IS 〈インフィニット・ストラトス〉 ~運命の先へ~
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序章 「運命の始まり」
前書き
初めまして、GASHIです。処女作なので拙い文章だと思いますが、よろしくお願いします。それではどうぞ。
薄暗い路地裏に冷たい雨が降り注ぐ。一向に止む気配を見せない大雨の中、1人の少年が路地裏に座り込んでいた。
ボロボロの衣服を身に纏った彼は、雨具も持たずにずぶ濡れだった。彼は俯いたまま、微かに震えていた。それが凍えによるものでないことを、彼は自覚していた。
彼の心に蔓延るのは、恐怖。今にも背後から得体の知れない何かが追いかけてくるような気がする、そんな切迫した恐怖。周りを見渡しても知らないものばかり、そんな未知への恐怖。様々な恐怖が彼の心を支配していた。
足音がする。それは彼の目の前で止まった。彼は相変わらず俯いたまま、路地裏と自分を濡らす豪雨の音を聞いていた。彼の耳に雨音ではない、確かな人間の声が響いた。
「ねえ、キミ・・・。」
彼は顔を上げた。彼の心に一筋の光明が差し込んだ気がした。
「・・・ん?」
若干視界がぼやけている。視界に入るのは築20年は下らないであろう木造建築のボロい天井だけである。
(ああ・・・、寝ちまってたのか、俺。)
平素することのない居眠りに少し新鮮味を感じながら思い切り伸びをする。そして気づいた、隣から自分のものではない穏やかな息遣いが聞こえることに。
「すぅ・・・、すぅ・・・。」
「・・・2人揃って昼寝とは、珍しいこともあるもんだ。」
隣では同居人にして俺の妹のような存在である少女、クロエ・クロニクルが安らかな寝息をたてていた。寝顔に微笑みを浮かべているあたり、良い夢を見ているのだろう。
「うふふ、くーちゃん可愛いなぁ♪」
「・・・いたんですか、束さん。」
背後からの声に振り向くと、そこには稀代の天災、もとい天才にして俺の親のような存在である篠ノ之 束が満面の笑みを浮かべて立っている。
「もっちろん!れーくんとくーちゃんの添い寝なんて貴重なシーン、この束さんが見逃すわけにはいかないでしょっ♪」
「・・・さいですか。」
おっと、自己紹介がまだだったな。俺は神裂 零(かんざき れい)、束さんの愛弟子兼秘書兼世話係だ。記憶をなくし、行く宛もなく彷徨っていた俺を保護してくれた束さんと行動を共にしている。この名前も束さんがつけてくれたものだ。
「んふふ~、やっぱりくーちゃん可愛いなぁ♪ナデナデ~♪」
「そうですね。」
2人してクロエの綺麗な銀髪を撫でる。サラサラとした指通りが心地好い。
「それで、そこに置いてある資料は何です?」
「あ、そうそう!実は束さん、ちょっとれーくんに頼みたいことがあってだね。」
束さんは撫でるのを止め、畳の上に放り投げてあった資料を手に取る。束さんは常にデータを電子的に記録するので、紙媒体はちょっと珍しい。
「はい、これ!束さんからのプレゼント♪」
手渡された書類に無言で目を通す。見ると、一番上に『IS学園入学申請書』とデカデカと書いてある。・・・いや、待て。突然すぎて意味が分からん。
「・・・詳細な説明を。」
「オッケー!実はね・・・。」
「・・・つまり、織斑 千冬の弟である織斑 一夏と貴女の最愛の妹である篠ノ之 箒がIS学園に入学するから、その護衛を俺に頼みたいと。」
「そうそう!理解が早くて束さん嬉しいな♪で、どうかな?頼まれてくれる?」
考えれば考えるほど、「面倒」という言葉が頭の中を占領していく。俺は面倒なことには可能な限り首を突っ込まない主義だ。とはいえ・・・、
「・・・まあ貴女の頼みですし、構いませんよ。」
「ホント!?さっすがれーくん、束さん超嬉しいよ~!ギュ~!」
おおう、束さんの抱擁とは強烈な。正直これだけでも立派な報酬だが、俺はそんな単純な男じゃない。立ってる者は親でも使えって言うだろ?少しは利用しなくちゃ。
「ただし、条件があります。」
「うんうん、束さんに出来ることなら何でもやっちゃうよ!さあ、言ってみるが良い!」
豊満な胸を張って景気の良い返答をする束さん。出来ることって・・・、基本的に何でも出来るからなぁ、この人。
「まず専用機は俺の好きにさせてください。」
「全然オッケー!むしろ大歓迎だよ!あ、ただ展開装甲の試験運用だけやって欲しいんだけど?」
「問題ないです。元々それが欲しいからこそ提案したってのもありますし。」
束さんから頼んでくれるとは願ったり叶ったりだ。ああ、今から楽しみだなぁ、オリジナルの専用機。
「次、織斑 千冬の指導が受けられるようにしておくこと。」
「おおう、戦闘狂のれーくんらしい頼みだね!よしよし、ちーちゃんには親友の束さんから頼んでおいてあげよう!」
戦闘狂って・・・、俺は人より喧嘩が好きなだけですって。だって、楽しいじゃないですか 、暴れるのって。
「そしてラスト。」
「うんうん、ドンと来い!」
「入学後は、たとえどんなに束さんやクロエにとって不都合でも、俺の好きにやらせること。もちろん、束さんも俺のことを気にせず好きにやってくれて構いません。」
「・・・何で?」
え、何故これだけ理由まで?もしかして嫌なの?理由言うのちょっと恥ずかしいんだけど・・・。
「これは記憶を失って以来、俺の初めての青春ですから。その、この年相応の機会を自分勝手に謳歌してみたいんですよ。」
「・・・・・・・・。」
いや、無言って・・・、何か言ってくださいよ。柄にもないこと言って恥ずかしいんですから。
「・・・・んも~!れーくん可愛い~!」
そう言って再び思い切り抱きついてきた束さん。ちょっ、嬉しいけど苦しいですよー!
「よ~し、可愛いれーくんの為なら束さん、全力で応援するぞ~!お~♪・・・それじゃ、色々準備しなきゃだから束さんは先に研究室行ってるね♪」
言うが早いか、束さんは目にも止まらぬ速さで部屋を出ていった。
(相変わらず元気な人だなぁ。体力が無尽蔵だわ。)
「んぅ・・・、にい・・・さま・・・?」
「おや、起きたか、クロエ。おはよう。」
手元を見ると、いつの間にかクロエが目を覚ましていた。まああんだけ騒げば起きるよな、そりゃ。って俺ずっと撫でてたのか。気持ち良すぎて違和感なかったから気づかなかった。
「おはようございます、兄様。束様とは一体何をお話に?」
クロエは俺のことを「兄様」と呼ぶ。正直恥ずかしいので何度か止めるよう指摘したのだが、頑として止めない。まあ、慕われてるってことだな。
「仕事のことだ。ちょっと遠出する予定があってな。」
俺はクロエの手を掴んで立ち上がる。クロエは恥ずかしいのか、少し顔を赤くしてモジモジしている。うん、可愛い。
「とりあえず、束さんの所に行こう。話はそこでな。」
「は、はい。」
俺はクロエと共に研究室に向かう。未来に横たわる輝かしい青春に期待を抱きながら。
後書き
1~2週間くらいで1話ずつ投稿する予定です。ではでは~。
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