ハイスクールD×D~舞い踊りし剣舞姫~
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第十話
「まず今、我々がいる人間界……それとあなた方悪魔が過ごしている冥界、それと天使達が住んでいる世界を天界……これらを総称して三界と呼んでいるのは知っているな?」
「ええ、それに関しては誰でも知ってるわ」
「しかし、この人間界には隣り合うようにして存在するもう一つの世界が存在している。その世界の名前は元素精霊界。私たちが住んでいる世界だ。ああ、最初に言っておくとイッセーは確かにこの人間界出身だからな」
そこまで聞くと事情を知らない人たちは驚く。
魔王であるサーゼクスさんやセラフォルーさん、堕天使総督であるアザゼルさん、熾天使長であるミカエルさんなどは驚いていない。
「その世界には……」
グレイワースはそこまで言って指をパチンと鳴らすとグレイワースさんの手の所に一つ目のちっこい丸っこい生物が現れた。
「このような精霊が存在している。この精霊はその中でも珍しい魔精霊という分類に入るがな」
「使い魔、といった所かしら?」
「いや、使い魔などと一緒にしてもらっては困るな。精霊とは主人と一生を共にする相棒。いわば家族だ」
「あ、あのぉ……」
グレイワースがそこまで説明するとイリナが手を挙げる。
「何だ、確か……紫藤イリナだったな?」
「は、はい……あの、何でイッセー君は驚いていないのかなって……だってイッセー君、普通の人間でしょ?」
なるほど、確かにそれはもっともな意見だ。
「それに関しての説明も今からする。ある時、この人間界と元素精霊界が異常接近した時があってな。その時に人間界の至る所に元素精霊界との境界を越える扉が出現してな……その扉から偶然にもイッセーは元素精霊界に飛ばされたのだ」
「イッセー君、本当、なの……?」
「ああ、グレイワースの言う通り。俺は元素精霊界に飛ばされて……森の中で途方に暮れている時に……こいつらに会った」
俺はそう言ってからエストとレスティアに出てきてもいいぞと念じて伝える。
すると俺の傍らに寄り添うようにエストとレスティアが現れた。
「い、いつの間に!?」
「な、何だそいつら!?」
グレモリー先輩と神名が驚きながらそいつらは誰だと問いただす。
「じゃあ、改めて……俺の契約精霊のエストとレスティアだ」
「エストです」
「レスティアよ」
エストとレスティアは軽い挨拶だけを済ませる。
「彼女達は精霊の中でも上位に位置する精霊でな。上位精霊は人の形を作る事が出来る……精霊に関する説明としてはこれくらいだな」
グレイワースはそう言うと自身の精霊であるヴォイドを消す。
「さて、そんな精霊達だが……彼らにも統治する者達が存在している……それが精霊王だ。精霊王はその圧倒的な力で統治しており、そんな彼らに自分たちの剣舞を見せる事で元素精霊界に住む我々は恩恵を受ける事が出来る」
「そのような世界があったのですね……」
ソーナ会長は顎に手をそえながら考える。
「魔王様、失礼を承知で申し上げます。このような世界を管理するべきでは?」
と、神名がそのような事を平気で宣った。
「……神名君、なぜそのような事を?」
「彼らの力は強大です。上手くいけばその力を私たちも扱えるようになるかもしれませんから」
「なるほどな……確かにそうなればいいだろう」
「それでは「しかし、そのような事は許可出来ない」なぜですか!?」
神名が身を乗り出す。
「理由は至極単純だ……彼らの力は我らの領域を遥かに凌駕している。精霊王に至っては私たちは一度だけだが負けたほどだ」
「「「「「「「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」」」」」」」
それを聞いたそれぞれの勢力のトップと俺ら以外は全員驚愕する。
まあ、それもそうだろう。なぜなら自身のいる勢力のトップが一度だけとはいえ敗北したのだ。
「その時の戦いを私たちは世界の終わり……世界終末の日と呼称しているがね。死にそうになった時に助けに現れたのが……そこにいるイッセー君だったんだよ」
「あ、あなた、精霊王達と戦ったと言うの!?人間の貴方が!?」
何だろうな、今のグレモリー先輩の言葉には人間はひどく弱い存在のように聞こえるんだが……。
「グレモリー先輩、一つだけ忠告しときますね……人間を舐めない方がいいですよ」
「な、何よ……人間が私たち悪魔に勝てるとでも?」
「ああ、少なくとも科学力という力でなら人間は悪魔に勝てる。あんたらだって不死身という存在でもないんだろ?心臓を撃ち抜かれれば死ぬ。そこに関してはどんな生物にも共通の弱点だしな」
「人間などという脆弱な存在と一緒にしないで!」
ほら、本性が出てきた。
「リアス、言葉を謹んでください」
「でも、ソーナ!」
「でもも何でもありません。貴方の言葉一つだけで私達悪魔の品位が落ちているのですよ?それに貴方だって見たはずです。コカビエルとの戦いの時に学園を一緒に守ってくれたのは誰ですか?コカビエルを倒してくれたのは誰ですか?」
「そ、それは……」
グレモリー先輩は正論を言われたのか何も言えない。
「コホンっ、話を続けてもいいかい?」
わざとらしく咳き込みをしてから話を続けてもいいか、とグレイワースが聞く。
「あ、はい。すいませんでした」
「……すいません」
ソーナ会長は普通に、グレモリー先輩は納得いかないといった感じで謝罪をする。
『相棒、グレモリーだが……絶対に納得していないぞ』
『ああ、わかってるよ……態度だけでも普通にわかるもん』
「……と、このように私たちは何も戦争を仕掛けようとは微塵も思っていない、という事だ」
「それもそうでしょ。あたし達は普通に暮らしたいだけなんだから」
「あの……私からも質問をしてもよろしいでしょうか?」
と、今度はソーナ会長が手を挙げる。
「ああ、何だ?」
「いえ、その精霊契約という物ですが……私たちには出来ないのですか?」
「出来るには出来るとも思えるが……清らかなる乙女にのみ与えられた特権とも言える代物だからな……その言葉通りの意味だ」
「清らかなる乙女、ですか……」
しかしこの世界出身というだけでおそらく無理だろう。
「しかし無理だろうな。精霊契約には神威という特別な力が必要だ」
「神威……それは魔力とは違うのですか?」
「そこの所はあまりわかっていないが……しかし確かに違う」
「そうですか……わかりました」
そう言うとソーナ会長は納得したようになる。
「あ、あの……俺も質問なんですけど……」
今度は匙だ。
「何だ、質問が多いな。少しは自分で考えようとは思わないのか?」
「ああ、すんません……あの、イッセー?」
「?何だ?」
「その精霊契約って清らかなる乙女……つまりは女性にしか出来ないんだよな?」
「?そうに決まってるだろ?」
「いや、だったら……何でイッセーには精霊契約が出来てんのかなって思ってさ……」
「ああ、その事な……」
理由に関してはいくつか挙げられるが……これ、という明確な理由がないんだよな。
「すまん、いくつかは挙げられるんだが……明確な理由は今でも不明なんだ。ただ俺は極微量だが神威を宿していた。それが原因だ思ってる」
「そっか……あ、すいません。以上です」
そう言って匙は席に座る。
「さて……いつも通り和平だな……お前ぇらもそれでいいだろ?」
「そうに決まってるだろ?その為に集まったような物だからね」
「うんうんっ☆」
「そうですね。これ以上不毛な争いは不要でしょうし」
アザゼルさんの言葉にサーゼクスさん達は同意する。
そしてその時……全てが、止まった。
「……この感覚は、時間が止まってるのか?」
今、俺以外で動いている気配があるのはサーゼクスさんとアザゼルさんとミカエルさん、ガブリエルさん、グレモリー先輩。アーシア、ゼノヴィア、イリナ、祐斗、そして元素精霊界勢とヴァーリだけだった。
「アザゼルさん、これは……?」
この中で一番神器に詳しいアザゼルさんに原因を聞いてみる。
こんな事が出来るのは大体神器位だからな。
「どうやら、グレモリー眷属の僧侶の神器が暴走しているみたいだな」
僧侶ね……つまりは管理不行き届きが問題って訳か。
「ギャスパー!?」
どうやらその僧侶の名前はギャスパーという名前らしい。
「なあ、アザゼルさん。神器ってそうそう簡単に暴走なんかしないと思うんだが……」
「確かにそうだな。イッセーの神器の力も見たが……あれは偶発的には暴走などはしない筈だ」
俺の神器である時を刻む赤龍帝の時計の力を知っている皆はうんうんと首を縦に振る。
「い、イッセー、お前神器持ってたのか?」
匙は信じられないといった感じで俺を見る。
まあ、精霊と契約しているだけでなく神器も持ってたら驚くわな。
「ああ、見せるのは後でもいいだろ?今はこの状況をどうにかする方が先決だ」
「考えられる事と言えば……三大勢力の内のどれかが自分達以外の勢力と和平を結ぼうとするトップが許せないといった理由を持って襲撃をかけてきたか……」
グレイワースはそこまで言うと立ち上がって締め切っていたカーテンを少しだけ開ける。
「どこかの組織がこの会議を快く思っていない、といった所だろうな」
カーテンの先には……空に巨大な魔方陣らしき物が見えてその周りには多数の魔法使いが浮遊していた。
「……さすがだな、確かにそうだ。禍の団……三大陣営の和平・協調路線をよく思わず、破壊と混乱を起こそうとするテロリスト集団だ」
「テロリストか……どの世界にもどの時代にもそのような輩はいるのだな」
グレイワースが嘆かわしいと言わんばかりの表情をする。
恐らくはそのような状況に陥った事があるのだろう。
「……俺がいくよ。エスト、レスティア。いくぞ」
「ええ、一緒に行きましょう」
「はい、イッセー」
俺はエストとレスティアを連れて部屋を出て行く。
俺が……皆を守るんだ……!
クレアSIDE
ああ、もぅ……イッセーはいつも変わらないわね……。
あたしはイッセーが出て行ったのが学園長があんな表情をしたからだろう。
イッセーはいつもそう……いつでも自分の事は後回しにして他人を優先する……。
あの時だって……。
あれは、そう……まだあたしが力を求めていた時……。
イッセーは力に呑まれようとしていたあたしを……叩いて止めてくれた。
『力に呑まれるなんて……そんな事になったら絶対にいけない。そんな事になったら……人は人じゃなくなる』
『じゃあ……じゃあ、どうすればよかったのよ!?力がないと……お姉様の事を知る事も出来ない!力がないと!』
『じゃあ……俺がお前の力になってやる。お前の剣となって……お前の願いを叶えてやる』
そう、イッセーはあたしの剣になってくれるって言ってくれた……あたしは……いや、あたし達はイッセーに甘えてきた。
甘えたからこそ……イッセーは一度力に飲まれてしまいそうになった。
あの時は何とかなったけど……けど、今度あんな風になったら……。
「クレア……」
「お姉様……」
気がつけばお姉様があたしの肩に手を置いていた。
「おまえ達は……いや、私達はずっとあいつに守られてきた。その事実は変わらない……だったら、今度は私達があいつを守ろう。な?」
お姉様……。
「クレア、悩むなんて貴女らしくありませんわ!貴族という者、常に冷静にならなければ!」
リンスレット……。
「クレア。イッセー君を守りましょう?私達の力で」
フィアナ……。
「クレア・ルージュよ。これからはイッセーを皆で守ろう」
エリス……。
「……そうね、うじうじと悩むのはあたしじゃない。皆、行くわよ!」
あたしは手に炎の鞭を顕現させてイッセーが出て行った扉から出る。
待ってて、イッセー……今度はあたし達が守ってみせるから……!
SIDE OUT
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