東方魔法録~Witches fell in love with him.
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二章 吸血人狼~Are you a werewolf.
21 小悪~Eloim, Essaim,frugativi et appellavi.
ドサドサドサ!
「むきゅ!」
「あーあ。大丈夫?」
乱雑に積み上げられた本がパチュリーめがけて崩れ落ち、本に埋もれたパチュリーは可愛らしい悲鳴をあげた。
俺はパチュリーを発掘するため本を掻き分ける。
「むきゅ~…」
あ、ヤバ。めっちゃめちゃ可愛い。涙目になりながらも目を回してのびている姿は、言い方はキモいが俺の胸にキュンときた。
「うーん。そろそろ本を整理しないと駄目だね」
俺はパチュリーを起こすために手を貸しながら呟いた。
ここ、ヴワル魔法図書館には現在、いつも使っている机と椅子の周りに大量の本が積み上げられている。
俺達が読み散らかした本を棚に戻さずにそのまま積み上げているのが原因なのだが、ついついほったらかして置いたらこのザマだ。
「人手が欲しいなぁ…」
その呟きを聞いたパチュリーは何か思い付いたようで散らかった本の中から漁り始めた。
「あった」
取り出した本は使い魔を召喚する本だった。
「ちょうど司書が欲しいと思っていたとこよ。いい機会だし、召喚してみるわ」
「そういえばここは元々悪魔を召喚する館だったね」
パチュリーは本に書いてある通りにチョークで床に魔方陣を描いて、本を見ながら詠唱した。
「宇宙の果てのどこかにいる、私の僕(しもべ)よ。神聖で、美しく、そして強力な使い魔よ。私は心より求め、訴えるわ。我が導きにゲホゲホゲホ!!」
「無理して長い呪文を詠唱しちゃダメだよ」
どこかで聞いたことのあるような平民を召喚する呪文だなぁと思いながらもパチュリーに薬を渡す。薬のお陰でパチュリーの咳はおさまった。
ふとパチュリーの持っていた本を見るとタイトルに『召喚全集』とかかれていた。
パチュリーから貸してもらい、本を開き、何が書かれているか見てみた。
何々?…
『ふんぐるい むぐるうなふ くとぅぐあ ふぉまるはうと んがあ・ぐあ なふるたぐん いあ! くとぅぐあ!』
『“―――告げる!汝の身は我の下に、我が命運は汝の剣に! 聖杯のよるべに従い、この意、この理に従うのなら―――”―――我に従え! ならばこの命運、汝が剣に預けよう……!』
………名状しがたい何かやどこぞの英雄を召喚してしまいそうな呪文がかかれていたが、俺達が求めるのは司書が勤まる使い魔だ。
それに長い呪文はパチュリーが読みきれないから短い呪文は……あった。
「パチュリー。これにしておきな」
「ん…ええっと。
Eloim, Essaim,frugativi et appellavi.(エロイム エッサイム 我は求め訴えたり)」
ピカッと雷が落ちたような眩い光と共にモクモクと黒い煙が魔方陣からあがる。
段々と煙が晴れてパチュリーが召喚した使い魔の姿が見え始めてきた。
黒く、皮膜があり、伸縮性のありそうでいかにも悪魔を彷彿させる蝙蝠のような翼。
さらさらとしている長い紅色の髪の毛は返り血で染まったのであろう。一体、いくつもの返り血を浴びればそんなに紅く染まるのだろうか。
さらに頭にも小さいが黒い翼が生えている。もはや人の形ですらないのかもしれない。
まあ、ほとんど冗談だが。
そこには可愛らしい美少女が立っていた。さっきの説明を冗談抜きに話すと、レミリアに似た黒い翼が背中に生えていて、髪の毛は長く、紅い。きっと地毛だろう。じゃなかったら染めてるか若しくは本当に……。頭と背中の翼を除けば普通の美少女だ。
「ふぇ?ここは何処ですか?」
「ここはヴワル魔法図書館。私はパチュリー・ノーレッジよ。貴女の名前は?」
「え、えっと…」
どうやら自分が召喚されたことに気付いていないようだった。少々パニクっているみたいだったので助け船を出してやった。
「君はこのパチュリーに召喚されたんだ」
「召喚!?ってことは…私…私は遂に呼び出してもらえたんですね!やったー!」
召喚という言葉に反応して使い魔は俺達のことを忘れて両手をあげて喜んだ。
「あ!し、失礼しました!私にはまだ名前はありません。小悪魔と御呼びください。そして……私を召喚して頂いてありがとうございますぅぅ…」
喜んだり、礼儀正しくなったり泣いたりと忙しいやつだ。召喚されたことで何かあったのだろうか?
「うぅ、私は小悪魔なので力も弱く、なかなかと言うより今まで誰にも呼ばれなかったのですよ~…」
「別に力なんて要らないわ。司書が勤まればいい」
「司書!私、本が好きなんですよ!」
「良かったね。召喚されて。しかもその召喚した理由が司書が欲しいからだって」
「はい!誠心誠意、司書の仕事を頑張ります!パチュリー様と…ええっと…」
「明希、明希・ヘルフィ・水原。よろしくね」
「パチュリー様に明希様。今後ともよろしくお願いします!」
「早速だけど、この本を片付けてくれない?」
「わっかりました!……え?」
威勢よく返事をした小悪魔だが崩れ落ちた本と、何処まで続いているかわからないような広さに、巨大で膨大な本棚を目にしすると、これからの作業の大変さを悟ったのか顔を青ざめさせた。
私は小悪魔。名前はまだありません。パチュリー様に召喚されて只今、司書の仕事を精一杯勤めています!ただ、この図書館は広すぎるのが悩みの種。
主であるパチュリー様は本が好きな魔法使いで、いつも恋人の明希様と一緒に本を読んでいます。その二人に紅茶を入れるのも仕事のうちです。二人は随分と仲がよくてラブラブなカップルで見ているこっちまで幸せな気分になります。キャー!
新しく紅魔館の住人となった私はこの館の持ち主であるレミリア様に紹介されました。凄かったです!悪魔の間で有名なあのスカーレットにお会いできるなんて!オーラというかカリスマみたいなものが滲み出ていました!!そこに痺れる憧れるぅ!!
次に門番と紅魔館の外業務兼、メイドをやっている美鈴さんに会いました。何でも門番と外業務…主に田畑の管理の方が本業でメイドは新しくメイド長があらわれるまでの臨時だそうです。要約すると現在は紅魔館の業務を一人でやっているみたいです。凄いです!ところでメイド長っていつあらわれるのでしょうか?
「私は本の虫~♪虫は虫でも本を食う虫許せない~♪」
ふふ♪本の整理をしながら思わず歌を口ずさんでしました♪
ここは素晴らしい仕事場です!本に囲まれ、凄い人達に囲まれて小悪魔幸せです!本の量は膨大ですがそれだけに整理のしがいがあります!
そんな紅魔館にあるヴワル魔法図書館には不思議なことが一杯で、いくら整理しても棚が足りなくなることが無いんですよね。
あと、他と比べて小さな新刊用の本棚があってですね、その棚は普段は空ですが、気が付くと最低でも一日一冊、多いときには十冊ぐらいの新しい本が入っているんですよ!
逆に本で埋めて新しく本が入らないようにしてみたんですけど、しばらくすると、いつの間にか入れていた本が消えていて新しい本が入っていました。本が消えたことでパチュリー様に怒られてしまいましたが……
パチュリー様や明希様にも聞いて何故かはわからないそうで、気になった私は一回だけその本棚をずーっと見続けて見ました。だけど、まばたきした瞬間に新しい本が入っていたので本が入る瞬間を見るのは諦めました…。
まだまだ不思議がありそうなこの図書館。もしかして本によく出てくるような隠し部屋とかあったりして!
「まさかですよねー。…あれ?この本、未整理ですかね?」
真っ紅な背表紙の本でその本が入っている本棚の中で何だか違和感がします。
私は本の内容を確かめようと本を手に取ろうと本棚から出そうとしたら……
ガチャ!ゴゴゴゴ!
「これって…大発見?……パチュリー様ー!明希様ー!」
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