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久遠の神話

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第百五話 テューポーンその六

「何も変わっていません」
「そうですか」
「私ではあの怪物を倒せません」
 神話の時と同じく、というのだ。
「絶対に」
「しかし上城君は」
「はい、今からです」
「あの怪物に勝って」
「その力を手に入れるのです」
 最後の加藤との闘いに向けてというのだ。
「そうします」
「そうですか、じゃあ」
「私達はその彼をです」
 上城を、というのだ。
「見守りましょう」
「そうして勝つのをですね」
「見守りましょう」
 是非にと話してだ、そしてだった。
 二人は上城とテューポーンの闘いを見守った。二人の横にはスフィンクスもいて共に見守っている。その闘いはというと。
 テューポーンの巨体が動く、そうして。
 両脚、蛇のそれが襲ってきた。これまでの怪物のものとは比較にならない圧倒的な巨大さと威力、それに速さだった。
 上城はその脚をだ、上に跳んでかわした。それと共に。
 宙に浮かんだ、闘いの場をそこに移そうとした。だが。
 その彼にだ、今度はだった。
 巨大な両腕が来た、両腕は暴風と共に彼を殴り飛ばそうとしてきた。一撃でも受ければそれで終わりだった。
 しかしだ、その一撃もだ。
 上城は上に飛びかわした、そうして。
 反撃に移った、その手に持っている剣を一閃させて。
 そこからだ、氷の刃を出してだった。
 異形の巨人を撃つ、だが。
 その氷の刃を受けてもだった。全くだった。
 テューポーンは動じていない、上城はそれを見て言った。
「やっぱりこの攻撃じゃ」
「意味がないわよ」
 スフィンクスがその彼に彼女の場所から言ってきた。
「それでは」
「そうですね」
「普通の攻撃ではね」
「とてもですね」
「適う相手ではないわ」
「そうですよね」
「ただ、ね」
 ここでだ。こうも言ったスフィンクスだった。
「その方は台風よ。それに」
「それに?」
「火山に封じられているわ。冷気を吐く竜の頭もあるけれど」
「それはどういうことですか?」
「この言葉の意味がわかれば」
 スフィンクスは上城に話す。
「貴方は勝つわ」
「そのことをですか」
「そう、わかるかしら」
「それは」
 わからなかった、今の上城には。
 そう話している時にだ、テューポーンの首達がだった。
 伸びてきて襲いかかってきた、その多くの首達をかわしてだ。
 炎や毒、雷といった吐くものをかわした、そのうえで攻撃を仕掛けるが。
 そこでだ、こう言ったのだった。
「首もあるなんて」
「当然よ、その方はね」
「百の竜の頭もですか」
「武器だから」
「だからですか」
「その首にも注意することよ」
 このことを言うのだった、上城は幾度も攻撃、水や冷気のそれを仕掛けるが全く効いている気配はなかった。
 しかしだ、激しい攻防の中でだった。
 ふとだ、上城はテューポーンの攻撃をかわしながら反撃を浴びせつつだ。そうしながらスフィンクスに言ったのだった。 
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