オズのモジャボロ
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第一幕その六
「オズの国も変わるのよ」
「中華料理もですね」
「そう、食べられる様になったのよ」
こう神宝にお話するのです。
「オズの国のお料理はアメリカのお料理だから」
「アメリカは色々な国から人が来ているからね」
アメリカ人のジョージの言葉です。
「だからこうしてね」
「そうなのよ、色々な国のお料理が食べられるのよ」
「ひょっとしてだけれど」
神宝は見事な広東料理を前にしてふとこう言いました。
「中華街もあるかな」
「中国の町並みね」
「うん、世界のあちこちにあるんだけれどね」
「オズの国にあるかどうかね」
「あるのかな、オズの国には」
神宝のお国の人達が世界各国に移住した時に作るそうした場所がだというのです。
「中華街は」
「オズの国には中国人はいないわよ」
ドロシーがこうお話します。
「私達からもうオズの国に入った人達はいないから。貴方達を除いてね」
「じゃあ中華街は」
「中華街は中国人がいて出来る場所よね」
「はい」
このことは言うまでもありません、街は人が作るものです。中華街もそのことは同じで中国人がいて作るものですから。神宝も確かな顔で頷いて答えます。
「そうです」
「この国には普通の方法では人が入って来られないからなのよ」
「中国人も来られなくて」
「そう、だから中華街はないのよ」
「じゃあ僕はこの国にいる唯一の中国人なんですね」
「そうね、そのことはね」
どうかとです、ドロシーは他の四人も見て言いました。
「皆同じよ」
「あれっ、ドロシーやモジャボロさんはアメリカ人ですよね」
ジョージはドロシーの今の言葉にきょとんとなって返しました。
「そうですよね」
「生まれはそうでもね」
「今ハなんですか」
「そう、オズの国の人間だから」
だからだというのです。
「アメリカ人じゃないのよ」
「国籍はオズの国なんですね」
「ヘンリー叔父さんとエム叔母さんもよ」
ドロシーを育ててくれたお二人もだというのです。
「一緒よ」
「そうだったんですね」
「そう、皆もうオズの国の人間よ」
そうなったというのです。
「私達は皆ね」
「じゃあオズの国にいるアメリカ人は僕だけなんですね」
「そうよ、貴方もね」
「そうだったんですか」
「オズの国に唯一の中国人、アメリカ人でね」
さらに言うドロシーでした。
「日本人、ロシア人、ブラジル人なのよ」
「私達もなんですね」
「アメリカには日系人もいるわね」
「はい」
今度は恵梨香がドロシーに答えます、皆いただきますをしてから中華料理を食べています。どのお料理もとても美味しいです。
「そうです、アメリカには日本から行った人達もいます」
「それで和食はあるけれど」
「日本人は私だけなんですね」
「そうなの、貴女だけなのよ」
「そうなんですね」
「皆唯一の存在よ」
ここでこの言葉がドロシーの口から出ました。
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