ジェネレーション=ミュージック
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第五章
第五章
「話には聴いていたけれど随分だな」
「そう?可愛いじゃない」
ここではお父さんとお母さんの意見が分かれた。
「曲の感じだって」
「可愛いか」
「違うかしら」
「俺はやっぱりな」
その尖らせた口で己の意見を述べる。
「おニャン娘の方がいいな」
「相変わらずおニャン娘好きね」
「何だかんだで曲もよかっただろ?」
また自分の意見を述べるのだった。
「歌い易くてな」
「あの時は素人集団とか随分言われたけれどね」
「確かに歌が下手な娘もいたさ」
お父さんもそれは否定しない。
「けれどな。それ以上にな」
「光る娘もいたってことね」
「そうだろ?結構いただろ」
「国生に城之内に河合に渡辺二人に」
お母さんも結構覚えていた。
「この五人のクリスマスソングは確かによかったわね」
「高井麻巳子ちゃんもよかった」
「そうそう」
二人で思い出に浸りつつ笑顔で話を続ける。
「そのさっきの工藤静香だってね」
「生稲と斉藤もね」
「お父さんずっと生稲晃子のファンだったしね」
「だったしじゃないよ」
今のお母さんの言葉にははっきりとクレームをつける。
「今もだよ。母さんの次に奇麗だったからな」
「あらあら、また行っちゃって」
さりげなくおのろけも入っていた。
「けれど本当に彼女今も奇麗だしな」
「そうだよな。しかしこのモーニング娘。の曲は」
何だかんだで聴き続けているお父さんだった。
「ふざけているのかどうかわからない曲もあるな」
「けれどいいじゃない」
お母さんは今度は美勇伝の曲を聴いていた。やはりハロプロである。
「何かカラオケで歌いたくなるような感じでね」
「カラオケか」
「そう、カラオケ」
お母さんは笑顔で言う。
「どの曲もそうじゃない。カラオケで歌いたくなるわ」
「そうかもな。言われてみればな」
「そんな感じよね」
「ああ」
遂にハロプロを認めたのだった。
「松浦亜弥ちゃんか」
「彼女の曲もいいしね」
「これもカラオケ向きかな」
お父さんは今度はその松浦亜弥の曲を聴きつつ考える顔になった。
「カラオケか」
「お父さんもカラオケ行くでしょ?」
「行っても歌う曲は」
またしても口を尖らせての言葉だった。
「八十年代の」
「けれど。今の曲もいいじゃない」
お母さんの方がこの辺りは柔軟だった。
「違うかしら」
「そういうものか」
「そうよ。私は気に入ったわ」
見れば笑顔になっている。その笑顔でさらに聴くのだった。
「この音楽ね」
「とりあえず聴いてみるか」
お父さんはまだ結論を出さなかった。
「じっくりな」
「ギターでも弾きながらね」
そんな話をしながら二人で今の曲を聴いていく。また軍平も美智代と一緒に八十年代のアイドルの曲も聴いたりした。こうしてそれぞれの年代の曲を交換したうえで聴いて。暫く経って軍平は家のリビングでギターで曲を奏でていた。その曲はというと。
「何だ、チェッカーズか」
「ああ」
リビングの椅子に座ってそこからリビングの隣にある台所のテーブルに座って焼酎をやっているお父さんに対して応える。背を向けた形になっている。
「そうだよ。ちょっとな」
「ONE NIGHT GIGOROだな」
お父さんはリズムを聴いただけですぐに答えてみせた。
「その曲は」
「何だ、わかるのかよ」
「お気に入りの曲だからな」
こう返すお父さんだった。
「それも当然だ」
「そうかよ」
「チェッカーズは中期がいい」
そして今度はこう言った。
「やっぱりな。リズムも歌詞も最高だ」
「まあそうだな」
軍平もお父さんのその意見を認めた。だがそれでも背は向けたままで振り向きもしない。そのままでお父さんに対して言葉を返すのだった。
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