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久遠の神話

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第百話 加藤との話その四

「自分の為にな」
「生徒の為じゃないんですね」
「ああ、そうだよ」
 そこがだ、普通の教師とそうした教師との決定的な違いだというのだ。
「そういう奴がいるからな」
「あの先生みたいに」
「正直俺そういう奴嫌いだよ」
 教師に限らず、というのだ。
「自分の為に他人を犠牲にする奴ってな」
「生徒が犠牲者ですか」
「そうだろ、だって手前の得点の為に殴られたり蹴られたりするんだからな」
 つまり暴力を振るわれることがというのだ。
「そんなの犠牲だろ」
「確かに、そうなりますね」
「理想論だけれどな」
 この前置きから言った中田だった。
「先生っていうのは生徒を利用するんじゃなくてな」
「生徒の為に何をするかですか」
「それがあるべき姿だろ」
「理想論でもですね」
「そうだよ。そんな生徒が自分の思い通りにならないからって言って殴ったり蹴ったりとかな」
「あってはならないですよね」
「絶対にな」
 口を尖らせて言う中田だった。
「そりゃ生徒は子供だし叱ることもあるさ」
「それと暴力は違うんですね」
「悪いことをして怒られるのは当然だよ」
 このことはいいというのだ。
「それはな。けれどな」
「自分の思い通りにならない生徒に暴力を振るってはいけないですか」
「そういう奴に限って滅茶苦茶やるんだよ」
 そうした暴力を振るうというのだ。
「体罰ってあるだろ」
「はい」
「俺は体罰も嫌いだけれどな」
「それと暴力はまた違うんですね」
「そうだよ、暴力は全然違うんだよ」
 体罰と、というのだ。
「例えば動きが悪いって言って」
「あの先生みたいにですね」
「生徒を何度も何度も殴るとかないんだよ」
「普通はまずないですよね」
「床で背負投とかもな」
 柔道の技だ、言うまでもなく柔道の技は畳の上でしなければならないのは危険だからである。床の上でなぞしては。
「そんなの問題外だよ」
「文字通りの暴力ですね」
「暴力を振るう奴はヤクザだよ」
 まさにそう言うに相応しい輩だというのだ。
「教師とヤクザはまた違うだろ」
「はい、ヤクザはヤクザですね」
「暴力はヤクザやゴロツキが振るうものだよ」
「学校の先生がすることじゃないですね」
「まともな人間だとな」
 つまり学校の教師の中にはそうしたならず者も混ざっているのだ。質の悪い人間が多いのもまた日本の教師の世界なのだ。
「俺もそんなことはしないよ」
「暴力はそれだけ人としてやってはいけないことですね」
「そうなんだよ。しかもあいつはな」
 あの暴力教師はというのだ。
「機嫌がいい時は悪い動きでも怒らなかったんだよ」
「機嫌が悪い時にですか」
「そうした暴力を振るったんだよ」
「それもよくないですよね」
「というか床で背負投なんてな」
「滅茶苦茶危ないですよね」
 このことについては驚いている顔で言った上城だった。 
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