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東方変形葉

作者:月の部屋
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変化と不変の入り乱れ
  東方変形葉17話「一通の手紙」

 
前書き
裕海「はい、ご注文の人形。」
アリス「あら、ありがとう。そういえば最近、あなたの人形のおかげで独立とまではいかなくても、それなりに長いこと動いてくれるようになったし、言葉もはっきりしてきたの。」
裕海「へ~、どんなの?」
アリス「これぞ、新型上海!出ておいで、しゃんはーい。」
上海「しゃんは~い!」
裕海「うわあっ。本当に、俺が作った人形がしゃべってる!すご!」
アリス「ふふふ、新鮮な反応ね。」
上海「わーい、すりすり~。」
裕海「わっ、ほおをすりすりしてきたっ!可愛い・・・」
アリス「あらこの子、そんなに人になついたかしら。ああ、作った人のことはわかるのね。」
裕海「えっ、魔法をかける前から記憶ってあるものなの?」
アリス「正確には、勘かしら。」
裕海「人形ってすげえ~。」
 

 
修行を始めてから、はや3週間が経とうとしていた。おかげで感情や意識などを変えることができてきた。まだ完全ではないけど。結界もいつもよりキレがいい。
今、俺は暇だ。なぜなら今日は、修行はないのだ。
「う~ん、どうしようかな。もう仕事は終わったから・・・あ、鈴奈庵の本をそろそろ返さないと。そうだ、人里へ行くか。」
スキマをあけ、人里へとつなげる。



「いらっしゃい。あれ、裕海くんだ。おはよう。」
小鈴がいた。まあ店番をやってるから普通か。
「ああ、おはよう。借りてた本返しに来たよ。」
「あら、ありがとう。中身を確認するからちょっと待ってて、っていうか、これ妖魔本だから私読めないけどね。」
ふふっとお互いに笑いをこぼす。
「う~ん、次はどれ借りようか・・・」
「あ、そういえば外の世界の本がたくさん手に入ったんだよ。見る?」
「へえ~、どんなの?」
外の本か・・・知ってるのあるかな?
「こんなの。」
すこし小さめの机に数冊の本が置かれた。
「え~っと、“よくわかる世紀末覇者の本”・・・面白くなさそうだな。意味不明だし。」
北斗なんとか拳とか使えるようになるんだろうか。興味ないから別にどうでもいいけど。
「そうよね。読んでみたけど、さっぱりわからなかったわ。」
「次は~ “面白い変態紳士になる方法”・・・知りたくないわ。こっちは~“バカとアホの違い”・・・どうやら書いてる本人が全然わかっていないようだな。だめだこりゃ。」
「たまに面白い本がくるんだけどね。いつもこんな感じなの。」
「ふ~ん?・・・じゃあこれとこれを借りるよ。」
そういって渡したのは、魔術書だ。ちょっと興味があってね。
「ええ、ありがとう。」
そのとき、悲鳴にも近い大きな声が飛んできた。
『たっ大変だー!!』
『きゃあああー!』
「・・・なんだか外が騒がしいな。ちょっと見てこよっと。ちょっとまってて。」
「ああ、うん・・・」



「どうしたんです?」
「ああ、あっちで妖怪の一団がきやがったんだよ。坊やも早く逃げな。」
なんだって?妖怪の一団?それは大変だ。はやく行かないと。
「そうですか、じゃあ行ってきます。」
「えっ危ないぞ!?食われるぞ!!」
「よく見てよ。あの子、この前に妖怪が攻め込んだ時に・・・」
「あっ・・・ああ!!あの子は、“変化の現人神”じゃないか!!」



『ぎひひひひ、ひとの匂いがするぅ~。いっぱいころしてやるぅ~。』
「食目的ならわかるが、まさかただ単に人を殺めたい妖怪がいるなんて。」
なんて愚かなのだろうか。
『・・・ナニモノだ』
「“変化の現人神”と呼ばれている、ただの人間だよ。」
『ふん、人間風情がわれら妖怪に敵うとでも?しかも1対多数では話にならんぞ。まあどのみち殺すがな。』
どっと、妖怪たちの笑い声が響き渡った。まあそうだろうね。普通ならね。
「ふふふ、やってみないとわからないだろう?変人ども。」
人じゃないけど。
『・・・っ!上等だ!やってやるぜ!皆!』
『『『おー!!』』』
さて、修行の成果を試す時が来たな。まずはスペカを唱える。

「七曜弾幕大結界」

『ふん、弾程度なら多少痛いが、我らはそんなものでは止まらないぞ!』
「だろうね。だからこうするんだよ。」
“痛覚の変化”の結界を妖怪たちの周りに瞬時に張る。そして、“感情の変化”で恐怖を増長させる。
『なっ!?ぐああああっ!!』
つぎつぎと倒れていく。悲鳴を聞いた恐怖感で失神している仲間がほとんどだ。
「さて、こいつらをどうするか。また無縁塚に送り込むか?そうしよう。」
いくら野蛮な妖怪でも、閻魔を知らないやつはきっといない。スキマを開き、無縁塚に放り込む。ついでに力が出ないようにしておいたからもう大丈夫だ。



例のごとく、紫は裕海の成長を見届けていた。
「あら、十分に力を発揮しているじゃないの。それにしても、あの子は相変わらずね。」
「え?十分痛めつけていた気がしますが。」
「藍も知っての通り、人里ではもともと妖怪は人を襲わないという約束になっているわ。それを無視したあげくに、人を食べたいという理由ならまだしも、殺したいから襲うだなんて、野蛮というにも程があるわ。私なら頭に障害ができるぐらい痛めつけるのに。」
「は、はあ・・・。」



『ここはどこだぁ~。』
「無縁塚ですよ。」
『げえっ閻魔様!?』
「はあ・・・小町、こいつらを例のとこに放り込みなさい。」
「へ~い。」
『な、なんだよ、例のとこって!!どこだよ!』
「はいはい騒ぐな。そいっと」
『ぐわあああああ!』
「あなたの能力は便利ですね。距離を操ってぽいっと投げただけで例のとこに放り込むことができるなんて。」
「えへへ~、でも三途の川では使ってはいけないですからね。あ~あ、使えたらいいのにな~。」
「決まりは決まりです。霊の罪の深さを知ることができたりする、便利な場所なのですから。」



「ふう、片付いた。ただいま~。」
「あ、おかえり。」
「裕海さん。こんにちは、また退治してきたの?」
阿求が来ていた。
「またっていうほど退治してないけど、まあそうなんだよ。人を殺したがるやつらだったから、痛めつけておいたよ。」
「それはそうと、もうお昼よ。どうする?」
おっと、もうそんな時間か。
「う~ん、そうだな。あの蕎麦屋は?」
「定休日よ。」
なんてこったい。
「うーん。どこで食べようか。」
「あ、そうだ!」
小鈴がぽんッと手をたたいた。
「え、どこかあるの?」
「あっちの食品店で、全品半額セールをやっていたんだったわ!」
半額セールって、なんだか首を自ら締めるような感じだな。閉店セールじゃないよな?
「ああ、そういえば家の食材がなくなってきたから買わなくちゃ。」
「いいこと思いついた!裕海さんの家でご飯を作ってもらいましょ!」
阿求が提案した。
「さんせー!」
「あ、そうなるんだ。まあいいか。」
だいたい予想はついていたし。
「じゃあその食品店を案内してくれないか?」
「ええ、いいわよ。」



ふう、すごい安かったな。おかげでたくさん買えた。
「じゃあ行きましょ!」
「あれ?でも裕海くんの家ってたしか・・・」
「うん、ここからだいたい40分歩いたところにあるよ。」
「え~っ!?そんなに遠いの?」
まあ、運動にはいいかもしれないけど、この子たちは女の子だから無理させてはいけない。
「大丈夫。10秒で着くから。」
「え?」
「ええ?」
首をかしげて考え始めた。まあ無理もない。すっとスキマを開いてみせる。
「うわっ!?なんか開いた!」
「妖怪の賢者みたいなことするのね。」
「え?妖怪の賢者って誰?」
八雲紫のことだ。まあ小鈴は知らなくても無理はないかな。
「まあ、それよりも早くいきましょ。とうっ」
あ、飛び込んだ。阿求って意外と物怖じしないな。
「えっおしえてよ~っ。えいっ」
小鈴も意外と物怖じしなかったりするのかな。



「一人で住んでいるわりには大きい家だね。」
「・・・まあ、何も言ってなかったからな。」
「え?」
「あ、いや、こっちの話。じゃあそのへんのソファーにでも座ってて。」
そういえば、紫に外の世界の俺の家から持ってきてもらったものがあるから、幻想郷にはないものもあるな。さて、何を作ろうか。
「わーっ!みて阿求。こんなものがあるわよ!」
「あら?見たことがないものね。何かしら。」
2人が見つめていたものは、小型の送風機だ。太陽電池だから電気がなくても動く。
「それは、風をおこしてくれる外の世界の機械だよ。ああ、横についている突起を回せば風が出てくるよ。」
「へ~、なかにうちわをもった妖怪でもいるのかしら・・・わっほんとに風が出てきたわ!」
阿求が驚いて飛び跳ねた。うちわの妖怪・・・ちょっと見てみたい。
「便利ね~。外の世界は進んでるのね。」
「まあ、幻想郷には外の世界にはないのもあるけどね。野生のトキなんて初めて見たよ。」
外ではもう野生絶滅してるから、生で見たことなかったな。
「外の世界で数が減ったり絶滅したりすると幻想郷に現れる、と妖怪の賢者から聞いたことがあるわ。」
「へ~、そうなんだ。」
「ねえねえ、妖怪の賢者って誰?」
「幻想郷の管理人、八雲紫のことよ。聞いたことあるでしょ?」
「あっ!聞いたことある!」
そのとき、スキマが開いた。ただ、そのスキマは俺のものではなく・・・
「ハロ~。」
「毎回ここを見ていたかのように現れるね、紫。」
「そりゃ見ていたもの。」
ストーカー?いや、スキマってなんか結構便利で、あちらからは気づかれずにこちらから見ることができる。
「ああ、やっぱりそうか。なんか視線を感じると思ったら。」
「え、紫?八雲紫?この人が?」
「そうよ。」
「ああ、あなたは私を見たことがなかったわね。よろしくね。あ、お腹すいたわ。裕海、おやつかなにか出して。」
妖怪って結構友好的だな。紫だけかな?
「ちょっと、紫様?要件だけを伝えに来たんじゃなかったんですか?」
藍がスキマからひょこっと顔を出した。
「あ、藍。久しぶり。」
「ああ、久しぶり。」
「ちゃんと伝えるわよ。あなたはご飯の用意をしてて。で、そのことなんだけど。」
「え?」
「はいこれ。」
手紙だった。
「誰もいなくなったら見て頂戴。極秘のあることが書いてあるから。この中のことは決して周りに知られてはいけないわ。手紙は内容を覚えたら処分してちょうだい。」
「?」
スキマの中に戻り、閉じた。
「なんだったんだろう、あの人。」
「う~ん、相変わらずあの人は何を考えているかわからないわ。」
「よし、できた。はいお待たせ。」
「わ~!焼肉定食だー!いただきます。」
「おいしそうね。じゃ、いただきます。」




「じゃあね、また今度。」
「おいしかったよ!」
「ああ。」
2人が食べ終わって、スキマで届けた後、さっき渡された手紙を開けた。


―裕海へ―

今から書くこのことは私しか知らない。幽々子はきっと時機わかるでしょう。ちなみに、藍には伝えてはいけない。藍には悪いけど伝えると作戦がうまくいかなくなる可能性があるからね。で、本題に入るわね。あなたには月へ行ってもらう。なぜかと言いますと、そろそろ第二次月面戦争をおこそうと思うの。ただしこの戦争は血の流れる戦争ではない。私は千年前の雪辱を晴らしたいだけ。他は何も考えていない。それで作戦の方だけど、実は今、1週間前ぐらいに博麗霊夢、霧雨魔理沙、レミリア・スカーレット、十六夜咲夜を囮として月へ向かわせているわ。まあ月の民は4人を殺しはしないでしょう。で、私と藍がもう一つの囮。囮はこの2組いるの。なぜなら、月の実力者は2人だから。2人だけなの?と思うかもしれないけど、その2人の力は到底私では敵わない。それに加えて、月の技術は外の世界以上のものがあるから、とんでもない兵器もたくさんあるでしょう。そして、幽々子は私が作った月への入り口から月へと行ってもらう。そして、月の実力者が住まう建物へ行き、お宝をとってきてもらう。私たちが囮になるのは幽々子が建物に侵入するときだけ。となると、もうわかるわね。あなたには月で、月のリーダーの気を引き付けるのよ。ああ、戦わなくてもいいわよ。あなたの能力ならその2人に勝てるでしょうけど、倒したところで別に月を手に入れるわけじゃないからね。月への行き方を教えるわ。湖の水面に映る満月の虚実の境界を変化させなさい。そうすれば月へつながるでしょう。あなたは月の民のふりをし、その建物を探し出す。おそらく門番がいるでしょうから、あなたは倒れるふりをしてその人たちに保護してもらいなさい。そして、月のリーダーの気を引き付ける。数日間でいいわ。幽々子がこちらへ帰ったらあなたは隙を見て帰ってきなさい。実行は2週間後の満月よ。ちなみに、幻想郷には月の賢者の八意永琳がいることを忘れずに。もう一度言うわ。このことは口外してはならない。じゃあ、この手紙は処分してしまいなさい。


八雲 紫より



と、妖怪の文字で書かれていた。言語を変換できるだろうと考えたのはさすがだな。それにしても、すごい壮大な作戦だな。まあ、血が流れないなら別にいいか。そういや、千年前の雪辱とはなんだろう。この戦争が第2次と言っていたからきっと千年前にも戦争を仕掛けたのだろう。月の賢者、八意永琳は言ってみればスパイのようなものだろう。この手紙の内容を覚え、字も見えないほどにびりびりに破く。万が一内容をわすれてしまった場合、能力で復元できるように一応その紙屑は残しておく。夜空に浮かぶ、少しだけ白いところが見える月を見上げた。



続く
 
 

 
後書き
17話です。さて、次回からは月面旅行です。 
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