東方変形葉
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日常の中の無限変幻
東方変形葉35話「阿求の屋敷」
前書き
橙「とーう!」
裕海「わっ!?なんか開いたスキマから橙が出てきて俺に抱きついてきた!?」
橙「えへへ、久しぶりだねー!」
裕海「ああ、久しぶり。相変わらず元気だな。」
姫雪「・・・?」
裕海「ああ、この子は橙っていうんだ。紫の式の式。」
姫雪「私は小鳥姫雪。裕海様の弟子だよ!」
橙「よろしくね、姫雪さん!・・・えっ?弟子?」
裕海「成り行きで弟子ができたんだよ。俺自身もびっくりだ。」
きらちゃん「あっ、橙ちゃん!」
ほたるちゃん「あ、ほんとだー!久しぶりだね~!」
橙「うん!久しぶり!」
紫「橙にも友達が増えてきたわね。ねえ藍。」
藍「そうですね。社交性を磨くには友達という存在が必要不可欠ですからね。」
裕海「(・・・妖怪世界の社交性ってなんだろう)」
朝になぜか八雲御一行が来て、さっき帰ったところだ。
「さて、朝ごはんでも・・・ああ、そういえば食料がなくなりそうなんだった。よし、食べ終わったら人里に行って買い物をするか。」
「人里って行ったことないね~。どんなところかな~。」
姫雪が少しうれしそうに言った。
「そういえば、きらちゃんとほたるちゃんも人里は初めてだね。」
「うん!楽しみ~!」
「人里楽しみ~!」
人形たちは大はしゃぎだ。ああ、ついでに鈴奈庵の本もそろそろ返しに行くか。
人里の、ある食品店にやってきた。ここは人里一大きな店らしい。
「さてと、このぐらいでいいかな。」
1週間分の食料。家には、響希のところで買った冷蔵庫があるので助かる。え?電気?そんなの俺の能力でどうにかできる。
「これで安心だね!」
「安心!」
人形たちは今、ウエストバッグのポッケから顔を出している。
「わ~!人がいっぱいいる~!」
姫雪は珍しい光景に興奮していた。猫耳をぴこぴこと動かし、尻尾をぴんと立てて歩く様子は、周りの人の目線の的となった。人里では妖怪は人を襲わない約束になっており、人里の中にいる妖怪は人間とも仲良くしているらしい。特に、姫雪のような可愛らしい猫耳や尻尾がある子供の妖怪は可愛がられている。
「あら、今日は猫っぽい可愛らしい子を連れて買い物に来たの?」
レジの人は、ここで買い物をしているうちに仲良くなったおばあさんだ。一見30代ぐらいに見えるが、実は60代後半になるらしい。
「ええ、とてもいい子ですよ。あ、これの会計をお願いしますね。」
「はい、この値段ね。」
言われた金額を支払い、店を後にした。そして、スキマを開いて家に置いてまた閉じた。
さて、鈴奈庵に行くか。
「いらっしゃい~って裕海くんか。」
小鈴がはたきで本棚の埃をおとしていた。
「本を返しに来たよ。」
そういって、ウエストバッグから本を取り出す。
「うん、今中を確認するね。」
ぱらぱらと、中を見ている。そしてパタンと本を閉じた。
「ところで、裕海くんの隣にいるその猫っぽい子は誰?」
「ああ、この子は小鳥姫雪。山猫という妖怪で、俺の弟子なんだよ。」
ざっと説明する。
「よろしくね!え~っと・・・」
「私は本居小鈴よ。よろしくね。それにしても弟子か~、すごいね~!」
「ねーねー、もう出てもいい?」
「出ていい?」
人形たちがバッグから声をかけてきた。
「ああ、もう出てきていいよ。」
「わ~い!」
「わ~い!」
人形たちがバッグから出てきて、俺の肩に乗ってきた。
「・・・しゃべるお人形さん!?」
小鈴は目を丸くしていた。まあ当然の反応か。
「ああ、こっちの銀髪の子がきらちゃん。こっちの金髪の子がほたるちゃん。」
「こんにちは~!」
「こんにちは~!」
人形たちは元気よく挨拶をした。
「こんにちは。へえ~、自立人形なんて初めて見たよ。」
「そうだろうね。・・・あ、この本いいな。これ借りるよ。」
「これ?いいよ。」
借りた本をバッグの中に入れる。それにしても、そろそろ昼になるけどどうしよう。あ、蕎麦屋に行こうかな。
「ねえ、これから蕎麦屋に行こうかと思ってるけど、一緒に食べに行く?」
「ええ、そうしましょう!あ、そのあと阿求の屋敷に用があるから一緒に行こ?」
阿求の屋敷か。一回見たけど、すごい大きな屋敷だったな。今日は暇だし、そうするか。
「ああ、行こうか。」
「ねー、これから行く蕎麦屋って美味しいの?」
姫雪がキラキラした目で質問した。
「ああ、あまりの美味しさにびっくりするよ!」
「ほんと!?やったー!」
そういうと、姫雪は飛び跳ねて喜んだ。
「さて、いこっ!」
「ああ。」
「いらっしゃい!おや、兄ちゃん来たのかい。なんだい?今度は彼女と猫の子ども妖怪連れか?」
「前も言いましたけどこの子は彼女じゃないですよ。ねえ、小鈴。」
「う、うん。そうだね・・・」
あれ?なんで少し残念な空気を出してるの?
「鈍感な兄ちゃんだねえ。そっちの子は?」
「ああ、こっちの子は成り行きで俺の弟子になった子です。」
「へえ、弟子!何の弟子だい?」
・・・なんて答えよう。
「・・・えっと、まあ、護身術?」
間違ってないよね?護身術って言っても武道じゃないけど。
「ほお!それはすごい!さあ、せっかくだし早速俺の蕎麦を食え!」
「そのために来たんですけどね。」
「で、阿求の屋敷ってどこだっけ。」
見たことあるだけだからな。どこにあるかはわからない。当然、スキマでは行けない。
「知ってるけど教えない!」
「・・・なぜ?」
予想外すぎる返答に二文字で質問した。
「あなた空飛べるでしょ?」
「・・・もしかして、大きな屋敷だから飛んで見てもわかるだろう、ということ?」
注目の的となってしまうので、人里ではあまり飛びたくないが。
「半分正解。私、空を飛んでみたいのよ。」
そういうことか。
「つまり、小鈴を背負って空を飛んで、阿求の屋敷を探してみろと。」
「そういうこと!」
小鈴が可愛らしく人差し指を立てて言った。
「・・・姫雪、小鈴、しっかりつかまってて。」
「え?私はとべるよ?」
「あれを使うから。」
「ああ、あれを使うの。」
「?」
小鈴が不思議そうな顔をしながら、俺の背中にしっかりとつかまった。
「2人は、バッグの中に入ってて。」
「「は~い!」」
人形たちはバッグの中に入った。
「えっと、私はどこにつかまろう・・・」
「ああ、う~ん。よいせっと」
「ひゃあっ!?」
姫雪は俺がお姫様抱っこする形となった。幸い人はおらず、気にせず飛べる。
「じゃあ行くよ。全速力でね!」
「・・・え?」
“速度と停滞の変化“の結界を俺の体に張る。びゅんっと一瞬で離陸し、新幹線以上・・・リニアモーターカーぐらいの速さで飛ぶ。
「きゃあああああああああああっ!?」
小鈴のかわいらしい声は、風の音でかき消された。
「わーーーーーーーーーーーっ!」
姫雪は楽しそうである。
「・・・いじわる。」
小鈴は完全にご機嫌斜めだ。服や髪が乱れまくっている。
「い、いったい誰がこんなひどいことを・・・」
「いやいや、あなただよ裕海様。」
な、なんだってー!?う~ん、こういうときはどうするべきなのかな?豊姫に教わったあれを使うか。
「こ~す~ず、こっちむ~いて。」
「?」
涙目で振り向いてきた。
「えい。」
「!!!!!!????」
おでこにキスが効果的とこの前教わったが、これでいけるだろうか。
「あ、あわ、あわ・・・」
「・・・あれ?混乱してる?」
顔を真っ赤にして、手を上下に振るなど謎のしぐさをしている。
「裕海様・・・。鈍感すぎ。」
ん?姫雪がなにかつぶやいた気がしたけど、まあ別にいいか。小鈴が混乱している間に髪や服装の乱れを直しておく。もちろん、変なところは触ってないからね!
「それよりも、屋敷に早く入ろうか。この門だな。」
「・・・あ、その門は大人5人がかりじゃないと開かないよ。」
ふ~ん?そんなに重いのか。じゃあこれで。
「『威力の変化 ~鬼~』」
軽く小突く。すると、勢いよく開いた。
「・・・開いちゃった。」
「さすが裕海様!」
中に入り、扉を閉じる。
「使用人とかいるのかな?」
「いるよ。すみませ~ん!」
小鈴が声を上げると、使用人が来た。
「どちらさまですか?」
「本居小鈴です。阿求さんに呼ばれて友人とともにきました。」
小鈴が使用人に言った。
「わかりました。私がご案内いたします。」
その後、阿求のいるところに着くまでに5分ぐらいかかった。どんだけ広いんだここの屋敷。
「小鈴、いらっしゃい。あら、裕海さんも来ていたの?・・・その横の子と、人形さんたちはいったい?」
阿求がなにやら書き物をしていた。
「実は、かくかくしかじかなんだよ。」
「そうなんだ、そちらは自立人形にあなたの弟子。」
「「えっ!?なんで伝わったの!?」」
姫雪と小鈴は声を合わせて言った。実は“意思疎通方法の変化”で、心の中でざっと伝えた。阿求の心の中に語りかけたのに驚かなかったのが意外だけど。
「まあ座って。本題はこれなの。」
阿求が机で巻物を開いた。見てみると、ところどころの文字が消えている。
「・・・綺麗に文字が消えているな。傷がついていない。きらちゃん、ここの文字を再生できる?」
「う~ん、多分無理だね。物じゃない。」
そうか、仕方ない。
「あっ!」
小鈴が声を上げた。
「おじいちゃんから聞いたことがあるわ。字を喰う妖虫、字喰い虫ね。」
「字喰い虫?」
なるほど、妖怪の仕業か。
「どうしよう、結構大切な巻物なのに・・・」
「それなら、俺が何とかするよ。」
「えっ!?」
“再生の変化”を使う。きらちゃんが使う再生の力は、魔力がもとであり、ある程度の再生かできない。
しかし、俺の力は神力がもとらしい。どうやら変化の神からとてつもない量の神力を授かったようだ。魔力や妖力、霊力よりも神力の方が力は圧倒的に強い。神力による変化なら如何なる範囲の変化でも可能ということだ。
きらちゃんやほたるちゃんに能力を与えたのは、2人が存在してもいいという証のようなものだ。たまには頼らないとかわいそうだからな。
「“再生の変化”ほいっと。」
扇子を巻物に向けると、字が浮かびあがってきた。
「すごーい!元に戻った!」
「・・・ほんとだ、ありがとう!それで、もしよかったら退治もお願いしたいのだけれど。」
「ああ、大丈夫だ。準備するから紙と墨ちょうだい。」
「?」
不思議そうに阿求が紙と墨を取り出した。A4ぐらいの大きさの紙を14枚の小さな紙に切る。そして、捜索・滅と紙に書く。“探知の変化”“消滅の変化”など様々な変化の力を紙に与える。
「人に間接的に害を為す妖虫、字喰い虫。この屋敷に住まうその妖虫を捜索し、発見次第滅せ。」
すると、紙がぱたぱたと動き出し、屋敷中に飛び回った。
「さあほたるちゃん、出番だ。今飛ばした紙たちがどこにいるか把握することはできる?」
「うん!できるよ!」
そういってほたるちゃんが目をつぶる。
「“映写の変化”“縮小の変化”」
これで、ほたるちゃんが把握している域を白い壁に映し出す。その映し出した映像は、屋敷まるまるの図がそのままの大きさで映し出されるので、それを縮小し、小さな地図にする。紙が移動しているときは、その居場所は青い点で示され、滅した場合は一時的に赤い点で示される。
「わ~っ!すごーい!あ、今あそこの部屋で一匹潰したみたいだよ!」
「あ、こっちの部屋は台所じゃないの。こんなところにいたのね。」
その15分後に、紙たちは帰ってきた。
「はい、ご苦労様。」
そういうと、紙は動かなくなった。しかし、これは何度でも使えるので小物入れにしまった。
「すごい!霊夢さんよりすごいかも!」
「まあ、霊夢もすごい退治をするんだけどね。」
一度その現場をみたけど、あれはすごかった。結構でかい、力の強い妖怪の周りに一瞬でお札の結界を張って妖怪の自由を奪い、その間にでかい陰陽玉とかをぶつけてたな。霊夢曰く「弱すぎて退屈ね」とか、「本気出したらその瞬間に敵が消えてる」とか。う~ん、よくわからない。
「今日はありがとう。また来てね。」
「またおもしろい退治を見せてね!」
日が沈みかけている時間。阿求や小鈴と別れて家に帰ってきた。
「ふう、さてと夕ご飯を作るか。姫雪は何が食べたい?」
「ハンバーグ!」
姫雪はハンバーグが好きだ。しかし、それはただのハンバーグではない。ミンチにカツオブシを混ぜたハンバーグだ。この前に頼まれて作ってみたが、カツオブシの匂いが食欲をさらにそそらせるなかなかいけるハンバーグだ。
「じゃあ私はサンドウィッチにしようかしら。」
「・・・なんで紫がここにいるの?」
姫雪の隣に不自然なく座っていた。いつの間に現れたんだこの人。
「まあいいじゃない。」
「よくないから聞いているんだけど。」
「伝言よ。紅魔館の主から。」
レミリアから?なんだろう。
「『明日紅魔館に来い』以上。」
「・・・短すぎないか?」
8文字で終わっちゃったよ。よくわからんが、明日は紅魔館に行くか。
「で、はい。」
紫は手を差し出してきた。
「・・・何その手。」
「サンドウィッチちょーだい!」
・・・8文字伝えて報酬がサンドウィッチですか。もっと長かったら何を請求してくるんだ?
「わかったよ。今作るから待ってて。」
その後、藍が来て紫はサンドウィッチを受け取る前に連れて行かれた。サンドウィッチは俺たちでおいしくいただきましたとさ。めでたしめでたし。
続く
後書き
35話です。
なぜか書くたびに裕海がどんどん鈍感になっていってます。
次回は紅魔館!
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