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アラガミになった訳だが……どうしよう

作者:アルビス
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原作が始まった訳だが……どうしよう
  28話

ソーマ達と別れて、教会の辺りでディアウス・ピターの破片でも転がっていないか、などと適当な探索してからアナグラムに戻ってきた。
サカキもアラガミである俺ならば何かしら得られるかもしれないと根拠のない依頼だったようで、とりあえず教会内部についていた、ディアウス・ピターのものであろう爪痕の写真などを渡して任務は完了した。
「マキナ君、君はリンドウ君は生きていると思うかい?」
部屋を出るときにサカキにそんな質問をされた。
「生きてるだろ、そりゃ」
「それはどうしてかな?腕輪の反応も無い状態なんだよ?」
「はぁ……生きているって信じてるからこうやって調査やらやってんだろ?
だったらそれに疑問を挟むなよ、それに死んでるって考えるより生きてるって考えた方が気が楽だろ?」
大体、今ここでどうこう言っても変わらんのだから、せめて理屈抜きに前向きに動くべきだろ。その方が気は楽だし、遥かに建設的だ。
「ふむ……君は本当に楽天家(オプティミスト)なんだね」
「酷い言い方だな、せめて前向きと言え前向きと」
「いやいや、褒め言葉だよ、これは」
「どこがだ」
そう言って俺はサカキの部屋を出て、神薙ユウの指定した病室を目指す。この時期に病室に呼ばれるとはアリサ関連なんだろうが、一体なんで俺が呼ばれたんだ?
サカキの研究室のすぐ近くにあるという、少々不安のある場所がフェンリル極東支部の病室だ。本当になんでこんな場所を病室にしたんだ?
そんな事を考えながらなんとも味気のない病室に入り、周囲を見回すと神薙ユウがこちらを見つけ、此方に近付いてきた。
「マキナさん、急に呼び出したりしてすみません。第一部隊所属の神薙ユウと言います」
「ああ、噂は聞いてるよ。で、俺に何の用かな?」
「用があるのは俺じゃなくて、同じ隊のアリサなんです」
アリサ?何故に?
そんな疑問が表情に出ていたのか、ユウは知らないというように首を振り、病室から出て行った。
うーむ、あのイベントではどうやっても距離的に俺の姿は見えなかっただろうし、メンタル面での問題は原作通りならユウが解決している頃だろう。じゃあ、なんで呼ばれた?
考えても仕方ないのだが、妙に気になるな。俺とアリサの接点なんて墓参り程度だろうに。
「呼ばれたから来たぞ?」
そう言って、ユウに教えられたアリサのベッドに近づくと、少々弱っているものの落ち着いたと言える状態のアリサが上半身だけ起こして俺を見た。
「で、何か用か?」
「あ、すみません……それとお久しぶりです」
「ああ、そうだなと言ってもそれ程経ってないような気がするんだが?」
「あの……覚えてませんか、私の事?」
覚えるも何もロシアで墓参りに行った時に会っただろうに、それで久し振りと言ったんだぞ。
「いやいや、覚えてるぞ。墓参りで会った位で、殆どお互い知らないがな」
俺がそう返事すると、アリサは少し残念そうに肩を落としてから、もう一度俺の目を見てこう言った。
「七年振りです、マキナおじさん」
は?七年振り?
「思い出してもらえませんか?よく貴方の家に遊びに行ったんですけど」
ちょっと待て、俺の家の来た……娘…?
「生きて……いたのか……?」
「はい、以前お会いした時には服装もそうでしたけど、私の記憶もおぼろげでしたんで……」
そっか……生きててくれたんだな。随分と自分勝手な感想だが、本当に良かった。本当に生きていてくれて、ありがとう。
まぁ、これは俺の感想であってアリサ側としては両親を助けてくれなかった、憎むべき相手ってところか?それに関しての怒りは甘んじて受けるさ。そんなもので心が折れるほど俺は若くはないし、あの件に関しては悩むのはもう十分だ。
「で、お前は俺に恨みをぶつけたいのか?ならさっさとやってくれ、ナイフか何か貸そうか?」
「な、何を言ってるんですか!?なんで私がおじさんを恨むんですか!?」
「ん、いや、俺がもう少しアラガミを殺せてりゃ、あの二人も助けられただろ?だから、恨んでると思ったんだが?」
「……二百体近いアラガミを、一人で倒した貴方にそんな事を言える人なんていませんよ。
それに私が恨むとしたらアラガミですし、おじさんに何か言うことがあれば私を放って帰っちゃった事です」
ふむ、意外だな……てっきり神機でも突き刺されるものだと思っていたんだが、放っていった事に対する文句だけだったとは。
いやはや、知らない内にネガティブ思考になっていたようだ。俺は前向きとついさっきサカキに言ったばかりなんだが、全くもってダメだな、俺。
というか、討伐数数えられたのか……俺の正体とか大丈夫なのか?
それにしても、菓子をねだりに来るばかりだったあの娘が今じゃゴッドイーターか……
「ちょ、頭、撫でないでください!!」
「ああ、すまんすまん、つい昔のお前を思い出してな」
「もう子供じゃないですよ」
いやいや、こんな姿だがお前の倍以上生きてるんだ。俺からすれば十分子供だぞ?
「はは、それで俺に何か用があったんだろ?」
「いえ、用ではないんですけれど……ただ昔の事を思い出した時に、おじさんがマキナ少尉だって分かったんで、いてもたってもいられなかったんです」
「そっか……じゃあ、また落ち着いたら、昔みたいに遊びに来るといい。菓子を用意して待っている」
病人というわけではないが、安静にしているべき人間にそう長く喋らせる訳にはいかんだろ。俺はそう考えて病室を出ようとした時、アリサに呼び止められた。
「おじさんは軽蔑しないんですか?私はリンドウさんを……」
ああ、忘れてた。この時期は凹みっぱなしだったな、こいつ。
「あのな、お前自身が散々悔いてこんな様になってるんだ、俺から兎角言う事はないぞ。強いて、俺から言う事があれば、さっさと元気になって働けってことだけだ」




「へぇー生きてた人間がいたんだ」
病室を出て、エレベーターを待っていると何処にいたのかイザナミが声をかけてきた。どうやら、また思考を同期させて記憶を読まれたようだ。
「それにしても嬉しそうだね、マキナ。 ちょっと、あの人間に嫉妬しちゃうな」
物騒な事をいうな、お前の嫉妬なんて殺意と変わらんだろうが。それにアリサはメインキャラだ、お前も手が出せんだろうに。
「ふーん、じゃあ最後は殺していいかな?」
おい、それは本気で怒るぞ?
「ちぇ、ざーんねん、でもあんまりマキナがあの人間に優しくすると、私も我慢できなくなるかもしれないよ?」
はいはい、要するにもっとお前に構えということだな。物騒な事を言わず、さっさと要点だけ言えばいいだろうに。
「ふーんだ、私だって直接言うだけじゃないんだよ。じゃ、ちょっと付いてきてよ」
勘弁してくれよ、さっき帰ってきたばかりなんだぞ、俺。少しくらい自分の部屋で休ませてくれよ、流石に疲れたぞ。
「大丈夫、私の用事もすぐ済むからさ」
……はぁ、分かったよ。すぐ済むってその言葉、信じるからな。
「あはは、信じていいよ」
そう言ってイザナミは俺をエレベーターに乗せて、ゴッドイーターの住んでいる区画に連れていった。この辺りは監視カメラやらがあって警戒せずにはいられないんだが、イザナミは勝手知ったる様子で進んでいく。
そして、奥の方の部屋のドアを開けて、中に入るように誘われた。
「おいおい、流石に監視カメラまみれの部屋に入りつもりはないぞ?」
「そんな声に出してまで言わなくても大丈夫、全部壊したからさ」
そうかい……で、お前の部屋に何があるんだ?
「ざーんねん、私の、じゃなくて私達のだよ?」
は?
「廃ビルのマキナの部屋にあった荷物は、ぜーんぶ持ってきたよ」
何を言ってやがるんだこいつは!?
「あ、部屋の広さは大丈夫だよ。間の壁を壊して二部屋分の広さにしたから、心配しなくてもいいよ」
……ってことは、何か?毎度毎度帰ってきたらこいつと顔を合わせろってことか?
「そのとーり」
……最悪だ。
カムバック、俺のマイルーム……










 
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