東方魔法録~Witches fell in love with him.
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11 予兆~The preparation is completed.
前書き
この回は結構伏線はってます。ある程度、話数がすすんだら読み返して貰ってそれに気付いてもらえたら幸いです。
「あれ?なんだろ?」
夕方になり、そろそろ宿に戻ろうかと思った。
着替えて宿に向かう途中で俺はたくさんの人だかりが出来ているのに気が付いた。
「お祭りかしら?」
「み、みたいだね…」
「お、いいね」「晩飯も兼ねて寄ってこうぜ」
海で遊んで疲れたのか若干足取りが重くなりながらも俺達は人ごみの中に紛れていく。
そこには食器が売っているたり、ワインを売る屋台があったりと、日本の祭りとは全然違う雰囲気だ。
革職人がサンダル作りに精を出していたり、女性たちが天然素材のキャンドルや手作り石けんを売っていたりする。
そんな中、パチュリーがふと足を止めて、とあるアクセサリーを凝視する。
「………(じーー)」
「何か気に入った物でもあったの?」
パチュリーの視線の先には三日月の飾りがあった。…ふむ。
「これください」
「え?」
俺は店員にお金を渡し、三日月の飾りを買った。そしてパチュリーにプレゼントする。
「…いいの?」
「いいのいいの。それにプレゼントに理由なんている?」
「いるんじゃない…?…でも…ありがとう…」
パチュリーは顔を赤くしながらも早速、自分の帽子に飾りを付けた。
「うん。似合ってるよ」
パチュリーは顔をますます赤くする。恥ずかしかったのか帽子を被ったまま帽子で目を隠した。
「………あー!あんなところに大食い大会が!」「参加人数は三人だって!?エリー!一緒に出よう!!」
「え?え?ち、ちょっとぉぉ……」
エリーはレイとレウにそれぞれ腕を捕まれズルズルとドップラー効果を伴って引きずられていった。
「何だったんだ?あいつら…」
俺達は茫然と見ているとレイ達が向かった方向と逆方向から人々がどよめく声が聞こえてきた。
「なんだろ?行ってみよう」
「え?あ…」
俺はパチュリーの手を引いてその場所に向かった。
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そこでは独特の衣装と音楽を使った素晴らしいショーが開かれていた。
道化師が炎を口からふいたり、人の肩に両足で立ってジャグリングをする人、馬に乗って曲乗りをしていたりする。
僕達はそれを座って鑑賞した。
「さー!本日お集まりの皆さん!これが最後の出し物となります!稀代のマジシャンのショーをご覧ください!」
現れたのはシルクハットに黒のスーツを纏った人。手始めにシルクハットから鳩や兎、ハムスター、チワワ、モモンガ、小亀…って出しすぎだろ。
その後も次々とマジックを披露していく。
「ちょっと残念ね」
「なにが?」
「だって私達って…ね。マジックって私達にとって子供騙しに過ぎないわ」
「…そうだね」
「ふぁ~…。私、なんだか眠くなっ…て…」
パチュリーはうとうとして俺に寄りかかって寝始めた。パチュリーのいい匂いがしてちょっとドキドキした。
ショーが終るまでそっとしておこう…
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辺りもすっかり暗くなり、ショーも終わって眠ったパチュリーを背負って皆で宿に向かうためレイ達を探している途中のことだった。突然、ショーに出ていたマジシャンが話しかけてきた。
「君たちは私のショーをみていたよね?」
「そうですけど、それが?」
「人々が楽しんでいる中で君たちだけが詰まらなそうにしていたのが目立ってね」
俺達は魔法使いだ。マジックなんて所詮は魔法の真似事。そう思っていたのが顔に出てしまっていたみたいだ。流石に失礼だったと反省する。
「君たちはマジックをどう思う?」
「どうって…魔法の真似事…ですか?」
「ふむ。じゃあ魔法とは何かね」
魔力を使った術。普通の人間が使えないもの。一般人にはあまり信じられていないもの。まあ、魔力が感じられないこの人に魔法使いの俺が言うのもあれだから俺は黙っていた。
「………」
「無理に答えなくていいよ。私は…他人が信じているかどうかだと思う」
「…マジックと魔法は違わないと言いたいんですか」
「君は頭が回るね。そうだ。マジックは他人に種を見破られなかったら、もうそれは魔法と読んでも差し支えないんじゃないかな」
「………」
「逆に言えば、信じられなければたちまちマジックは詰まらない物になってしまう。……あるいは本当に魔法を使える人にとっても、ね」
「………」
「はは、そんな恐い顔をしないでおくれ。私はただ君たちのことが気になっただけなんだ」
おーい明希ーと呼ばれた気がして振り返ってみると、レイ達がそろって俺達を呼んでいる。
「お友だちが来たみたいだね。邪魔して悪かったよ」
そう言ってシルクハットのマジシャンは闇に紛れてしまった。
「おーい明希!」「早く来いよ!」
「わかってるって!今いく!」
俺は気にせず、背中で寝ているパチュリーを起こさないように小走りで向かった。
2日目。私はいつの間にか眠ったようで、ベッドの上で目を覚ました。たぶん明希が運んでくれたのだろう。
昨日は楽しかった。明希が私に見とれたり、明希に日焼け止めを塗らせたり、明希の頬にキスをしたり、明希からプレゼントを貰ったり、明希とショーを鑑賞したり…。ふふ、明希のことばっかり。
私は明希が好き。たぶん明希もその事に気付いてきてる。
でも、ときどき私は明希がどこか遠いところに行ってしまいそうで恐くなる。そしてそのまま会えなくなってしまうんじゃないかって。
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「パチュリー。だいぶ沖に流されちゃったからそろそろ戻ろう」
折角海に来たのに海を見ているだけじゃ詰まらないと思い、海に入ることにした。
泳げない私は浮き輪を借りて明希と一緒に浮かんでいた。そして気付いたらだいぶ沖に流されてしまったようだ。
「そうね……きゃ!」
突然、波が襲いかかり、意図せずに海水を飲み込んでしまった。
「ケホケホ…」
「大丈夫?」
「ケホケホ…ゲホゲホゲホ…ゼー…ゼー…」
「パチュリー!」
海水のせいで喘息が出てきてしまい、くるしくなって思わず、私は浮き輪を離してしまった。
私は泳げない。そしてここは沖だ。結果は言わなくてもわかるだろう。
ゴボッと体から空気が無くなる。頭が混乱して手と足を無意味にじたばたと動かす。体が芯まで冷えていくようで段々意識が朦朧としていく。
明希………
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体が温まる感覚がして私は目が覚めた。
魔法のお陰か私達の回りだけ円を描くように水が私達を避けていて、海の底なのに息ができる。
「気が付いたんだ…良かった…」
明希の安心した声が耳元から聞こえた。
私は座ったまま、正面から抱かれていた。直接肌から伝わる熱が冷えた私の体を温めていく。私は明希の首に腕をまわして抱き締め返した。
「…ごめんなさい…私のせいで…」
「そんなこと言わないで。喘息を理由にしたらパチュリーは何処にも行けなくなっちゃう。でも、安心して。俺が絶対に守るから」
「うん………もう少しこうしていて……」
目を閉じ、私は明希を感じた。
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「ん?なんだこれ?」
抱き合ったまま暫くすると、明希は何かに気付いた。私はそれを見るために明希から離れた。
明希が手にしていたものは紐のように細いチェーンのついた銀色の懐中時計だった。
「時計?海の底でなんでこんなものが」
「それに動いているわね」
時計のフタを開くと、海の底に沈んでいたとは思えないほど普通に時を刻んでいた。それにキズ一つ無いなんて普通じゃあり得ない。これはもしかすると…
「たぶんマジックアイテムね」
「だと思うけど…」
「強い力を感じるわ…ちょっと貸して」
私は近くにあった岩山に思いっきり時計を投げつけた。
「パ、パチュリー!?」
「見て、キズ一つ付いてないわ」
拾って確認すると、時計は無傷だった。
「明希、貰っておいたら?」
「いいのかなー?勝手に拾って」
「いいんじゃない?見つけたのは明希だし、それにここは海の底。誰も文句は言わないでしょ」
「そうだね。………そろそろ帰ろっか。もう5時過ぎてるみたいだし」
「え?何で時間が…ああ、そこに時計があるからって…そんなに長い間抱き合ったの…?」
ええっと確か海に入ったのは昼ちょっと過ぎぐらいだったからええっとつまり私は時間単位で抱き合ったって……こ…と、
「か、帰りましょ…」
お互いに顔を真っ赤にしながら海から出ていった。そのあと、家に帰っても私はドキドキが収まらなかった。
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