ソードアート・オンライン 〜槍剣使いの能力共有〜
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閑話ー聖槍と聖剣の英雄ー
70.剣技連携
前書き
第70話投稿!!
聖剣《エクスキャリバー》入手クエストに向かったキリトら
そこで知らされる衝撃のクエスト内容とは!?
《湖の女王》ウルズーー彼女の話によると《ヨツンヘイム》の下層の氷の国《ニブルヘイム》の王スリュム配下の《霧の巨人族》が《ウルズの泉》に大氷塊に居城《スリュムヘイム》を築き、ウルズたちの眷属を皆殺しにし、スリュムヘイムをアルヴヘイムまで浮上させるのが目的らしい。
俺たちは、世界樹の崩壊を阻止するべく、巨城《スリュムヘイム》へとのりこんだのだった。
「ヤバイよお兄ちゃん、シュウくん、金色のほう、物理耐性が高すぎる」
リーファが早口で囁いた。
頷き状況を対処しようとするが、先に《金色のほう》が途轍もなく巨大なバトルアックスを高々と振りかざした。
「衝撃波攻撃二秒前! 一、ゼロ!」
キリトの頭に乗るユイが、大声を振り絞る。カウントに合わせて、前衛の俺、キリト、クライン、中衛のリズ、シリカ、リーファが大きく飛ぶ。
振り下ろされた斧は、途轍もない衝撃波を生み出す。
氷の居城《スリュムヘイム》に突入して、二十分が経過した。
第一層の単眼巨人型ボス、サイクロプスを倒し、第二層を駆け抜けて、ボス部屋まで到達した。
そこにいたのが、今戦っているボス。牛頭人身《ミノタウロス》型の大邪神。それが二体。全身真っ黒、全身金ぴかの二体がバトルアックスを持っている。
黒が魔法耐性が、金が物理耐性がとんでもなく高い設定になっている。
ならば、黒を集中攻撃して金をあとでじっくり潰す作戦でいけばいいのだが、黒のHPが危機に陥ると金が助けに来て、その間に黒が回復するというなんとも悪循環なのだ。
「キリトくん、今のペースだと、あと百五十秒でMPが切れる!」
後ろからアスナの叫び声が聞こえ、る。
このままいけば、パーティーの壊滅は真逃れない。
あの世界ならすぐに撤退するとこだが、ALOはデスゲームではない。たとえカーディナル・システムがアルヴヘイム全土を焼きつくそうと、俺たちが成すことは《ゲームを楽しむ》ことだ。それは、自分や仲間を信じること。
「みんな、こうなったら、できることは一つだ!」
金ミノタウロスの斧振り回しの攻撃を避けた俺たちにキリトの指示がとぶ。
「いちかばちか、金色を、ソードスキルの集中攻撃で倒し切るしかない!」
物理耐性がある金ミノタウロスも新たにアップデートで導入された《属性ダメージの追加》されたソードスキルならダメージが徹るはずだ。
だが、ソードスキルには、魔法攻撃と違って技後硬直時間がある。その時間にバトルアックスの攻撃でも直撃すれば一溜まりもないだろう。
しかしキリトの言葉に俺は、笑みがこぼれる。
「その言葉を待ってたぜ、キリト!」
「うっしゃァ! そのひと言を待ってたぜキリの字!」
クラインとリーファが愛刀をかまえる。背後のリズがメイスを、シリカがダガーを握り直す気配を感じる。
「シリカ、カウントで《泡》頼む! ーー二、一、今!」
シリカが叫ぶ。
「ピナ、《バブルブレス》!」
宙を滑った泡が、バトルアックスを振り回そうとする金牛の前で弾けた。魔法耐性の低い牛なら、一瞬でも動きを止められるはずだ。
「ゴー!」
キリトの声に合わせて、アスナを除く全員の武器にライト・エフェクトが眩く迸る。
《ユニークスキル》
浮遊城アインクラッドに存在したスキル。
それらは、最強ギルド血盟騎士団のリーダー、聖騎士が持つ、絶対不滅の十字盾を掲げ、攻防自在の剣技を操る、《神聖剣》。ソロで最前線を駆け抜けた《黒の剣士》が持つ、二本の剣で連続攻撃を操る、《二刀流》。
そして、俺が操る、《手刀術》。
他にも幾つものユニークスキルが存在していただろう。
《ユニークスキル》は、それ一つ一つがとてつもない力を持ち、ゲームバランスさえも崩しかねないスキルだ。
それをヒースクリフ・茅場晶彦だけが持っているならわかるがそれを俺たちまでもが持っているのは、なぜなのだろう。
そんなことをしなければ、七十五層という四分の三地点で終焉を迎えることはなかった。
この世界では、《手刀術》が《ユニークスキル》ではなく通常スキルとして誰もが使うことができる。
だが、俺はこの世界で《手刀術》を使うことが心のどこかで躊躇ってしまう。
《手刀術》をもっと早く持っていれば、もっと多くの人を守れたかもしれない。
だが、反して俺は、《手刀術》を持っていながら、あの時、キリトを守ることさえもできなかった。
この二つの反する感情が俺に《手刀術》を使わせるのを躊躇わせる。
だが、今だけは、躊躇いを振り切ってゲームを行う。
ピナの《バブルブレス》によって大技が潰された瞬間に金牛に正面から俺とキリト、右からクライン、左からリーファ、さらにその左右からリズとシリカが一斉に突撃。
「う……おおッ!」
口々に吠えながら、それぞれの最大級ソードスキルを放つ。クラインの刃が炎に包まれて暴れ、リーファの長剣が疾風を巻き起こし閃き、シリカの短剣が水飛沫を散らし、リズのメイスが雷光放つ。更に後方から、氷の矢が立て続けに飛来し、正確に鼻頭を貫く。
俺とキリトは、一瞬顔を見合わせて同時に突進する。
両手の指先を刃の如くまっすぐ伸ばし、両腕が黄金の閃光を纏う。
久しぶりに味わった感覚。それはどこか懐かしさを感じさせるような輝きだった。
手刀の起動中にキリトの右手の剣がオレンジ色の輝きを纏いながら突進する。
高速五連突きから斬り下ろし、斬り上げ、そして全力の上段斬り。
片手剣八連撃技《ハウリング・オクターブ》物理四割、火炎六割
キリトの大技が決まった瞬間に左の手刀が黄金の輝きを増して左腕を動かす。
手刀五連撃技《五連星》物理五割、聖五割
星を描くように手刀の刃が金牛を切り裂く。
このままいけばスキルディレイが発生してしまう。だが、俺が得意とする技後硬直が起きる前にスキルとスキルの合間をくぐり抜け、右腕を技後硬直が起きる前に動かす。
右腕を地面と垂直にし、膝を曲げる。右の手刀が黄金からブルーの光を纏う。
手刀縦剣技《上波烈》物理六割、氷四割
下から上へと振り上げられた右の手刀が牛頭巨人の腹を深く抉る。
キリトの右の剣も腹部を抉る。
孤を描く水平斬り、上向きに垂直斬り、続けて下向きに垂直斬り。
片手剣重三連撃技《サベージ・フルクラム》物理五割、氷五割
キリトも俺同様に技後硬直が起きる前に右のスキルと左のスキルを繋げたのだ。
キリトはとどめの一撃を繰り出そうと動き出す。俺も同時に動く。
俺もキリトがこのシステム外スキルを使い出した時には、正直驚いた。
だが、正確に言えば、俺のスキルとキリトのスキルは同じように見えて違うもの。いうならばキリトが正当で俺が邪道というような形になっている。
そして俺が行う邪道のスキル。成功確率は少ないがここで決めなければならない。二つのソードスキルを繋げる今までとは違う新たなシステム外スキル。
一から一ではなく……一から二へと創り出す新たなるスキル。
「く……おッ!」
キリトの刃が水色に輝いた。バックモーションの少ない垂直斬りから、上下のコンビネーション、そして全力の上段斬り。
片手剣四連撃技《バーチカル・スクエア》
すでにキリトの斬撃数は唯に十五は超えているだろう。
キリトが繋いだ一瞬の隙に右と左の手刀を次のモーションへと移行させる。
その間にキリトは、自分ではほぼ無理と言っていた四回目のスキルへと繋ごうとしていた。クラインたちも二回目のソードスキルを起動していた。
キリトの左手の剣が、深紅のライトエフェクトを纏う。ジェットエンジンの轟音とともにキリトの突進。
片手剣重単発技《ヴォーパル・ストライク》物理三割、炎三割、闇四割
途轍もない衝撃音とともに激しく金ミノタウロスがノックバックする。
それとともにキリト、クラインたちが長いスキルディレイに入る。
金ミノタウロスのHPゲージは、真っ赤に染まる。
巨大な角の牛頭はニヤリと笑った。敵が先にディレイから回復する。
だが、俺のみソードスキルは今だに起動していない。そういうよりかは、スキルが起動していながらそれを無理矢理止めている。
だが、この瞬間に止めていたソードスキルを一気に解き放つ。
黄金を纏っていた両の刃は爆炎を纏い両腕を鳳凰の翼のように広げ、突進する。
二手刀流上位突進連技《鳳凰刃》炎八割、物理二割
爆炎の刃が金牛に向けて突進する。燃え盛る刃が巨体の腹部を貫き、連続的に高速の突進を繰り返す。
一撃一撃が金牛の腹部を深々と突き刺していく。炎属性を纏った手刀は同時に突進する毎に火力を与える。
最後の一撃が貫く瞬間に俺の身体は、爆炎に完全に包み込まれる。
それとともに金ミノタウロスのHPゲージは全て失われた。
もう一方の黒ミノタウロスがHPを全快させたところで俺以外の硬直の解けた七人が一斉に視線を向ける。
「……おーし、牛野郎、そこで正座」
その後、俺たちは黒ミノタウロスの邪神を片付けた。だが、トドメを刺したクラインは、ドロップには目もくれずにぐるりと振り向き叫んだ。
「おらキリ公! シュウ! オメエらなんだよさっきのは!?」
その言葉に俺とキリトは顔を見合わせた。多分、先ほどの手刀と片手剣のソードスキル連携攻撃を指しているのだろう。
面倒くさそうな顔を作ってキリトが言う。
「……言わなきゃダメか?」
「ったりめえだ! みたことねえぞあんなの!」
「いやいや、お前ら見たことあるだろ」
俺の言葉にクラインは、そんなことない、と言うような顔を見せてくる。
ついでということで、キリトの代わりに答える。
「いや、SAOのときにも俺が使ってただろ。システム外スキル《スキルコネクト》だよ」
おー、という声がリズ、シリカ、シノンの口から流れるなか、不意にアスナが唸った。
「う……なんかわたし今、すっごいデジャブったよ……」
「気のせいだろう」
キリトがアスナの背中を叩き声を張った。
「さあ、のんびり話してる余裕はないぜ。リーファ、残り時間はどれくらいだ?」
「あ、うん」
リーファが首に下げられたメダリオンを持ち上げた。これはウルズから授けられた宝石だ。
「……今のペースのままだと、一時間はあっても二時間はなさそう」
「そうか。ーーユイ、このダンジョンは全四層構造だったよな?」
キリトの頭に乗った小妖精が答える。
「ええ、三層の面積は二層の七割程度、四層はほとんどボス部屋だけです」
「ありがとう」
第三層は上の二フロアに比べると明らかに狭かった。
二回の中ボスを挟んで、俺たちはわずか十八分で第三層のフロアぼす部屋まで到達した。そこにいたのは、上層のボスたちの二倍近い体躯の長い下半身の左右に十本の足を生やした大変気色悪い巨人だった。だが、物理耐性がそれほどなかったが、タゲを取っていた男三人が何度もバカ高い攻撃力に死にかけた。
しかしそれで、女子たちががんばって巨人の足を全部そぎ落として動けなくなったところを俺とキリトで仕留めた。このまま四層に行き、ボス部屋の奥の通路に踏み込んだ俺たちの眼の前にそれは飛び込んできた。
長細い氷柱で作られた檻。
そこに倒れているのは人。
肌は、粉雪のように白い。流れる髪はブラウン・ゴールド。胸部がボリュームは、言ってはいけないがこの場の五人を圧倒している女性プレーヤー。
「お願い……。私を……ここから、だして…………」
ふらり、と氷の檻に吸い寄せられる刀使いの、後ろ頭から垂れるバンダナの尻尾をキリトが掴み、さらに俺が頭を掴み地面に叩きつけた。
「罠だ」
「罠よ」
「罠だね」
「罠だろ」
キリト、シノン、リズの後に俺は声を出す。
倒れた身体を起こしながらがっかりしたような表情で頭を掻いた。
「お、おう……罠、だよな。……罠、かな?」
往生際の悪いクラインに、キリトがユイに訊ねる。
「NPCです。ウルズさんと同じく、言語エンジンモジュールに接続しています。ですが、一点だけ違いが。この人は、HPゲージがイネーブルです」
つまり通常のNPCならば攻撃しようとダメージ判定はされず、ダメージも受けない。だが、護衛クエストならそれは別だが、この場で考えられる最悪の場合は……
「罠だよ」
「罠ですね」
「罠だと思う」
アスナ、シリカ、リーファも口を揃える。
複雑な表情で固まるクラインの肩をキリトが叩き、やや早口で言った。
「もちろん罠じゃないかもしれないけど、今はトライ&エラーしてる余裕はないんだ。一秒でも早く、スリュムの所まで辿り着かないと」
「お……おう、うむ、まあ、そうだよな、うん」
クラインが檻から視線を外し、奥の階段に数歩向かったとき、再び声がする。
「……お願い……誰か…………」
ここで彼女を助ければ、護衛任務もしくは、大詰めで裏切られる。そのどちらにしても俺たちのリスクでしかない。通常のクエスト中ならリスクを背負うのも苦ではないが、今は少し状況が違う。
それでもクラインは突如として足を止めて両手で刀を握りしめて低い声が押し出される。
「……罠だよな。罠だ、解ってる。ーーでも、罠でもよ。罠だと解っていてもよ……」
そこまでの言葉を聞いて止める気にはならなかった。
「テメェが助けてぇならそうしろよな。一人や二人増えようが対したことねぇだろ? なっ、みんな」
女性陣の顔を見るが呆れたというような顔を俺とクラインを見ている。キリトは、呆れたという顔と好きにしろという顔が入り混じったような顔をしていた。
「ありがとよ、シュウ! この恩は、いつか返すぜ!」
クラインは勢い良く振り向き、氷の檻へと駆け戻って行った。
後書き
更新が遅くなってしまいすみません。
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