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東方魔法録~Witches fell in love with him.

作者:枝瀬 景
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12 気障~The accidental encounter is necessity.

ウェネフィクス学園祭。毎年行われているこの学園祭は学園内は勿論、街と連携して街が丸々会場になる大きなイベントだ。
学園祭中、学園は一般公開され、他の種族の妖怪も入ることができる。ただ、学園内で行われている出し物は魔法の研究についてのものがほとんどなので魔法に興味がある物しかあまり出入りしない。
必然的に、お祭りを楽しみたい者は街の方に集まるのだ。そして街は様々な種類の妖怪で溢れている。
そう。溢れ返っているのだ。溢れているのが今の私にとっての問題の一つ。

「どうしたんだ?パチュリー。そんなにキョロキョロして」
「だって…周りが…見てる…」

二つ目。私は今、明希にお姫さまだっこされながら街を歩いている。恥ずかしくて死にそうだわ…
私がそう言うと、明希は私の顔を覗き込み、目を見ながらこう言った。

「周りなんか見てないで俺だけを見ていればいいんだよ」
「~~~~ッ!」

最大にして問題の三つ目。明希がおかしくなった。
理由はわかってる。

~~~~回想。長いけど~~~~

高校生の私達の出し物の課題は「合同研究」。魔術、魔法薬、マジックアイテムのから一つ選んで、クラスの皆で意見を交換しながら選んだ種類の研究について発表するものだ。魔法を使う者としては非常に有意義な出し物である。
今年選ばれたのは魔法薬。どうしてもやりたいと普段からは想像できない強気なエリーに皆は戸惑いながらもそれにきめた。あの時のエリーは凄かったわ…
準備は進み、学園祭の開始直前のことだった。

「うおッ!」ガシャン!

一人のクラスメイトが転んで魔法薬の入ったガラス瓶を割ってこぼしてしまった。
魔法薬が大量にこぼれてしまったら、すぐに一定の距離を取るようにと学園で教わっている。魔法薬の多くは気化する物が多く、その気体を吸ってしまう恐れがあるからだ。だから私も含め、皆はすぐに教室を出た。

「あれ、明希君は?」
「まさか教室…?」
「すまん…こぼした時に明希にかけちまった…」
「え、うそ」

クラスメイトの一人が明希がいないことに気付いた。魔法薬をこぼしたクラスメイトが明希に魔法薬をかけたことを自白しすると、皆はざわつく。

「ねぇ、エリー。こぼれた薬はなんだったかわかる?」
「え、ええっと…あ、あれは…」

すると、ガラッと教室のドアが開き、明希が出てきた。しかし、いつもと様子が違う。なんか無駄にキラキラしてるというかキザって言うか…

「皆、薬の心配はないから教室に戻っていいよ」
「明希君は大丈夫?なんか様子がおかしいけど…」
「大丈夫、大丈夫。ほら、早くしないと学園祭始まっちゃうよ?」
「ええ、あ、うん。皆、片付けよう」

笑顔が何時もより輝いているし、声音もなんだか違う。どうしたんだろ。

「明希、本当に大丈夫なの?」
「ああ、パチュリー。俺を心配してくれるのかい?嬉しいよ」
「は?え?」

明希は私に近付き、ハグをした。明希が近い明希の匂いがする明希が明希が明希が…!

「え、ええっと、す、すけこましになるく、薬だった…」
「エ、エリー!何で、そそそんなものを…!」
「デ、デビルツリーがて、手にはいってつ、ついデビルツリーを使う魔法薬、をぜ、全部…」

デビルツリー!?幼稚園で苗を植え替えたあの!?デビルツリーの出す蜜って人を惑わす効果があったわね。まさかそれを応用した魔法薬があったなんて…

「す、すぐに解毒、薬を作る…け、けど時間がかかる…」
「何で最初から作ってないのよ…」
「げ、解毒薬は、デビルツリーからはつ、作れない…」
「って言うかいいいい加減に離れなさい!みみ皆が見てみるわ!」
「ああ、ごめん。嬉しくてつい。そしてパチュリーがあまりにも抱き心地が良かったからさ。というか皆が見ていないところならいいのかい?」
「へ、あ?あ、揚げ足をとらないで!」
「おお!」「明希が面白いことになってる!」

面倒なことにレイとレウが野次馬にやってきた。

「全然面白くないわよ…!」
「そうだ!解毒薬が完成するまで」「街の方に行ってこいよ」
「いいのかい?」
「いいよいいよ」「その方が面白そうだし」
「じゃあ、行こうかパチュリー」
「え、ちょっと…!」

明希は私をお姫さまだっこをして街の方に向かっていった。

~~~~回想終了。長くてすいません~~~~

「あれ?明希にパチュリーちゃんじゃない」
「街中で大胆なことをするわねぇ」

イ、イヤ~~~~!まさかこんなタイミングにこんなところでお母さん達に出会うなんて~~~~!
二人とも手を口に当て微笑まないで!これには深淵より深い理由があるから!

「お、お母さん!あ、明希は今魔法薬のせいでおかしく…!」
「明希とパチュリーちゃんはいつからラブラブになったのかしらねぇ?」
「シェルさんまで!と言うか話を聞いて…!」
「ふふふ、孫の顔を見る日はそう遠くないなもね」
「フラウ、邪魔しちゃ悪いから私達は行きましょ?」
「そうね。二人とも、頑張りなさいよ」

言うだけ言ってお母さん達は去って行った。ああ、後でどうなるのかしら…

………………………………………
…………………………………
……………………………
お昼時。明希が目敏くもカップルだと割引になってケーキが付いてくるというカフェを見つけたのでそこでお昼を取ることにした。

「はい、あーん」
「うぅ……あーん…」

ただ、その時に選べる料理が決まっていてなおかつお互いに食べさせるという条件付きだった。監視体制もバッチリであーんをしないという考えを無くさせる。と言うか仕事しなさいよ。見せ物じゃないのよ!

「ほら、パチュリーも」
「わ、わかってるわよ…。…あ、あーん…」
「あーむ」

それでももぐもぐと食べる明希の姿を見て、幸せだなぁ。とか思ってしまう。明希がおかしくなったとしても私が明希を好きなのは変わらないし、むしろこの状況を楽しんでいる節すらあるかもしれない。…あれ?私ってもしかして結構重症?

「あ、頬っぺたにクリームが」
「え?…ひゃ!」

ペロッと明希の舌が私の頬を撫でる。

「ししし、舌じゃなくてゆゆゆ指で取ればいいでしょ!?」
「はは、美味しかったよ」

解毒薬はまだなのー!?恥ずかしくて死んじゃいそう!!
………………………………………
…………………………………
……………………………
イベントでは悪いトラブルがつきものだ。特に人が多く集まればそれだけ起こりやすい。人じゃないけど。

「泥棒ー!誰か!捕まえて!」

店で泥棒が起こったようで犯人が商品を持って逃走する。店の人は一人で、もし、自分が捕まえにいくと誰もいなくなった店で今度はごっそり盗られる可能性があるために動けない。周りは怖じ気付いたのか動こうとしない。それに犯人は自分の逃走に邪魔になる人を次々と突き飛ばす。

「明希」
「イエス、ユアハイネス!」

何なのよその返事は。
青みがかった銀髪で小柄、背中に翼、ピンク色のナイトキャップと服を着て微動だもしない少女を、犯人は突き飛ばそうとするが寸前に明希がそれを阻止する。

「ほら、大人しくしな」

明希は魔法を使い、電気を犯人に流して無力化する。私は商品を返して明希は少女に無事かどうか尋ねた。

「大丈夫かい?お嬢ちゃん」
「ええ、問題ないわ」
「でも駄目だよ逃げなきゃ。危ないよ?」
「危なくないわよ。貴方が私を助けてくれるのは確定事項だったの」
「ん?そうかそうか。それじゃ早くお家の人を探せよ?」
「それじゃあね。また会いましょう。明希、パチュリー」

会話が噛み合ってないわよね?明希がおかしいのはわかるけど、あの少女も大概だった。私、名前を教えてないわよね?

「パチュリー。俺、ごほうびが欲しいな」
「え?何なのよ急に…」

明希は私のあごを持ち、顔を上げさせられる。そして明希は段々と顔を近付けてくる。私はあまりにも流れが自然すぎて自分もその気になってくる。少しずつ少しずつ近づいてくる度に私の心臓が加速する。目をトロンとさせ、来る!と思った丁度その時エリーの声が聞こえた。

「や、やっとみ、見つけた…って、な、何してるの?」
「んー?パチュリーの顔に小さなゴミがついていたんだ」
「そ、そう」
「あれ?何で怒っているんだい?パチュリー」
「エリー。解毒薬ってどうやって飲ませるの?」
「ふ、普通にく、口に流し込む…」

私はエリーから解毒薬をひったくるように取り、明希に強引に飲ませる。

「がば!?ゴクゴク……」
「どう?治った…?」
「治りました…。ごめんなさいパチュリーさん」
「わかればいい」
「え?な、何であ、明希が謝るの?く、薬のせいなのに…」
「それをひいても明希は消せない罪を2つ作ったの。まあ、エリーにはわからないでいいわ」

この後、学園祭の終わった日の夜にあるカップルで出場する後夜祭に勝手に出場申し込みされていたり、お父さん達から明希のことについて色々聞かれたりしたがそれはまた別の話。 
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