IS 〈インフィニット・ストラトス〉 ~運命の先へ~
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第1話 「入学」
前書き
ちょっと早めに第1話投稿しまーす。土日を目安に投稿していきますので、よろしくです。では、どうぞ~。
はい、俺は現在、IS学園1年1組の教室の最前列ど真ん中の席に着席しています。まあ、ちょっと面倒な入学試験をクリアしたり、戸籍を偽造したりなんかして晴れてこの学園に入学したわけなのだが・・・、正直もう帰りたい。
(うおお・・・、背中が焼ける・・・。)
すっげえ数の視線が背中に突き刺さる。上野動物園のパンダって普段こんな気持ちなのかな・・・?リーリー、シンシン、心中お察しする。まあ、隣にいる奴の方が遥かにヤバそうなんだけどさ。
「は~い。皆さん、SHR始めますよ~!」
この教室の雰囲気にそぐわないほんわかした声が教壇から響く。声の主は山田 真耶、このクラスの副担任である。低身長に童顔、俺には正直、中学生が頑張って背伸びして大人ぶっているようにしか見えない。
「それでは皆さん、1年間よろしくお願いしますね。」
・・・あ、誰も答えてあげないのね。あーあ、先生涙目になっちゃって可哀想に。え、俺?嫌だよ、面倒だから。
「じゃ、じゃあ自己紹介をお願いします。えっと、出席番号順で・・・。」
さて、先行きに不安を覚える副担の言葉で各々が創意工夫に満ちた(?)自己紹介をしたのだが、その流れを断ち切った人間がいた。先程から初対面の俺に助けを請う視線を送っていた男子である。ガン無視したが。
「・・・くん?織斑 一夏くん?」
「は、はい!」
山田先生の呼びかけに驚いたか、少し声が裏返っている。周りから聞こえるクスクスという笑い声にさらにドギマギしている。この男、なんと情けない。
「あっ、あの、大声出しちゃってごめんなさい。お、怒ってる?怒ってるかな?ゴメンね、ゴメンね!でもね、あのね、自己紹介、『あ』から始まって今『お』の織斑くんなんだよね。だからね、ご、ゴメンね?自己紹介してくれるかな?だ、ダメかな?」
うわぁ、教師らしからぬ清々しいまでの超低姿勢。この人、きっと一週間後には生徒にアダ名で呼ばれてからかわれてるんだろうな。それも複数のアダ名で。
「いや、そんなに謝らなくても・・・。自己紹介しますから、落ち着いてください。」
「本当?本当ですか?本当ですね?や、約束ですよ!絶対ですよ!」
織斑 一夏の手を握り、顔をグッと近づけながら懇願する山田先生。おい、この人を副担にした奴誰だ?頼りないどころじゃねえぞ。あと、いい加減手を離せ。背後から嫉妬の流れ弾が飛んでくるんだよ。
「えっと、織斑 一夏です。・・・。」
・・・いや喋れよ。流石にそれだけじゃ通用しないぞ?他にも何か・・・、おい、初対面の人間にそんな情けない目を何度も向けるな。自分で対処しろ。
「・・・スゥー。」
俺がそっぽを向くと、一夏が深呼吸を始めた。お、やっと腹括ったか。
「・・・以上です!」
図ったかのように生徒たちが盛大な音を立てて椅子からずっこける。その精度たるや、ドリフターズも真っ青だ。・・・お、急に気配が。
スパァンッ!
「いっ!?」
織斑 一夏の頭が出席簿によって叩かれた。速度、角度、威力、全てにおいて常軌を逸している。というか、本当に出席簿か、あれ?尋常じゃない音がしたぞ。
「げえっ、関羽!?」
スパァンッ!
「誰が三国志の英雄か、馬鹿者。」
おおう、容赦の欠片もない。これが世界最強か・・・。そして、この茶番が姉弟喧嘩か。勉強になるなぁ(棒)。
「あ、織斑先生。もう会議は終えられたんですか?」
「ああ、山田先生。クラスへの挨拶を押しつけてすまなかったな。」
すげえ、声音が全然違う。こんな軍神レベルの人でもこんな優しい声出せるんだなぁ。山田先生もさっきまでの涙声が嘘のように笑顔だし。
「いえ、副担任ですから。これくらいは。」
めっちゃはにかんでるなぁ、山田先生。確かにブリュンヒルデが担任ならこの人が副担でも問題なさそうだなぁ。むしろ厳しすぎる指導の緩和剤になってくれそうだ。
「諸君、私が織斑 千冬だ。君たち新人を一年で使い物になる操縦者に育てるのが仕事だ。出来ない者には出来るまで指導してやる。逆らってもいいが私の言うことは聞け。いいな。」
うわぁ、絵に描いたような暴君発言。とても自己紹介とは思えない。それに、雰囲気と発言が矛盾してるよな。こんな暴君に逆らえる奴いないだろ、普通。
「キャー!千冬様、本物の千冬様よ!」
「ずっとファンでした!」
「私、お姉様に憧れて学園に来たんです!北九州から!」
黄色い歓声が教室に響き渡る。流石は世界最強、ネームバリューが伊達じゃない。ってか人間ってこんな騒がしい声出せるのか。酔っ払った束さんよりうるさいぞ。
「・・・毎年、よくもこれだけ馬鹿者が集まるものだ。感心させられる。それとも何か?私のクラスにだけ馬鹿者を集中させているのか?」
あり得ないはずなのに、尋常じゃない説得力を感じる。まあ、どのクラスに行っても似たようなもんだと思うが。
「で、挨拶もまともにできんのか、お前は?」
再び矛先は織斑 一夏へ。この鋭い眼光といい、態度といい、何言っても殴る気満々って感じだ。
「いや、千冬姉、俺は・・・」
スパァンッ!
「織斑先生と呼べ。」
「はい、織斑先生・・・。」
今ので3回目、死滅した脳細胞は約15,000といったところか。はてさて、織斑 一夏の脳細胞は何ヵ月保つことやら。黙祷っと・・・。
「え?織斑くんってあの千冬様の弟・・・?」
「じゃあ、ISを使えるのもそれが関係して・・・?」
「良いなぁ。代わって欲しいなぁ・・・。」
今のやり取りを見て代わりたいと思うとは、愉快な頭してんなぁ。にしても織斑 一夏がISを使える理由がそれならきっと俺にも・・・。いや、止めておこう。不毛な話だ。
「何をボーッとしている?お前の番だぞ、神裂。」
おっと、俺としたことが。俺はゆっくりと立ち上がる。面倒だからさっさと終わらせようっと。
「神裂 零だ。1年間よろしく頼む。以上。」
着席と同時に尋常じゃないスピードで出席簿が襲いかかる。俺はそちらを見向きもせずに出席簿を受け止めた。他の生徒が唖然とする中、出席簿の轟音に紛れて、チャイムが流れた。
「・・・まあ良い。これでSHRは終わりだ。諸君らにはこれからISの基礎知識を半月で覚えてもらう。その後実習だが、基本動作は半月で体に染み込ませろ。良いか?良いなら返事をしろ。良くなくても返事をしろ。私の言葉には返事をしろ。」
この鬼教官の独裁者じみた言葉と共に、俺の学園生活が幕を開けたのだった。やれやれ、どうなることやら・・・。
後書き
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