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闇の魔法使える武偵はおかしいか?

作者:コバトン
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< 前ページ 目次
 

装填1 始まりの日

 
前書き
ハーメルンで連載中の物を再編集して載せています。
文才がない作者ですがいろいろとご了承下さい。 

 




 ……転生してしまった。
 そう、してしまった。別に俺の意思じゃないのに、転生してしまったのだ。
 だがしかし、その転生先が普通に元いた世界であればなんの文句もない。
 でも、転生させてくれちゃった女神様は俺に優しくなかった。











「はあはあはぁ…」



朝、お台場に近い人工浮島にあるとある公道。
通っている高校の通学路に指定されているその道を一台の自転車が爆走している…いや、人事みたいに言うのはやめよう。
猛スピードで自転車のペダルをこいでいる俺。何故朝っぱらから汗だくになってこんな事をしているのかと言うと…




『その自転車には爆弾がしかけてい、ヤガリマス』
自転車のすぐ後ろに自走してる20台のセグウェイ。
銃座が付けられており、その銃座にはイスラエル製のUJIが装着されており遠隔操作で不振な行動をしたらすぐさま鉢の巣になるように設定されている。
きわめつけには自転車のサドルの下に自動車を吹き飛ばせる程のプラスチック爆弾が仕掛けられている。





「知ってるよ、クソッタレ!!」
ああ、知ってる。
俺はこの展開をよく知っている。
体験したことなどないがよくわかってる。
この世界(・・・・)の事は誰よりもわかってる。


でもな。


「何で俺なんだよ!?」


それだけはよくわからない。
いや本当になんで俺が狙われてるんだろう?






どうしてこうなったかよくわからないが状況の説明をしたいと思う。




人に言っても信じてもらえないが、俺は転生者だ。
…うん、そこの人かわいそうな目で俺を見るな。
そりゃわかるよ。
俺が逆の立場だったのならそういった人を受け入れてくれる専門医院や施設をすすめるだろう。
だが俺はどこもおかしくない。
いたって《一般的》な《普通》の人間だ。
…俺の中では。



回想。

前世の最後の記憶はあるができればあまり思い出したくない。
俺は《人》として《最悪の行為》を犯し、結局最愛の人を救えなかったからな。
人生の終わりの瞬間に目を閉じて最期の時を迎えていると頭の中に声が聞こえた。
目を開けると大きな樹がぽつんとたってる広い草原の中に俺は倒れていた。

「目、覚めましたか?」
可愛らしい少女の声が聞こえ、起き上がって声がした方を見ると大きな樹の下の幹に寄り添うようにして金髪の美少女が立っていた。
少女の右手には魔法使いが使うような大きな木製の杖が握られており、左手には本を持っている。
少女は俺の顔をみると微笑み俺の傍にまるで滑るように、摩擦なんかないように滑らかな動作で近寄ってきた。

「無事に魂の固定が終わったようですね。
では次は転生の儀式といきましょうか」

なんだかよくわからない言葉を口に出す少女。
ただ一つだけわかる単語が聞こえた。

「転生?」

「はい。
転生です。
あなたにはとある世界に転生してもらいます。
今、神々の間で行われている《代理戦争》の駒…一兵士としてこれから送る世界で修行していただきます」
いやいやいやいや。
いまこの子、俺のこと《駒》って言ったよな?
聞き間違いじゃないよな?

「絶対や「あなたに拒否権はありません」…は?」
何言ってんの?

「もう、あなたは私の物なんです。
さっき魂を固定したと言いましたよね?
あれは神である私の力であなたの存在の力を、事象を書き換えたんです。
あなたを《代理戦争》に出すためには神の眷属という扱いにしなければならないので申し訳ありませんが強制的に転生していただきます。
安心してください。
あなたには神である私の権限で強力な魔法をつかえるようにしておきますので」
無理無理無理無理。

「無理だから「私には嫌いな言葉が3つあります。

無理、疲れた、めんどくさい。
この3つの言葉は人間の能力を落とすよくない言葉です。
私とあの子達の前では口にしないように」…っておい」


「聞けよ、人の話を!!」
自称神の美少女は俺の言葉を無視して俺の前でジャンプし、空中に浮かんだ。

「期待してますよ、私の歩…兵士さん?」
「お前、人を駒みたいに言うな―――――!!」


「あ、忘れてました。
私の名前はアポロ。
あなたの名前は何でしたっけ?
えっと…ゴミさん」

「人をゴミ呼ばわりすんな―――――!!
俺の名は、八神 光(やがみ みつる)だ!」
この自称神様、絶対ドSだろ。

「ドSですけど?」
「認めた!?」
もうやだ…。

「さあ、時間ももったいないですしさっさとゴミを追い出し…転生の儀式をはじめましょうかー」
「いつか…土下座させてやる」
「そうですか。
では100000年後になりますね」
「長っ!?」
「動かないでくださいね?」
そう言って彼女は俺の目の前に一瞬で現れて顔を近づけてきた。
近くで見るとやはり可愛い(顔は)。
そんな少女に近寄られてドキドキしないはずない。
「ふふっ緊張してますね?」
「そりゃ初めてだからな」
「そうですか。
では私がリードしてあげますね!」
顔と顔が近づき俺と彼女は一つになった。




「って痛てぇぇぇぇぇ―――――!!」
俺の眼球に彼女の人差し指と中指が突き刺さっている。
いわゆる目潰しというやつだ。

「我慢してください。
攻められるの大好きでしょう?
ガンガンいきますよ!」
「うぎゃああああああ」
「転生の儀式には痛みか興奮が必要です。
本来ならキスでいいんですがドMな光君のために《初めて》の目潰しにしてみました」
そう言ってあろうことか彼女は指を動かし始めた。
「ほらほらグリグリされたいんでしょう?
もっとしてあげますからね~」
指を回転させる自称神。
「みぎゃあああああああ」
ちなみに俺にM属性なんかない。
ないったらない。
痛いだけで快感なんてない。
本当だよ?



この悪夢のような儀式はこのあと30分ほど続いた。


「さて、とっくに終わってましたけど楽しくて29分も余分に続けちゃいましたねー。
光君と私の相性はいいんですねー。
また今度やりましょうか・」

「もうやりたくねえよ!!」
駄目だこの神。
はやくなんとかしないと。

「転生はもうできます。
あなたには4つの力を与えておきます。

一つ目は身体強化。

二つ目は答えを知る者(アンサー・トーカー)

三つ目は膨大な気と魔力。
具体的に言えばネギま!のラカンとナギの10倍の量。

そして四つ目は…。

闇の魔法(マギア・エレベア)です。

使いすぎに注意してください。
今のあなたでは呑み込まれます…闇に」











回想終了。








で転生して16年たったわけだが。
うん。
どうしてこうなった?



爆弾付き自転車を漕いでると目の前に見知った奴がいた。
あれは!?

「金次―――――――――!!
武偵憲章1条だ!」
「ん?
光かおは…何だその後ろの!?」
俺の前方で自転車をのんびり漕いでいるのは俺の親友(ここ重要)の遠山 金次(とおやま きんじ)
同じ高校に通う同級生でこの世界の主人公だ。
俺の後ろを見て絶句する金次。
「少しお前にやる。
お互い助け合おうぜ!」
「武偵憲章4条に武偵は自立せよってあんだろ!?」
「うるせ―――!!
1条に仲間を信じ、仲間を助けよってあんだろうが―――――!!」

お互いに迫るセグウェイを押しつけあってると上から少女のアニメ声が聞こえた。
長いピンクブロンドの髪を揺らし、その髪はツインテールになっている。
背丈はよく見えないがおそらく小学生に間違えられるくらいしかないんだろうな。

ああ。
やっぱり。
この世界は―――――。








『緋弾のアリア』の世界なんだな。







”武偵〟

武偵とは凶悪化する犯罪に対抗して作られた国際資格であり、武装を許可され逮捕権を有し報酬に応じ”武偵法〟の許す範囲内においてあらゆる仕事を請け負う―――――いわゆる便利屋である。


そして彼らを育成するための教育機関が東京湾岸部に存在する。


東京武偵高―――――通称、”学園島〟








俺、八神 光は転生者だ。
転生先のこの世界の知識を幸運な事に持っている。
前世では漫画やアニメ、ラノベが好きで《緋アリ》も読んでた。
だから原作が始まるこのシチュエーションもアニメで見ている。
金次のチャリに爆弾が仕掛けられ、空から振ってきたインなんとかさんのような幼児体型の少女に助けられるのが物語のスタートのはずだ。
はずなんだが…。



何で俺のチャリに仕掛けられてるんだよ!?



俺はこの世界の主人公ではないはずだ。
まさか、崩壊してる!?

「おい、金次。
お前元強襲科(アサルト)のSランクだろ!
なんとかしろ」
隣を並走する金次に助けを求める。

「お前こそ、現探偵科(インケスタ)超能力捜査研究科(SSR)でSランクだろ!
何とかしろよ」
金次はそう言い返してきた。
そう、俺は転生時に与えられた能力とこの10年近い特訓の成果により《天才》といっても過言ではない程の能力と評価を得ていた。
《探偵科》ではアンサー・トーカーの能力により未解決事件の捜査を指揮し、SSRでは魔術(法)の取得、改良、開発を行っている。
最初は失敗し続けたが今ではだいぶ上手に魔法を使えるようになった。
まあ、あくまでも普通の魔法はだけどな。

闇の魔法はまだまだ完全には制御できない。
いわば《不完全体》だ。


金次とどうしようか言い争っていると上の方から声が聞こえた。
可愛らしい、アニメ声が。





―――――空から女の子が振ってくると思うか?-----

「ほら、そこの馬鹿二人!
さっさと頭下げなさいよ!!」



―――――それは不思議で特別なことが起きるプロローグ―――――



見上げると女子寮の屋上に誰かいる。
いや、わかってる。
彼女の名は―――――



屋上から彼女は飛び降りた。
手に持つコルトガバメントを二丁拳銃で水平撃ちし俺と金次を追い回すセグウェイ(UZI)を破壊していく。
だが数が多い。
彼女の持つ銃の装弾数では全て破壊するのは無理だ。

誰かが援護しないと。
誰が?


決まってんだろ、俺しかねえよな。



「おい、そこの桃まん女。
このチャリには爆弾が仕掛けられている。
おそらくだがそっちのネクラ男のチャリにもな」
「誰がネクラだ!
げっ…本当にありやがる」
金次は俺の指摘によりようやく気づいたようだ。

「減速すると爆発するタイプの物だ。
俺は自分でどうにかするから金次の事は頼んだ!」
「え!?」
「待て、何をするつもり…アレをやるのか?」
どうやら金次は察しがついたようだ。
アリアはそんな俺と金次を見てから頷いた。
「何をやるつもりか知らないけどここは信じてもいいのね?」
「ああ。
武偵憲章1条。
仲間を信じ、仲間を助けよ…だ」
金次を助けようとアリアはパラシュートを開いて金次の上に落下していった。
金次はアリアの太腿に挟まれながら自転車から体を浮かされていった。
俺はまずは爆弾の動作を停止させるために魔法を放った。

「来レ氷精。
大気二満チヨ。
白夜ノ国ノ凍土ト氷河ヲ…」
喰らいやがれ。
俺は発動させた魔法を自分と金次の自転車に向けて放つ。

コオル大地!!(クリュスタリザティオー・テルストリス)

自転車はアスファルトごと凍りついた。
俺は技を発動させた際に《虚空瞬動》により上空へと退避していた。

続けざまに金次やアリアを狙うUZIを破壊する為の魔法を放つ。

「来レ氷精。
爆ゼヨ風精…」

アリアが破壊できなかった4体のセグウェイに向けて放った。

氷爆(二ウィス・カースス)
凄まじい爆風が起こる。
氷の爆発によって俺も吹き飛んだ。
ヤバイ。
威力調整ミスった。


元の場所に戻ったがそこには破壊したセグウェイの残骸と俺と金次の自転車の残骸しかなかった。
金次とアリアの姿はどこにも見当たらない。

これが原作通りなら体育倉庫に飛ばされてるはずなんだが。
「行ってみるか」

俺はアリアたちが飛ばされた方角へ《瞬動》を使って移動した。



「…へ…へ…ヘンタイ―――――!!」
体育館倉庫に着くと中から少女の悲鳴が聞こえてきた。
どうやら金次は《やっちまった》らしい。
さて、原作通りならあとは金次一人で十分なんだが。



…まじっすか!?

思わずうなだれた俺は悪くないと思う。
なぜならさっき破壊したセグウェイが30体もきやがったからだ。


「おいおいおい、《武偵殺し》さんよはっちゃけすぎだろ!!
あとであの子にはお知りぺんぺんしちょる」
なぜか宮崎弁がでたがそこは気にしないでほしい。





「さて、アレを使いますか」






俺はセグウェイの前に飛び出した。

ガガガガアアアア――――――
セグウェイからは9mmパラベラム弾が勢いよく発射された。
俺は歩法の一つ。
《瞬動術》を使いセグウェイの背後に回りこんだ。
銃弾は誰もいないところを通過した。

俺は《遅延》させていた魔法を発動させる。

「開放!雷の暴風…固定」
掌を開いたまま空中で渦巻く魔力をその場に留まらせる。

「掌握」
留まらせた魔力を握りつぶし体内に吸収させる。

「魔力充填
術式兵装…(アルマティオーネ)
体が白く発光し雷撃が迅る。

疾風迅雷(アギリタース・フルミニス)

フォ――――ンという風を翔る音が聞こえると一筋の白き閃光が迅ばりセグウェイを、それに搭載されているUJI(サブマシンガン)を次々と破壊していく。
残り7体が残ったがあえて破壊せずにこの場に来たもう一人のSランク武偵に一任する。

「遅せえよ…金次」

「悪い、すぐに終わらせる」
金次は向かっていった銃弾を体を大きく反らしてやりすごし、自身が持つ銃《ベレッタM92Fs》を連射した。
金次が放った銃弾はUJIの銃口に吸い込まれ次々とUJIは破壊されていった。


「今のが〈銃口撃ち〉(チエッカー)か…さすがは元Sランクだな。
人間じゃねぇ」

「お前が言うなよ!?」
金次の突っ込みはかなり深く俺の心に突き刺さった。









折り重なるようにして倒れたセグウェイたちが全て沈黙しているのを確かめると、俺達は体育倉庫の中に入っていった。
中ではアリアが跳び箱の中に入っている。
跳び箱から上半身出した状態で『今、私の目の前で何が起きたの?』という顔をしている。
俺達と目が合うと、ぎろ!と睨み目になって、もぐら叩きのモグラみたいに跳び箱の中へ引っ込んでしまった。
何だか、怒っているようだが…ああ、そうか。
確か、金次を助けた際にベルトのホックが壊れたんだよな…。
しかも金次がヒステリアモードを発動させた際に爆風でブラウスが捲れて『(寄せて上げる)偽造ブラ』を不可抗力とはいえ、直視されたのも怒りの原因の一つなんだろう。
つまり原因は。

「死ね、金次!!」
「うおぉぉ…危ねえ!?」
俺が繰りだした手刀を間一髪で避ける金次。
ヒス金だからこそ回避できたんだろう。
「突然何しやがる!?」
「うるせー、このロリコン野郎が―――!!
幼女に手をだしてるんじゃねぇ―――!!」
「だ、誰が…誰が…幼女ですって?」
あ、やばい。
地雷踏んだ。
「ま、待て落ち着け。
冷静になろう、な…?」
爆弾処理班の心境で爆発させないように慎重に言葉を選んで誘導させる。
「アリアならさっきのセグウェイどうにかできたよな?」
《話題逸らし》を使い強引に話題を変えた。
「と、当然よ。あんなおもちゃぐらい、あたし一人でも何とかできた。
これは本当よ。本当の本当」
強がりながらアリアは、ゴソゴソ。
跳び箱の中でうごめく。
幼女の生着替えタイム(服の乱れを直す)か。
誰得なんだ、この展開。
「そ、それに、今さっきの件をうやむやにしようたって、そうはいかないから!」
今さっきの件?
「えっと…?」
「あれは強制猥褻!れっきとした犯罪よ!」
なんだ…金次がしでかした件か。
幼女発言の責任取らされると思ったぜー。
よかったー。
「それは悪かったな。
この馬鹿なら煮るなり、焼くなり好きにしていいから」
「おい待て、見捨てんな!」
金次が非難の声をあげるが俺は金次にただ一言放つ。
「ま、頑張れや~」
親友?武偵憲章1条?
何それ?
食えんの?



「こうならば…道連れだ…」
金次は防弾制服の内ポケットから何か(おそらく胡椒)が入った壜を取り出し、俺の顔に振りかけやがった。
ま、まずい―――と思ったときにはもう遅く俺は盛大なくしゃみをしてしまった。

「はっくしゅん―――――!!」
―――――ぶおぉぉぉぉん。

凄まじい突風が巻き起こり体育倉庫の中は物が散乱した。

「な、ななな…何すんのよ―――――この、度ヘンタイ!!」
風が収まると下着姿(・・・)のアリアが顔を真っ赤にさせていた。
「さっ、さささっ…最低――――――!!
このチカン!人でなし!」
ぼこぼこぼことグーパンでおもいっきり殴ってくるアリア。

「あんたたち、二人とも強猥の現行犯で逮捕するわよ!」

「「今の(あれ)は誤解だ」」
声をそろえて抗議する俺と金次。

俺の悪い癖というか弱点。

ちょっとした刺激(主にくしゃみ)で魔力が暴発してしまい、周囲の人間に迷惑をかける。
なぜか暴発した魔力は武装解除呪文となって周りにいる人間、特に女子の服を脱がしてしまうというどこぞの薬味少年みたいな事をしてしまうのだ。

「「今の(あれ)は不可抗力というやつだ(よ)。理解してほしい」」
声をそろえて抗議すると金次は自分のベルトを外して、アリアが入っている跳び箱に投げてやった。
「あ、あれが不可抗力ですって!?」
アリアは金次のベルトで留めたスカートを抑えつつヒラリと跳び箱から出てきた。
ふわ。
見るからに身軽そうな体が、俺達の正面に立つ。

やはりアリアはちっこかった。
さすがは万年145cm。
これはどうみても小学生だろう。
脳内で『アリアちゃん10歳』というフレーズが出てきたがなんとか笑い出すのをこらえた。

「ハ、ハッキリと…あんた…!」
アリアは金次を見て怒り心頭という顔をしている。
ぎゅう、と拳も握りしめている。
そして、わわ、わわ、わ。ローズピンクの唇を震わせてから、がいん!言葉を発する勢いづけのためか床を踏みつけた。
「あ、あたしが気絶している隙に、ふ、服を、ぬ、ぬぬ、脱がそうとしてたじゃないっ!」
「ウワーキンジクン、マジサイテー」(棒読み)
「誤解だ!」
「そ、そそ、それに、む、むむむ」
がいん!
また床を踏んだよ。
「胸を見てたぁあああっ!これは事実!強猥の現行犯!」
頭から火が出そうな勢いでアリアは続ける。
「そっちの度ヘンタイは公衆の面前で服脱がした!
強猥!強猥の現行犯で風穴空けてやる!」
今度は俺を睨みつけて怒ってる。
耳まで真っ赤にさせてるよ。
事故(道連れ)なのに。
「よしアリア、冷静に考えよう。いいか。俺達は高校生だ、それも今日から2年だ。「待て、金次…」中学生を脱がしたりするわけがないだろう?
年が離れすぎだ。だから―――安心していい」
「遅かった…」
がくりと項垂れる俺。
そんな俺を不思議そうに見つめる金次。
おそるおそる、アリアの顔を見ると、アリアは、わぁあー!という口になって両手を振り上げた。
声が出てないのは絶句してるからだろう。
そして―――ぎぎん!と涙目になって俺達を睨みつける。
あたしは中学生じゃない!!(・・・・・・・・・・・)
がすんっっっ!踏みつけた床がとうとう弾けて木片が飛んだ。
―――やばいな。
金次の馬鹿のせいで地雷を踏みまくってる。
「……悪かったよ。インターンで入ってきた小学生だっ…「お前はもうしゃべるな―――!!!!
 右腕開放!魔法の射手、雷の101矢!!雷華崩拳!!!(サギタ・マギカ コンウェルゲンティア・フルグラーリス らいかほうけん)
ぎゃあああぁぁぁ――――――!!」
言ってはいけない《地雷》を踏みまくる金次にたいし、俺は武力行使に出た。
風の魔法、それも電撃系の初歩の魔法だが拳に乗せて放てばもの凄い威力が出る。
電撃系なら相手を麻痺させることもできるしな。
「まったく、金次の馬鹿は。
いくらアリアが小学生みたいな(ナリ)してるからって…」
はっ!?
しまった。
「こ…こんな…やつら…助けるんじゃ、なかった」
ばぎゅばぎゅん!
「うわあぁぁぁっ!」
足元に撃ちこまれた2発の銃弾に、俺は青ざめた。
撃ちやがった。
それも二丁拳銃で!

あ た し は 高 2 だ !!!(・ ・ ・ ・ ・ ・ ・)

一難さってまた一難。
まあ、この学校《武偵高》なら日常茶飯事だから慣れてるけどなー。

「待てっ!!」
まだ《闇の魔法》が続いていた俺は、至近距離から撃ってきたアリアに飛びかかり、その細腕を両脇に抱え込んで後ろに突き出した。
ばりばりばりっ!がきんがきんっ!
アリアは反射的に引き金を引き、背後の床が着弾した音を上げる。
2丁とも弾切れになった。
そのまま取っ組み合いになったが
「―――んっ―――やぁっ!」
くるっ。
体をひねりアリアは柔道の跳ね腰みたいな技で、体格差をものともせずに俺を投げ飛ばした。
「ぐっ―――!?」
さすがはSランク武偵。
格闘技もうまい。
「逃げられないわよ!
あたしは逃走する犯人を逃がしたことは!1度もない!
―――あ、あれ?あれれ、あれ?」
アリアは叫びながらスカートの内側を両手でまさぐった。
「探し物はこれか?」
さっき投げ飛ばされたときにスっておいた弾倉を掲げ―――アリアから遠い場所へ投げつける。
「―――あ!」
遠くの茂みに落ちていくそれを目で追ってから、アリアは無用になった拳銃を上下にブンブン振り回した。
原作でも同じみのやったな!やったな!という動作だ。
「もう、許さない!ひざまずいて泣いて謝っても、許さない!」
拳銃をホルスターに収めるとセーラー服の背中に手を突っ込み―――じゃきじゃき!
そこに隠していた刀を、二刀流で抜いた。
「糞―――!!少しは人の話を聞けよ!
魔法の射手 光の3矢!(サギタ・マギカ セリエス・ルークス)

「強猥男は神妙に―――っわぉきゃっ!?」
アリアは俺に向かって駆け出してきたが俺が咄嗟に放った魔法に驚き真後ろにぶっ倒れた。

「こ、この…みゃおきゃっ!」
立ち上がろうとしてまた倒れた。
いつの間にか意識を取り戻した金次がアリアの足元に銃弾をばら撒いていた。

その銃弾を踏み、両足が真上を向くくらい勢いよくコケている。
本当漫画みたいだ。

「逃げるぞ、金次!!」
「ああ。ごめんよ」

金次とともに駆け出すと、背中で、彼女の捨て台詞が聞こえた。


「この卑怯者!でっかい風穴―――空けてやるんだからぁ!」


これが俺、八神 光(やがみ みつる)&遠山金次と。

後に『緋弾のアリア』として世界中の犯罪者を震え上がらせる鬼武偵、神崎・H・アリアの硝煙のニオイにまみれた、最低最悪の、出会いだった。






(…はあ〜、またやっちまったよ…)
結局出れなかった始業式の後、《闇の魔法》が解けた俺とHSS《ヒステリアモード》が解けた金次は鬱々とした気分で教務科(マスターズ)へ事件の報告をしに向かっていた。
「おや、ミツル君とキンジ君じゃないか。
どうしたんだい?」
教務科の扉をノックし、弾が飛んでこないか身構えてると中から扉を開けられて中年の男性が出てきた。
眼鏡が似合うその男性は強襲科の担当教師で素行の悪い生徒達からは《デスメガネ》、《笑う死神》などと呼ばれているが奇人変人が多い武偵高の教師の中でも比較的マトモな教師だ。
「「おはようございます。高畑先生」」
挨拶をすると高畑先生は笑いながら挨拶を返してくれた。
「おはよう。
始業式は終わったよ?
クラスに早く行った方がいいよ」
「それが…チャリジャックにあいまして」
「朝から鬼ごっこし(UJI付きのセグウェイに追い回され)て最後は花火上がり(爆弾でチャリ吹っ飛び)ました」
「それは…災難だったね。
怪我とか大丈夫だったかい?」
「俺は平気ですが、金次は(精神的に)駄目そうです」
「…何がお姫にしてあげよう、だよ。
何お姫様だっこしてんだよ俺は…
ああ、もう死にてぇ…」
《あのこと》を思い出したのか頭を抱えて項垂れる金次。
「てなわけで…報告しにきました」
「…ああ、うん。
ご苦労様」
哀れみの視線を金次に向ける高畑先生。
「一応武偵殺しの模擬犯の線で捜査を始めるように伝えるけど…難しいだろうね」
高畑先生が俺達が書いた書類をチェックしながら自身の見解を述べた。
「今回の犯人は狡猾で計画性があると思うな。
セグウェイを遠隔操作して武偵を狙う事により自身の存在を武偵殺しに向ける手法といい、武偵殺しと同じ爆弾を使ってる事から武偵殺しを崇拝している愉快犯かあるいは関係者(・・・)のどちらかだろうね」
「さすがは高畑先生。
やはり愉快犯ですよね?」
金次は武偵殺しのことを完全に愉快犯だと思っている。
「先生。
本物という線は?」
真相を知っている俺はそう言ってみた。
「ないだろ」
金次は何言ってるのコイツはみたいな顔をしてるが俺は真剣な表情で高畑先生を見つめる。
「う〜ん。
その可能性は低いと思うんだけど、だけど個人的にはまだあの一連の事件は終わってないと思ってるよ」
「え⁉︎
何でですか?」
高畑先生が武偵殺しを疑ってる事に驚く金次。
「金次。
可能性事件って知ってるか?」
「可能性事件?
なんだそれ?」
俺がそれを口にした時高畑先生の目が僅かに開いた。
「ミツル君…それは」
「さあな。
武偵なら後は自分で調べろ」
高畑先生は何かに気づいたようだが《それ》を口に出さない。
「二人とももうすぐHRが始まるからもう行きなさい」
「あ、そうだ。
先生超研の実験室放課後に使ってもいいですか?」
「また、魔法の練習かい?
研究熱心だね。
うちの強襲科の生徒にも見習せたいね。
うん、わかった。
SSRの担当教師の先生には僕の方から言っておくよ。
壊さない程度に使ってほしいな」
「…善処します」
使う度に施設を破壊してきた前科がある身だからそう言うしかなかった。

掲示板に出てた二年A組の教室に入り適当な席に腰掛けると爽やかイケメンの不知火が話しかけてきた。
「おはよう。
今日はいつもより遅いね。
珍しく寝坊したのかな?」
「おはよう…ああ、おかげで人生初の貴重な体験ができたよ。
大人の階段を三段飛ばして上がれた感じだ」
「…な、なん…だ…と?」
金次に話しかけて一蹴された大男の武藤が大袈裟に言った俺の言葉に反応してきた。
「光お前、ま、まさか…星伽さんと。
お前は俺達の同胞だと思ってたのに…。
糞、金次のたらしが光までうつったか」
「いや、俺を金次みたいなたらしと一緒にすんなよ。
それと武藤、白雪とはなにもないからな。
俺と金次は白雪にとってたんなる友人と幼馴染(恋人?)の関係だ」
「そ、それじゃ俺にもチャンスが…」
「「いや、それはない(んじゃないか)な」」
重なる俺と不知火の声。
「ちきしょー‼︎」
泣き叫ぶ武藤。
そんな馬鹿騒ぎをしているとチャイムが鳴り、担当になる教師が入ってきた。


で、HRが始まり自己紹介がはじまったんだが…。

「先生、あたしはアイツらの隣に座りたい」
俺と金次がクラス分けされた二年A組の、最初のHRでー
気絶しそうな程不幸なことに同じ二年A組(・・・・・)だったピンクのツインテールが、いきなり金次と俺を指してそんなことを言ってきた。
クラスの生徒達は一瞬絶句して、それから一斉にこっちを見て……
わぁーつ!と歓声を上げた。

俺はーただ呆然としていた。
ありえん。
ありえないだろ…これは。

何で金次だけじゃないんだよ⁉︎

先生は「うふふ。じゃあまずは去年の三学期に転入してきたカーワイイ子から自己紹介してもらっちゃいますよー」などと前置きをしたからてっきり原作通り金次の隣に座るものとばかり思ってたのに…。
「な、なんで…だよ!」
ようやく出てきた声で、呟く。

「よかったなキンジ、ミツル!
なんかしらんがお前らにも春が来たみたいだぞ!先生!オレ、転入生さんと席代わりますよ!」
武藤の馬鹿が使わなくてもいい気を使って俺と隣だった席をアリアと代わろうとする。
「あらあら。最近の女子高生は積極的ねぇー。じゃあ武藤君、席を代わってあげて」
事情を知らない先生は馬鹿が出した案を即採用してしまう。
わーわー。ぱちぱち。
教室は拍手喝采を始めてしまった。
俺の隣に着席したアリア。
「キンジ、これ。さっきのベルト」
アリアがちっこい身長を伸ばして手に持つベルトを高く掲げた。
キンジの席は教壇がある列の後ろで俺とアリアからは離れている。
「理子分かった!
分かっちゃた!ーこれ、フラグばっきばきに立ってるよ!」
俺の正面に座っていた理子が、ガタン!と席を立った。
「キーくん、ベルトしてない!そしてそのベルトをツインテールさんが持ってた!
これ、謎でしょ謎でしょ⁉︎でも理子には推理できた!できちゃた!
あれ?でもそ〜するとミッくんは…あ、そうか。そっか。
キーくんは彼女の前でベルトを取る何らかの行為をした!
そこにミッくんが彼女を訪ねてきて修羅場になったんだね!
キーくんとミッくんが彼女を巡って対立、彼女は二人とも愛してたんだよ!
で、ケンカの後は仲良く三人で《いいこと》したんだね?
キーくんはその時彼女の部屋にベルトを忘れてきた!
つまり三人は熱い熱い、恋愛の真っ最中なんだよ!」
馬鹿理子。お前。
だがここは馬鹿の吹きだまり武偵高。

「キ、キンジがこんなカワイイ子といつの間に⁉︎」

「影の薄いヤツだとおもってたのに!」

「女子どころか他人に興味なさそうなくせに、裏でそんなことを⁉︎」

「フケツ!」

「光君はそういうタイプじゃないっておもってたのに!」

「ガッカリだよ!」

「サイテー!」

「先生、遠山君と席を代わります」


新学期なのに、息が合いすぎだろお前ら。こういうことになると。
不知火が気を使ったせいで金次もアリアの隣にさせられた。
ザマアみろ。


「「お、お前らなぁ…」」


ずぎゅぎゅん!

鳴り響いた二発の銃声が、クラスを一気に凍りつかせた。
真っ赤になったアリアが、例の二丁拳銃を抜きざまに撃ったからだ。

「れ、恋愛だなんて……くっだらない!」
翼のように広げられた両腕の先には、左右の壁に一発ずつ穴が空いていた。
チンチンチンチーン。
拳銃から排出された空薬莢が床に落ちて、静かさを際立たせる。
馬鹿理子は前衛舞踏みたいなポーズで、ズズッと着席した。
理子の馬鹿には朝の分も含めて後でお尻ペンペンしちょる。


武偵高では、射撃場以外の発砲は『必要以上にしないこと』となっている。
つまりは、してもいい。

だが、始業式の朝からいきなり撃ったのは彼女が始めてだろう。

「全員覚えておきなさい!そういう馬鹿なことを言うヤツには……」
それが、神崎・H・アリアが最初に発したセリフだった。


「風穴あけるわよ!」


来れ( ケノテートス・ ) 虚空の雷(アストラプサトー ) 薙ぎ払え( デ・テメトー )      雷の斧!!! ( ディオス・テュコス!!! )

標的(ターゲット)の丸太が俺の放った魔法で真っ二つに割れた。
五時限目、SSRの超能力実験室内で俺は魔法の練習をしていた。
今のは、取得中の 上位古代語魔法(ハイシェント呪文)だ。
威力は中の上。
技のキレや発動までの時間が長くまだまだ実戦では使えそうにない。

「はあ〜。
なんか今日は疲れたな」
全ての授業と自主練習を終えて帰宅しようとSSR棟を出るとソイツはいやがった。

「遅い!
レディを待たせるなんて紳士失格ね」

夕陽を背に浴びて緋色に輝く…神崎・H・アリアがな。 
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