| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

久遠の神話

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第百一話 託すものその一

               久遠の神話
            第百一話  託すもの
 工藤と高橋は二人でだった、一佐に全てを報告した。一佐はそこまで聞いてから自分の前に立つ二人にこう言った。
「そうか、君達はそう考えているのか」
「はい、我々は戦いを降りて」
「彼に任せようと思っています」
 二人は確かな顔で一佐に述べる。
「そして後はです」
「上城君が果たしてくれます」
「それを変えることは出来ないな」
 ここでだ、一佐は二人の顔を見つつ問うた。
「最早」
「戦いの主催者である女神が決めたことですから」
「確かに強引ですが」
「それでもです」
「決まったことですから」
「人間の力は限られてくる」
 ここでだ、こう言った一佐だった。
「神には及ぶ筈がない」
「そうですね、ですから」
「女神さんが決めたことなので」
「それなら仕方がないな」
 確かな顔になってだ、一佐は二人の言葉に頷いた。そのうえで彼等に対してこうしたことを言ったのだった。
「防衛相には私から話しておこう」
「そうしてくれますか」
 工藤が一佐のその言葉に問い返した。
「ここは」
「うむ、とはいっても大臣が何を言われようとな」
「変えようがないですね」
「それに大臣にしてもだ」
 今回の件の実質的な責任者である彼はだ、どう考えているかというと。
「この作戦が無事に終わることを望んでおられるのだ」
「戦いが終わることがですね」
「この無益な戦いが」
「正直アメリカや中国が使おうとしてきては日本政府としては迷惑だ」
 日本政府の本音がここで出た、見事なまでに。
「我が国の政府の考えは何処の国にも永遠に覇権を握って欲しくないのだ」
「スペンサー大尉の様な人が来ることがですね」
「そうしたことが」
「そうだ、そもそも今の日本政府も覇権は望んではいない」
 例えタカ派と呼ばれていようともだ、そうした考えはないというのだ。
「協調は考えていてもな」
「覇権はですね」
「そうしたものは」
「まして何処かの国が永遠に覇権を握るなぞ」
 一佐はこのことは苦々しい顔で言った。
「これ以上日本にとって迷惑なことはない」
「だからですね」
「この戦いが終わって永久に行われなければいいからですね」
「大臣にしても」
「それでいいのですね」
「そうだ、確かに高校生、まだ若い子に任せるのは酷だがな」
 それでもだと言うのだった。
「神様がそう決めたのなら仕方ない」
「それではですね」
「ここは」
「君達は最後の戦いを戦うのだ」
 そうしろというのだった。
「いいな」
「では勝ってきます」
「そうして終わらせてきます」
「生きて帰って来ることだ」
 ここでだ、一佐の言葉が強くなった、二人を見る目もだ。
「これは命令だ、いいな」
「はい、絶対に」
「生きて帰ってきますので」
「その時はだ」
「その時は?」
「その時はといいますと」
「何でも好きなものをご馳走しよう」
 上司としてだ、確かな笑顔で言った一佐だった。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧