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久遠の神話

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第百四話 最後の戦いの前にその七

「ですから。お姉様にしても」
「その幸せが適って僕達もというのは」
「難しいかも知れません」
「それぞれだからですか」
「私の幸せとお姉様の幸せも違います」
 聡美は自分のことからも言った。
「それもまた」
「銀月さんの幸せはどういったものですか?」
 樹里が聡美にそのことを尋ねた。
「やっぱり銀月さんにも幸せがありますよね」
「はい」
 その通りだとだ、聡美も樹里に答えた。
「私にもあります」
「そうですよね、それじゃあ」
「私の幸せはですね」
「どういったものでしょうか」
「お姉様と。他の方々と」
 聡美は上を見上げた、そして。
 遠いものを見る目になってだ、こう言ったのだった。
「共に。暮らしていきたいのです」
「共にですか」
「はい、そう思っているのですが」
「セレネー女神ともですね」
「そうです。とりわけ」
 セレネー、彼女とだというのだ。
「あの方とはそう思っていますが」
「それがですか」
「どうも。このままでは」
「それが難しいのですね」
「もう二度と共に暮らせないでしょう」
 悲しい顔での言葉だった。顔は正面に戻っていた。
「あの方とは」
「そうなのですか」
「あの方はいとしい人との愛を選ばれました」
「エンディミオンとの」
「ですから」
 それ故にというのだ。
「私はもうお姉様とは」
「そうなのですか」
「仕方ないと言えば仕方ないです」
 やはり遠い目で言う聡美だった。
「あの方も愛を知っておられるので」
「愛、ですか」
「かつては私も何度か愛を求めました」
「オリオン神ですか?」
「はい」 
 樹里の言葉にだ、聡美はこくりと頷いた。
「そうです」
「あの方は」
「運命だったのでしょうか」
 この上なく悲しい顔になって言った聡美だった。
「私とあの方のことは」
「その」
 樹里も言葉がなかった、今は。
「そのことは、すいません」
「お話に出してですか」
「はい、そうしてしまって」
「いいです。あの方とは今も」
「夜になればですね」
「会えますので」
 だからだというのだ。
「彼は星になりました」
「星座ですね」
「私達は今も会っていますので」
「そうですか」
「誰かが言いました」
 ここでこんなことも言った聡美だった。
「私達月の女神の愛は成就しないのです」
「そう言われているんですか」
「そうです、そうしたことを誰かが言っていたとか」
「そういえば銀月さんは」
「そうです、私とアテナ姉様、ヘスティア叔母様は」
 オリンポスの女神達の中で彼女達はというのだ。 
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