迷子の果てに何を見る
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第四十二話
前書き
オレって教師として向いてないのか?
それともあいつらが特別駄目なのか?
教師として生徒を疑う時点で駄目だな。
ああ、自信をなくす。
どうしたんだキティ?
飲み過ぎ?
仕方ないだろう。今日位は好きなだけ飲ませてくれ。
すまん。
byレイト
side リーネ
「何か言い残す事は有るかしら」
「やっぱり足らん?」
先日、アリスが依頼を受けたので詳細を詰めに来たのだけれど安い金額で私たちを使おうとか巫山戯ているのかしら。
「そうねぇ、これが一人当たりなら、まあ受けてあげる」
「何人かのう」
「最低でも私と茶々丸は参加ね。どういうシナリオにするかによっては2、3人追加位かしら」
「むう、一応シナリオはこっちで考えてあるのだが」
茄子から渡された台本を読む。学園長辞めて脚本家でもすれば良いのに。今よりはまともでしょう。
「これなら後は襲われる役が居れば良いわね。アリスか刹那に変装させれば問題は無いわね。個人的にはアリスの方が良いけど刹那に任せるわ」
「何故じゃね」
「アリスの血の方がおいしいのよ。何退いてるのよ、吸血鬼としては当然でしょ」
「いや、真祖なんじゃから血を吸わんでも」
「生きれるけど私たちに取っては嗜好品と言った所かしら。まあ必要が有れば身内でなんとかしてるからそっちに迷惑はかけないわよ」
「興味本意なんじゃがどんな感じなのじゃ?」
どんな感じねぇ。そうね例えるなら。
「お酒みたいなものかしら。必要は無いけど快楽を導く事が出来るもの。真祖でも飲み過ぎれば堕ちるわね」
まあ、飲み過ぎなければ良いだけなんだけど。
「それは」
「今まで問題になっていないんだから管理はバッチリよ。お母様が堕ちてない限りは大丈夫よ」
「なぜじゃ?」
「お母様はお父様からしか血を吸わないの。けど依存性と中毒性はお父様の血が一番強いの。一度だけ飲ませてもらったけど凄かったわ。子供にウォッカを一気飲みさせるみたいな感じだけどまた飲みたくなる様な麻薬よ。たぶんお父様は精気を糧にする生物に取っては傾国の美女の様な存在ね」
「精気?」
「知らないの?吸血鬼は血を飲まないと生きれない訳じゃないのよ。他の生物と違って時自分で精気を作れないから他者から奪う事で生きているのよ。吸血鬼はその奪う方法が吸血というだけなのよ。お父様が言うには魔法的に外部から精気を得る方法を見つければ吸血を行なわなくても生きていけるらしいわ。まだ見つかってないけど」
まだというだけで何れは見つかるのだろう。ひょっとしたら見つけているけど誰にも教えてないのかしら。
「まあ、どうでも良いけど」
「味云々の好みとかもそれぞれなのか」
「そうよ、実際の所、血の味はみんな好きじゃないわ。血の中に含まれる精気の味がおいしいの。私的にはアリスの濃くて凝縮された様な味わいが好きなの。その次にチーちゃんで刹那、最後に木乃香かしら。零樹は刹那で木乃香、チーちゃん、アリスの順ね。木乃香のはあまり飲みたいとは思わないけど」
「なぜかのう」
「濃い上に微妙に神聖みたいで相性が悪いのよ。零樹はお父様に似ているせいか神聖への抵抗力が有るからちょうど良い位の刺激らしいわね」
「ふむ」
そんな雑談をしていると予鈴のチャイムが鳴った。
「それじゃあ、新学年になってから行動に移るから今のうちから噂を流布しときなさいよ。『読むだけで賢くなる魔法の本』とか『成績の悪いクラスは解散』とか『よっぽど成績の悪い人は小学校からやり直し』みたいにね。引っかかるバカはあの野菜位でしょうけど」
「ぐっ」
「前金は要らないわ。ただし報酬はちゃんと用意しておきなさいよ」
side out
side レイト
「さて、期末テストまで残り1週間を切っているんだがちゃんと勉強をしているか」
何人かが顔を反らす。バカレンジャーにチア部、鳴滝姉妹か。
「今顔を反らした奴らは特別課題を明日渡すからテストまでにちゃんとやってくる様に。連絡は以上だ。何かいう事が有る者は居るか?」
「はいは~い、トトカルチョ今日から受け付けるからよろしく~」
「朝倉、いつも通りに300ぶち込んどけ」
「天流先生が2-Aに300っと」
「あの、天流先生トトカルチョってなんですか」
「スプリングフィールド先生は初めてか。ふむ簡単に説明するとこの学園ではテストごとにクラス平均が発表されて順位が決められる。それでどこが1位かを当てる公認の賭博が行なわれている」
「賭博!?」
「公認だと言っただろう。先生方も参加されているしお金ではなく食券を賭けているから法律的にもグレーゾーンだ」
どうせ麻帆良は治外法権だから法律なんて有って無い様なものだ。
「そ、そうなんですか」
「ああ、そうだ。最もこの学園だからこそ有るだけで他の所では絶対にないがな。まあ軽い気持ちで参加してみるのも良いんじゃないか」
「そうですね。えっと食券って一枚いくらなんですか?」
「おっ、ネギ君も参加ね。一枚500円だよ」
「500円、あれ、今天流先生300枚って」
「15万だな」
「15万ってそんなに使って大丈夫なんですか!?」
「はっはっは、給料の半分だ」
『『『ええええええええええええ~~~~~~~~~』』』
身内であるリーネ達を除いた全員の叫び声が上がる。
「何、それだけでお前達が少しでもやる気を見せてくれるなら安いものだ」
実際、蓄えと比べれば塵の様な額だしな。必要なら魔法具を1個売れば余裕で取り返せる。
「ちょっと待って、じゃあ先生って今までで」
「15万*11で165万程使ってるな」
それでも安い、軍に適当な新呪文を売りつければこれの10倍強はするからな。
「あんまり気負わなくて良いぞ。これはオレが好きでやってるんだからな」
先程目を反らしたり成績があまり良くない者がいたたまれない気持ちになっているみたいだが言葉の通りの事を思っているからオレは悪くない。どう受け取るかは本人次第だ。
「それでスプリングフィールド先生何枚をどのクラスに賭けるんだ」
「えっと2-Aに10枚でお願いします」
「だとよ朝倉。スプリングフィールド先生もなけなしのお金を賭けてくれているんだ。期待には答えてやれよ。他に何か言っておきたい事が有る者は?居ないならこれでHRは終わりだ」
野菜を連れて職員室に戻ると源先生が封筒を持ってやってきた。
「ネギ先生、学園長先生がこれをあなたにって」
ああ、最終課題か。原作より早いが誤差の範囲内だろう。
さて、野菜はどういう行動をとるか見させてもらうぞ。
「お前ら、オレをそんなに怒らせたいのか」
今、オレの目の前にはバカレンジャーと図書館探検部の2人、それと薬味が正座をしている。全員頭にはトリプルアイスクリーム付きで。
今日はテスト前の金曜日、時間は22時、場所は図書館島前の広場だ。原作と違って英単語野球拳なるものは開催されなかったので油断していたが少し前に木乃香から電話がかかってきたのでここではなく地下1階から地下2階に繋がる階段で待機していたのだ。どこから入ってくるのかは分からなかったが地下1階から地下2階に行く階段は一つしか無い。よってそこで待っていたのだが案の定だった。そして一人ずつ後ろから攫いトリプルアイスクリームをくれてやった。その後全員を引き連れて地上に戻り正座させているのだ。
「質問に答える以外に喋る事は許さんぞ。まず侵入しようとしていたのはお前達で全員だな」
「はい」
「次にここに侵入しようと言い出したのは誰だ」
「私です」
「綾瀬か、一応綾瀬がリーダーだったと判断するが間違いないな」
「はいです」
「目的はなんだ」
「読むだけで賢くなれる本があるという噂が有りましてそれを探そうと思い」
頭が痛い、そして教師としての自信を無くしそうになる。まさか信じるバカがまだ居た事が。
「オレは自分が情けなくなる。まさか魔法の本なんて不確かの物に頼ってテストを乗り切ろうと考えている生徒が居るなんて」
「うっ、すみません」
「なんで魔法の本なんて物に頼ろうとしたんだ。赤点なら回避できる様にちゃんと補習を行なう予定じゃないか。そんなに楽をしたいのか」
「それが平均で1位にならないとネギ先生がクビになると」
「そんな事有るはず無いだろうが」
「え、そうなんですか」
何を嬉しそうな顔をしてやがるんだこの野菜は。
「元から採用されてないんだからな」
「えっ!?」
「何を当たり前な事に驚いてるんだ」
「そんな、だって」
「採用されているならお前は今もテスト製作に追われているし、会議にも呼ばれている。今は全部オレと高畑先生が肩代わりしている状況なんだよ。だが今回の件でお前の正式採用はなくなったと思え。というよりお前は本当に教師を目指す気があるのか。自分の目的の為に生徒を利用して恥ずかしくないのか」
「で、でも」
「デモもテロも有るか。正直に言ってやろう。今回の件でオレは心底お前を見損なった。お前に生徒に悪影響しかもたらさない」
「天流先生、それは言い過ぎです」
神楽坂が野菜を庇おうとする。だがそれがどうした。
「不法侵入」
「「?」」
「オレが止めなければ禁止区域侵入、最終的には書物の無断持ち出し。窃盗だな」
ここまで言ってようやく理解したのだろう。
「お前達が行なおうとしていたのは犯罪行為なんだよ。そしてお前は止めるどころか一緒に参加しているんだからな」
「ですが我々は図書館探検部で」
「図書館探検部の部則によると、夜間時の活動は顧問の同行が原則と記されている。ルール違反だな」
態々職員室に影分身を送って調べたからな。くっくっく、逃げ道など一切無いのだよ。
「それから教えておいてやるが禁止区域は本気で不味い罠が存在しているから禁止区域になっているんだよ。油断すれば死人が出る様な罠がな。それで死人が出ればとりあえず図書館島は閉鎖、または取り壊しだな」
「うっ」
「今回はオレが止めたから未遂だが、無断外出に不法侵入で反省文5枚をテスト明けに提出しろ。それと赤点補習にも参加、それが罰だ。以上だ、解散」
「あの僕は」
「お前の事など知らん。もう面倒を見るつもりは一切無い。荷物を纏めて国に帰れ」
まだ何かを言っているみたいだが全て無視して学園長室に向かう。
そして扉を蹴破り辞表を叩き付ける。
「じゃあな」
「いきなり辞表などどうしたのじゃ」
「もうあのガキの面倒を見るのはごめんだ」
いまさっきまで起こっていた事や今までのあいつの行動を全て証拠付きで説明する。
「オレを取るかあのガキを取るのかを選ばせる気だったがそのまま選ばずにずるずると利用されそうだからな。思い切ってオレが辞職する」
「そんないきなり」
「オレの教師としてのプライドをここまでボロボロにして宣戦布告されてないだけありがたく思え。一応今年度までは教師としていてやるがそれ以降は一切知らん」
それだけを言い学園長室をあとにする。
そしてテストの結果は3位、頑張った方だ。今まで半分より下だったのが3位まで上がったのだから十分だ。ある程度の払い戻しがあったのでそれを使って打ち上げパーティーをさせた。オレは書類整理などで忙しかったので参加しなかったが。
そして終業式が終わり2-Aで最後の、オレの麻帆良での最後のHRが始まる。
全員、オレの雰囲気が違う事に気がついているのか誰一人として騒いだりしていなかった。
「さて、あとは成績表を返せばそれで春休みに突入なんだが君たちに伝えなければならない事が有る。今年度を持ってオレは教師を辞める事になった」
「どうしてなんですか」
一番最初に反応したのはタカミチだった。
オレが辞職する事を知っているのは学園長と新田先生と家族だけだ。
「テスト前の金曜日だった。ある生徒から電話がかかってきた。内容は図書館島に無断で侵入しようとしている生徒が居ると。オレはすぐに現場に向かった。連絡通りそこには無断侵入を行なった生徒と教育実習生が居た」
名前は一切出していないが誰かは分かるだろう。
「直ぐさま全員を捕まえて説教を行ない、その後学園長に報告した。そしてオレはその教育実習生に何らかの罰を求めたが学園長は首を縦に振らなかった。その実習生は他にも不祥事を起こしているがそれはすべて内々に処理されていた。それらも含めて罰を与えないというのならオレは辞職すると辞表を叩き付けた所それが受理された。ただそれだけの事だ」
「先生はこれからどうするつもりなんですか」
「蓄えはあるし雑貨屋の方で暮らしていく分には問題は無いが娘達の卒業を機に麻帆良から引っ越す予定だ。それまでは旧友に会いに行ったりしてるが基本的には店の方に居るから何か相談事があるなら来ると良い」
「先生あの、その」
切っ掛けとなってしまった生徒達が何か言いたそうにしているがそれを手で制する。
「これはオレが決めた事だ。その結果に後悔は……ないが、お前達の卒業を担任として見届けてやれないのは残念だ」
何人か涙ぐんでいる生徒が居る。オレは彼女達に教師として認められていたのだろう。ならそれで十分に満たされる。
「さて、これからオレの最後の仕事を始める。呼ばれた奴から成績表を取りにくる様に」
出席順に名前を呼び成績表と言葉を贈っていく。バカレンジャーや図書館探検部のメンバーは謝罪してきたのでちゃんと受け入れてやる、だけどお前達だけが悪い訳ではないとちゃんと理解させる。
「最後だ。アリス・アーデルハイト」
「はい」
「半年しか教える事が出来なかったが君は優秀な生徒だった。これからも頑張ってくれ」
「ええ、もちろんです」
成績表を手渡し席に戻るのを待つ。
「これで教師としての仕事は全て終わった。日直、号令」
「起立」
ああ、今日はリーネだったか。毅然としてますますキティに似てきたな。
「礼」
『先生、今までありがとうございました』
「こちらこそ今までありがとう」
深く一礼をしてオレは教室から出て、職員室に向かう。
「天流先生、教師を辞めるって本当なんですか」
職員室に入ると既に情報が回ってきたのか殆どの先生に囲まれる。
囲んでいない先生は学園長側の先生達だ。
「ええ、私はこの学園で教師をするつもりはもうありません」
きっぱりと言い切る。問題児が多くて教えがいのある学園ではあるがトップが教育者として最低ではどうしようもない。
「急ではありますが学園長も既に了承し、手続きなども終わっています。後任は学園長が決定すると思います」
どうせネギを担任にするつもりだろう。だが思い通りにいくかな?
布石は既に打ってある。あとは仕掛けが動くのを待つだけだ。
こうして多くの生徒と教師の方に惜しまれながらオレの麻帆良での教師生活は幕を閉じた。
だがオレも予想がつかなかった事が起こった。
side out
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