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魔法少女リリカルなのはStrikerS 〜Ex【,Us】〜

作者:白金
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Ver.Ex.1.02

 

 
◇◆◇◆◇◆


 八神はやては第一級警戒態勢の発令により急遽、聖王教会から戻ることになったが、スターズ、ライトニングの予想以上に早い事件解決により、移動中に事後処理を全て終わらせることかできた。

 六課の医務室に着いたときには、すでに先客がいた。

「はやて、おつかれ様」

 先客のフェイト・テスタロッサ・ハラオウンは、はやてとは十年来の親友の一人である。

 その反則的かつ理不尽な容姿に同性として持つ者(ドーン!)に対する持たざる者の代弁者として有に一億回以上、『同性だけど知ったこっちゃねーぜ!』的大義名分の旗印のもと、ピーー的行為に及んでいた。

 同じもう一人の親友、高町なのはも被害者なのは言うまでもない。

 無論はやて個人の脳内趣味で、である。

 親友の脳内でとはいえ、よもや自分の貞操がアレな感じになっているなど知るよしもないフェイトは無垢なほほ笑みをはやてに向けた。

「おつかれやー」

 もうすこし妄想に励みたいところだが、気持ちを仕事モードに切り替える。

「そこに寝とる子がティアナとスバルが見つけて、フェイトちゃんが助けた謎の少年……でええんかな?」

「…………うん」

「魔力反応も……あるみたいやね」

 少し長めの黒髪に、普通に整った顔立ち、身長は高すぎず低くもない、なのはとはやての故郷であり、フェイトにとっては第二の故郷、日本人の平均くらいだろう。

「ていうか、日本人やね」

 ミッドチルダでいうところの第97管理外世界ーーいわゆる地球だが、ここ十年足らずで世界間の交流こそ無いものの、人材でいえばなのはやはやての他にも管理局内にはその血筋を引くものも少なくないし、ミッドチルダでは割りと有名な世界の一つである。

「私もそうだと思う」

 そう言うとフェイトはあるモノをはやてに見せる。

「キャリーケースやね」

「モノレールの実況見分で倒れていた付近に転がってたみたい。間違いなくこの子の持ち物だね」

「それなりに重いね。中はどうやった?」

「…………」

「……どうかしたん?」

 急に黙ってしまうフェイトだったが。少し考えるそぶりを見せ、指先で空中をなぞりウィンドウを展開させる。

「……これって」

「シャーリーが調べた結果、このキャリーケースには指紋認証、声紋認証、電子暗号の三重のセキュリティが施されているんだ」

「ただの旅行用カバンにしては随分なセキュリティやね」

「うん。でも、決定的にしたのは……」

「これ……ウソやろ……」

 フェイトが新しく展開させたウィンドウに、はやての視線は釘付けになってしまう。

「このキャリーケースには透視や解析の類い全般を遮断する魔法技術が施されている」

「せやけど、ただ遮断するだけならーー」

「シャーリーの解析によるとこのキャリーケースに施された魔法技術はどうやら製造段階からみたいなんだ。原料の段階から施したからこそ魔法技術だけを取り除けない構造で、かつ術式の死角も存在しない」

「これ、ホンマに私たちの知ってーー……フェイトちゃん、まさか……」

「並行世界」

「……なのはちゃんとシャマルの見解は」

「同じだった」

「……酷な話やな……」

 管理局における常識の一つとして、特殊次元災害である次元震のせいで別世界からミッドチルダに迷い込んだ者を総称として次元漂流者と定義している。

 その次元漂流者の中には極々稀なケースが存在する。それが、並行世界の住人である。

 並行世界とは、いってしまえば世界に隣接する鏡写しのように似た世界。

 一見、同じように見えるが、辿ってきた歴史や世界情勢などが異なる場合が多い。

 この並行世界の厄介な点は、互いの世界への干渉がごく一部の例外を除き不可能であること。そして、あくまで机上の学問レベルであるが、並行世界は一つではない。

 小難しい理論などは置いておくとして、これらを纏めると、ある解が導かれる。

 次元漂流者に関しては元の世界に戻れるが、並行世界の者は戻れない。

 これが現在、覆ることのない解であり、図式である。 

「あ、はやてちゃんフェイトちゃん、お疲れ様」

「ごめんなさぁい! 解析に思ったより手間取っちゃいましたぁ」

 はやてとフェイトの間に嫌な沈黙が流れる寸前、ちょうど席を外した高町なのは、シャマルが戻ってきた。

「もしかして、並行世界の件、かな……」

 はやてとフェイトの表情で悟ったなのはは前置き無しで切り出した。

「正直、どうしたらええか」

 次元漂流者、とりわけ並行世界からの次元漂流者のメンタルバランスは一歩扱いを間違えば自我の閉鎖や最悪、自殺にまで及ぶのだと、なのはは戦技教導官の先輩に聞いたことがあった。

 経緯は違えど、はやてやフェイトも知っていると、なのはの直感が告げている。

 このまま行けばおそらく、この話は平行線のままだろう。

「まずは、目が覚めて話しを聞いてみるのはどうかな?」

「ふーむぅ……。そうやね、ちょうど興味津々な新人諸君が来たみたいやしね」

 なのはの意図が読めたはやてが、少しわざとらしい素振りで扉に視線を向けたのとほぼ同時。

「「失礼します!」」

 医務室の扉がノックされ、ティアナとスバルが入室してきた。

「あぁ、楽にしてええよ。ていうか、イチイチ敬礼とかいらんよ?」

「い、いえ!規則ですから!」

「ティアと同じくです!」

「……ショックや……なのはちゃん聞いたか!?どぉやら私は、上官に少しくらいフランクに接する部下の未来に手心を加える古くっさい人間やと思われてるみたいやで……」

「八神部隊長!?」

「わわわたーー」

「ティアナにいたっては、なのはちゃんとフェイトちゃんのことはファーストネームで呼ぶのに、私だけは八神ぶたいちょぉーなんて堅ッたい呼び方やし、なんや距離ちゅうか、壁があるなぁ……」

 ニヤニヤ顔なはやてに、タジタジな新人という図式は、わずか数分前の重い空気を見事に反転させることに成功した。

「…………」

 フェイト・テスタロッサ・ハラオウンを除いては。
 

 
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