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東方変形葉

作者:月の部屋
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日常の中の無限変幻
  東方変形葉31話「語られる過去、真実」

 
前書き
きらちゃん「ゆ、裕海様!!ゆうみさまーっ!?」
ほたるちゃん「み、見てきらちゃん!背中に深い傷が・・・血がたくさん出てる・・・」
きらちゃん「と、とにかく誰か助けをっ!だ、誰かーーー!!誰か来てーーー!」
魔理沙「おい、何の騒ぎだよ。・・・裕海!?どうした!!何があった!?おい、しっかりしろ!!」
きらちゃん「いきなり倒れたと思ったら、こんな傷ができてたの・・・ど、どうしよう・・・。」
魔理沙「・・・どう見ても妖怪にやられた傷だ。くっ、死なせてたまるものか!私は裕海を永遠亭へ急いで運ぶ!!お前たちもついて来い!」
きらちゃん「は、はい!」
ほたるちゃん「死なないで~!」
 

 
日も沈み、夜が始まろうとしていた。私、八意永琳はそれを眺めていた。
「ふう、今日の診察はおわりね。あ~、今日も忙しかったわね。」
私がそういってお茶を飲んだ時、荒い足音が聞こえてきた。
「し、師匠!大変です!急患です!それもかなり深い傷を負っています!」
鈴仙が血相を変えて入ってきた。彼女は続けて言った。
「その患者は、葉川裕海です!」
「っ!?今すぐ診察室へ連れてきなさい!」
鈴仙が向かおうとしたが、その必要はなかった。霧雨魔理沙が大慌てで担いできたからだ。
「頼む!永琳、どうだ?治るか?」
裕海をそっとうつ伏せに診察台に載せて言った。背中の傷は、かなり深かった。獣のひっかき傷のようなものだった。まずい、細菌が入ってしまったらどうしようもなくなってしまう。
「これはかなり深刻ね。鈴仙、今すぐ止血剤!今から手術を行うわ!」
「はい!わかりました!」
私は急いで手術室へと運んだ。



「ちょっと、裕海が致命傷の傷ってどういうことよ!?」
縁側でお茶をまったり飲んでいたら、魔理沙があわてて知らせに来たので、私も神社から急いで永遠亭に来た。
「よくわからんが、あの傷はどう見ても妖怪の仕業だ。こいつらに聞いてみたが、いきなり倒れたらしい。」
「えっく・・・えっく・・・」
「ひっく、ひっく・・・」
人形たちは泣いていた。よく見ると、魔理沙も目に涙を溜めていた。
「それで、今永琳が手術しているのよね!?傷の具合はどうだったの!?」
「ああ、あれは素人の私でさえ見れば、やばいとわかるほどだ。大量に失血していて、傷も深い。」
そんな、と私がガクッと体を落としていると、空間の裂け目が現れた。
「裕海が重症ですって!?」
紫が血相を変えて現れた。
「そうなんだ。あれは深刻だ、とにかく私たちは裕海が治るように祈るしかないんだっ!」
「そうだ!早苗の奇跡の力を借りましょう!」
私は必死に提案した。
「そうね、ぼーっとしているよりはその方が何百倍もいいわね。」
紫がそういうと、スキマをあけて守矢神社につなげた。
「なっ!?紫さんじゃないですか!ど、どうしたんですか!?」
「落ち着いて聞きなさい。裕海は今、深手の傷を負っていて今手術しているの。」
「っ!!」
早苗は血相を変え、驚いて、涙をこぼしていた。
「だから、あなたの奇跡の力がいるの。手術の成功を祈る奇跡なら、確か2時間ぐらい唱えればできるわよね?」
「は、はい!やります!諏訪子様、神奈子様、力を貸してください!」
「ああ、わかった!」
「わかったわ!」
そういって、早苗が唱え始めた。私たちにできることは、もう祈ることしかできなかった。



あれから、数時間が経った。早苗は唱え終わり、かなり疲れていた。私も魔理沙も紫も待合室で待っていた。
そのとき、扉が開いた。
「永琳、手術は成功したの!?」
私は必死になって聞いた。
「一応、命の危険は去ったわ。だけど、意識を回復するかどうかがわからないわ。」
死ぬことはないと告げられて少しほっとした。
「紫、意識の境界をいじることはできる?」
一応聞いてみる。すると、紫は横に首を振った。
「人の、意識を取り戻していない人間の意識の境界をいじると、大変なことになってしまうわ。」
「そう・・・」
「とにかく、様子を見ましょう。」
そういって、入院室と思われるところに裕海は運ばれていった。



あれからもう何時間も経ち、いつの間にか朝になっていた。
入院室には、紫が呼んだ幻想郷の住民のほとんどが来ていた。
みんな、裕海に呼びかけているが、裕海はまだ目覚めなかった。
泣く者がたくさんいた。悲痛なほどの泣き声は、私たちの胸をぐっと締め付けた。
その時だった。裕海の体に変化が起きたのだ。
しかし、それは“裕海”ではなかった。
『心配するな、皆の者。この人間はいずれ意識を取り戻す。』
裕海の体から、霊とも何とも言えない“何か”が現れた。
「だ、誰だ!お兄ちゃんを傷つけたのはお前か!!」
悪魔の妹が泣きながら言った。すると、その“何か”は、すさまじい量の神力を解放した。
『いいや、違う。私はこの人間の体を借りている、変化の神だ。』
全員が驚いた。どういうことなのだろう。
『話すと長くなる。だが、お前たちには話さなければならない。』
そういって、変化の神は話をし始めた。


むかしむかし、何百億年も昔の話。あるところに一人の神がいました。
ある時、一人では退屈で、たくさんの神々を作り出しました。
ある神は、宇宙と呼ばれる空間を創りだしました。そして、たくさんの神が星などを作ります。そして、惑星を作る神がいくつもの惑星を作り出しました。
そのうちの一つの惑星を、ちょうどいいところに配置するように変化させ、その惑星の中で生物ができるように環境を整えました。
やがて、たくさんの生物ができました。ただし、その生物たちは生存競争によって“穢れ”と呼ばれる、永遠を奪い、寿命を与えるものを持つようになりました。
そこで変化の神は考えました。その惑星で最も知性のある人間を作り出し、さらに均衡が保てるように妖怪と呼ばれる、人の天敵となるものを作り出しました。
そしてある人間達の“穢れ”を無くし、“穢れ”を嫌うようにさせました。そして案の定、“穢れ”を嫌う者たちが月へと移り住み、“穢れ”のある者とない者がはっきりと別れさせました。
そして、傍観目線から世界を安定させるように見張っているのは疲れるので、あることを思いつきました。
人間の体を借り、その世界を楽しみながら世界が安定するように見張ろうと考えました。
まだ生まれていない、胎内の人間のなかに入り、その人間の性格などを尊重して、その人間が寝た頃に私は動き、体から出て世界が安定しているか見張っていました。
体の持ち主が死ねば出て、入り込むのに素質がありそうな人間の胎児の中に入り。それが転々と続いて、この前まで続いていました。
しかし、あるトラブルが起こったのです。あるとき、素質に恵まれた胎児がいました。これはいける、と中に入り込みました。すると、思いもしないことが起きたのです。
その人間の中にはある特殊な能力がありました。ありとあらゆるものを封じる能力。ありとあらゆるものを引き出す能力。その2つがその胎児の中にあった能力でした。
私は、その胎児の体に封じられてしまいました。そして、私の能力、変化を司る能力が引き出されてしまったのです。力自体は幾分にも分けられるので、私が変化を司る能力を維持できたことは不幸中の幸いでした。
私は、持ち主が死ぬ前に体内から出ないといけません。そのままでいると、私も道連れになり、消滅してしまうからです。この封じは強力で、私の力では絶対に変化できませんでした。
封じられてしまい、持ち主が寝ないと動けず、しかも動けても私はその体に縛られているので、絶対にその体から出ることはできませんでした。
寝ている間だけ世界を見張り、起きると自動的に体に戻される。
このままでは、この少年、葉川裕海とともに一生を終えなければなりませんでした。
なので、力を使い、少年の穢れを消した。しかし、不老だとその時代の人間に怪しまれてしまう。そこで、私はあることを思い出しました。
幻想郷と呼ばれる、全てを受け入れる楽園があると。なので、そこの楽園の管理人の意識を変化させ、この少年が人間界にとって危険分子であると考えを誘い、少年を幻想郷に受け入れられるようにしました。



『・・・ということなのだ。だから私が内部からこの人間の回復を促している。』
「・・・じゃあ、この子の両親が亡くなったいうのは?」
紫が真剣な顔で質問した。
『ああ、正直こういうことはしたくなかったが、この少年の両親を死に誘ったのだ。記憶を消失して記憶を植え替えてしまっては、後々面倒なことが起きてもっと死人が出てしまうから、犠牲は最小限にしたのだ。あとは、消失の変化でこの少年の記録などもろもろを消した。』
「・・・そう。」
「ちょっとまって、あなたが神だというのなら、信仰心はいったいどうやって集めているのよ。あれだけの神力、並大抵の信仰では集まらないわ。」
諏訪子が質問した。
『そもそも、信仰心がなければ消えてしまうという法則を作ったのも私だ。私には適応されないようになっている。』
そうなの、と静かに椅子に座りなおした。
『そろそろこの少年の意識が戻るであろう。もしこのことを話していたことをこの少年が知らなかったら、ぜひ話していただきたい。』
「・・・わかりました。あなたがこの少年のためにも力を尽くしてくれた感謝のしるしとして、そのことを伝えておきます。」
紫は、私が見たことのない真剣な眼差しで言った。
『助かる。では、もう会えないかもしれないが、私はこれにて。あ、あと、もう一つ伝言がある。』
「なんでしょうか。」
『永遠の命という、死ねない苦しみやいろいろな苦難を味あわせてしまって申し訳ない。と伝えてほしい。』
「わかりました。」
『では、私はもう戻らなければならない。また逢う日まで。』
そういってスッと消えてしまった。



「・・・んっ」
目が覚めると、そこは見慣れない天井があった。
「俺、いったい・・・いててっ」
背中が少しだけ痛むが、あまり支障はない程度だった。
「・・・裕海?裕海なのね?」
と、聞き覚えのある声がした。目がチカチカして見えにくいが、そこには紫がいた。
「「うえ~~~~~んっ!!」」
「おっと。」
人形たちが泣きながら抱きついてきた。ああ、そうか。俺は死にかけたのか。
「心配かけてごめんね。みんな。」
その言葉に反応したかのように、ほとんどのみんなが泣き崩れた。
「もう、ばかばかばかっ!」
涙目でレミリアが飛び乗って軽くたたいてきた。
「・・・裕海、あなたに伝えなければならないことがあるの。」
紫が少し暗い表情で言った。そして、真実を聞かされた。俺の体に入り込んでいる神の過去を。俺は永遠を生きなければならないということを。入り込んだ神の謝罪を。
「・・・ああ。理解したよ。」
「じゃあ、全てを受け入れるのね?」
「ああ。」
永琳がそばに来た。
「今から、すぐに効く薬を塗るから。しみるけど、がまんしてね。」
「ああ。っ~~~~~!!」
すっごいしみる。めっちゃ痛い。
「いたそーっ」
フランとメディスンが横から眺めていた。見ると、もう泣いておらず、笑顔になっていた。つられてみんなも笑顔になっていた。
このとき、ひそかに俺は決心した。
俺はもう、みんなを泣かせたり悲しませたりはしない、と。



続く
 
 

 
後書き
31話です。
裕海が無事で一件落着です。しかし、結局裕海を襲った妖怪はいったいなんなのでしょうか。
次回からは、いつも通り日常に戻ります。 
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