アラガミになった訳だが……どうしよう
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原作が始まった訳だが……どうしよう
29話
前書き
リアルでの用事があったんで遅れました、申し訳ありませんm(_ _)m
で、この様はなんだ?
「いやー……初めての同棲って事で張り切り過ぎちゃってさ。でも、普通の食事だから食べきれるでしょ?」
張り切りすぎた結果がこれか……粥に胡瓜の甘酢漬け、豆腐の和え物、青菜の炒め物、海老チリ、青椒肉絲、酢豚、青梗菜のクリーム煮、麻婆豆腐、鶏のカシューナッツ炒め、鶏の唐揚げ、イカ団子、春巻、水餃子、焼き餃子、海老蒸し餃子、杏仁豆腐、ゴマ団子……この作るだけ作った中華料理の山か?
「そうだよ、いやさーマキナの記憶だけしか手掛かりがなかったからさ、足らなそうな調味料はオラクル細胞をそれに近い味にして代用したんだよ。
ちゃんと味見もしたから大丈夫、我ながら中々の出来だって言えるからさ。オラクル細胞も使ってるから、ちゃんとお腹も膨れるよ」
「そりゃ、有難いんだが……この物資不足の世界に真っ向から喧嘩売るような料理だな」
「人間の苦労なんて知ったことじゃないよ、私はマキナが喜べばそれでいいんだからさ。さっ、食べて食べて」
断る理由もないし、事実この料理の山からは食欲のそそる香りが漂っているので、言われるままに席に着き箸を持った時、ふと思った事を口にした。
「お前は食わないのか?」
「え、なんで?」
イザナミは首を傾げ、俺に質問する。なぜと言われてもこれだけ量があるんだ、お前も食べればいいじゃないか。
「うーん、量が多いってこと?」
いや、そうじゃなくて中華料理って皆で囲んで食うものじゃないのか?
「そうなの?」
お前、俺の記憶読んだんじゃないのか?俺の中での中華料理、いや料理ってそういうものだって考えているんだが、違ったのか?
「そうだけど、イマイチ理解できなかったからさ。それって、何か意味あるの?」
そう言われると困るんだが、そうだな……俺がそうしたいからじゃ、駄目か?こんな立派な料理を一人で食うのは些かさみしいものがあるし、その方が俺としては落ち着くんだ。
「マキナがそう言うならいいけどさ、そういう人間の思考って理解できないんだよね」
じゃあ、少し勉強しろ。少なくとも俺は中身が人間なんだから、そういう思考を理解しているほうが好感が持てる。
折角知能があるんだから、そういうものに手を出すというのも悪くないと思うがな。
「ふーん……まぁマキナに良く思われるのはいい事だね。人間は嫌いだけど、少しだけなら勉強するとするよ」
そんな事を言いながらも嬉しそうな笑顔を浮かべながら席に着き、箸で自分の小皿に料理を取っている。こうやって見ていると普通の美人なんだが、中身がな……もう少し思いやりがあれば言うことはないんだがな。
そこさえどうにかなれば残念な美人も脱却できるし、俺も……って何を考えているんだ。
俺はふと浮かんだ考えを振り払うように目の前の食事に箸を伸ばし、小皿に適当に取り、口に次々と押し込んでいく。
ふむ……確かに美味いな、味付けも俺好みだしな。また機会があれば頼むとしよう。
「ご馳走様、イザナミ」
「お粗末様でした」
食事を終え、皿を流しに漬けてから片付けを手伝おうとスポンジに洗剤を付けていると、玄関のドアがノックされた。俺が出ようとしたのだが、既に両手は泡だらけだったので、皿をこちらに運んでいたイザナミに頼むことにしよう。
「イザナミ、悪いが出てやってくれないか?」
「はーい……全く誰なんだよ、折角の二人の時間を邪魔するなんて」
不満そうにそんな事を呟きながら、イザナミは不承不承という様子で玄関に向かう。……頼むから問題は起こさないでくれよ。
「誰?」
声が凄まじく平坦だが、一応まともに対応する気はあるらしい。
「あ、アリサです。マキナおじさ……マキナ少尉のお部屋です…よね?」
「んー、マキナと私の部屋だよ。で、何の用かな?」
おい、イザナミ。確かにその通りだが、他の奴にあまり知らせようとするな。十中八九、ロクでもない事になるのは目に見えている。
それとアリサなら入れてやってくれって……睨むな睨むな、お前の考えてる関係じゃない。
「はぁ……入っていいよ」
イザナミがドアのロックを解除して、アリサを部屋の中に入れる。アリサは部屋の中を見回してから、イザナミを見て納得したような表情を浮かべた。
「貴女がマキナおじさんの奥さんですか?」
「いや、断じて「そうだよ、お茶でも淹れよっか?」……おい」
さっきまでの態度から一転して、イザナミは俺の言葉を遮りながら、アリサお為に茶菓子の用意や紅茶を淹れ始めた。
アリサの方も先程の言葉を信じたようで、楽しそうにいイザナミと会話している。頼むから信じないでくれ、誤解だからな、絶対に広めるなよ?
そんな考えは他所にイザナミとアリサは勝手に意気投合して、会話を始めて俺の入り込む隙間などない。
これが……女子の結束力か……
俺が皿を洗い終える頃には随分仲も良くなり、人間の思考を知るいい機会という点ではいい事なんだが、確実に俺の妙な噂が出回る事を考えると少々気が重くなる。
カノンと違って銃声が聞こえない事はいいんだが、別の方向での俺の悩みの種が増えたな……
「アリサ、俺に用事があるんだろ?」
「はい、今、私がユウさんとリハビリをしているのはご存知ですか?」
ああ、そう言えばそうだったな……
「ああ、知っているぞ」
「それでユウさんにお礼をしたいんですけど……男性は何をプレゼントされるのが嬉しいのか分からなくて、おじさんに相談しに来たんです」
「プレゼントか……」
普通なら手作り菓子なり何なりと言いたいが、神薙ユウの場合は違うだろうな。それ程話した訳ではないので細かい趣味嗜好は分からないが、少なくともそういうのを喜ぶ奴ではないと雰囲気で分かる。
「神機のパーツとかはどうかな?」
「パーツですか?」
イザナミがふいにそんな意見を述べた。
「うん、私も彼のことはそんなには知らないけど、彼って戦ってる時の方が生き生きしてるからさ、そういうのに役立つ物の方が喜ぶんじゃないかな?
それに下手に料理とか作っても彼の好みに合ってなきゃ悪いでしょ?」
……まともな意見だな、おい。
俺が学べと言った途端、学習能力が高いのか単に意識して人間の事を理解しようとした影響かは知らんが、ここまで考えられるのか。
「そう……ですね、うん、それなら良さげな装甲はあったと思います。イザナミさん、ありがとうございます!!」
「どういたしまして、って言いたいんだけど、ちょっと待って」
部屋を出ようとしたアリサを引き止めて、イザナミが立ち上がった。
「多分、それ性能的に彼の求める物より低いんじゃない?」
「あ……そうかもしれません……私が昔使っていた物だから、ちょっと古いかもしれません。少し痛んでるところもあるかも……」
「だからさ、修理する為の素材集めを私達が手伝ってあげるよ」
ん?ちょっとまて、私"達"?
「いいんですか!?」
「うん、アリサちゃんの為だもん、この位はね。今からなら……うん、修理用の素材を集めるくらいなら間に合うね」
おいおい、勝手に話を進めるな。なんで俺が組み込まれてるんだ?
俺は今日の仕事は終わって、飯も食ったことだし寝るつもりだったんだぞ?それを今から行くって……
「マキナ、どうしたの?」
……分かりましたよ。行けばいいんだろ、行けばさ。
「じゃあ、必要な素材を調べとくからさその装甲をちょっと貸して。その後の任務の受注とかは私達が済ませておくから、アリサは任務の準備だけしといてね」
「はい、すぐに持ってきますね!!」
張り切って神機保管庫へ向かったアリサを見送りながら、イザナミに対して疑問をぶつけた。
「で、どういうつもりだ?」
「何が?」
「お前から人間の為に動くってのがどうにも妙でな、何か理由があるんだろ?」
「そうだね……アリサちゃんが気に入ったていうのもあるんだけど、マキナ忘れてない?」
忘れているって何をだ?
「はぁ……アリサのお礼、原作にもあったでしょ?意味があるかどうかは分からないけど、一応やっておいた方がいいでしょ」
……あ、そう言えばあったな……細かすぎて忘れていたが、確かにあったな。
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