
いわく、ダイオラマ魔法球は1日、つまり24時間経たないと外界へ出れないこと。
昔話の浦島太郎の逆でこっちの1日は外界(現実世界)の1時間に相当するということ。
ようはこっちで丸1日過ごしても現実の時間ではわずか1時間しかたたないという時間チートな魔法具だ。
「便利だな。さすが魔法!
あるんならもっと前から使ってくれよー」
雪姫に文句を言うと。
「聞かれなかったからな」
とニヤついた顔で言いやがった。

森の中にやって来ると。
雪姫は…。

「この辺でいいだろう?
貴様が使える全力(・・)の力で来い‼︎」
雪姫はそう言い、俺が返事を言う前に魔法の詠唱を始めた。
「 集え氷の精霊 槍もて迅雨となりて 敵を貫け      氷槍弾雨(ヤクラーティオー・グランディニス!!)
多数の氷の槍を飛ばして攻撃してきた。
慌てて回避行動をとったが腹と足に何本か喰らってしまった。ものすごく痛い。
「どうした?
この程度か貴様の魔法は?(力は)
雪姫はそんな風に挑発してきて俺に新たな魔法を放ってきた。
闇の精霊(ウンデトリーギンタ)29柱‼︎(スピーリトゥス・オグスクーリー)    魔法の射手(サギタマギカ)連弾(セリエス)・闇の29矢!!(オブスクーリー)
謎の黒い弾丸を飛ばしてきた。
くっ……雪姫の奴。どうやら本気だ。
雪姫の実力をよく知っている俺は俺の全力で行くことにした。
俺は『闇き夜の型』(闇モード)を起動させ咄嗟にその場を飛び跳ねて魔法の矢を躱したが雪姫はその動きを読んでいたようで俺の回避先、着地先へ魔法を放ってきた。
来たれ氷精(ウェニアント・スピーリトゥス)闇の精!!    (グラキアーレス・オブスクーランテース!! ) 吹雪け(フレット・テンペスタース) 常夜の氷雪(ニウァーリス)
      闇の吹雪!!!」(ニウィス・テンペスタース・オブスクランス)
雷の暴風と同じ上位古代語魔法(ハイシェント呪文)の一つ。
強力な吹雪と暗闇を発生させて攻撃できる魔法が俺に遅いかかってきた。
来れ雷精(ウェニアント・スピーリトゥス) 風の精!!(アエリアーレス・フルグリエンテース)    雷を纏いて(クム・フルグラティオーニ) 吹きすさべ (フレット・テンペスタース) 南洋の嵐(アウストリーナ)      雷の暴風!!! (ヨウィス・テンペスタース・フルグリエンス)
とっさに今の俺が出せる最強の魔法(・・・・・)で雪姫の魔法を相殺させたが雪姫はこれも読んでいたようで魔法が相殺されるやいなや、次の魔法を放ってきた。
「来れ氷精 爆ぜよ風精 弾けよ凍れる息吹!!      氷爆!! (ニウィス・カースス)
空気中に大量の氷を瞬時に発生させて、凍気と爆風で相手を攻撃することができる魔法を放ってきた。
「ちょっ……何で殺す感じになってんだよ⁉︎」
「いや、楽しくてつい…」
「つい、じゃねぇよ⁉︎」
どんだけドSなんだよ?
「ほら言うだろう。好きな奴ほど殺したくなるって!」
「言わねぇよ⁉︎」
それを言うなら好きな人ほど虐めたくなる、だろ⁉︎
ってどっちにしろ駄目だろ⁉︎

雪姫の魔法(虐め)は凄まじくその後も殺傷能力が高い魔法を次から次へと繰り出してきた。
氷神の戦鎚‼︎」(マレウス・アクイローニス)
巨大な氷塊を作ってぶつけてきたり…。
「冥府の氷柱」
大質量で柱状の氷塊を出現させて落としてきたり…。
凍てつく氷柩!! 」(ゲリドゥスカプルス)
氷柱に対象を封じ込めることができる呪文を放ったり。



終いには…。
来れ(ケノテートス) 虚空の雷(アストラプサトー) 薙ぎ払え!  (デ・テメトー  )
雷の斧!!!(ディオス・テュコス)
苦手な筈の(・・・・・)電撃系の魔法まで繰り出してきた。俺がまだ取得中の魔法を…。電撃系が得意な俺がまだ十分に使いこなせない魔法を……な。
「ぅぐ……」
直撃こそしなかったが掠っただけでダメージがデカイ。
「どうした?この程度ではあるまい。貴様の能力(ちから)は……」
「やってやるよ‼︎」
やってやる。やられぱなしで武偵が務まるかー。



「「来れ(ケノテートス) 虚空の雷(アストラプサトー) 薙ぎ払え(デ・テメトー!  )
    雷の斧!!!(ディオス・テュコス)」」
全く同じ魔法がぶつかり合い、辺り一面は雷の閃光と轟音が鳴り響き森の中は落雷の直撃を受け木々は落雷により発生した火によって燃えはじめた。
俺は雪姫の魔法を受け地面にぶっ倒されたが雪姫は……。



「ふん。まあまあ……だな。
まだまだ甘いが合格としてやろう」
そんな声が響き、顔を上げて雪姫がいた場所を見るとそこには……。

落雷の直撃を受けても無傷姿(・・・)の雪姫先生が佇んでいた。


いや、アンタ。
どんだけチーターなんだよ!

「わずかな勇気が本当の魔法だ!
だかしかし、貴様が言うように勇気だけでは守れない。
力が無いと守れない!
だがな……勇気を出す事も立派な力だ。
それに力だけでも駄目だしな。
強すぎる力は争いを生む。
ならどうしたらいいか…。
どちらかを選べ‼︎
もしくは……」

雪姫は右手を掲げると…。
エクスキューショナーソード(エンシス・エクセクエンス)
固体・液体の物質を無理矢理気体に相転移させる断罪の剣(エクスキューショナーソード)を出した。

合格祝いだ‼︎(・・・・・)受け取れ‼︎」
雪姫の声が聞こえ、彼女が俺の目の前に一瞬で移動したと思った途端に断罪の剣が振り下ろされ俺の意識は暗闇の中に沈んでいった…。
意識を失う直前、雪姫の声が聞こえた。


(勇気)()か…選べないなら両方(灰色)を選べばいい‼︎
例え泥に塗れても、前へと進む者であれ‼︎」



 
 

 
後書き
つぶやきでアンケート取ってます。
ハーメルン版での猫探しを遺跡調査にするかどうかをアンケートで決めます。
次話の展開はアンケートの結果によっては変わるかもしれません。

感想お待ちしてます。 
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