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ペルなの

作者:御門
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4.再会

 
前書き
ハム子の名前のアイディアを下さった皆様、本当にありがとうございました。
名前はきちんと公平アミダくじに任せ決めさせて頂きました。
決して優柔不断で決められなかったわけでは無いのです、はい 

 
「無海朱音、私立月光館学園高等部二年。これが本当なら彼女は次元漂流者ということになりますね」

「そうやねぇ。まぁ、あの娘の証言が本当かどうかを確認せな話しは進まんのやけど、本当やとしたら色々と厄介そうやなぁ」

「彼女の持つ学生証には2009年とありました。ですが、現在の地球の暦では……」

「2015年やね。六年も食い違ってると、流石に漂流中の誤差では通用せえへんなぁ」

「それだけじゃないですよー。彼女が持っていた薙刀を念の為、シャーリーに検査して貰ったらあの薙刀に使われてる素材は時空管理局のデータベースには無い物質で、下手したらアルカンシェルの一撃にも耐えるかもしれないらしいです」

「んなもん持ってる奴が普通の学生な訳ねぇって。ぜってぇ何か隠してるよ」

「決め付けは良くないが、ヴィータがそう思うのも仕方ないだろうな。やはり本人に直接聞いてみるのが早そうだが、どこにいる?」

「武器や持ち歩いてたら誤解されそうなのをこっちで預からせて貰って、なのはちゃんのトコに泊まってるわ。なのはちゃんからの申し出だったけど、局だと拘留されてると感じるかもしれないし、フェイトちゃんも居るからもしもの時でも安心だし、これが一番ベターな選択だと思うわ」

「なんにせよ、これ以上は結果待ちやし解散や。皆、早う休むんやで」







美しいピアノの旋律とソプラノの歌声。

妙に聞き覚えのある音楽に彼女の目が覚める。

「…んっ……。ここ、は………エレベーター…?」

霧かかった意識が徐々に鮮明となり、見覚えのある場所で、定位置だった座り慣れた椅子に腰を下ろしているのに気づく。

椅子に座る彼女の対面には、机を挟み異様に長い鼻が特徴的な小柄な男が座っている。

「ようこそ……お客人。旅路を終えた貴女を、また我がベルベットルームへお呼び出来るとは、思いもよりませんでした」

「イゴールさん!?」

ここがあの日までタルタロス攻略の手助けとなるペルソナの管理や強化を担ってくれていたベルベットルームで男がその主であるイゴールだと気付き、彼女は驚いた。

「あれ?ここがベルベットルームなら、エリザベスは……?」

いつもはイゴールの隣に控えているはずの友人の姿が見えず、キョロキョロと辺りを見渡す。

すると、

「ここに居りますよ」

「エリザベス!!」

彼女の背後からかけられた声に反応し振り向くと、懐かしくも美しい友人の姿があり、彼女は思いっきり抱きついた。

そんな彼女を優しく抱き返し、エリザベスは万感の想いを込めて、言う。

あの時から、彼女に逢って言いたかった言葉を。

「また貴女に逢う事が出来、嬉しく思います」





「でも、なんでまた私はベルベットルームに?あの時イゴールさんは、私の旅路は終着点に着いたって言ってましたよね。なら、私はもうベルベットルームには来れないんじゃないですか?」

「確かに。お客人は、自身の持つ可能性の力《ワイルド》を昇華させ、命の答えとして《ユニバース》という、一つの力の頂まで到達いたした。ですが、今のお客人の持つ力は《ユニバース》ではなく、《ワイルド》なのです」

「《ワイルド》に?」

「さよう。お客人はあの後、御自身がどの様な道を選ばれたか憶えておりますかな?」

イゴールの言葉に、彼女は居住まいを正して頷く。

「はい。私は、人の無意識がニュクスに届かない様、封じてたはずです」

「ええ。お客人は《ユニバース》の力で60憶を超える、人が無意識に持つ死への興味、願望がニュクスへ到達するのを阻んでらした。そして、それは現在も続いているのです」

「………はい?」

「信じられないかもしれませんが、今の貴女は封印を成している《ユニバース》から分離したした魂が空となっていた本体の器に戻ってらした状態なのでございます」

「えーと、つまり《ユニバース》の力を失なった変わりに、封印から自由になったんだよね?でも、弱くなったりしてる感じはしないけど……」

「肉体面ではそうでしょうな。ですが、ペルソナ能力はどうでしょう?」

「えっ?ペルソナも、あの時と全く同じですけど……」

「論より証拠。実際にペルソナを喚んでみたらよろしいかと」

「ペルソナを喚ぶって、ここで?」

「ええ。どうぞ遠慮なさらず、ぐいっと」

彼女はイゴールの方を見て確認を取ると、軽く頷かれたので、躊躇いがちに召喚器をこめかみに当て、

「《メサイア》ッ!!…………あれ?」

いつもの様に引き金を引きペルソナを出そうとしたが、いつまで経ってもペルソナは出てくる気配がない。

「な、なんで……?」

「申し上げた通り、お客人は力と魂が分離なされた。今、お客人が持つペルソナ能力は初めてここを訪れた時程とは申さずとも、大差は無い程度の力しかお持ちにならない。それでは、現在お客人が宿すペルソナを引き出す事は叶わぬでしょうな」

「えー、だとしたら、今の私はどの程度のペルソナなら使えるんでしょう?」

「そうですなぁ、エリザベス」

「はい、主。では、こちらをご覧下さいませ」

エリザベスが小脇に持っていた本を彼女に手渡してくる。

「ペルソナ全書?」

今までは必要な時にエリザベスがその中にあるペルソナカードをイゴールに手渡しており、直接手渡されるのは初めてだった。

せっかく渡されたのだからと、ページを捲り見ていくとおかしな点に気付いた。

「ここからのペルソナカードが、何か薄黒いというか暗いというか……」

以降のページも確認していくと、ページが進む毎にペルソナカードの輝きがなくなっていき、最後の辺りではペルソナの絵柄が見えないぐらいに黒くなっていた。

「通常の輝きを保っているペルソナカードが、お客人の力で使役出来るペルソナですな」

「あの、この黒くなってるペルソナカードは…?」

「それは、主の力が行き届かず力を失っているカード。再び力を取り戻すには、お客人がこれらのペルソナカードに釣り合うだけの力を取り戻す必要があるでしょう」

「………戻せるんですか?」

「絶対にとは申せませぬが、お客人がタルタロスの頂を目指していた時と同様、鍛練を積み重ね、他者との絆を深めてゆけば、可能性は十分にあるでしょう」

「そうですか」

彼女が少し安心したように息を吐く。

それをベルベットルームの住人は片や面白そうに、片や嬉しそうに見つめた。





 
 

 
後書き
にじファン時代の教訓。

『無理に場面を続けて書こうとして詰まるぐらいならキンクリすればいいじゃない』 
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