銀河英雄伝説 アンドロイド達が見た魔術師

レビュー

  •  ブルース・アッシュビーら730年マフィアが活躍する第二次ティアマト会戦は、ラインハルトが初めて艦隊指揮官として戦うことになる第三次ティアマト会戦の50年前の戦いです。原作小説でも歴史的な出来事して記述されているだけです。
     
     かつみ先生やフジリュー先生のコミック版でしか銀英伝を知らない方は、初っ端から振り落とされるでしょう。外角高めギリギリどころかボーク寸前の題材を選択する作者様には頭が下がる思いです。

     二次創作小説としては少々高めのハードルさえ乗り越えれば、練り込まれた独創的な世界観に引き込まれていきます。某歌ロイドっぽい感じの同盟産アンドロイドたち、遺伝子改造を施し新人類『コーディネーター』となった帝国貴族たち、フェザーン人や地球教じゃなくても「どうしてこうなった?」と呟きたくなる状況です。

     物語はヤン・ウェンリーを軸に進みますが、オリ主によって原作など無視して発達したバイオテクノロジーや歴史改変の影響により、原作のどこか牧歌的な古き良き宇宙戦争の雰囲気は欠片もありません。銀英伝はスペースオペラですが、そこにSF風味の味付けが存分に振る舞われています。

     作中では人形師と呼ばれたオリ主は「銀河を引っかき回せ」とアンドロイドたちに遺言を残して死んでいます。作中にある「さて、どんな物語が紡がれるのやら」というオリ主の呟きは、凝った設定を用意して、物語がどう動きだすか見守る作者自身の心境のようにも感じます。

     テンプレものの作品は安心して読めますが、テンプレに飽きたから時には刺激が欲しいという方には是非オススメします!!

     2016年に約1年ぶりに更新されているので、まだエタってはいないと希望を捨てずにいます。なので新規読者が増えれば良いなと思いレビューを書きました。